※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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もうちょいでランス10一周年と、イブニクル2発売だけど、それで投降速度遅くなることはないから安心してください。NC期終わるまでは積みゲーと化すと思うので……た、多分な!
死滅戦争編は多分、後10話前後くらいじゃないかな……? そんなには長くならない。とりあえず、本編どうぞ


襲撃

 夜の中の光がある。

 村の到るところにある燭台は、夜であっても活動する者達のための明かりで、村を占拠している魔物兵達にとっても重要なものだ。

 特にこういった田舎などでは、幾ら月明かりがあるといってもそれなりに暗い。夜番の為には必須だ。

 だが、その中心、沢山の明かりが集まる場所では、皆が同じパターンの動作を繰り返している。

 それは手に持った瓶やグラスを傾ける動きだ。特に、中心の二人は、

 

「ハーッハッハッハッ! どうしたレオンハルト! もうダウンか!?」

 

「……喧しい。頭に響く……」

 

 上機嫌な様子でレオンハルトの背中をバンバンと叩くのは完全に出来上がっているレキシントンだ。レオンハルトの方は顔はもう赤く、泥酔状態といったところだろう、頭を押さえてふらふらとしている。

 周囲も囃し立てるように声を上げていた。鬼やアトランタといった者達が、

 

「アハハハハハ! サスガハ親父ダ!」

 

「あ、そーれ! レオンハルト様の、ちょっと良いとこ見てみたい! 一気! 一気!」

 

「うるせぇ……」

 

 馬鹿騒ぎする周囲の声にうんざりとしながらも、レオンハルトはつまみを口にしながらも酒をちびちびと飲んでいる。途中までは挑発に乗って一気飲みを何度も行っていたが、さすがに鬼のペースについていくのはしんどい模様だった。

 それを見て、レオンハルトの隣でお酒を注いでいるキャロルや、レオンハルト用の料理を運んできたペールは心配した表情を向け、

 

「レオンハルト様? そろそろ、お休みになられた方が……」

 

「そ、そうですよう! 鬼との飲み比べにここまで付いていったんですから、レオンハルト様は充分凄いです!」

 

 使徒二人の気遣いの言葉。それを聞いたレオンハルトは物凄く渋い顔を浮かべる。その心積もりは嬉しいが、ここで逃げると完全に敗者扱いされてしまいそうで、

 

「……ここは騒がしい。部屋で飲み直すぞ」

 

 と言って逃げた。

 勿論、飲み直すつもりはない。酔いを覚ますために休むつもりだ。

 だがやはりバレバレなのか、レキシントンはこちらを見て挑発的な言動を行う。

 

「おお? なんだ逃げるのか? なら儂の勝ちということでいいな」

 

 そう言って馬鹿笑いするレキシントンを尻目に、レオンハルトは強がった。

 

「勘違いするなよ……俺はこれから……そう、部屋で飲み直すんだ。決して負けたわけじゃない」

 

「ハーッハッハッハッ! 儂の勝ちだ!」

 

「……ぐっ、聞いていないだと……!?」

 

 既にレオンハルトのことなど目にもくれず、鬼達に向かって勝利宣言をするレキシントン。こうやって先に勝利だと言われてしまえば、どう言い繕っても言い訳にしかならない。実際、言い訳ではあるのだが。

 それでも胸の内に広がる敗北感は消えない。レオンハルトは歯を噛み締めて悔しがったが、ふと、力を抜いてフッと笑うと、

 

「ふ……酒に飲まれたのは俺の方と言うわけか……」

 

「あっ、レオンハルト様のスイッチが入りましたわ!」

 

「あー……よくわかんないこと言い始めましたし、そろそろ部屋に撤収しないと……またなんか痛い感じの事言い始めて後から後悔しちゃいますよう……」

 

 泥酔すると大分キザというか、ちょっとよく分からないことを口走り始めるのがレオンハルトの特徴だ。普段は自分の飲める量を越えて飲むことはないため、こうはならないのだが、それでも一年に一回くらいは新年会やパーティなんかでこういう状態になる時がある。

 ただ、実はよくわかんないことを言っていても、それなりに格好良くは見えるというか、様にはなるので印象は悪くない。キャロルやペールも、これはこれで良いかな、と思っているし、ケッセルリンクなどはこの状態のレオンハルトと接して大分参っていた。波長が合うのだろう。ストレートに褒めたり口説くこともあるし。

 しかし、レオンハルトは酒を飲んで記憶を無くすようなタイプではないので、いつも後から後悔している。レオンハルト軍の幹部だけで開かれるパーティでこうなった際には、新しい部隊名の下知を頼まれ、かのブラックティーガーやエアフォースワンを名付けたが、レオンハルトは何故か後から後悔していたし、今も彼らを見ると微妙そうな顔をする。もっとも、名付けられた方は気に入っているようで、より一層の忠誠を誓っているから、結果的にはプラスだった。

 そんな泥酔レオンハルトは鬼達の輪から外れると、寝所にしてある村で1番大きな屋敷に向かう。ニヒルな笑みを浮かべながら、

 

「俺は負けたわけじゃない……そう、これは俺がレヴォリューションするための第一歩だ……」

 

「? どういう意味ですの?」

 

「革命するってことは今は負けているんじゃ……」

 

 そんなツッコミを小声で行う二人。そのまま屋敷へと向かうが、途中、ハンティがキャロルとペールに対して声を掛ける。レオンハルトを横目で見ながら、

 

「……はぁ、とりあえず、あたしは見回りに行ってくるから」

 

「了解ですの!」

 

「私達はレオンハルト様の介抱をしておきますね」

 

「ん、了解」

 

 三人はそれぞれ役割分断を行い、使徒としての仕事を行う。レオンハルトの指示が無くとも、予めどういう動きを行うかは頭に入っているため、混乱することはない。

 それに今は夜中。魔軍も、基本的には夜には動かない。夜番を置いて休憩中である。魔人や使徒は睡眠を取らずとも良いが、さりとて特別やることがあるわけではないので寝ることも多い。精々、ちょっとした見回りくらいだ。だからハンティはそれを請け負い、瞬間移動でその場から姿を消す。

 後に残されたキャロルとペールは、少し前を歩くレオンハルトに近づく。介抱するように傍に控えたが、そこでペールは不敵な笑みを一瞬浮かべ、

 

「……レオンハルト様~? 部屋に戻ったら……良いこと、しませんか?」

 

 猫撫で声でレオンハルトに夜のお誘いを行う。普段なら確実に断るはずのものだ。

 しかし今は泥酔状態。レオンハルトはそう告げて身体を押し付けてきたペールに顔を向けると、

 

「……そんなに、俺に抱かれたいのか?」

 

 と、問うてきた。ペールは目をキラリと輝かせる。掛かった、と。

 

「はい! 抱かれたいです! キャロル先輩も、ですよね?」

 

「あっ……そ、その……わたくしは……」

 

 ペールの言葉を邪魔せずに見守っていたキャロルは、そこで問いかけられたことで顔を赤くし、チラチラとレオンハルトを見上げる。キャロルも、泥酔状態のレオンハルトは普段と比べて積極的であるため、半ば期待していたのだ。

 故に止めずにいたのだが、それはそれで利用しているようで悪い気もしてくる。なので戸惑いの表情を見せたが、やはりレオンハルトは、二人の肩を抱き、

 

「……いいだろう。今日は俺が、お前達に最高の夢を見せてやる。覚悟しろ」

 

「あっ……」

 

「くはっ! レオンハルト様のレアな囁きボイス……や、ヤバい破壊力ですよう、これは……」

 

「フッ、今宵の俺の剣は、血に飢えている……お前達を貫けとな……」

 

「痛い! 痛い上に下ネタ! ――だけどそこがいいです!」

 

 キャロルが顔を赤らめ、ペールが興奮して技を喰らったかのように鼻を押さえる。二人共、完全にスイッチが入り、太腿を擦り合わせるようにモジモジとさせた。

 レオンハルトはそれを分かっているのか、分かってないのか、ペールの大きい胸やキャロルの形の良い尻を撫で回しながらキザな言葉を呟く。後から自分の言動を思い出して後悔することは確定しながら、自分の女である二人の使徒を連れて、屋敷へと入っていった。

 

 ――そして直ぐに、屋敷の中から女性二人の嬌声が響き始め、

 

「これは……」

 

「うっ……少しだけ離れるか……」

 

 その淫靡な雰囲気に、屋敷を警護している夜番の魔物兵達はゴクリと喉を鳴らし、気を使って多少距離を取ることにした。

 

 

 

 魔軍が占拠する村の外周部では、夜番の魔物兵達が欠伸を噛み殺しながら見張りを行っていた。

 

「あーあ……暇だな……」

 

「そう言うなよ。気が滅入るだろ」

 

「俺も酒飲みてぇなぁ……」

 

「だから気が滅入るから言うなって。明日には解放されるし、俺達も楽しめるだろ」

 

「そうだけどなぁ……」

 

 と、退屈そうに魔物兵が毒にも薬にもならぬ雑談を行う。

 毎日の様に戦争を行っている魔物兵にしてみれば、このような夜番の仕事は疲れるだけでやりたくない仕事であった。

 戦いに出れば人間を食い物に、楽しめる。酒も飲めるし、女もヤれる。血気盛んで、そういった目的を動機に魔軍に参加した魔物兵にとって、この現状はあまり好ましくなかった。

 さりとて、不満は漏らしても逆らう勇気はない。もう一方の魔物兵が、

 

「お前……今この村にいる魔人様、知ってるだろ。レッドアイ様、レキシントン様、そんでレオンハルト様。誰か一人でも恐ろしいってのに、仕事サボったりしたのがバレたら……」

 

「……おっかねぇ面子だよな……」

 

 背筋が僅かに震える。そうそうたる面子だ。

 おかげで戦いはかなり楽に終わったが、怖い上司が沢山いるとなると魔物兵は羽を伸ばせない。彼らの気に障らないように極めて努めて真面目に仕事をするのみだ。

 だが、暇には違いない。なので仕事を真面目にこなしはしつつも雑談程度なら、と隣の魔物兵と会話を行う。

 そんな時だ。不意に起きた変化があった。

 

「……? おい、今何か――ぐっ!」

 

「あ? どうし――だっ!?」

 

 何か影が見えたと思った直後、魔物兵は何か上から飛び込んできた影に斬り伏せられた。

 

「……さて、始めましょうか」

 

 一言呟き、その襲撃者は事を起こすことにした。

 敢えて騒ぎを大きくし、魔物達を引きつけるために、

 

「――!」

 

 懐から何かを取り出し、それを建物に向かって遠くから投げる。

 それは仲間が魔軍の物資から取ってきたという爆発物、ぷちハニー。それを近くの、数十メートル先の建物に投げ、それが外壁に当たった瞬間、

 

「――っ」

 

 夜の村に、爆発音が響き渡った。

 

 

 

「! 何だ!?」

 

 突然の爆発音。そして建物が吹き飛ぶのを見た魔物将軍は、直ぐ様状況の把握に取り掛かろうと部下を呼び付ける。

 気づいた者はかなり多く、見れば就寝していた魔物兵達も何事かと覚醒して天幕から出て来ている。

 そして魔物将軍が部下を呼びつけて数秒後、魔物隊長と、何名かの魔物兵がやって来た。焦った様子で、

 

「人間の襲撃者です!」

 

「何だと!? 見張りは何をしていた!」

 

 拠点を襲われるまで気づかないなんて間抜けもいいところだ、と魔物将軍は憤る。

 しかし怒っていてもしょうがない。今は対処が先だ、と聞くべきことを魔物隊長に問う。

 

「数は!?」

 

「い、今の所……1人のようです……!」

 

「!? 1人だと……人間の軍隊ではないのか!?」

 

 てっきりこの地を治めていた人間の軍の残党が襲ってきたのかと思ったがそうではないらしい。

 しかしその代りに聞いた報告は、逆に深刻なものであった。魔物隊長が顔を蒼白にさせ、

 

「そ、それが……その人間、物凄く強くて……今も村で暴れています……!」

 

「! ちっ……人間の実力者か……!」

 

 魔物兵を1人で何体、何十体も屠る人間。時折、そういった実力者は戦場で見受けられる。あれはあれで厄介なのだ、と魔物将軍は自身の経験から基づく警戒を行い、部下に指示を下す。

 

「無理に仕留めようとするな。囲んで徐々に体力を奪え。ああいう人間は無理に攻めれば無駄に被害が拡大する。追い込んで袋の鼠にしてしまえばこっちのものだ」

 

 散発的な戦闘を少数で、見晴らしの悪い場所で行われるのは、大軍にとって辛いものがあるが、一度囲んでしまえば怖いものはない。故に落ち着いて対処してしまえばいいのだ。面と向かって兵達の前では言えないが、確かに強い人間というのは脅威だが、1人で起こせる被害など、たかが知れている。たった1人に何十、何百とやられるのは確かに癪だが、その程度では揺るがない。1人で起こされる被害の大きさに焦って、胡乱な指示を下せば、被害は更に拡大するのだ。

 ゆえにこちらも、持久戦の構えを見せる。獣を狩るようなものだ。徐々に追い立てて、捕まえてしまう。その後でその人間には地獄を見せてやるのだ。よくもやってくれたな、と。

 だから魔物将軍は指示を出そうとし――しかし、そこで来た新たな影に遮られた。

 

「――あぁん……? 何だ、人間が来とるのか」

 

「! れ、レキシントン様。お早い起床で……」

 

 そこにいたのは巨体を持つ黒の鬼、魔人レキシントンだ。

 酒の臭いを漂わせながらふらふらと肩を鳴らしながらやってきたレキシントンは、既に報告を聞いたのか襲撃が起こったであろう方向を見て口元をニヤつかせる。

 傍らのレキシントンの使徒、ジュノーとアトランタは主の横に控えながらも同じ様に襲撃が起きた方向、燃えた建物などを見て、

 

「大惨事ですね、どうします? レキシントン様」

 

「しかも1人でだって……度胸あるなぁ……」

 

「おうおう。随分と威勢のいい奴がいるもんだのう……ハハハ、ちょうどいい」

 

 と、レキシントンはそう言って巨大な金棒を手にその方向に向かう。使徒達も一緒だ。それを見て、薄々察しながらも、魔物将軍は問うた。

 

「あの、レキシントン様? 一体、どうなされるおつもりで……?」

 

「あぁ? そんなもん決まっとるだろう」

 

 何を言っとるんだ、という表情で、レキシントンはその答えを告げた。

 

「――ちょっくら暴れてくる」

 

 

 

 

 村の中を行き交い、進む先にいる最小限の魔物だけを斬り捨て、暴れ回るのは勇者クエタプノだ。

 彼はぷちハニーの爆発で集まってきた魔物兵達に、敢えて一度姿を晒すと、そこから逃げてこちらを追いかけさせるようにして暴れ始めた。

 身のこなしは軽く、村中を――ある一点だけを除いて――駆け回る。あくまでも、注意を逸らすのが目的だからだ。そして、これだけの数を全て正面から相手できるとは思っていない。出来る限り逃げ回りながら、ゲリラ的に戦うのが最善だ。

 ……30分から1時間程度も暴れまわればいいでしょうか。それだけあれば、逃げ出す時間も稼げます。

 村の人が閉じ込められている倉庫から仲間達が逃げ出すまで、戦えばいい。出来ればその間にもう一つの目的も果たしたいが、そう上手くはいくだろうか、と思い新たに現れた魔物兵を斬り捨てた時、

 

「――ハーッハッハッハッ! 活きの良い小僧! 儂の相手をせい!」

 

「! 魔人ですか……!」

 

 遂に現れたのは、村の中で見られた赤や青の鬼とは違う大柄の黒い鬼。傍らに浅黒い肌をした全裸の男女を連れたのは、おそらく魔人だろう。

 その圧倒的存在感、身体から溢れ出る威容から力が感じ取れる。間違いなく人外のそれだ。見れば、周囲の魔物兵達も魔人が現れたことで距離を取り始めていた。魔人の隣にいる――おそらく使徒達が、

 

「というわけだから、兵は下がってたほうがいいよ。これからレキシントンが暴れるし」

 

「巻き込まれないようにアンタ達は下がりなさいな」

 

 危険を伝えていた。魔人の戦闘は周囲への被害も甚大だと聞いたことがある。

 故にまず間違いない、と思っていると、また新たな影が来た。

 

「――クケケケケ! ストロングなヒューマン! ミーのボディのストックになるね!」

 

「! 何ですか……!?」

 

 そこにいたのは、目玉のような物体が取り付いた巨大な触手の魔物。

 だが中心にいるその目玉から声は発せられている。これは何だ、とクエタプノが声を発すると、同様にその魔物に向かって大声を上げたのがいた。

 

「お前の出る幕はないわレッドアイ! 大人しくしてろ!」

 

「ノー! あのヒューマン、ミーのもの! ミーの素晴らしいマジックパワーで、悲鳴をリスニングね!」

 

「……二人目の魔人ですか……!」

 

 最初の魔人と対等に会話している辺り、おそらくはこの異形も魔人だろう。

 さすがに二体の魔人を相手にするのは難しい戦いになる。どちらも強さは未知数で、自分がどこまでやれるか分からないだけに。

 だがここまで来たらやるしかない。覚悟を決めて、剣を構える。そして、

 

「ふっ――!」

 

「! うおっ!」

 

 最初の魔人に向かって踏み込み、剣を振り下ろす。

 しかし反応されてしまい、その巨大な金棒で弾き飛ばされるが、それを読んでいたクエタプノは難なく地面から着地。そして、再び動き始め、

 

「悪いですが、正々堂々、と言っていられるほど余裕はないので、何でもありで行きますよ」

 

「……ほう?」

 

 魔人が凶暴な笑みを浮かべた。そして金棒を構え、

 

「ハハハ! 人間にしてはいい動きだ! ――やっぱ貴様は儂の得物だ! 邪魔するなら潰されても知らんぞ!」

 

「ノー! ノー! 邪魔者は消えるがよろし! こうなったら、どちらもキル・あなたよ!」

 

 メイクドラーマー! と訳のわからない言葉を吐き出す異形の魔人も魔法を放ち、

 

「っ……行きます……!」

 

 クエタプノは、その光を発する剣を抜き出し、勇者として、初めての魔人との死闘に臨んだ。

 

 

 

 

 その頃、村で1番大きな屋敷で、使徒との情事を行っていたレオンハルトは、

 

「大変です! レオンハルト様! 村に侵入者、が――」

 

「…………そうか。直ぐに行く」

 

 慌てた様子で屋敷に突入した魔物兵は、中で行われていたそれを目撃し、顔を青くして言葉を無くす。

 そこにいたのは、服を身に着けていない魔人レオンハルトと、その上で彼に奉仕している二人の使徒の姿だ。

 その情事を、緊急時とはいえ目撃してしまったことで魔物兵は、気に障って殺されるのではないかと少し怯える。

 しかし、レオンハルトはそうではないようで、軽く息を入れると、

 

「直ぐに行く……だから、扉を閉めて、外で待っていろ」

 

「は、はっ! し、失礼致しました!!」

 

 バタン、と慌てて謝罪を行いながら部屋の扉が閉められる。するとレオンハルトの上で、彼の剣の掃除を行っていた二人が、

 

「んっ、ちゅる……もう行きますの?」

 

「何か騒ぎに、ちゅるっ、れろ、んくっ……なってる、みたいですねー」

 

「……ああ。全く、こういう時に限って何かが起こるか……」

 

 レオンハルトはそう言って頭を抱える。まだ酔いは残っているようだったが、そんなことを気にしてる場合ではない、と頭を無理矢理正常に戻していく。

 そして服を着ようとして、それを腰の二人に止められた。手で捕まえられながら、

 

「あっ、まだ掃除が終わってませんよう!」

 

「使徒として、主を汚れたまま外に出すわけにはいきませんわ!」

 

「お前らな……」

 

 と、レオンハルトが半ば呆れて息を吐く。一度目を伏せ思考を回し、まだ余裕はあるだろうと判断すると、諦めたように、

 

「早く済ませろ。一分以内だ」

 

「了解ですわ。迅速かつ丁寧にして差し上げます――」

 

「一分もあれば余裕ですよ。このペールちゃんの超絶舌技テクニックで――」

 

「……ただの後始末だ。出させるなよ」

 

「了解ですわ……ちゅっ」

 

「それはレオンハルト様次第ですよー……はい、ちゅー♪」

 

 そう言って、恋人がするようなキスを剣の先に落とした二人を見下ろし、レオンハルトは酔いを強制的に元に戻しながら、

 ……仕方ない。分身に様子だけ見てきて貰うか。

 このところ、遠征が多くて相手出来てないからか欲求不満だったのだろう。中々離してくれないな、と思いながらも、騒ぎが大事になってもよくはないと村の方を心配する。自分が出るまででもないかもしれないが念には念を入れた方が良い。事が起こってからでは遅いのだ。

 だからレオンハルトは力を込めて分身を発動し、それにもしもの時の対応と、偵察を行わせることにした。自分が行くまでの数分から十分程度の時間稼ぎだが、分身でも並の魔人よりは強い。レキシントンやレッドアイ、ハンティもいるのだ。おそらくはこれで問題ないだろうと判断しつつも、レオンハルトは一応急ぐことにした。

 ……それにしても、また俺はあんなことを……今宵の俺の剣は、血に飢えている……ぐああああ……恥ずかしすぎる……!

 

 ――酒の時の自分の痴態に、心の中で悶絶しながら。




ガルティア「酔ったレオンハルトと酔ったスラルが一緒にいるのが1番酷かったな、そういえば……」

ケッセルリンク「ああ……そんなこともあったな……まあ、私は仲が良くていいとは思うのだが」

スラル「…………あ、あれは……その……」

レオンハルト「……頼むから忘れてくれ……」

キャロル「酔ってる間ずーーーっとイチャイチャしてましたわ!」

レオンハルト・スラル「言うなって!?」
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