※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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戦勝報告

 ――NC706年

 

 魔物界東部。

 曇天の空の下、禍々しさを醸し出している巨大な城がある。

 そこは魔軍の本拠地。大陸の支配者であり、魔物達の頂点に君臨する魔王の居城――魔王城。

 魔人レオンハルトは自らの職務に則り、戦いが終わって間もない中、軍を人類圏に残したまま単身、魔王城を訪れた。

 それは任務についての報告のためだ。簡易的な報告は先んじて手紙で送っておいたが、詳細は自らの口で説明するのが齟齬を起こすこともない確実な方法だ。

 階段を上がって目的の部屋へ向かっていると、道中で楽器の音色を耳にする。部屋にいることは間違いないらしい、と真っ直ぐ部屋に向かうと、レオンハルトはその扉をノックして声を発した。

 

「――入るがよい」

 

「はっ、失礼します」

 

 楽器の音色が止むと同時に室内から返事が来る。入室の許可を貰ったレオンハルトは、久方振りにその部屋に足を踏み入れた。

 

「帰ってきたか」

 

「は……魔人レオンハルト。報告の為に一時帰参しました」

 

 部屋に入ると直ぐ様片膝を付いて頭を垂れる。頭上から来る声は普段と変わらない平坦なもの。

 

「うむ、では聞こう。そこに座るがいい」

 

「はっ」

 

 頭を上げて立ち上がる。気品に溢れた調度品で彩られた室内、椅子に座しながらも反対側に座るように示したその男は、約三ヶ月前に見た姿と変わりない。

 異様に白い肌を持ち、貴族のような容姿、服装をしながらもその全身から溢れ出す気配は常人では耐えきれないほどに濃い魔の結晶。

 魔王ナイチサ。その名を聞けば誰もが震え上がる恐怖の権化がそこにいた。

 彼はテーブルに置いていたワインを手に取ると久し振りに帰ってきたレオンハルトに向かってグラスを掲げる。

 

「どうだ?」

 

「いえ、職務中でありますので」

 

「フッ、卿は変わらんな。普段であればともかく、戦いの後くらいは勝利の美酒に酔ったらどうだ?」

 

「……任務を完全に達成したわけではありませんので。一杯だけなら」

 

 歓迎してやろうという厚意か、それとも何時も通りなのか。とにかくいつもの様に酒を勧めてくるナイチサの提案を了承し、グラスを受け取る。一言挟んでから注がれた赤い液体を口に含むと、一度それを置いて話を進めようと口を開いた。

 

「では報告致します。……藤原家率いる人類軍総勢200万の内、途中で南部へと離散した50万の軍勢を除いて全て撃滅しました。これにより、藤原家勢力の継戦能力は消滅したかと思われます」

 

 レオンハルトは一切を誤魔化すことなく事実だけを伝える。長年の忠勤もあってナイチサはこちらを信頼しているため、水増しや隠蔽も不可能ではないが、そんなことをしてもメリットはない上に、バレた時の代償を想像すると嘘は極力つかない方がよいのだ。

 特にそういった機微には目敏く、嘘を嫌うナイチサには自殺行為とも言える。信頼を失うだけでは済まないかもしれない。

 

「ふむ、続けよ」

 

 特に言葉を挟まれることもなく、先を促される。その通りにレオンハルトは続け、

 

「はっ。そして、藤原家参謀であった悪魔月餅を仕留めることに成功しました。――その首がこちらになります」

 

 懐から箱を取り出してナイチサに献上する。ナイチサはそれを自然に手に取ると、中身を開き――ニィ、と口端を歪めた。

 

「フ、フフフフ……! 確かに。悪魔月餅の首、確かに受け取ったぞ。まさかこれほどに醜悪な面構えだったとはな。忌々しい奴ではあるが、こうして見ると中々に趣深いではないか」

 

 ハハハ、と悪魔の首を手に機嫌良さそうに笑うナイチサ。今回の戦争で一番重要な任務であり、そもそもこの悪魔を滅するために今回の戦争を起こしたのだ。その首が手に入ってご満悦なのも頷ける。

 

「直ぐに消し飛ばしてやろうかとも思ったが、これだと暫く飾り立て――いや、晒してやるのも悪くないか。貴様はどう思う? 選ばせてやるぞ、フハハ!」

 

 その問いかけはこちらに向けたものではなく、月餅の首に話しかけたものであった。当然何も語ることはないが、それを分かりながらも、月餅を貶めてやろうと敢えて屈辱なやり方で煽り立てる。よっぽど憎々しかったのであろう。ここ百年では一番喜んでいるかもしれない。

 

「うむ、うむ……よくやったぞレオンハルトよ。余の勅命をこれほど完璧にこなしてみせるとはな。やはり卿に任せて正解であった」

 

「……過分なお言葉光栄に存じます。ですが――」

 

 と、レオンハルトはナイチサに絶賛されるが、ここからは色々とマイナスな部分を自ら口にしようと報告を続けた。少し憂鬱ではあるが、これもまた自分の役目だ。レオンハルトは一息入れ、意を決してそれらを口にする。

 

「……ザビエルとその使徒の戦死、そして第一戦での敗戦により、ザビエル軍を中心に50万近くの兵を失いました。ザビエルの敗北が原因とはいえ、この責任は――」

 

「ああ、それならよい」

 

 だが、報告と責任の所在を示す発言をしようとする前に、ナイチサはそれをあっさりと止めさせた。僅かに呆気に取られる中、レオンハルトは気を取り直して疑問を問う。

 

「ですが――」

 

「よい、レオンハルトよ。その件については聞いている。卿が言うように、ザビエルが人間――藤原石丸と言ったか。藤原家の当主に負けたそうだが、余としてはその責任は卿にはないと考えている」

 

「……左様ですか」

 

 レオンハルトは困惑する。てっきり小言やお叱りの言葉の一つや二つは浴びせられると予想していたからだ。人間を下に見ているナイチサが、魔軍が一時とはいえ敗戦したなどと聞かされては激怒しないはずがない。

 ……月餅の首で怒りが吹き飛んだか? だが……。

 しかしそれにしてもだ。ナイチサはあまりにも興味がないように見える。冷淡、とでも言うべきだろうか。どことなく冷たい雰囲気が漂う。

 だが次の発言で、レオンハルトはその怒りの矛先が何処に向いているかを改めて思い知った。

 

「そもそもザビエルが負けるから悪いのだ。人間如きに殺されるなど、魔人の面汚しでしかあるまい……全く、これでは卿に殺されていた方が良かったではないか」

 

「は……確かに、名誉という意味では……」

 

 僅かに憤ったような様子のナイチサに、レオンハルトは気持ち弱めに頷くに留める。

 やはりと言うべきか、ザビエルが人間に負けたことが気に食わないようだ。自分に殺されていた方が良かったなどと言うほどには。

 

「そもそも、最初その報を聞いた時は卿が殺したのかと思ったがな……だが、調べてみると本当に一対一で敗れたそうではないか。卿が手を下したわけではないのだろう?」

 

「……手は出されましたが、ザビエルとは戦うどころか顔も合わせておりません。使徒同士で小競り合いが起こった程度です」

 

 その結果、使徒は戦死したがザビエルには関わっていない。関わろうとしてはいたが、その前に石丸がザビエルを殺ってしまったのだ。

 

「仮に卿が殺して、その結果敗走するような愚を犯していれば失態だが……今回のそれは、ザビエルが勝手に自滅したに過ぎん。奴も、卿を誅殺せんと企んでいたようであるしな」

 

 ザビエル一人に任せていたと思うと頭が痛い、とナイチサは息を吐く。

 どうにも怒りもあるが、心底失望したという面持ちだ。ザビエルはナイチサが初めて作った魔人であり、それでいて魔人の中でも上位の実力者だったのはレオンハルトも認めるところである。ゆえにその落胆は大きいのだろう。

 

「……ザビエルのことはもうよい。魔血魂は回収しているのであろう?」

 

「はっ、それなら……こちらに」

 

 懐のポケットに入れていたザビエルの魔血魂を取り出してナイチサに手渡す。するとナイチサは一切悩むことなく、

 

「――――」

 

 ――ザビエルの魔血魂を、初期化してしまった。

 

「……これで、ザビエルについての話は終わりだ。報告を続けよ」

 

「…………は、畏まりました」

 

 レオンハルトはそれを見て、ほんの少しだけ瞳を閉じていなくなった同僚の事を思ったが、直ぐに気持ちを切り替えて続けた。

 

「後は、敵の総大将――藤原石丸の行方を捜索中です」

 

 なのでその首は今暫くお待ちを。――そう言ったつもりなのだが、ナイチサは更に続けて驚くべき言葉を発した。

 

「うむ、まあ()()()()()()()()()()()()()()。後は卿に任せる」

 

「……は……?」

 

 思いがけない言葉に間の抜けた声を上げてしまう。それに目敏くナイチサは反応した。

 

「? どうかしたか?」

 

「あ……ああ、いえ……その……」

 

 レオンハルトは珍しく狼狽えたように言葉を紡げない。

 ……見つからなくてもいい……のか……?

 敵の総大将だぞ? とレオンハルトは心の中で自分にも問う。何としても見つけ出して殺すことが合理的かつ正しいはずだ。

 ましてやあれほどの実力の持ち主である。レオンハルト程ではないにしろ、魔人を倒した実力と実績の持ち主。生きていては禍根を残すことになりかねない。

 それこそゲリラのように戦われれば厄介であるし、再び奴を旗印に人が集う可能性もある。歳を考えても戦えるのは後数十年もない。魔人にしてみれば極僅かな期間だが、それでも危険ではあるのだと。

 

「どうした? 何か進言があるなら余と卿の仲だ。好きに申せ。それとも……褒美でも強請るつもりか?」

 

「……褒美……いえ……」

 

「確かにこれほどの大仕事を僅か三ヶ月に満たない期間で成したのだ。それ相応の褒美を与えねば王として示しが付かぬのも道理だな。……よし、好きなものを申せ。限度はあるがそれを好きな褒美を好きなだけ下賜してやろうではないか」

 

「……そういうわけではないのですが」

 

「遠慮せずとも良いのだぞ。それとも言い辛いものか? ふむ……ん、もしやまた胸の大きな美女が欲しいのか? 生憎と城に捕らえてある人間も少ないからな……すまないが、それなら人間界から好きなだけ摘んでくるとよい。文句を言うものなどおらぬ」

 

 果物かよ。好きなだけ摘んでこいとか……さすがに世の男性から怨嗟の声が届きそうだ。

 というか機嫌が良いせいか、いつも以上に厚意が凄い。そうではない、と言いたいが褒美は褒美で受け取らないと不服そうになるので最低限は受け取らなければならない。

そもそも問いたいのはそこではなく、

 

「……褒美については考えておきます。それより、先程仰っておりましたが――」

 

「何だ?」

 

 はい、とレオンハルトは恐る恐ると問いかけた。

 

「……藤原石丸は……放置しておいてもよいと?」

 

 それはレオンハルトにとっては重要な問いであったが、しかし、

 

「……? ああ、卿の好きにするがいい」

 

 あっさりとナイチサは石丸については好きにしろと言うだけ。まるで興味のない様子だ。そのことにやはり何とも言えない感情は沸き立ち、レオンハルトは再度確認するように、

 

「しかし……あれを放置しておくのは……」

 

 呟く。だがそこでナイチサは眉をひそめつつも、

 

「む……? ……ふむ、そうか。なるほど」

 

「ナイチサ様……?」

 

 何かを得心したように頷くナイチサを怪訝に思う。

 だがそんなこちらの反応が可笑しいとでも言うように、ナイチサは苦笑混じりに視線を向けた。

 

「レオンハルトよ。卿は、余がどうしても石丸とやらを殺さねば気が済まないとでも思い込んでいたようだな?」

 

「――っ」

 

 それもないとは言えない。バツが悪いように感じて目を伏せる。

 だが追求の手が止まることはない。

 

「余は総大将の首くらいであれば無くても構わんよ。重要なのはこの悪魔の首と、生意気な人間共にある程度恐怖と絶望を与えることが出来ればそれで良い。家臣が決死の覚悟で戦っている最中に姿も見せず君主としての役目を放棄するような落伍者など、血眼になって探すほどではない」

 

「…………」

 

 その言葉に何も言えなくなる。こちらの様子を見てナイチサは一つ一つ丁寧にその考えを説く。

 

「ましてや卿はたった3ヶ月で150万以上の人間を殺し、この世に魔の何たるかを示したのだ。成果としては充分だ」

 

 普段も国を滅ぼし尽くすこともない上、君主が逃走して見失ったとしても何も言うことはないはずだと。レオンハルトは分かっているはずだとナイチサは言う。

 

「にも関わらず放置を良しとすることに驚き、殺すことに拘ろうとするのは……他ならぬ卿が拘っておるのだろう? その強者を、己の手で殺すことに」

 

「…………それは」

 

「別に責めているわけではない。その在り方を称えはしても貶すようなことはない」

 

「…………」

 

 自分の性分を言い当てられ言葉を失くす。さすがはナイチサと言うべきか。

 

「それほどに唆るのか? その男は」

 

「…………そう、ですね。人間としては今まで見てきた中でも最強と言ってよいでしょう」

 

 答えると、ナイチサは笑みを深めた。しかし意地悪いというよりは、愉快そうな笑みで、

 

「なるほど。卿がそこまで言うのだ。かなりの傑物なのだろうな。ふむ……面白い」

 

 ではこうしよう、とナイチサはこちらに向かって告げた。

 

「その藤原石丸の処遇は卿に委ねるとしよう。殺すも生かすも好きにするといい。それを、褒美の一部とする」

 

「……はっ、そうして頂けるのであれば願ってもないことでありますが……」

 

 迷いはあるが、どちらでも良いと言うなら歓迎すべきことのはずだ。困惑しながらも受け取る意志を見せる。

 だが、

 

「余としても些か興味が出てきた。あくまで、卿が推薦するのであればだが――」

 

 と、ナイチサは一拍置いて、

 

「――その男を魔人にしてみるのも面白そうだ」

 

「なっ……!?」

 

 今度こそ絶句する。その反応を見たかったのだと言わんばかりにナイチサは笑い、

 

「ハハハ、勿論その判断は卿に任せる。褒美であるからな。余としては人間……それも余の魔人を殺した相手ではあるが……他ならぬ卿は推薦するのであれば新しい魔人とするのも吝かではない。ザビエルが抜けた穴も埋めねばならないだろう?」

 

 なんなら卿の使徒にするのでも良いぞ? とナイチサは言う。

 どこまで本気かは分からないが、ナイチサが褒美だと口にしたのだ。よっぽどのことでなければ反故にすることはあり得ない。もし連れてきたら本当に魔人にしてしまうことだろう。

 ……藤原石丸を魔人に……何を馬鹿な……。

 しかし、その提案を受けて自分の中に迷いが生じる。殺すべきだと考えていたところでのそれだ。最初は殺したいと、やり合いたいと思っていたが、急に自由を与えられるとどうすれば良いか一瞬分からなくなる。

だが、答えは決まりきっているはずなのだ。

 

「……考えておきます」

 

「そうするといい。どの道、しばらくは兵を動かして捜索するのであろう?」

 

「その予定ですね。攻め落とした人間の国の管理や、戦後の処理もあるのでそれだけとは参りませんが」

 

 特に戦後の処理というのは、ある意味で一番厄介かつ重要な仕事なのだ。たった三ヶ月。されど三ヶ月。その期間、戦場に出かかりで、溜まっている仕事は多くある。城に戻ったり、占拠した都市も回らなければならない。優先度は低いが、ペールとの約束もある。時間の拘束がエグいため、どこかで時間を見つけなければならないが。

 ……いざとなったら分身するか。

 ただそっちは本体でやらないと駄々をこねられるのが問題ではある。とはいえ、

 

「そうか。ならばしばらくは城に来れないのであろう? 今日は、城に泊まると良い。勝利の祝いにとっておきの美酒をくれてやろう」

 

「……お言葉に甘えてさせて頂きます」

 

 ナイチサが“そうしろ”と言うので頷いておく。

 何だか以前にも増して気に入られているような気がしないでもないが……仕事はしやすいので助かるな、とレオンハルトはグラスの中の液体を飲み干した。

 

 

 

 

 

「――……と、彼は二百万の軍勢を打ち破り……ん~……ラストがいまいちですねぇ」

 

「……何やってんの?」

 

 人類圏にある都市。魔軍が占領したその街の屋敷の一室で、ハンティは後輩が机に向かって羽根ペン片手にうんうん唸ってるのを見て声を掛けた。

 すると後輩――ペールはこちらに振り返り、

 

「あ、始祖様。お疲れ様で~す。私は今絶賛執筆中なのですよーう」

 

「……もしかして例のアレ?」

 

 ハンティは部屋の壁に背中を預けると、半目で視線を向けてて質問を重ねる。ペールは頷き、

 

「そうですよ。今回の事を題材に新刊書いてるんですけど……ちょっとラストがぱっとしなくて……やっぱり、大戦争の割りには立ち塞がる強敵みたいなのが少ないのが駄目ですかねー。巻末のボスがいないのはちょっと……」

 

「……やっぱり、あの馬鹿の話か」

 

 ハンティは自分の予想があっていたことに喜ぶこともなく息を吐く。やっぱ剣王伝を書いてたのか、と。正直、微妙な気持ちにさせられるからやめてほしいのだが、ペールが好きでやっていることをやめろとも言えない。迷惑が掛かっているわけでもないし――

 

「あっ、そういえば今回は始祖様のモデルのキャラが戦いの楽しさに気づいて、バーサクモード入って変態的言動をしながら血みどろの大バトルを繰り広げるんですよ! 割りとその話には自信があって――」

 

「――何してくれてるの!?」

 

 全速力で書きかけのそれを奪う。ペールも咄嗟に抵抗したが、瞬間移動するこちらを捉えきれていない。あっさりと本を奪うことに成功する。

 

「あっ、ちょっ! 瞬間移動はずるいですよう!?」

 

「うるさい。んっと……ここだね」

 

 そして躊躇いなくそのページだけを破り捨てると、ペールから“あぁっ!?”という悲鳴が上がった。

 書きかけのそれを破かれたペールは涙目になり、膝を折って地面に手をついて項垂れる。

 

「あぁ……私のレオンハルト様との性のリビドーを抑え込みながらも徹夜して書いた渾身の一作が……」

 

「……あたしのこと書くのやめてっていつも言ってるでしょ。懲りないんだから……ったく」

 

 毎度ながら微妙に申し訳ない気持ちになるからやめてほしい。まるでこっちが悪者みたいだ。

 どうにかしてちょっと励ましてやりたいが、どうしようか。仕事でも代わってあげて――

 

「うぅ……こうなったら始祖様がエッロエロでグッチョグチョになる本書いて発散してやりますよう……始祖様なんて本の世界の中でチ○ポ狂いになってしまえばいいんです。“んほおおおおおアソコから火炎流石弾出ちゃうのおおおおおお。快感が瞬間移動しちゃうううううううう”みたいな感じで。く、くふっ……ちょっと面白いですね。これをファンクラブの方々に渡して――ハッ!?」

 

 ふざけた事を言っているペールの首根っこを、ハンティは後ろから笑顔で捕まえた。

 

「……ふーん、そっかそっかぁ……」

 

「あ、あの……始祖様ー? 離してくれませんかー? というか目が笑ってないんですけど……」

 

 ペールがハンティの顔色を伺うが、その眼は据わっていた。そのまま彼女を引きずり、

 

「……そんなに魔法喰らいたかったんだね。いやー、ちょうどあたしも全力で暴れたいところだったんだけど……付き合ってくれるよね?」

 

 圧力を感じる笑みをペールに向ける。

 その瞳は赤く輝き、ギラギラとしている。翼や尻尾も生え、真の姿になったハンティにペールは青くなった顔で、

 

「の、ノー……」

 

「ん? “はい”って言った? よーし、それなら人気のない場所行こっか!」

 

「嫌ああああああああっ!? 言ってない! 言ってないですよーーー!?」

 

 そのままペールはハンティに掴まれ、窓から飛んでいってしまった。しばらくして轟音と一緒に悲鳴と、笑い声が響いたが、それを偶然聞いた魔物兵はその正体に気づきつつも、敢えてそれに深く突っ込むことはなかった。巻き込まれたくないし。

 しかし近い未来、ハンティ様ファンクラブの会合にて、謎の作家“P”によって様々な情報がもたらされることになろうとは、この時のハンティには知る由もなかった。

 

 そして二人がいなくなり、無人となった部屋の床には、途中まで書きかけの“剣王伝”の新刊が転がっていた。




ナイチサ「ようやく余の出番が来たか……正直、余の時代だというのに30話以上も出ていなかったからな。少し焦ったぞ……」

スラル「そんなこと言ったら私とかヒロインなのにもう80話近く出てないんだけど」

レオンハルト「……それはまたちょっと違うような……」

カミーラ「そろそろ私の出番か……?」

キャロル「まだらしいですわカミーラ様! なのでトランプでもして遊びましょう! 七星並べですわ!」

七星「勝手に私の名前付けるやめてくれませんかね……」

ザビエル「……さり気なく初期化されてしまった」

G「君も来たか……こちら側へ……」

ザビエル「!? や、やめろ! 我を引きずり込むな!」

G「負け組同士……仲良くやろう」

ライゼン「む、そこにいるのはギリウムか! 貴様ァ! よくもあの時は決闘をすっぽかしおって! ぶっ殺してくれる!」

ギリウム「ぎゃああああ!?」

ザビエル「我も巻き添えに!? ぐおおおおぉぉ!」

ますぞえ「……?」

ハニ子「呼んだか? とますぞえ様が」

ザビエル「呼んでおらんわ!?」

ラウネア「…………!(まきぞえと聞き間違えたんだね!)」

シャロン「カオスですね」
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