※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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今回はお待ちかね、ケーちゃんの無双タイムです。ちょい短めだけど、代わりに次回が長い。というわけでどうぞ


凶行

 世界を魔物が支配した今、各地では魔物達の度重なる凶行が相次いでいた。

 人を無許可で殺すことを禁じているジルの治世だが、殺してくれと懇願した人間や、相手が兵士などの戦闘力のある相手などであれば殺してもよい。

 それと、魔人であれば殺しすぎない限りは自由を許されていた。

 それ以外は特に命令もない。国狩りや、これから行われるある計画を進める際に、魔人を使いはするものの、基本的に、ジルは配下の魔人に無関心だった。

 人間への憎悪とその虐待を最重視するジルにとって、魔物も魔人も、己の手駒の一つに過ぎない。魔人達が一斉に傅いた際も、冷淡な対応を取り、命令を下した後は、冷たく見下ろすだけであった。

 干渉は少なく、人間を苦しめて最低限の義務を果たせば、魔人の自由を保障する魔王。その事実に、一部の魔人は好都合だと内心でジルの対応に喜んだ。

 そんな中、この状況をチャンスだと睨んだとある魔人が、一つの事件を、今まさに起こしていた。

 そこは魔物界。魔王が不在の魔王城の中で行われていた。

 

「オラオラオラ! どーしたテメェらッ!! いつもみたいに、俺様を虐めてみろやぁぁぁぁ!!」

 

「ぐあああああっ――ッ!」

 

「う、ぐ……」

 

 魔王城の中庭。そこで魔人相手に凶行に走っている一体の魔人がいる。

 中心にて両手に大剣、ウスパーとサスパーを握る異形の巨漢。醜い獣のような化け物がそこにいた。

 紅いマントと、身体に身に着けた鎧を揺らし、魔人達を見下ろしたのはリスの魔人――ケイブリス。

 魔人四天王の末席にして、最古の魔人である彼は、その手で魔人達を瀕死にまで追い込んでいた。

 そして地面に倒れるのは、ゴライアス、オスロ、セイロンなどの古株の魔人らや、前時代に横暴な振る舞いを行っていた一部の魔人達。彼らを見下ろしながら、ケイブリスは口元をニヤリと歪ませた。

 

「けっ、ざまぁねぇなぁ! ええ、おい! いつもの威勢はどうしたよ!? 俺様が気に入らねぇんだろ!? 雑魚だから、魔人の恥晒しだ、アイツは仲間でも何でもねぇって……おら、言ってみろよぉ!!」

 

「が、あ……!」

 

 ケイブリスの足に踏み潰され、魔人が血まみれの状態で苦悶の悲鳴を上げる。

 誰もがケイブリスにやられていた。魔人四天王にまで上り詰めた強さによって、屈服させられていた。彼らは一様に思う。

 ――まさかこれほどにまでなるとは。総括するとその一言に尽きた。

 彼らは皆、か弱いリスの魔人であったケイブリスを、虐めていた魔人達。最弱の魔人であったり、下級魔人であったケイブリスを見下して、こき下ろしていた魔人達だ。

 仲間内では一番の古株の癖に、一番最弱であったケイブリスは、かつてそのことから虐められていたのだ。

 雑魚だ雑魚だと言われ続け、酷い中傷を受けてきた。何度も暴力を受けて、殺されかけたことだってある。何とか難を逃れはしたが、それからも怯え、必死に彼らの顔色を窺いながら日々を過ごした。

 あのレオンハルトの腰巾着、金魚のフンだとも言われ、暴力は殆ど受けることはなかったものの、陰口をよく叩かれたりしたものだ。

 その恨みを、全部、何もかもを、ケイブリスは憶えている。憶えてきた。

 今は耐え忍ぶ。苦難を耐え続けたのだ。

 己を鍛え続け、この弱さから脱却し、いつか強くなって、復讐してやろうと。

 全く同じことをやり返してやる、とケイブリスはその恨みを憶えてきた。

 そして今、その我慢が報われようとしている。その事実に、ケイブリスはちょっとした達成感を感じていた。

 ……長かったぜぇ……。

 さすがに感慨深いものがある。かつて彼らから見下されていた自分は、今は彼らを見下ろし、生殺与奪を手にしているのだ。

 だからケイブリスは告げるのだ。己のされていた事を思い出しながら、瀕死の彼らに向かって、

 

「――こんなとこで転がってんじゃねぇよ、オラァ!」

 

「がっ……!」

 

 地面に転がる巨人の魔人、ゴライアスを蹴り上げてやる。そのまま別の魔人、今度はオスロに向かって、

 

「魔人とは思えねぇ弱さだぜ!」

 

「うぶっ……!」

 

 思い切り拳を叩きつける。骨が砕ける音がして、なんとも気分がいい。

 

「俺様は今、むしゃくしゃしてるからなぁ! 悪ぃがサンドバッグになってもらうぜぇぇぇ!?」

 

「……!」

 

 セイロンに至っては、もはや口すら利けなくなっていた。ケイブリスの打撃を食らっても、もはや鈍い反応を返すのみ。殆ど死んでしまっており、まだ形を保っているのは、やはり魔人という種の恩恵が大きい。

 その他の魔人も、ボロ雑巾のようになりながらも辛うじてまだ生きている。魔人の生命力は、長く苦痛を与えられるという点でケイブリスを喜ばせ、彼らを苦しめていた。

 だがそんな中で、最も余裕のあるゴライアスが、地面に倒れながら声を発する。とはいえ瀕死には違いないが、

 

「やめて、くれ……ケイブリス……」

 

「あぁん?」

 

 ケイブリスは身体をそちらに向け、怪訝な声を出す。

 一体何を言うのかと、ずしん、ずしん、と重量感のある身体を動かし、彼に近づいていく。

 するとゴライアスは、苦渋に満ちた表情で、

 

「俺が……俺達が、悪かった……! まさかお前が、こんなに強くなるとは……思わなかった……!」

 

「…………」

 

「だから、許してくれ……ケイブリス……これ以上やられたら、死んじまう……」

 

 それは謝罪だった。

 今までケイブリスに行ってきたことの謝罪。お前は強いと認め、もう逆らうこともしないし、陰口だって叩かないと、誓ってみせる。

 見れば他の魔人も、意識ある者達は同じ様にうわ言の様に謝罪していた。命だけは助けてくれ、と。

 ケイブリスは思った。己にも経験があることだ。

 ――こいつらは、本当に悪いなんて欠片も思っちゃいない、と。

 謝ってるのは形だけ。自分の命が惜しいから、謝ってみせてるだけだ。

 魔人だって死ぬのは怖いし、何よりも避けたいこと。それをケイブリスは、誰よりも理解している。

 魔物であれば強者には逆らわない。力こそが絶対正義なのだ。

 だからこそ、己が弱かった時代にやったことを、こいつらは反省もしていないし、悪いとも思っていない。

 あの時は、弱かった自分が悪いのだ。こいつらの方が強くて、己は何も出来なかった。それだけだ。

 それでも本当に悪いと思ってるのなら、詫びとして、今直ぐ死ね、とケイブリスは言いたくなったが、それをぐっと堪えて別の言葉を作る。彼らの命乞いを、命懸けの謝罪を嘲笑するように、

 

「……あぁー? 死んだって問題ねぇだろうが。テメェら、雑魚だしなぁ?」

 

「っ、それ、は……」

 

 ゴライアスは怯み、眉根を寄せる。それはいつしか、己がケイブリスに告げた言葉だった。

 それを今、ケイブリスは意趣返しとして発したのだ。口元に笑みを浮かべたケイブリスが馬鹿笑いを響かせる。

 

「ぐぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ! 安心しな! テメェらが死んだとしても、テメェらは雑魚だからな。なーんにも困らねぇし、誰も気に留めることはねぇ! まぁ、なんだ。魔人四天王の俺様が、お前らは強ぇ人間に殺されたとでも報告しといてやるからよぉ! 感謝するんだな! ぐぁはぁはぁはぁ!」

 

「っ……!」

 

「う、あ……」

 

 それは地面に転がされた魔人にとって、絶望の宣告。

 自分たちは今から死ぬのだと、そう告げられたのだ。

 誰もが顔を青褪めさせ、己の運命から脱しようと力を入れるが、それも難しい。逃げようとしたところで、ケイブリスにボールを蹴るように蹴られ、更にダメージを負わされる。

 この場からの脱出は不可能。既に彼らの運命は決まっていた。

 ――が、彼らにとっては僅かながらの希望が、その場を通りかかる。それは、

 

「……! レオン、ハルト……様……!」

 

「…………」

 

 中庭にやってきたのは、最強の魔人、魔人筆頭である魔人レオンハルト。

 魔軍の秩序を守る魔人の登場に、彼らは僅かながらの希望を持った。

 彼が魔人の凶行を見逃すはずがない。直ぐに止めてくれるだろう。

 普段は鬱陶しくてしょうがない目の上のたんこぶは、この時ばかりは救世主に見えていた。

 レオンハルトは彼らをちらりと見ると、しかし、視線を直ぐにケイブリスに向けた。

 その些細な動きに、彼らは違和感を覚える。何だ、と、

 

「……こんなところにいたか、ケイブリス。そろそろ定刻だ。お前も急げ」

 

「! ――はい! 了解です、レオンハルト様! 僕、直ぐに終わらせて向かいますよっ! へへへ……」

 

「っ!? な、何故……!?」

 

 用件だけを告げて、踵を返してさっさとその場を後にしようとするレオンハルトに、オスロは疑問を声にして飛ばした。

 魔人レオンハルトであれば、魔人の秩序を重んじる彼であれば、この凶行を止めないはずはないのだ。

 事実、以前にも、彼らはケイブリスを殺そうとしたことを止められたことがあるし、魔人の喧嘩を止めることもよくあることだ。

 だからこそ、オスロや他の魔人達も疑問する。何故、と。

 しかしレオンハルトは、その声に足は止めはしたものの、振り返らずに告げた。それは、

 

「……悪いが……()()()()()()。諦めろ」

 

「! 上意……って、まさか……」

 

「へへへ……」

 

 レオンハルトの短い説明と、ケイブリスの下卑た笑み。その二つを組み合わせ、頭の回る魔人達はその意味を察してしまう。

 ケイブリスの凶行は、まさか、魔王の許可を得たものであるのだと。

 もしくは、放置しておけ、とでも言われたのかと。

 レオンハルトが上意、と言った意味と、その行動を見れば、そのようにしか思えなかった。

 つまり自分たちは、魔王様に見捨てられ――

 

「――つーわけだからよ。悪いが全員、俺様にぶっ殺されろやぁぁぁぁ!!」

 

「……! っ、あ……!」

 

 ケイブリスの一撃が一体の魔人に振るわれ、肉が弾けるような音が鳴る。

 それを聞いてレオンハルトは告げた。短いため息とともに、

 

「……あまり遊ぶなよ」

 

「はい! 分かっていますレオンハルト様! さっさと殺しますね!」

 

「……それと、魔血魂は一つ残らず回収して持ち帰ってこい。全て、魔王様にお返しする」

 

「了解しました! 態々伝えてくださってありがとうございます!」

 

「……早く来いよ」

 

 と、レオンハルトはそうして中庭から離れ、再び室内へと帰っていった。

 それは今度こそ、間違いなく彼らの運命が決まった瞬間だ。

 魔人筆頭であるレオンハルト。そして魔王ジルが放置すると決めた以上、ケイブリスの凶行は誰にも邪魔されずに行われる。

 それをケイブリス自身も実感したのか、笑いが止まらないと言わんばかりに耳障りな声を発しながら、ケイブリスは告げた。

 

「ぐぁはぁはぁはぁ! これでわかったか!? テメェらは、とっくにお払い箱なんだよ! テメェらみたいな雑魚で無能の馬鹿は、必要ないって、あのジル様が認めたんだぜぇぇぇ!? なら、快く死んでみせるのが、お前らの役目だろ? ぐぁはぁはぁはぁはぁはぁはぁ!」

 

「そ、んな……」

 

「っ……」

 

 ケイブリスの笑い声が中庭に、彼らの耳にこびりつく。

 実際には、いらないというよりは、いてもいなくてもどっちでもいい、という消極的な放置、無視のようなものであるのだが、彼らには気づけない。

 実はケイブリスの方も危ない橋を渡っており、内心ではヒヤヒヤものであった。最初に気づかれた時はヤバいと思ったものだが、

 ……気づかれた時は死ぬかと思ったが……ジルはともかく、レオンハルトまで放置するなんてな……こいつら、本気で見限られてやがるな、いい気味だぜ……!

 ジルの意見なんて知らないが、あれは配下の魔人に興味がそもそもない。あの冷淡な態度というか気配が恐ろしすぎて、ちびりそうになっていたケイブリスにとって、干渉が少ないのはありがたいことであった。

 なので、兼ねてより殺してやろうと思っていた魔人を、この時に一掃してやることにしたのだが、それがバレてしまったのだ。

 しかし、

 ……魔人を作りたいだろうから枠にある程度余裕を持たせるのは、良いこととは言えないが必要なことだ、とか恐ろしいこと言いやがって……ある意味俺様がこいつら殺すのって大正解なんじゃねーか? もし、適当に選ばれたら……。

 レオンハルトは魔人に枠を空けるのは必要なことだと言ったが、それにしてもまだ余裕はあるはずだ。だと言うのに、放置されたのは見限られたとも言えるが、これがレオンハルトではなく、配下に興味がないジルが、魔人を作るから、と適当に選び始めた時に、ケイブリスが処分される可能性はゼロではない。

 そう考えればある意味で、最高の選択を、これ以上ないタイミングで行動に起こせたともいえる。

 時代が変わるとまた気をつけねばならないことが増えるのはいつものことだが、

 ……つっても俺様も魔人四天王だ。新しく作られた中でも、あの爺以外の魔人は恐れるに足らねぇし、随分と生きやすくなったかもな……。

 最近になって、魔人を3体ほど、ジルは生み出したが、内2体はケイブリスよりも格下。警戒せずともよい。

 だがジルが作った最初の1体――あの爺だけは、ケイブリスも注意せざるを得ない。

 何しろ、魔人四天王、その最後の一席に座り、しかもその序列はケイブリスよりも上なのだ。

 後はジルだが、あっちはひたすらに怖い。人間の女の魔王って言うからそこまで怖くねぇだろ、とか思っていたが、あのナイチサよりも怖い。怖すぎる。

 あの眼と圧力を思い出すだけで、ケイブリスは身が震えるのを自覚した。

 ……ぶるぶる、早く終わらせるか。魔人としての命令……これまで以上に忠実にしねぇとな……あの人の機嫌を損ねたらマジで死んじまう……。

 魔人だろうが容赦はしない。魔人四天王という称号も関係ない。機嫌を損ねれば、本当にゴミのように殺されるだろう。だからケイブリスは息を入れて、彼らを見下ろした。そうならないために、さっさとこいつらをゴミにしなければならないと、

 

「……さぁて、覚悟はいいか!?  おら死ね! すぐ死ね! ゴミみたいに死にやがれぇぇぇぇぇ!!」

 

「……っ! う……があぁぁああああああ――!?」

 

 ケイブリスの大剣が魔人達を一体一体、丁寧に打ち込まれ、その身体を小さな血の塊――魔血魂に変えられていく。

 数分と掛からずにそれらの作業は終わり、ケイブリスは即座に魔血魂を拾い集め、それをレオンハルト経由でジルに返却した。

 魔血魂は受け取った瞬間、即座に初期化されたと聞き、ケイブリスはその容赦の無さに、やはり身震いした。――恐ろしい。

 魔物達にとっては住みやすい、快適な世の中にはなりそうだが、だからといって気を休めすぎるのは危険だと、最古の魔人は、新しくやってきた時代を、そう評価した。

 

 

 

 

 

「……止めずとも良かったのですか?」

 

 魔人レオンハルトは、魔血魂を返却し、初期化を終えたところで、ジルに問いを投げた。

 そこは魔王城にある魔王の私室。ナイチサのものを一掃し、己の好みに作り上げたその暗い部屋で、相変わらず全裸のままベッドに腰掛けるジルは、特に何を思うでもなくそれに答えた。

 

「どうでもいい。ただのリスが少しばかり、暴れただけだ……」

 

 本当に興味が無さそうに、ジルは答える。

 ケイブリスをただのリスと評するその無関心さ、実際は知識には入れているのだろうが、それを踏まえてもどうでもいいと評しているのだ。

 駒として、ちゃんと動くのであれば何をしようが問題ない。

 だが、その駒としての役割が、失われることをレオンハルトは一応危惧した。

 

「しかし、あれほど多くの魔人を一度に失っては、魔軍と、今後世界中に建てられる施設の運営にも問題が出る可能性が……」

 

「そんなものはどうとでもなるだろう……足りなければ、お前が兼任するなり、また新しく魔人を作ればよい……」

 

「……確かにそうですが……」

 

 実際、戦力としては明らかに下るはずだが、人間を完全に下した以上は、そこまでの戦力は必要ない。

 一応、今後建てられる施設の反乱防止の為にも、念の為、魔人にいてもらった方が都合が良いが、いなくとも実務の上では問題ないのだ。

 それに先日、新しく作られた魔人もいる。レオンハルトとしてはそちらについてもどうすべきかと思考を回しているが、

 

()()()()()()()の教育も、基本的にはお前に一任するぞ、レオンハルト……」

 

「は、それはお任せを」

 

 それについては今までもレオンハルトが担当してきたことだ。何ら問題はない。

 強いて言うなら、その魔人が厄介であると、面倒になるというくらいだ。

 今回の場合は、一体は問題無さそうだが、残り二体――いや、その内の一体が、特に問題児となりそうだ。

 魔人を作ったのは国狩りの最中であり、レオンハルトもまだ、殆ど話していない。一体は、魔人四天王でありジルの側近でもあるため、よく話すが、残り二体は、国狩りで世界中に散らばっているため、魔人になった時にその姿と声を見て、ジルの前で命令を下しただけだ。

 しかし国狩りが終わり、後はちょっとした反乱分子を滅ぼすくらいだ。今は施設の建造に取り掛かっている段階であり、直に、全魔人が集結する。

 その時にでも、色々と交流しなければならないが、やはり個性が強そうで憂鬱ではある。

 ……陰気で戦闘狂の爺と、趣味の悪い女……まあ、もう一体は紳士っぽいというか普通そうだがな……見た目以外は。

 個性的な面々を頭の中で想像すると、やはり小さく息を漏らしたくなるが、これも責務だ。己の役目であるため、面倒がってはいられないし、きちんとこなさなければならない。

 だからレオンハルトはまた次の仕事について考えようとして――しかしジルに邪魔をされた。

 

「さて……なら、今日も私の身体に溺れておくか……?」

 

「…………お命じ下さるのならば、ご随意に、ジル様」

 

「くく……お前は硬いな……こっちに来い」

 

 内心では億劫そうに、しかし忠実に、はっ、と短い声を上げてベッドに腰掛けると、こちらにしなだれかかってくるジル。触れただけで立ち上がりそうなジルの身体を、冷静に受け止めてみせながら、レオンハルトは思う。

 先程までは冷徹な様子を見せていたが、今日も人間へ充分な苦痛を浴びせていたために、満足し終えたのだろう。

 基本的にジルは――こう言っては何だが、暇だ。国狩りの最中、この一年はまだ魔王になったばかりで忙しいし、今もまだやることは少しはあるが……それでも、一日の多くを怠惰に過ごす。

 基本的にはずっと外で人間を苦しめるか、戯れで思いつきの行動を取る我儘娘だ。ケイブリスの凶行を観察したのも、ただの思いつきの戯れであり、基本的には暇している。

 故に、後は性的な快楽を得るためにレオンハルトを襲うくらいだ。レオンハルトの方はやるべきことが山積みであるし、そうでなくとも遠慮してほしいのだが、魔王の申し出は光栄なことだ。拒否出来るはずもない。

 だからレオンハルトは今日も黙ってジルとの情事を行う。

 ――人類を苦しめるための悪夢の施設の誕生まで、後僅か。そんな一日のことだった。




ナイチサ「ほう……ケイブリスも成長したものだな」

キャロル「あっ! 今飛ぶ鳥を落とす勢いで人気がある前魔王のナイチサ様ですわ!」

ペール「仮に今人気投票をしたら一位を取ってしまいかねないですよう! 私はレオンハルト様に入れますけど!」

ザビエル「Foooooooo!! ナイチサ様――!! 最高でありますぞ!!」

ナイチサ「フ、そんなに褒めるな」

ガルティア「あらら、この分だとスラルも負けるかもなぁ……人気投票したら」

スラル「う、ぐぬぬ……そんなことないもん! 私が一番なんだからね!」

ナイチサ「ああ、所詮余は悪であり、前時代で少し目立っただけの存在に過ぎない。レオンハルトの最も大切な人である卿には敵わぬのが道理であるな」

スラル「うっ……どうしよう、人間的にというか人格的に負けた気がするんだけど……」

レオンハルト「……まあ、お前は人気あるから大丈夫だろ」

スラル「……そうなの?」

レオンハルト「……ああ」

スラル「…………どういう意味で?」

レオンハルト「そりゃネタ的――あ、いや違う。ヒロイン! メインヒロイン的にな!」

スラル「こらぁーーー!! 今ネタ的にって言ったでしょ!!」

レオンハルト「い、言ってねぇ!」

スラル「言った! 絶対言ったもん!」

レオンハルト「……今のは、寿司のネタのことをだな……」

エルシール「――! へいらっしゃい! お寿司をご所望ですか!? なら歌います! メイド長さんに教えてもらった曲! “寿司食いてぇ”!」

シャロン「エルシール……貴方は一体、どこに行くつもりなの……?」

エルシール「――ここの寿司屋はJAPAN1! 寿司食いてぇ~♪」

メイド長さん「私が育てました」ドヤァ

ラウネア「…………(次回はあの魔人四天王の出番だよ)」
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