というわけで本編どうぞ
――NC8XX年
大陸は未だ、動乱の時代にあった。
かつては人類を統一した藤原家は滅亡し、JAPANではその後釜である帝の座を求めて各地の大名が兵を率いて争いあう群雄割拠の戦国時代に突入した。
大陸では大戦で魔軍の残した爪痕からの復興に力を入れる国が多数あったが、魔軍の定期的な侵攻は収まることなく、人類は魔物達に苦しめられている。しかしそれでも、人類国家の覇権争いは留まることを知らない。
幸いにも先の大戦を少ない被害で切り抜けた大陸南部の諸国は再び争いを始めた。
大陸東部では魔軍の侵攻により多くの国家が崩壊、幾つもの土地がいずれもの国家にも属さない空白地帯となっていたが、その土地の有力者達が寄り集まり、新興国家――オピロス国が誕生した。
だが、そのどれもが覇権国家には程遠い。
今現在、どの国が覇権国家かと聞かれれば、多くの人々はこう答えるだろう。
大陸中央部。森林地帯を中心に人類圏の北側全域を支配する亜人種の国家――“カラー王国”だろうと。
大陸の中心。世界の頂点。標高1万メートル以上の大地。
人類未踏、世界一の標高を誇る巨大な山――翔竜山。
多くの冒険者、登山家が挑戦し、その困難な道程に断念するその山は魔物以上に危険な種族――ドラゴンの住処である。
ドラゴン種は自分達の住処に入り込んできた異物に牙を剥く。この山に挑戦した人間が死亡する原因の一つであった。
しかしその凶暴なドラゴン達も、ある存在の前では牙を引っ込め逃げるように距離を取り、戦いを避ける。
あらゆる生き物の中で最も偉大で完璧な種族であるドラゴンは、強者の気配に敏感であり、戦いを好む種族であるが――その知能、本能も優秀だ。
既に彼らは知っている。
自分達が挑んでも一瞬で殺される。それで怖気付くような種族でもないが、アレ相手に戦う必要はない。
ゆえにドラゴン達は巣穴に閉じこもりながら、天空を見つめていた。時折、何かの衝撃で雲が割れるのを眺めながら、彼らはそれが過ぎ去るのをじっと待ち続けるのだ。
雲の上にある翔竜山山頂――そこは魔人レオンハルトの修行場の一つだった。
「……!」
彼の剣が衝撃波を発生させ、雲を断ち割る。かれこれ5時間以上、レオンハルトはこの場所で剣を振っていた。
今日は彼にとっての休日。普段であれば近場の山で済ませるが、休日は遠出して修行するのがレオンハルトにとってお決まりの行動だった。
というのも訳がある。彼は満足に剣を振れる修行場を求めた結果、ここにいるのだ。
世界最強の剣士であるレオンハルトの剣技。それを本気で振るえば、一種の災害となり得る。地は裂け、稲光が発生し、嵐が吹き荒れる。そんな剣技を近場や、ましてや城内、多くの人がいる場所で振るうわけにはいかないのである。
無論、手加減することも出来るし、周囲に影響が出ないように修行することも不可能というわけではないが、それでもたまには本気で剣を振らなければ修行にならないとレオンハルトは感じていた。
ゆえにレオンハルトは修行場を探し求めた。大陸北側の極寒の地や、海中なども修行場の一つであるのだが、レオンハルトが特に好む修行場が、この翔竜山の頂上だ。
他の場所も同様ではあるが、この場所なら生物どころか、障害物も何もない。精々、雲の形が変化する程度である。山に住むドラゴン達は、こちらを避けて引きこもってくれているようなので、叩き落とす心配もない。
空気も薄く、他の場所程ではないが生きるのに困難な環境に身を置くことで生物としての本能を意識させるこの場所は修行にはもってこいの環境であった。自然の厳しさと雄大さを感じられるのも個人的には評価が高い。
そして何より、ここは雑念が入りにくい。思い出深い場所ではあるが、それもマイナスには繋がらないものだ。
ゆえに世界最強の剣士は、世界の頂きで剣を振り続ける。
この場所に人が訪れたことは一度もない。もしも誰かがこの場所を訪れ、自分がこの場に居合わせれば、“試し”を行うのも悪くないが、と。そういうことも考えもする。
そうして剣を振り続けていたが、レオンハルトは不意に剣を止めて、眼下に見える大地に視線を移した。
……下が騒がしいな。
久し振りにこの場所にやってきたが、どうにも最近はカラー勢力の動きが活発らしく、翔竜山麓の森が騒がしい。しばらくは別の場所を使ったほうがいいのかもしれない。
「……そろそろ戻るか」
ならば、とレオンハルトは早速山を降りて魔物界に帰ることにした。魔物界に面した北側の森から帰れば騒ぎも何もない。そういう意味でも、この場所は重宝する。
だが人の出入りが活発になるなら、幾ら気配を消していてもバレる可能性がある。バレても問題はないのだが、森に住む者達を一々不安にさせることもない。
ゆえにレオンハルトは魔剣を空間に収め、崖となった山の斜面から飛び降りていく。降りる時は落下するのが早い。以前ならともかく、無敵結界がある上、落下の衝撃くらいどうとでもなるのだ。緩和する手段だってある。それを用い、レオンハルトは山の階層を一つずつ飛び降りていった。帰ったら帰ったでやることもある。そっちの相手もしないとな、などと思っていると、
「――!」
突然、ドラゴンの咆哮が響き渡った。
山に木霊して聞こえるその声は、レオンハルトの耳にも届く。
……誰かいるのか?
ドラゴンが一匹で今のような咆哮を上げることはない。そこには何か、仲間内での喧嘩であるとか、何かしらの要因があるはずだ。
そしておそらくは――人だろう。
無謀な冒険者や登山家、という線が高い。ドラゴン同士の喧嘩であるなら二匹目の声も聞こえてこないのはおかしいからだ。
……どうしたものか。
普段であれば無視するのだが、偶然にも声は真下から聞こえた。このまま降りれば遭遇するだろう。避けていくことも出来るし、そのまま通り過ぎてもよいのだが、
……しょうがない。助けてやるか。
レオンハルトはそうすることを決めて徐ろに、眼下へ飛び降りる。仕事の時、魔人として行動する時であればともかく、プライベートでは一々見捨てる必要もない。助けることの出来る人間を眼の前で無視するほど薄情になったつもりはない。
もっとも、この行動が厄介事を引き込んだり、城に人が増える原因になりもするのだが……今回はおそらく、何の事情もないただの登山者。適当に麓まで連れていけば勝手に帰るだろう。仮にも中腹まで登ってきたのだ。それなりの実力はあるはず。
後は、助けるといっても斬り捨てるのはドラゴンにも悪いし、適当に威圧して引き下がってもらおう。もしくは、そのまま攫って逃走。人間だろうがドラゴンだろうが、無駄な血を流す気はレオンハルトにはなかった。
そう思い、落下中に下の階層が見えてきたところで、やはりと言うべきか赤いドラゴンと、人影が見えた。しかもそれは、
「あ、う……足、が……」
ドラゴンに攻撃されたのか、足を抑えて地面にへたり込む女がいる。水色の長い髪に、青い瞳。長い耳と、額に赤いクリスタルを持つ美しい種族の名は、
……カラーか。
襲われていたのはカラーだった。山の麓にある森に住む種族。レオンハルトとも何かと縁のある亜人種だ。
カラーは時折、山に薬草を取りに来るらしいが、それにしてはこんな高い場所まで登ってきている。
登頂目的だろうか、とも思うも、どうもそういう風には見えない。何か事情のありそうな、幸が薄そうな気配を身に纏っている――などと落下中に観察してみたが、総評すると長年の勘から、厄介事の匂いがするのだ。
しかし、だからといってもう落下直前で助けるのをやめて横切るのも違うだろう。命の危機なのだ。
一応は助けてやろうと決心し、息を入れると、レオンハルトはその少女と、ドラゴンの間に降り立った。
翔竜山の上層には多くのドラゴンが生息し、山に侵入してくる者を襲うことがある。比較的標高が低い場所であればその限りではないが、山の中腹を越えてくるとドラゴンとの遭遇率は大幅に上昇する。
そんな例に漏れず、カラーの少女はドラゴンに襲われて足を怪我すると、自身の終わりを予感した。
だが、
「――その辺にしておけ」
「え……?」
「……ッ!?」
突然、少女とドラゴンの間に音もなく降り立った者がいた。
不意の乱入者。少女はその姿を見て呆然とし、ドラゴンも強者の到来に唸り声を上げる。
それは金髪灼眼の男。鋭い目を持った顔立ちの整った男だ。
そしてその存在感は、常軌を逸して高い。重さとも言える存在の圧がその場に充満する。
男は少女の方をチラリと横目で見た後、ドラゴンの方に視線を移動させ、こう言った。
「……この女はもう戦えん。俺が麓まで連れて行くから、引き下がってくれないか?」
「グ、グルル……」
「……直ぐに連れて行く。そして、背を見せたところで俺が剣を抜くこともない。安心しろ」
「……!」
怯えるような素振りを見せるドラゴンに対し、男は敵意はないとそう言うと、ドラゴンも不思議とそれを理解したかのように羽を広げ、上昇していく。逃げるようにして飛び去っていくドラゴンを眺め、男は呆然としている少女の方を向くと、
「さて……どうだ? 立てるか?」
「え、あ、その……」
少女は戸惑ったように男の顔を見上げて言葉にならない声を上げる。それを怯えていると取ったのか、それとも、別の意味で取ったのか。それは分からないが、男は屈んで少女の足の傷をざっと眺めると、
「無理そうか」
「あ、は……はい……」
ようやく肯定が帰ってきたところで、男は、そうか、と頷く。少しの間を置いて男はこう提案した。
「……しょうがない。麓の森まで連れて行くが、構わないな?」
「……それは……きゃっ!?」
しかし少女はその提案に顔を俯かせる。
やはり何か事情がありそうであったが、直ぐに連れて行くといった手前、立てない様子であったのを見て、男は少女を抱え上げる。
「う、う……」
だが麓の森に連れて行くことに躊躇われると困る。男が少女の返答を待ちながら内心で頭を悩ませていると、男に抱きかかえられて恥ずかしがっていた少女が不意に顔を上げ、男に向かって意を決したように声を掛けた。
「あ、あの!」
「ん、どうした?」
何を言うつもりだ、と男が僅かに目を細める。すると少女は、窺いながらも確信した様子で、
「……魔人、ですよね……?」
「……ああ、そうだが?」
やはり知られてるか、と男は驚かない。少女の方もやっぱり、と言った風に、
「魔人、レオンハルトさん……で、あ、合ってますか……?」
「……ああ、そうだ」
名前を言い当てられるレオンハルト。やはり有名だな、と自分の知名度に微妙な気持ちを感じていると、
「あっ、す、すいません。わたしは……く、クライア・カラーと言います……助けてくれて、ありがとうございます」
「……ああ」
名も名乗らずに色々と一方的に質問したことを詫びたのだろうか、律儀だな、という感想をクライアに抱き、レオンハルトは一先ず頷く。
だがその次に、妙な問いが来た。それは、
「その……レオンハルトさんは、強いですか……?」
――何だ、その質問は?
レオンハルトが内心でそんな呟きを思い、返答に一瞬迷う。ここで、いいえ、と答えたらどうなるだろう。自分で言うのも何だが、魔人が強くないというのは無理がある気がするとも。
ゆえに答えは決まりきっていた。レオンハルトは正直に思ったことを答える。
「……少なくとも、この山を踏破出来るくらいにはな」
「……なら」
クライアはその答えを疑うこともなく、どこか縋るような表情でレオンハルトを見ると、
「……れ、レオンハルトさん……お、お願いがあります……!」
「…………何だ?」
妙な厄介事の匂いを感じながらも、レオンハルトは先を促した。するとやはり、
「私はどうなっても構いません……その代わりに――」
カラーの少女、クライアは言う。自分はどうなっても良いから、
「……レガリア様を……私達の女王様を、止めてくれませんか……?」
「…………」
レオンハルトは一世一代の決意の如く、こちらにお願いをしてきたクライアを見て、内心で染み染みと思う。
色々と言いたいことはあるが、
……前にも、こんなことがあったな……。
この手のお願いや相談は珍しいことじゃないが、休暇中に、しかもカラーからのものとなると以前の事を思い出す。
しかも人類圏から集めている情報から察するに、とてつもない厄介事に巻き込まれた気がして、レオンハルトは深く息を吐くと――とりあえず、彼女から事情を聞くことにしたのだった。
深い森の奥。そこにある都市は森に住む一族の伝統的な集落だった。
歴代女王が人間や魔物からこの森を守り、徐々に発展を遂げてきた一族の名はカラー。
美しい女性だけの種族であり、自然の中で生きる長命な亜人種である。
彼女たちの発展。歴代女王が次代へと託してきたその繁栄は、この時代に最盛期を迎えていた。
「あはは! ほら早く早く! お店しまっちゃうよー!」
「ちょっと待ってよー!」
「今日も森に異常はないみたいね」
「……帰ってきた?」
「来てない。多分、死んだかな。とにかく女王様に報告しましょう」
深い森の奥。そこにある都市は、今や大陸中央部を支配する覇権国家の首都。
――カラー王国。森に暮らすカラー達の理想郷が、そこにあった。
意図的に残された美しい自然と、その間に建てられた木や石の建物。街の中を自然の水路が通り、木漏れ日がそれらを照らす。子供たちが遊び回り、警備隊に所属するカラー達は見回りを行っている。
多くのカラーが生き生きと暮らすカラー王国。その中心には、豪奢な王宮があった。
親衛隊が警備を固め、自然の中で取れた宝石などの綺羅びやかな飾り付けや調度品が並ぶその王宮の奥。謁見の間に、カラーの黄金時代を築いた張本人はいた。
「……そう。ご苦労だったわね。後で褒美を上げましょう。――下がりなさい」
「はっ!」
玉座に座るのは、長大な杖に腰には剣。そして青いクリスタルがある額の上に王冠を被った、優しげな笑みを浮かべる一人のカラー。
彼女こそが、前女王から女王の座を受け継ぎ、カラー王国を建国し、覇権国家まで押し上げた初代女王――レガリア・カラー。
歴代女王と比べても高い実力と知能、高いカリスマを持つ女傑である。
周囲の者達にも優しく、気品溢れる仕草でカラー達からも羨望の眼差しで見られる女王は、報告に来た親衛隊の部下を下がらせると、柔らかい笑みを浮かべて近くにいた側近に告げる。
「……今の子、嘘ついてないわよね?」
「……どちらとも言えないかと。上層に登ったきりで帰ってきておらず、死体の確認はしていない様子ですので、嘘と言えば嘘ですが……確認が難しいのも事実です」
側近は淀みなく女王の質問に答える。既に調べてきたかの様に答える側近の言葉に、レガリアは薄い目を僅かに開き、意味深な声を上げた。
「……ふ~ん。それならいいわ。嘘ならお仕置きしようとも思ったけど、裏切ってないなら、ちゃんと可愛い同胞よね、うふふ」
「…………」
後で褒美を上げて、というレガリアの言葉に、側近は恭しく頭を下げる。この国で女王であるレガリアに逆らう者は存在しない。
同胞であるカラーに慈愛に満ちた表情を見せるレガリアは、ふと何かに気づいた様に目を見開いた。視線を下に下げて、彼女は再び微笑を浮かべる。
「……ね~え? 何で動いてるの? 私、動いていいって言った?」
「っ、ぁ……い、言ってま、せん……」
視線の先は、レガリアの真下。四つん這いになって彼女の椅子になっている人間の男の姿だった。
手と足を鎖で繋がれた男は、材質だけは綺麗な布に身を包み、息も絶え絶えになりながら責め苦に耐え続けていた。そんな男を見て、レガリアは微笑を向ける。手元に置いてあったナイフを取り出し、
「――喋っていいとも、言ってないわよねぇ?」
「っ、あぁあああああッ!? がっ、あ……!」
ザクリ、と、ナイフを男の肩に突き刺す。
人間の男は痛みに悶絶し、床に倒れ込む中、それより早く立ち上がっていたレガリアは男を見下ろし、
「ね~ぇ? 何勝手に倒れ込んでるの? せっかく顔が良いから椅子にしてあげてるのに……くす、また戻りたいの?」
冷たい笑みに変化し、その言葉を告げると、若い男は豹変した様に悲鳴を上げた。
「っ! あ、あぁぁあ! 嫌だぁあああ……! やめ、やめてくれ……!」
だがその言葉を聞いた瞬間、レガリアの表情から笑みが消える。
「……
無表情となったレガリアだが、その言葉とともに表情が一変する。
歯を噛み締め、怒りに満ちたその表情。内側から溢れ出る感情を、レガリアは隠すことなく男にぶつけた。
「偉大なるカラー種に……その女王の私に……誰がそんな口の利き方をしろと言ったのですかねぇッ!?」
「あぐッ!」
足を振り上げ、思い切り力を込めて、男の顔面を蹴飛ばすレガリア。短い苦悶の声を上げながら吹き飛ぶ男に、レガリアは近づいて更に追い打ちを掛ける。足を上げ、
「いいですかぁ!? 何度言っても分からない知能障害の猿くぅん!? 分からないのなら分かるまで身体に教えてあげますよぉ!?」
「ぁ! う! ぎっ!」
レガリアは男を何度も踏みつけながら狂気に満ちた笑みで言う。何度も言ってる、彼女の思想を、
「貴方達人間はぁ……劣等種なんですよぉ!? 美しく、劣化しない容姿と能力! 人間を越える魔法力の高さ! 数だけは無駄にうじゃうじゃといる醜い人間が! カラーに逆らうなんて、あってはならないことなんですよぉ!?」
「っ! ぐ……た、すッ……!」
「貴方達はぁカラーの道具、奴隷なんですよぉ! 私達に使われるために生まれた種族なんです! うふふ、とっても幸せですよねぇ? 偉大な私達に使われるんですから、とても光栄ですよねぇ? 魔物の餌になるのとどっちが幸せですかぁ? ――考えるまでもないですよねぇ?」
「っ……ぁ……」
「だと言うのにいつまで経ってもご主人様の言うことを聞けないなんて……うふふ、言うことを聞けないペットには躾けをしてあげないといけませんねぇ。どうしましょうか。魔法で身体の内側からじっくり焼いてみるのはどう? 時間が経つと臭うのが欠点ですけどねぇ。それとも、蟲蔵にまた一ヶ月ほど漬け込んであげましょうかぁ? 大丈夫ですよぉ。食事はたくさん与えますしねぇ。凍らせてから肉を千切るのもいいですよねぇ? 骨付きのチキンみたいに綺麗に肉が取れて面白いですし……よし、それにしましょうかぁ。ではさっそく――」
「……レガリア様」
「ん、なぁに? あ、今の話は聞いていたわよね? 今から遊びに行きたいんだけど、構わないかしら?」
レガリアの楽しそうな問いに、側近は男を見て答える。無理だと。
「……いえ、それは難しいです」
「え、どうして? 急ぎの仕事はないでしょう?」
違う。そうではないと。何故なら、
「――その男、もう死んでいます」
「…………あ」
謁見の間の床。レガリアの踏みつけを何度も受け続けた男は、全身の骨や臓器を損傷し、死に絶えていた。カラー王国の中でも最強と謳われる高レベルのレガリアの踏みつけを、ただの人間の男が耐えられるはずもなかったのだ。
もっとも、ここで死ねたのは幸運だったかもしれない。ここで生き延びれば、それ以上の苦痛を受けるはめになっていたのだ。
レガリアは死んだ男を見て我に返ると、つまらなそうに元の玉座に戻って呟いた。
「はぁ……それ、捨てといて」
「畏まりました。――誰か」
「はっ」
側近の言葉に即座に近づいてきた親衛隊のカラー達が、数分掛からず男の亡骸を片付ける。男がこの場にいた痕跡は、綺麗に隠滅されてしまった。
「また新しいの連れてきてね。今度は簡単に壊れない体格の良い子がいいわ」
「調教師に伝えておきます」
しかし、懲りずに新しい奴隷を補充しようとするレガリア。――これがこの王国の日常だった。
カラー王国では、人間は奴隷として扱われる。異常な程の種族主義者であるレガリアの政策の一つであり、人類圏の支配を企む野望の一端でもある。
カラーに対する慈しみに溢れ、優れた政策を施す一方で、人間には何をしても許されるというのがレガリアが定めたこの国の法である。そして人間を匿ったり、優しく扱う様な同族にも厳しい罰を与えることでも有名であった。
だがレガリア・カラーが優秀なことに変わりはない。先代から地道に続けた政策や発展があったとはいえ、一代で大陸中央部を支配する王国を築き上げた手腕は伊達ではなく、彼女を崇拝し、その思想に賛同する親衛隊も入隊者が後を断たない。
元々、どちらかというと人間を見下したり、敬遠する傾向が強いカラーである。過去に人間種から攻められたこともあり、意外にもレガリアの思想は多くのカラーに受け入れられた。
中には人間への同情心からか、隠れて人間を逃したり優しくするカラーも現れたが――
例えば、深い海の底にいる怪物が持つお宝を手に入れてくれば許してやるとか、
レガリアは個人としても優秀で、逆らう者には容赦をしないのだ。カラーのために国を導く熱意や同胞に対する優しさは本物だが、それ以外には実力行使を躊躇わない。
女王になった当初、人類圏を統一した藤原家の呼びかけを頑なに拒否したのも彼女だった。彼女に言わせれば、
「ちょっと強くて運が良いだけのボス猿に、我ら偉大なカラーが従うなんてありえませんよねぇ」
とのことである。
もっとも魔軍に対する脅威など、カラーにとっては知ったことではない、という事情もあるのだが。カラーにとって魔軍は、味方ではないが敵でもないのである。それを女王であるレガリアは、
「……偉大なる先祖のために。そして、私の“野望”のためにも早く人類を支配しないとねぇ……うふふふふ」
その目的を思い、レガリアは慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
~現在の世界情勢~
・JAPAN
藤原家滅亡後、各地の大名が帝の力を求めて三種の神器を奪い合う第一次戦国時代に突入。大陸へ移住する日本人も多いが、観光に来る旅人も多い。剣の聖地が観光地に
・大陸南部
様々な国家が存在する。先の大戦で早期に撤退したおかげで被害を最小限に抑えたためか、豊かな国が多い。ムシ使いの勢力も大きくなりました
・大陸中央部
カラー王国がほぼ全域を支配。魔軍撤退時に合わせた侵攻が上手くいった。女王レガリア・カラーは人間の奴隷政策を推し進めています。粛清された者、多数
・大陸東部
魔軍の侵攻で崩壊した国家の有力者達が集まり、オピロス国が建国されました。カラー王国に次いで勢いのある国家で、有力者達で政治を取り仕切る元老院制度が大成功。しかし今は動乱の世の中であるため。領土拡大の為に帝政への移行が議論されている。今はまだ復興により力を溜めています
・魔軍
休暇から帰ってきたレオンハルト様が、まーた巨乳美少女拾ってきた。もうこれで何度目だよ(呆れ)
だいたいこんな感じ。クライア・カラーは闘神都市2とか3DS版から引っ張ってきた。検索すれば一発。
レガリア・カラーはモデル無し。というか出せるカラーがもうそんなにいない。3のキャラは悪魔界だったりで出せる余地を残したいしね……