※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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魔王の料理2

 

「スラル、入るぞ?」

 

「ええ、入って」

 

 とある日の事。

 俺はスラルに呼ばれて彼女の私室を訪ねた。

 ノックを二回、そして部屋に入っていいか了承を得ると、俺は早速用件を聞いた。

 

「今日は何の――」

 

「ガルティアの歓迎会の準備をするわ」

 

「じゃあな俺は忙しい他のやつに頼んでくれ!」

 

 俺は早口でまくし立てると逃げるように部屋から出た。

 そして直ぐ様この場から離れる為に逃走。

 

「待ちなさい――っ!」

 

「ぐおっ――!?」

 

 後ろから追いかけてきたスラルに服を掴まれる。さすがは魔王と言うべきか、まさか一瞬で捕捉されるとは……。

 俺はそのまま腰にしがみついて来たスラルに必死の形相で叫ぶ。

 

「くそっ! 離せ、離してくれ! 俺は忙しいんだ!」

 

「ちょ、ちょっとくらい別に良いでしょ?」

 

「じゃあ聞くが、俺に何をさせるつもりだ!?」

 

「えっと、それは……料理の練習――」

 

「ほら見ろ! 案の定じゃねぇか! 俺はそれが嫌なんだよ!!」

 

「大丈夫! 今回はちゃんと復習もしたし、味見してもらうだけでいいから!」

 

「何となく想像がつくんだよ!! くそっ、誰か助けてくれ――!!」

 

「ああもう! 喚かないの!」

 

 魔王城で俺の助けを求める声が木霊したが、助けてくれる者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

「――いいか? 絶対に変な物入れるなよ?」

 

「……別に前の時も変なことは一切してないんだけどなぁ……」

 

 結局、スラルに引きずられるようにして厨房まで連れて行かれた俺は、念入りに注意を促す。

 どうせやるならとことん監視、徹底的な教育を施してやる。

 

「というか、レオンハルトって料理出来るの? あんまりイメージ湧かないけど……」

 

「人を見た目だけで判断するな」

 

 こいつもこいつで失礼だな。毒料理を作る魔王様には言われたくない。

 

「物心ついた頃には両親はいなかったしな。大抵のことは一人でやってきたし、料理もそれなりには出来る」

 

「へぇ……意外ね」

 

「少なくともお前よりは出来るからな」

 

 別に好きでやってた訳じゃないが生きる為には必要な事だった。別に野菜や果物を直接食べたり、肉を焼いて食うだけでも良かったが、集落のガキ共が親の料理を自慢してくるのもうざかったので、半ば意地で憶えてやった。今考えればガキ共に悪意は無かったんだろうが当時の俺はそれを苦々しく思ってたしな。

 子供の頃は訓練以外にやることもなかったし、近所の料理上手の人達に聞きに行ったりしてハマってた時期もある。戦場に出始めてからは面倒になってやらなくなったし、王になってからはもっとやらなくなったけどな。

 

 とにかく、俺はスラルに食材の山を前にして宣言する。

 

「やると決めたからには徹底的にやる。中途半端はない。どこの厨房でもやっていける立派な料理人にしてやる」

 

「……そうね、どうせなら極めてみせるわ!」

 

「その意気だ。まずは手本を見せてやるからよく見てろ」

 

「わかったわ!」

 

 スラルも自分の料理があれだけ酷かった事を悔しく感じていたのだろう、瞳にはやってみせるという強い意思を感じる。なら、俺もそれに出来る限りは応えてやる。

 それに、ガルティアも大変だっただろうしな。あいつに苦労を強いたのはある意味俺でもある。少しくらい労ってやってもいいだろう。それに、歓迎会で俺の時の二の舞を味わわせるのもどうかと思う。

 ガルティアの歓迎会は四時間後。それまでにグルメなあいつを唸らせる料理を作らせて度肝を抜いてやる。

 さて、お料理の時間だ。

 

 

 

 

 

 

「――これで完成だな」

 

「ん……美味しそうね」

 

 ……そして幾つかの工程を経て――俺はへんでろぱを作り上げた。

 家庭料理ではあるもののそこそこ豪勢な料理であり、子供の誕生日やお祝いごとの日なんかにはよくこれが食卓に並ぶらしい。

 というのも食材が高級な物ばかりなので少し敷居が高い料理なのだ。

かくいう俺も、ヒララレモンなんかは俺の住んでた地域には生えておらず、ミリンレモンを代用品として加えていたものだ。

 スラルは俺が作ったへんでろぱをスプーンを使ってゆっくり口に運ぶ。

 

「んっ! 美味しいわ……!」

 

「まぁ、こんなもんだ」

 

 顔を綻ばせるスラルを見て、俺は少し自慢気に頷く。

 

「料理なんてのは基本さえ押さえとけば多少のミスがあっても極端に不味くなったりはしないからな……じゃあ、次はお前の番だ」

 

「う……わかってるわ」

 

 少し不安そうに調理台の前に立ったスラルは、先程俺がやったのと同じ様に調理を始める。

 その動作は淀みなく、手際が悪いということもない。

 まぁ、だがそれは予想していた事でもある。

 前回のスラルの料理には特に見た目や香りに問題があるようには見えなかった。スラルの認識が間違っていなければ手順に大きな間違いはない筈である。

 

「えっと……次は、ほららの切り身を適当な分だけ入れて……」

 

 スラルの奴も同じ失敗は繰り返したくないのだろう、分かっていても細心の注意を払って確認しながら作業を進めていく。

 

 ――そしてへんでろぱが完成した。

 

「……うん、へんでろぱだな」

 

「一応、ちゃんと確認しながら作ってみたけど……」

 

「ああ、俺もちゃんと見てたがおかしな点は一つもなかった」

 

 やはり俺の思い過ごしだろうか。この前の料理はやはり事故か何かで起こってしまった悲劇であり、偶然の産物。

 俺が作ったへんでろぱと比べてみても違いは殆どない。強いていうなら俺の方が少し大雑把に作ったくらいだ。スラルの方は分量なども出来るだけ正確にしていたので味も基本に収まっている筈である。

 

 ……なら、何故俺のスプーンを握る手はこんなにも震えているのだろうか。

 

「レオンハルト……?」

 

「あ、ああ……大丈夫だ」

 

 スラルの奴が不安そうな表情で俺を見る。そうだ、スラルを、スラルを見ていた俺を信じろ。

 この震えは、あれだ。おそらく錯覚。前回の苦しみを脳が憶えているのだ。

 いわゆる条件反射という奴だ。似たような経験をしたことで震えているだけ。そうに違いない。

 

「よし、いくぞ――」

 

 俺は一気にへんでろぱを掬ったスプーンを口に含んだ。

 

 ……ん、うん? あれ、思ったより食べれ――――

 

 ――俺は意識を飛ばした。

 

 

 

「…………はっ」

 

「ちょっと大丈夫?」

 

 気がつけばスラルが俺の肩を掴んで軽く揺り動かしていた。

 ……もしかして俺は気を失っていたのか?

 俺は恐ろしい物を見るようにへんでろぱに視線を移す。

 

「……なぁ、スラル。ちょっとお前も食べてみてくれ」

 

「へ?」

 

「俺には味の批評が難しすぎる」

 

「えぇ……? まぁ、いいけど……」

 

 スラルが何気なくへんでろぱを口に含む。

 

「……? 何かしらこの味――――」

 

 そう言いかけてスラルの口が、いや、身体全体が突然固まった。

 

「お、おい。スラル?」

 

 表情も全く動かなくなったスラルに、俺は心配になって声を掛ける。

 

「…………はっ」

 

「おおっ、動いた」

 

 数秒経った後、スラルが再起動したように正気を取り戻した。

 なるほど、俺もこんな感じになっていたのか。

 

「あれ……? 私、どうしたの?」

 

 内心で納得していると、スラルが何が起こったのかわからず挙動不審になっているようなので、それを嗜める。

 

「気絶してたみたいだな、まぁ、俺もそうだったんだが……」

 

「……つまり、駄目だったって事?」

 

「そうなる――と、言いたいがそうとも言い切れない」

 

 俺は目に見えて落ち込んでいたスラルに曖昧な返答をする。別に慰めている訳ではなく、ちゃんとした理由がある。

 

「え、どういうこと? 不味いんだから失敗でしょ?」

 

 だが、スラルはマズいんだから失敗だと断定する。どうやら気づいていないようだ。

俺は少し深刻な顔で、ならば、と聞いてみる。

 

「いいか、スラル。お前はこれを不味いと言うが……どこがどう不味いんだ?」

 

「それはだって…………えっと……その」

 

 スラルが言葉に詰まったようにしどろもどろになる。そう、スラルの料理を食べるとそのようになってしまう。

 

「どう不味いのか説明出来なくないか?」

 

「……!? そ、そうね。言われてみれば何が不味いのかわからないわ……」

 

 こういう事である。スラルの料理を食べて、不味い、と思ったような気がするが……肝心の味についてが何一つわからない。というか途中で意識が無くなってしまったのでそれを判断出来ないのだ。

 

「ひょっとしたら俺達が憶えてないだけで美味しいのかもしれない……美味しさを感じる前に気絶するというだけだ」

 

「……それって悪化してない? そもそもそれじゃ美味しいとも言えないような……」

 

「極論、そういう可能性もあるというだけだ。どっちにしても、この料理が論外だということには変わらんが」

 

「……くっ、やっぱり駄目なのね」

 

 スラルが悔しそうに歯噛みする。今度こそはという思いが水泡に帰したのだ、無理もない。

 ……しかし、一体理由はなんだ? 俺はちょっと本腰を入れて考えてみることにした。

 料理の手順に問題はなかった。材料も俺と同じ物を使っているのだから問題なし。鍋や包丁、まな板などの調理器具も同様だ。調理に使った場所も同じ場所。

 ……駄目だ、わからねぇ。後は互いの技量くらいなものだが――

 

 ……ん? ひょっとしたらそういう可能性もあるか?

 

 俺は一つ思いついた事をスラルに向かって口にした。

 

「なぁ、スラル。ちょっと自分の指舐めてみろ」

 

「えっ……それに何の意味があるの?」

 

「……いや、ひょっとしたらお前の指から毒でも出てるんじゃないかと」

 

「あるわけないでしょっ!?」

 

 スラルが憤慨したように叫ぶ。そして俺の方に手を突き出す。何だ、この手は――ぐっ!?

 

「ほら、毒なんてないでしょ! 失礼ね!」

 

「――ッ! へめぇ……!」

 

 あろうことか俺の口の中に指を突っ込んできたスラル。いや、お前……よく人の口に躊躇いなく指突っ込めるな。

 まぁ俺が言った事が発端ではあるが――少しからかってやるか。

 俺は舌でスラルの指を少しだけ舐めてやる。

 

「ひぅっ!」

 

「んっ」

 

 そんなにくすぐったかったのかスラルの口から甲高い声が厨房に響く。そして手を引っ込めて俺の口の中から直ぐ様脱出してしまう。

 頬を少し染めてこちらを咎めるように睨むスラルに、俺はいけしゃあしゃあと口にする。

 

「毒はねぇみたいだな、良かったなスラル」

 

「っ! そ、そうね! 安心したわ!」

 

 必死に取り繕おうとしているスラルを見て、俺は少しだけ気分を良くすると気を取り直して食材を手に取る。

 

「まぁ、時間もないしとりあえず片っ端から試してみるか。念のために俺も作るからよ」

 

「それもそうね……」

 

 仕方ない、とスラルは嘆息する。不安要素だらけだが、ガルティアの歓迎会を行わない訳にもいかないだろう。

 それに俺としては少し悪趣味かもしれないが、ガルティアがスラルの料理を食べてどんな反応をするのかも見てみたい。前にスラルの料理は毒みたいなもの、と冗談で言ってみたが耐性の高いムシ使いならこの衝撃に耐えられるのか。もしくはノックアウトしてしまうのか。興味がないといえば嘘になる。

 そうして俺達は、本格的にガルティアの歓迎会の準備を進めた。

 

 

 

 

 

「邪魔するぜ――って、おお、こいつは――!」

 

「よう、ガルティア」

 

「ん、来たわね」

 

 スラルの部屋に料理を並べてガルティアが来るのを待つ事少し。やってきたガルティアは部屋のテーブルに所狭しと並べられた料理の数々を見て、喜んだように笑う。

 スラルはそんなガルティアを見て、俺の時と同じ様に微笑を浮かべて歓迎した。

 

「ちょっと遅れちゃったけど、今日はガルティアの歓迎会だから二人で沢山の料理を用意したわ。……だからその、沢山食べてね?」

 

「おお、勿論だ。ありがとよ」

 

「あ、でも無理して食べなくてもいいから!」

 

「あん? どういう意味だ?」

 

「あ、あー、気にするな。料理が冷めちまうといけねぇしさっさと食べようぜ」

 

「……それもそうだな。いやあ、美味しそうで楽しみだ」

 

 スラルのどっちつかずの言葉に訝しげに思った様子のガルティアだが、咄嗟に料理を勧めてフォローする。

 

「それにしても……魔軍っていうか魔王が歓迎会なんて想像してなかったな。嬉しいけどよ」

 

「……ああ、俺の時もスラルが開いてくれたぜ」

 

「へぇ、そうなのか。やっぱスラルは魔王らしくねえなあ」

 

「……別に大したことじゃないし……こそばゆいからあんまり褒めないでよ」

 

 照れたように視線を外すスラル。それを見て笑う俺とガルティア。

 

 ……これで料理の心配がなければ良い話で終わるんだけどな……。

 

 今回も見た目、香りは完璧なスラルの料理。製法も問題なかった。だからこそ食べてみるまでわからない。ひょっとしたら美味しい可能性もあるが、その可能性はかなり低いだろう。何故なら俺の右手が震えているから。

 ガルティアは料理を前にして鼻歌交じりで席につく。どうやら本当に料理を楽しみにしているようだ。見た目は完璧だからな。そう思うのも無理はない。

 いざとなったら俺が作った料理もあるからそっちをやるか。幾ら何でも、意識を飛ばすような料理を残さず食べさせるほど俺も鬼ではない。駄目なら駄目で構わない。とりあえず食べさせてみる。死にはしないだろうから大丈夫だろう。

 

 ……見方を変えなくても、これ人体実験みたいなものだな。

 

「それじゃあ……手を合わせて……いただきます!」

 

「!」

 

「!」

 

 行儀よく手を合わせて、食事の挨拶を済ませたガルティアはさっそく近くにあった料理を手に取る。俺達は緊張の面持ちでそれを見ていた

 

「まずは、このイカカレーでも食べるかな。香ばしい匂いがして美味そうだ」

 

 ガルティアがスプーンを手に取り、イカカレーを躊躇いなく口に運ぶ。

さて、どうなることか。

 

「………………」

 

 ガルティアがイカカレーを口にした途端、ガルティアの動きが凍りついたように固まった。

 

「ああ……やっぱり駄目だったか……」

 

「………………美味い」

 

「……は?」

 

 ん? 今こいつなんていった……え、美味い?

 そんなまさか、と俺が血相を変えた瞬間、ガルティアは大声で叫んだ。

 

「うまあああああああああい!!!」

 

「え、本当!?」

 

 思わずスラルも喜ぶ。作った本人ですら本当に美味しい可能性は考えてなかったのだろう。

 ガルティアはなおもスラルが作ったイカカレーにがっつきながら料理を褒め称える。

 

「ああ……美味え! 何だこの美味さは……これはどっちが作ったんだ?」

 

「わ、私だけど……」

 

「スラル! お前はひょっとして魔王じゃなくて世界一の料理人だったりしないか?」

 

「ええっ!?」

 

「そこまでか……」

 

 あまりにもべた褒め、そしてとても美味そうに食べるガルティアを見て、俺も料理を手にとって見る。

 よく考えてみれば今までのがおかしかった。材料や手順も合ってるのだから不味くなる筈がないのだ。ならばこれがスラルの本当の実力なのだろう。

 スラルを見ると、とうとう料理が成功して喜んでいるようだった。……ったく、そんな腕があるなら俺の時に成功させろよな。

 何にせよ上手くいったようで良かった。俺も手伝ったかいがある。

 

「それじゃあ、俺達も頂くか」

 

「ええ、そうね」

 

 そうして俺とスラルは料理を口に運んだ。

 その瞬間――

 

「――ッッッ!!??」

 

 目の前が真っ白になる。

 身体の中から何かが抜け出るような感覚。

 浮遊感を感じて、下を見るとそこには自分の肉体がある。

 

 ――――俺は幽体離脱を体験していた。

 

 

「――――っ!」

 

 俺はそれを終えて、意識を覚醒させる。

 何だったんだ今のは……。

 どうやら横にいるスラルも俺と同じ様な現象を体験したのか、自分の身体を見渡して異常がないかチェックしている。

 また謎の現象が起きたんだな……ってそんな事考えてる場合じゃねぇ!

 

「ガルティア! ちょっと止まれ!」

 

「ああ? どうかしたか?」

 

「その料理はもうやめとけ! 身体がどうなるかわかんねぇぞ!」

 

「そうよ! もう食べなくてもいいから!」

 

 遅れて気を取り直したスラルと、一緒になってガルティアを止める。

 だが、ガルティアはそれを聞いて嫌そうな顔になる。

 

「えー……それはヤボだろ。こんなに美味いのに食べるなってか? ……あっ、いやお前らの分も無くなるからか。悪い悪い、こんなに美味いんだから取られたくねえのか」

 

「いや、いらねぇよ!?」

 

「えっ……どうなってるの?」

 

 スラルが困惑した様子でガルティアを見る。俺にもわからん。

 どうにも本気で美味いと思って食べているガルティアに俺は戸惑いつつも質問する。

 

「お前、何で大丈夫なんだ……?」

 

「ああ? それは美味すぎて大丈夫かって意味か? ……あ、これはお前が作った料理だな。スラルの料理に比べたら平凡な味だ。こっちから食べてもいいか?」

 

「喧嘩売ってんのかテメェ!!」

 

「わーっ! ストップ!!」

 

 怒った俺の身体をスラルが後ろから羽交い締めにして止める。

 

「もうガルティア。レオンハルトの料理もちゃんと食べてよ」

 

「えー……でも、こっちのに比べたらなあ……差がありすぎて食いにくい」

 

 スラルの注意にガルティアは不満そうに俺の料理を酷評する。

 

「くそっ……この味音痴め。スラルの料理なんて食えたもんじゃねぇだろ」

 

「うっ、酷いけど私も同意……なんだけど」

 

 俺の言葉にスラルが軽く落ち込む。だが、何か言いたいことがあるのか、ガルティアに近づくと手に持っていた料理を取り上げる。

 

「あっ! おいっ……」

 

「……スラル?」

 

 ガルティアと俺がスラルの行動に疑問を抱いていると、スラルは少しだけ咎めるような口調でガルティアに視線を向ける。

 

「ガルティア、レオンハルトだって頑張って作ったんだから美味しく感じなくてもちゃんと食べて」

 

「……でもなあ」

 

「でもじゃない」

 

 スラルはピシャリと言い放つ。それはどこか有無を言わせないような迫力があった。

 そしてガルティアを諭すように、スラルは続ける。

 

「人が一生懸命作った物を、ガルティアは蔑ろにするの?」

 

「う……それは……」

 

「どうなの? レオンハルトは貴方の歓迎会の為に仕事を抜け出してまで私の料理を手伝って、自分も料理を作ってくれたのよ? それをこっちの方が美味しいからっていらないって突き返すの?」

 

「…………そ、うか。そうだな……」

 

 スラルの言葉に少し考え込むように口を噤んでいたガルティアだが、やがて結論が出たのか普段とは少し違った――自嘲するように一度笑うと、真剣な表情で頭を下げてきた。

 

「スラル……いや、レオンハルト……すまん」

 

「……俺は別に気にしてないんだがな……お前も軽い冗談だったんだろ?」

 

「それでもだ。俺は料理と、それを作ってくれたお前を侮辱した」

 

 そう言うと、ガルティアは一つの皿を手にとった。先程、ガルティアがスラルの料理と比べた一品。それを口に運ぶと味わうようにしてから飲み込む。

 

「んぐ……このチキンバンバン。少し香辛料が利いてるな。お前のアレンジか?」

 

「ああ、俺が故郷で自分好みに作って食べてた味だ。……気に入らねぇか?」

 

「いいや……なるほどな。確かに何度も試行錯誤したような味わいだ。美味いな、もっと貰うぜ」

 

「はっ、いらねぇんじゃなかったのか?」

 

 俺はニヤリと笑い、敢えて意地悪い事を言う。

 だがガルティアは、そんな言葉にも不快に思うこと無く苦笑してみせた

 

「全部食べるさ。どれもこれもお前らが一生懸命作ったんだろ? そう考えると美味しさも倍増だ」

 

「……好きにしろ」

 

 ……全くクサイ事言いやがって。

 俺がぶっきらぼうに言い放つと、スラルは場の空気を変えるように手をパンパンと叩いた。

 

「それじゃあ、再開しましょ。ガルティア、足りなかったら言ってね。また作りに行くから」

 

「おお、確かに足りなくなりそうだな……今のうちに作っといた方がいいんじゃねえか?」

 

「そう? じゃあちょっと行ってくるわ。レオンハルト、よろしくね」

 

「ああ」

 

 スラルが上機嫌な様子で、自分の私室から出ていく。

 部屋には俺とガルティアだけが取り残された。

 すると、ガルティアは何か得心した様な表情で俺に視線を向けてくる。

 それがとても煩わしく感じ、俺は眉を顰めてガルティアを睨む。

 

「…………何だよ」

 

「いや……お前がスラルに付いていく理由が少しだけわかった気がしてな」

 

「……別にそんなもんねぇよ。怒られて頭おかしくなったか?」

 

「あー……そういや本気で怒られるなんて何年振りだろうな」

 

「ふん……」

 

 俺は可笑しそうに食べ物を口に運びながら笑うガルティアを見ながら、自分が作った料理を食す。

 俺達はしばらく、無言で料理を食べ続けたが、直ぐに沈黙に耐えきれなくなって何時も通り適当な話をした。そして、途中で戻ってきたスラルが混ざると、また仲良くなってると怒るスラルを見て、俺達は苦笑するのだった。

 

 




ガルティアの話書くと、大体良い話風になりますね
後書き、ということで連絡事項。
アンケート結果、そしてそれに関係するアンケートを活動報告に載せました。
答えてもいいよーって方は意見を書いてくれると私は喜びます。
それではまた
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