魔物界東部。そこにある街は、ある魔人が治める魔物界の繁栄の象徴でもあった。
丘陵地帯の中にある広々とした平原。その土地に建てられる街は、これ以上無い賑わいを見せていた。
「うおおおおお! やりきったぜー!」
「ようやく帰ってこれたな……!」
「魔軍最高! 魔物最高! レオンハルト様最高! ジル様最高!」
「魔軍に栄光あれ――!」
「イェエエエエエエ!」
その街の通りでは様々な姿形を持つ魔物達が、今日は魔物兵スーツを脱いで、騒ぎ合っていた。
よく見ればまだ魔物兵状態のままのものも多いが、彼らの多くは先程帰ってきたばかりで興奮冷めやらぬ状態である。スーツを脱いでもよいと言われても、それを脱ぐ手間も惜しいと言わんばかりに、今日ばかりは誰とも肩を組み、酒の入ったジョッキを打ち鳴らし、美味しい食事を好きなだけ手にとって食べる。
何故ならここは――レオンハルトシティ。
魔軍参謀であり、魔人筆頭であるレオンハルトが治める魔物界の一大都市であり、レオンハルト軍に所属する魔物兵達が住む、娯楽と文化、美食の街。
普段も活気がある街だが、今日は戦勝祝いであり、いつもの何倍もの活気があった。
何しろ今日の戦勝祝いは普通のものではない。
大陸全土を魔物の手中に収めた――記念すべき快挙を祝う宴なのである。
魔王ジルが布告した国狩り。全ての人類国家を破壊し、人間を支配し、魔物の黄金時代を築く。
それの最前線に戦ったレオンハルト軍は、国狩りが成ったことに誰よりも喜んでいた。
今日ばかりは一般の魔物兵であっても、食べ放題に飲み放題。どの料理でも酒であっても好きなだけ掴み取りして構わないという大盤振舞い。
そんな粋な計らいをしてくれ、自分たちを勝利へと導いた存在に、誰もがその名を呼び、栄光を讃える。
「レオンハルト様万歳! レオンハルト様万歳!」
「我らが英雄! レオンハルト様ー!」
「きゃー! レオンハルト様好きー!」
男の子モンスターも女の子モンスターも、誰も彼もが声を上げてかの魔人を讃える。
その声の先は、街の中心にそびえ立つ紅い城――紅魔城。
レオンハルトの居城であるそれに向けられており、城門がある場所、観光名所でもある噴水広場では特に多くの魔物で賑わっていた。
普段であればあんまり騒ぎすぎると警備の兵が飛んできて注意をするのだが、今日ばかりは苦笑交じりにそれを見逃す。声を大にして讃えたいのは彼らも同じだからだ。
ハメを外しすぎないようにと、魔物兵の中にいる数体の魔物隊長や魔物将軍も、中には一緒になって馬鹿騒ぎを行うものもいる。これ以上ない勝利の美酒を前にして、歓喜を抑えきれないのだ。
そして城の中では、外よりも落ち着きがある催しが開かれていた。
そこは城の中庭。多くのテーブルが並べられ、所狭しに料理が並べられたその場所は、今はレオンハルト軍の重鎮だけの戦勝パーティが開かれていた。
「す、すげぇ……!」
「ふっ、そういえばお前は来るのが初めてだったか……」
「は、はい。まさかこれほどのものとは……」
そこに来ているのは、レオンハルト軍の魔物将軍、約50体と、それに同行する副官の魔物隊長50体。
レオンハルト軍では、年始や大きな戦いの戦勝時に、このようなパーティを執り行う。これに出席出来るのは、魔物将軍と、魔物将軍に招待された魔物隊長のみであり、参加すること自体が大きな名誉なのだ。
そもそも城に入る機会すら、殆どの魔物にはないため、多くの魔物隊長はこの時に初めて城の中を目の当たりにし、その豪奢な内装やパーティ会場を見て驚愕の表情を浮かべる。
自分達とはスケールの違う世界。これが魔人の、その中でも頂点に立つ者が見ている世界なのかと。
特に凄いのは奥の方のテーブルだ。そこでは、レオンハルトの使徒達がいるだけでなく、見上げるほどの巨大生物すらいた。
それは、
「うむ、うむ……! 今日も肉が美味い……! さあ、早く次の肉を……!」
「フハハハハハハッ! 畏まりました! 熟成された最高級うし肉……! それを最高の調理法でッ! この私がッ! 皆様に全力で振る舞って見せましょうぞッ!」
「うおおお! 何たる香ばしい匂い! くぅぅ、待ちきれん……! どんどんと食欲が湧いてくるぞ……!」
なんだか化け物が二体ほど、そこでは肉を焼いて食って興奮していた。
それを初めて目の当たりにする魔物隊長などは戦慄して――率直に言うと、ドン引きして後退る。
「あ、あれは何でしょうか将軍……?」
「ん? ああ、あれはレオンハルト様の食客であるというドラゴンと、城の料理長だな。ドラゴンの方はいつも肉を食っていて、料理長は……まあ、あれは、気にしない方が良い。私はもう気にしないことにした」
「そ、そうなのですか……とてもお強そうというか……」
「……ちなみに、料理長はあれで人間らしいが、私は信じていない。多分、新種の魔物か何かだと思う」
「……なるほど……」
確かに、と魔物隊長が得心する。確かによく見てみると人の形をしているが、魔物将軍を越える巨体を持つ辺り、多分人間じゃない。
そうして戦慄しながらも料理と酒を立食形式で手にとっていくと、そこで不意に声を掛けられもする。それは、
「お食事の追加をお持ちしました」
「! これは、メイド長さん様……!」
「え……あっ、し、失礼しましたメイド長さん様……!」
一瞬で眼の前に、料理を持って現れたメイドに、咄嗟に魔物将軍と魔物隊長が頭を下げる。
何故一介のメイドに、魔物将軍が頭を下げるのか、と思うが、その光景は各所で何度か見られた。
「お酒の追加を持ってきました――」
「! 態々申し訳ありません、リム様……!」
「え、ええと……べ、別に気にしないで下さい☆ 私達はメイドですしね?」
「レオンハルト様への挨拶がお済みになった方は、好きにしても構わないとのことで――」
「ありがとうございます、ベアトリス様……!」
「……いえ、頭をお上げ下さい。私共、もとい私はレオンハルト様に毎日奉仕するしか能のない卑しい、もといいやらしいメイドでありまして、本日はそのレオンハルト様よりお客様をもてなすように言われてますので――はっ! もしやこれは新手のプレイなのでは……!? 疑似ネトラセプレイ的な……くっ、何たることでしょうか……メイドでもっとも脳内がピンクだと蔑まれるこの私が、そのような高度なプレイに気づけないとは……とりあえず、メイド長かレオンハルト様に確認を――」
「ベアトさん!? 暴走しすぎですわよ!」
「エクレアさん……これはレオンハルト様が私共に課せられたプレイのようです……! 既にご褒美は始まっていたということで――」
「んもうっ、そこにいる貴方の親に言いつけますわよ!?」
「っ、それは――」
何故か誰もが、城のメイドに対して頭を下げており、それをやんわりと、メイドだから気にしないで下さい、という様なやり取りが続いている。幾つか、個性の強すぎるメイドが暴走し、真面目なメイドがそれを止めたりしているが、苦戦していたりする。
そしてここでもメイド長さんへの挨拶に、メイド長さんが、
「私共に、畏まる必要はありません。メイド長、で、結構で御座います」
と、にこやかな笑みで告げる。しかし魔物将軍は苦笑し、頭を掻きながら、
「も、申し訳ありません……あ、いや、申し訳ない……ですな。その、何度も仰っていられるので分かってはいるのですが、やはり下級使徒となると礼儀を失するわけには……軍規でも、そのように決まっていますので……」
と、魔物将軍がちらりと、メイド長さんの肩に目を向けて言う。
彼女達メイドの特殊なデザインのメイド服。それぞれが違う服を着ているように見えるのは、何種類かあるらしい。その中でもメイド長さんのは生まれた時から着ている一着だけの特殊なものであり、ロングスカートの少し落ち着いたものだ。そしてその、肩が露わになったその素肌の部分には、何やら紋様が刻まれている。
よくよく周りを見てみれば、メイドの誰も彼もが、一様に身体の見える部分にその紋様を刻んでいた。
大体は、肩か手の甲。首や首元であったり、少し大胆なメイドともなると、胸の谷間の少し上や、太腿、お腹の部分など、少し目のやり場に困りそうな場所にも刻まれていたりする。
そしてその紋様の意味は――レオンハルトの下級使徒であることの証だった。
だからこそ、魔物将軍らは揃って頭を下げたのである。だが、メイド長はこうも言った。
「確かに、魔軍での立場上、下級使徒である我々は皆様よりも上位であるでしょうが、それはあくまでも魔軍の中でのもの。今はプライベートなものであり、加えて私達はメイドでありますので、そこまで気にせずとも構いません」
「む、むぅ……しかし……」
メイド長さんの言葉に、今度は魔物隊長が戸惑いの言葉を発した。
が、それはメイド長さんによって差し止められる。
「駄目ですよ」
「!」
と、畏まろうとした魔物隊長の口元にメイド長さんの人差し指が立てられる。
それ以上は口にしないように、とのことだ。反射的に、魔物隊長は言葉を止めたところで、メイド長さんは手を元の位置に戻し、茶目っ気のある様子で言った。
「まだ気にすると言うのであれば、下級使徒である私からの命令です。今日は下級使徒である私達の立場は気にしないで、存分に楽しんでください。……ということでどうでしょう?」
「あ……」
ふふ、と笑みを浮かべたメイド長さんは、そう告げたところで頭を下げて、
「では、引き続きパーティをお楽しみ下さい。失礼します」
綺麗に一礼。完璧な所作を見せて、メイド長さんはその場から去っていく。
その際に、大きな胸がたゆんと揺れて、
「――んんっ……気持ちは分からないでもないが、やめとけよ」
「! あっ、い、いえ、そういうわけでは……!」
魔物将軍が咳払いをして、魔物隊長に注意する。そこでようやく我に帰った魔物隊長が咄嗟に言い訳を口にしようとするが、その動揺の仕方が完全に物語っていた。
魔物将軍は軽いため息を付きながら、副官に小声で告げる。
「……主の女に惚れるのは、さすがにやめておけ。下級使徒である以上は確実に実らないし、そもそもここのメイド達は皆、レオンハルト様に惚れている。まあ、奥を見れば分かるだろう」
「……はい」
ちらり、と横目で魔物隊長は奥の席、一番上座であるその場所に視線を向ける。
そこには、自分達が仰ぎ見るべき上司、この城の主である魔人が、多くのメイド――下級使徒達が手ずから酒を注ぎ、食事を追加し、レオンハルトに対して、紅潮した笑みを浮かべながら献身的な奉仕を行っていた。
その誰もが美少女、美女。殆どが胸の大きいスタイルの良い女達で、胸が大きくない者であっても、とてつもない美少女だったりする。
ざっと見て百人以上はいるはずだが、どれだけいるかは魔物将軍にも正確なところは分からない。確か150人近かった様だが、何分多い上に、軍務では姿を見かけることがないので憶えにくいのだ。
それでも半分くらいは魔物将軍の義務として何とか憶えたが、たまに名前の知らないメイドがいると反応に困る。下級使徒はこちらよりも立場が上であるため、礼儀を失してはならないからだ。
先程は気にしないでいいとは言われたが、それでも一応の筋は通す必要がある。名前を憶えていないなど、失礼にも程があるのだ。
もっとも、寛大であるレオンハルトはそれを怒りはしないだろうが、だからといってそれに甘えていいわけではない。一応は努力する必要があるだろう。
そうして魔物将軍は魔物隊長にその光景を見せたところで、肩を叩いて慰めるように、
「まあ、なんだ。魔物隊長ともなればそこそこはモテるようになっただろう。街で嫁でも探すか……もしくは、今度うちの嫁の友達でも紹介してやろうか? まだ相手のいない女の子モンスターも多いそうだ」
「…………お願いします」
「ははは、ならそうしよう。まあ私も男だ。気持ちは分かるとも」
笑いながら一瞬で惚れて失恋しかけた部下を慰める魔物将軍。実際、これだけ美女がいれば目に毒ではある。
種族的な優れた頭脳と社会性から、魔人の女である使徒や下級使徒に惚れる馬鹿はいないはずだが、それでも劣情を一切抱かないと言われると嘘になるだろう。男として、魅力的だとは思う。
だが多くの魔物将軍は、それ以上にレオンハルトへの畏怖や尊敬が勝っているため、そんなことはありえないと誰もが心に強く刻んでいる。
後はやはり、余裕があるおかげだろう。魔物将軍ともなれば、この城程とは言わずとも、街の高級住宅街に屋敷を貰い、100人とは言わずとも、10人程度なら嫁を貰うことも可能だ。
休日などは特にそちらの相手で大変なのに、他の女に色気を出す余裕はない。実際にそうなってみると分かることだが、複数の女がいるというのは、それはそれで大変なのだ。
だから多くの嫁持ちの魔物将軍からは、レオンハルトに対して羨ましいというのを通り越して、“一体どうしているんだ……?”とか、“おそらく、大変なのだろうな……“みたいな疑問や、苦労を察するところがある。
しかし外から見れば羨望してしまうのもしょうがない。だからこそ、魔物将軍は注意を行いはしたものの、そこまで怒ることはなく、今はパーティを楽しめ、とフォローを行った。
むしろ多くの魔物将軍達は、パーティを楽しみながらも、既に、今日は眠れないだろうな……、という達観のような悟りを開いている。というか、
そのことを幸福だと思いもするし、仕事終わりだと久方振りであるので仕方のないことではあるのだが、満たされる一方で、疲れは取れないだろうな、と軽い息を漏らすのだった。
レオンハルトの城の中庭。
戦勝祝いのパーティが開かれるその会場の奥のテーブルでは、数人でその席を囲んでいる者達がいた。
そこはレオンハルトの使徒達が、座るための席。真ん中に大きな鉄板が設置されたその席には、両側に魔の気配が濃い者達が座する。
「――あぁ、うまぁ……」
と、その存在を確認しながらも、何故かその席に座っているガウガウ・ケスチナは、彼らを半ば無視して、最高級うし肉に舌鼓を打っていた。
それを見て、気にしない者の方が多かったが、一応注意する者がいる。注意というよりも小言だが、
「……いやあんたさ……ここに座ってると目立つけど、いいの? というか、こういう催し物とか嫌いだったんじゃ……」
そう半目で告げたのは、ガウガウの隣に座る黒髪のカラーの様な人物。
黒のレオタード風の衣装に、長い髪を靡かせるのは、額に特殊な紅い宝石と長耳を持つレオンハルトの使徒――ハンティ。
使徒最強とも称されるハンティは、最近の出来事に苦い気分を抱えながらも、今この時だけは、と気を休めてちびちびと小物を箸で摘みながら、酒を飲んでいる。
そんな同僚の発言に対し、ガウガウはそちらには目もくれず、鉄板の上にある肉に夢中になりながら、
「ぶっちゃけもう慣れた。いや、今でも嫌っちゃ嫌だけど、この肉を食べるためなら私はこの状況を甘受するぞ!」
「声を大にして言うことじゃないけどね……」
拳をぐっと握って言い放つガウガウに、ハンティがいつもの様に呆れる。何百年と生きてるはずなのに、妙に俗っぽいのは変わらないよなぁ、とある意味で良いことにも感じながら息を吐く。
しかし、妙に俗っぽいのは彼女に限ったことではない。
ハンティは正面に座る男を見て、思った。彼は、いつもの用に真面目な様子で、真剣にそれを行っている
「――どうぞ。これとこれも焼けました」
「やったぁ! 頂きまーす!」
「は、こちらはネギと一緒に食べると美味しいそうです。レオンハルト様が仰っておられましたので確実かと」
と、肉を常に焼いて皆の更に配っているのは、眼帯を付けた男だった。
紅い軍服を身に纏った中年らしい顎髭の男は、人間の国の将軍の様にも見える。
彼は元魔物大将軍の使徒である――リー。レオンハルトの使徒の中で唯一の男性であり、鋼の忠誠心を誇る彼は、落ち着いた様子で肉を焼き続ける。
そのことに、隣にいる薄紫の髪の少女が声を掛けた。
「リーさんは肉ばっか焼いてるけどいいんですか?」
「御心配なく、ペール様。私はこの様に、肉を焼くことに充実を感じております。焼けた瞬間を完璧に見抜いた時の達成感が格別で……」
「いやまあ、食べる分は幾らでもあるからいいんですけどね。……それより、良い機会だから聞きますけど、なんでその本、ずっと脇に抱えているんですか?」
そう問いを投げたのは、ハンティと同じ様に、長耳と、前髪に隠れてはいるが青い宝石を持つ使徒の一人。
カラーの使徒――ペール。白のレオタードと、黒の外套のようなものを身に着けた彼女は、テーブルに置かれた野菜にその焼かれた肉を包んで食べている。
そんな彼女は、ふと思い立ったようにリーが小脇に抱えている赤い装丁の本を指して問う。
それは一応、ハンティも知るとある本だった。一応気になってその話に耳を傾けると、
「……剣王伝の事でしょうか。そのことであれば、私はこれを己の聖書として定めていますので、持っていないと落ち着かず……」
「ああ、いえ、責めてるわけではないですよう。むしろありがとうございます。ただ、何で常に持ってるのか気になって……しかも一巻ですし、とっくに読み終わっていますよね?」
「はい。しかし、時折これを読むことで、私は満たされた気分になり、レオンハルト様への忠誠心を更に自覚することが出来ます故。とくに一巻が、私の心を打つものが多く――失礼。どの巻も素晴らしいものであるのですが、特にこれが私のお気に入りでして」
リーが饒舌になり、その本の素晴らしさを語る。器用に肉を焼きながら。その忠誠心の暴走っぷりに、おそらく一番それがないハンティは呆れ顔になってしまう。
使徒になってから落ち着きが出来て、どこかダンディになったのだが、如何せん、忠誠心が天元突破してるように感じる。
事実、リーはレオンハルトに命じられた任務を、100%確実に、寸分の狂いもなく実行するようになっていた。部下や他人に対しては寛容ではあるのだが、己に厳しく、任務を僅かでも達成出来なかった場合、レオンハルトに謝罪を行いながら、自分の不甲斐なさを責める。その度にレオンハルトがフォローし、よくやったと褒めるのだが、その度にレオンハルトへの忠誠心を高める。忠誠心エンドレスな状態だ。
本人は至って真面目で、基本的には常識人のはずなのでハンティも悪くは思っていないが、レオンハルトが言ったことなら、黒でも白と言ったり、完全に信じ込むのはどうかと思う。
戦闘力は高く、軍の指揮も相変わらず長けているので頼りになるのだが、忠誠心があんまりないハンティとしてはバツが悪いためそのノリについていけなかったりする。
逆に、そのことに対抗心を抱くものがいるのだが、
「――リーさん! こちらのお肉はレアの方が美味しいとレオンハルト様が言っておりましたのよ! なのに何故、ウェルダンにしているんですの!?」
と、どうでもいいことで声を荒げたのはレオンハルトと同じ金髪を、ツインテールに結った、青い改造軍服の少女だ。
彼女は、自称、元バトルノートの使徒であるキャロルで、レオンハルトの第一使徒だ。一応は使徒達のまとめ役で、レオンハルトに忠誠を捧げながらも、向上心が強く、常日頃から完璧使徒と称して特訓を続けながら自分を追い込んでいる。
能力的には割りと優秀なのだが、どことなく残念さを感じてしまうのは、彼女の似非お嬢様口調のせいなのか、気が抜けるような馬鹿な行動のせいなのか。とにかく、そんな彼女の注意を受けて、リーは衝撃を受けたのか、見えている左目をかっと見開いた。
「な、なんと……!? では、私は、間違った焼き方をしてしまったというのか……!?」
「ふふん、分かっていませんのね。レオンハルト様は基本的にレアがお好きですが、一部のお肉はウェルダンで食しますの。ちなみにその場合に付けるものはタレではなく、こちらのソースですわ」
「ぐ……私は、なんという罪を犯してしまったのか……!」
「いや、別に罪じゃないし。これも美味しいけどね」
ガウガウが焼かれた肉を普通に食べて、何気なくツッコむ。よく言ったガウガウ。自分では微妙に空気を読んでしまうというかあんまりこの話に口を挟みたくなかったので助かる。
しかしその言葉が聞こえていないのか、リーはテーブルに手をついて落ち込む。キャロルがその正面で腰に左手を当てながら、右手を口元に携え、
「ほほほほ、どうやら、まだまだレオンハルト様への理解が足りないようですわね! わたくしの方が理解していますのよ! まだレオンハルト様が若い頃、様々な食事の好みを語ってくれましたのですわ!」
どやぁ、と自信満々な表情で告げるキャロル。それを聞いて、あー、とハンティも思い出す。そういえば食事を一緒に取っていると、これはこう食べるのが好きだ、とか、色んな食べ物の拘りを口にすることが多く、ハンティも耳にしたことがある。
例えば――“カレーは辛口”、“寿司はさび抜きか、ほんのちょっとだけ入れる”、“お好み焼きにマヨネーズは掛けない”、“唐揚げに勝手にレモン汁かける奴は百回殺す”、“串カツでソース二度漬けする奴も百回殺す”――みたいなやつだ。
ハンティの記憶を遡ると、確かに、肉はレアが好きで、一部の肉だけ結構焼いて食べていた記憶がある。憶えてしまっているのが癪だが、レオンハルトはよく食のうんちくを語りたがるので変に記憶に残ってしまうのだ。
しかしリーは、使徒になって自分達程年月が経っているわけではないため、その辺りの知識がまだ完璧ではないのだろう。そのことを、キャロルに指摘されてしまっていた。
「そんなことでは、まだまだレオンハルト様マスターへの道は程遠いですわね。もっと先輩であるわたくしに追いつけるよう精進するのですわ!」
「……! はっ! 勉強させて頂きますキャロル様……!」
「ふふーん! それでいいのですわ!」
リーに勝利したことで、腕を組んで上機嫌な様子になるキャロル。ようやくその話に決着がついたのか、ハンティも息を吐いて声に出す。
「そもそも、何であたしらだけこんな所帯じみた感じで焼き肉してるのさ」
「レオンハルト様がこういうの好きだからですわ!」
「まあ、レオンハルト様。あんまり形式張ったものは好きじゃないですからねぇ。たまに城じゃなくて街の方の食堂に行ったりしてますし、お酒飲む時も結構普通のもの食べますから」
「いやまあ、分かるけどさ……」
確かに、あんまり豪華なものばかりだと気疲れする気もする。ハンティとしても、そういうのはあんまりだ。マズいわけではないのだが、どちらかと言うと気軽に食べられるものの方が好きで、特に自然なもの、素材を単純に調理したものの方が好きだ。肉とか野菜とか。
なのでありがたいはありがたいのだが、立食パーティの奥でこういうことしてるのは違和感が凄い。というか、
「その肝心のレオンハルトは、それどころじゃないみたいだけど」
「あー……それはまあ……言っちゃうと、私も混ざりたいと言えば混ざりたいんですけどねぇ……先に食べてろって言われましたし、後で出来るんで、まあ今はいいかなと」
「レオンハルト様の命令ですわね!」
「我らも、こうして休むのは久し振りですからな」
と、告げられた言葉、特にリーのものに、ハンティは同意した。実際、
……最近は戦い続きだったからね……。
それを思うと苦い気持ちというか、憂鬱な気持ちが復活しそうになる。
新しい魔王――ジルが発した国狩りの命令で、ハンティ達も各地で人間の国を滅ぼすべく、戦っていたのだ。
レオンハルト軍を率いて各地で転戦を続け、帰ってきたのが今日のこと。ちょっと前には戦いは終わっていたが、別の計画の準備があるということで動かされていた。
それが特に、ハンティを憂鬱にさせる。これから人類に行うことは、考えるだけでも反吐が出そうな所業だ。
魔王ジルはこれまで見てきたどんな魔王よりも最悪だ。それに従わざるを得ないというのも苦い気持ちになる。
もっとも、僅かながらの救いがあるとすれば、カラーについてはそれから免れることが出来たことと、自分達の管理するものに限り、方針の違いから、少しの救いがあるということ。それでも基本的には酷い扱いなのだが、少しでも人が救われるなら、協力しないと気がすまない。
それに、人間がこれから地獄の苦しみに喘ぐ一方で、魔物達はこれ以上ないほどに、喜んでいるのだ。
魔物の繁栄。黄金時代が来るのだと、誰もが期待し、自分達を讃えている。それを無下には出来ない。明らかに、人間を殺すことを好むような悪ならともかく、ここの魔物の殆どは、どちらかと言うと戦いに勝利し、栄光を掴んだことを喜んでいる。人間を苦しめることも、人間が人間にやるような、戦争では当たり前のことしかやっていない上に、軍規を守ろうとする。
街で警備担当として接して、魔軍の将としても接して、悪い奴らではないことは分かっているのだ。ただ、立場が違うだけ。それだけに歯がゆい思いをしてしまう。
割り切ったはずでも、やはり嫌になってしまうのはしょうがないというか止められない。だから憂鬱なのだ、とハンティは奥のレオンハルトを僅かに視界に入れながら、ジョッキを傾けた。むしゃくしゃするので模擬戦してくれないかな、と思いつつ、口にするのは、
「……まあ、レオンハルトはよくやってるしね……」
何しろ、城の人間を守るために――その全員を、
それを思いながら、しかしやはり鬱憤は溜まるなぁ、と、
「はぁ……誰でもいいから痛めつけられながら相手をボコボコにしたい」
「……始祖様、最初と比べて大分変態になりましたよね」
「……はぁ? どこが?」
それだけの強者と戦えたら愉しいだろうなぁ、という意味なのに何を勘違いしてるのだろうか、この娘は。
おそらく、自分が変態だからそんな想像をしてしまうのだろうな、と素直で純真だったあの頃を思い出して染み染みとしながらもちょっとイラッとして、
「あんまりふざけたこと言ってると、鉄板の上で土下座させるよ?」
「拷問! それ普通に拷問ですよう始祖様!? 私、そんなドMじゃないんでNG! どっちかっていうと責めるのが好きなので! ……はっ!? もしかして始祖様はドS……?」
「…………よいしょっと」
「熱っ、あっつ!? え、何今の……って、これヘラじゃないですか!? お好み焼き用で鉄板の縁に置いておいたやつ! あっつあつのこれペールちゃんの柔肌に押し当てるとか何考えてるんですか!? S過ぎますよう!」
「使徒なんだからそれくらいで火傷なんてしないでしょ。というか、そもそもそんなに熱くないし」
ほら、と少し行儀が悪いが、自分でも触ってみせる。するとペールも首を傾げ、
「あれ? なーんだ。始祖様ったら、イタズラが過ぎますよう――って、あっつい!? やっぱ普通に熱いじゃないですか!?」
面白いリアクションを披露してくれる。騙したな、という顔を浮かべたペールに首を振って、
「いやいや、あたしは別に鉄板に手押し当てても別に平気だし、ペールも実際火傷はしないでしょ?」
「火傷はしませんけど熱いもんは熱いですよう! 始祖様みたいな魔人級化け物と一緒にしないでください!」
相変わらずペールをからかうのは面白なぁ、と思う。よくからかわれるのでたまにはお返ししないと気がすまない。
そうやって盛り上がっていると、
「む……コンビ対抗リアクション対決ですの? いいですわ。でしたら次はわたくし達が手本を見せます。ほら、リーさん」
「……構いませんが……何をするのですか?」
「決まってますわ。リアクションと言えば熱湯風呂か熱々おでんと相場が決まっていますの――と、前にレオンハルト様が言っていました。なので、
「…………キャロル様は何をなさるので?」
「わたくしは押す役ですわ! リーさんが、“押すなよ! 押すなよ!”と叫んでいる時に、不意打ちで押してやりますの! 楽しみですわー!」
「…………うおおおおおおお! レオンハルト様! 苦難に挑む私に力を……!」
「何やろうとしてんのよ……」
「でも面白そうなのでやってください! せっかくなので、皆の前で余興ということで!」
「なら私の魔道具を貸してやろう! 瞬時にお湯を沸騰させる魔道具があるからな!」
――そうして宴会は余興ヘと移り、夜は更けていった。
城の戦勝祝いのパーティは、夜遅くまで行われる。
街の方では文字通り、夜通しの宴会が行われ、朝まで飲み明かすどころか、その次の日も騒ぎが続くであろう。魔軍は人類に勝利して大陸を支配。施設の方も、ほぼ完成を迎え、急ぎの仕事は殆どないのだ。
後は人間達を収容していくだけ、となると、今はその前に束の間の休日を取ろうと、全軍に指示が出た。
人間を管理し、魔軍を保つための人員を確保し、交代でそれを行いながらも、休みを入れる。ひょっとしたら、これからの時代はそのような形態で仕事を行うかもしれないと思いながら。
そんな中、その命令を下した男は、パーティから一時抜け出て、城の中でメイド達――下級使徒達に纏わりつかれていた。
「レオンハルト様、お疲れ様ですっ」
「えへへ、レオンハルト様どうする? そろそろ別のことする?」
「私達も、レオンハルト様としたいこと、いっぱいあるんですけどー……どうしますか……?」
「ん、そうだな……」
自分の私室でベッドに腰掛けた魔人レオンハルトは、その直後に纏わりついてくるメイド達を見て、どうするかと呟いた。
城に帰ってきたのは久し振りだが、戦勝パーティを行っていたので、それは仕事の範囲であった。
だがようやく、城の中で久し振りにプライベートな時間を取ることが出来る。
そうなった途端、メイド達は目の色を変えて身体を擦り寄せてきた。
「はぁ……んっ、久し振りのレオンハルト様だー……」
「んー♪ レオンハルト様とくっつくの、幸せです……」
隣に座って腕に抱きつくだけではない。背中から、前から。レオンハルトの首や背中に手を回して抱きつき、足元の床にも座って、レオンハルトの太腿に顔を乗せたり、身体を寄せて、その手を這わせている。
だがこれもいつものことである。大体夜、彼女達が仕事を終えると、担当の者が部屋にやってきて、こうやってレオンハルトに侍って、色々なことをする。
それぞれが、レオンハルトの興奮を煽るために薄着だったり、スケスケだったり、中には下着だったりコスプレしてくるものだが、何もそういうことばかりをするわけじゃない。その時間は謂わば、レオンハルトとレオンハルトに惚れているメイド達による、謂わば恋人同士の触れ合いのような時間である。
普段から多忙を極め、日中は仕事であったり趣味であったり、修行や、身内との語らいに回すレオンハルト。
メイド達も、日中は仕事である。当然、主人と雇い主という関係であり、仕事中の邪魔などは絶対に出来ない。
これはケッセルリンクやレオンハルトの使徒であり、女でもあるキャロルやペールもそうだが、この時間はレオンハルトと個人的なやり取りを交わすための時間であるのだ。
「レオンハルト様、そういえばこの間ね、この子が――」
「あっ、言っちゃ駄目! 駄目だからね! レオンハルト様も聞かないで!」
「私も失敗しちゃって……」
「ん……そういえば、今は新しい下着を履いてるのだけど……レオンハルト様、ちょっと脱がせて見てみませんか……?」
「あっ、誘うのずるい! 私だって、今日はレオンハルト様の為に色々と――」
誰もがレオンハルトとやり取りを行おうと様々な会話を行う。
好きな相手とは色々なことがしたいものである。だからこそ、こうやって雑談したり、時には遊んでみたりもする。特にメイド達は、心より慕うレオンハルトと少しでも触れ合いたいとその欲求を常に持っている。
そして癒やしてあげたいとも。この時間だけは、レオンハルトが何も考えず、頭を悩ませることなく、素直に欲求を吐き出し、気持ちよくなってほしいと。常日頃から人の為、魔物の為、身内の為、そして自分達の為にあらゆる手を尽くしてくれているレオンハルトを、いっぱい愛してあげたいと。それだけが、自分達に救いと幸福をくれたレオンハルトへの恩返しだと、皆が心に秘めている。
皆を守るためだと、下級使徒になることを提案した時も、メイド達は誰もが思ったことだ。
己の全てを、レオンハルトの為に捧げようと。
だからこそ、この時間の彼女達は遠慮もしなければ――とてもいやらしい。
「……あー、レオンハルト様の、おっきくなってる~」
「んっ、もうこんなに……」
「私達で興奮してくれたのね……嬉しいわ」
と、彼女達はそれを見て、誰もが小悪魔のような天使のような笑みを浮かべた。
そう指摘されてレオンハルトは苦笑し、
「……お前らにそんなに触られるとな、そりゃあこうなるだろ」
レオンハルトは己の状況を見て、感じて、そう思う。
彼女達は皆、美しく、可愛い。
レオンハルトの城のメイドは、レオンハルトの部下やナイチサ、ケイブリスなどが大陸中から、千年間もの間集めた――謂わば選りすぐりの美少女達。
その8割ほどが巨乳で、そうでなくとも男なら堪らない美貌の持ち主達だ。
そんな彼女達はレオンハルトの身体に纏わりついている。
そして誰もが、会話を行いながらも軽いスキンシップを行っていた。
軽く唇や頬にキスしてみたり、胸を押し付けたり、細くしなやかな指が、幾つも太腿や内股、腹筋などを撫で回し、レオンハルトの官能を、いたずらに高めようとする。
するとやはり、当然ではあるが、レオンハルトの剣も、徐々に興奮して戦闘態勢を取る。
そうなると、彼女達は眼を輝かせて、小悪魔のような天使のような、色香に満ちた微笑みをレオンハルトに向けながら、
「えー? 別に、普通に触ってるだけだよー」
「主の剣は、メイドの私達が手入れするのが筋ですわ……」
「そうそう、レオンハルト様は、私達に任せて気持ちよくなっていいんですよ」
「あっ、手持ち無沙汰なら、そろそろおっぱい触る?」
さすさす、しこしこ、すりすり――と、彼女達のすべすべの手が、レオンハルトの剣を擦り始める。
10人もの美女達による軽い手での手合わせだが、もはや彼女達の手でレオンハルトの武器は殆ど見えない。しかもそれを、全身に女体を密着させながら行うのだから、その心地よさは単純に擦られているだけに留まらないだろう。
「お前らな……あまり俺を挑発するな。我慢が利かなくなるだろ?」
「あんっ」
「んっ」
言いながらも、レオンハルトが両脇にいたメイド二人の乳房を鷲掴みにする。すると胸を揉まれたメイド二人は、黄色い声を上げた。
「んっ……はぁ……もー、レオンハルト様えっちー……巨乳好きー」
「えへへ、私のおっぱい、どう? 気持ちいい? 私の身体、全部レオンハルト様のものだから、好きにしていいよ……」
「ああ、柔らかくて最高だ」
主に、その手で掴みきれない豊満な果実を捧げるように、彼女達は上体を反らしてみせる。
指が沈み、掴みきれないずっしりとした柔らかさを掌で感じながら、しかしレオンハルトはそちらにだけ注力していられない。周囲では他のメイド達も動き始めていた。
「あぁ、ずるいっ。私達も触ってほしいのに~」
「ねぇ、レオンハルト様、私も触って?」
「私のも……ほら、押し付けてあげるから……私のいやらしいおっぱい、当たってるの分かるでしょ……?」
「ああ……確かに。いっぱい実ってるな」
全身に、彼女達が擦り寄ってくる。
己の身体をすりすりとレオンハルトに擦りつけ、誰もがレオンハルトと戦いたいとアピールを始める。
やはりと言うべきか、久し振り過ぎていつもより誘惑が激しい。誰もが目にハートを浮かべ、早くしてくれと言わんばかりになっている。
中には少しフライングして、メイド服の上側、胸の部分をずり下げて擦りつけているものすらいた。先端の突起や、生の乳が押し付けられ、レオンハルトが僅かに身を震わせながら、周りにいる彼女達の巨乳を愉しむ。
すると彼女達のメイド服も段々と淫らに肌を晒していく。するとレオンハルトの正面にいるメイド達が意味深な、淫靡な雰囲気を醸し出すような笑みや羞恥を見せる。
それを合図に、彼女達はまず自分達のメイド服に手を掛けた。
「レオンハルト様ぁ……ほら見てぇ……私のおっぱい大きいでしょ……? Iカップ、あるんだよ……?」
「それなら私だってJカップはあるんだから、レオンハルト様ぁ……」
彼女達が着ているメイド服。胸の谷間は大きく開かれたその服は、当然、彼女達が持つ豊満な胸でパッツパツに盛り上がっている。
大きな胸に細い腰、女性らしい丸みを帯びた臀部。レオンハルト好みの身体を包む衣服を、一枚一枚、レオンハルトに見せつけるように脱いでいく。
何故こんなことをするのか、というとやはりパフォーマンスだ。
レオンハルトを気持ちよくするために、どんなことでもしていい。だからメイド達は予め、今日はどういう風にするかを相談して決めているのだ。
そして、大体お決まりなのが、この脱衣ショーといえる行為。
いつも冷静で、その上仕事を終えたばかり。まだ仕事モードが抜けきってないため、仏頂面のレオンハルトの官能を高めるために、いやらしく、彼女達は服を脱ぎ捨てる。
スカートにシャツ。靴下などを脱ぎ捨て、下着姿になり、ガーター付きの下着を脱ぎ捨て、最後には胸を晒して全裸になる。
たぷんっ、と弾みながら今までメイド服に仕舞われていた巨乳が解放され、スカートを下げて、あるいはたくし上げて尻をレオンハルトに向けて振っている。
レオンハルトはそれを目にして、僅かに目を細める。分かりにくいが、反応している証拠だ。
レオンハルトは巨乳好き。誰もが知る事実だ。故に、このように目と鼻の先にずらりと美少女達のおっぱいを並べられたら流石に反応は大きい。
もっとも、男であればこの光景は垂涎モノであり、今直ぐに襲いかかってもおかしくないだろうが、レオンハルトは落ち着いてそれを眺める。
主が反応している。それを分かっているメイド達は、主が喜んでいることを嬉しく思いながら、同時に彼の服を脱がせるのだ。
「では、失礼しますねー」
「腕の方、失礼します」
「下も……」
9人掛かりでレオンハルトの服を脱がせるが、そんなに数はいらないはずだ。
だが彼女達はレオンハルトの興奮を煽るために敢えて皆で囲むように服を脱がせる。
胸を触れさせ、少し押し付けてみたり、手でレオンハルトの肩や背中、腹、太腿などをスリスリと擦ったり。そして下を脱がせようとする者達に至っては、明らかに膨らんでいるそれを見て、目をハートにさせながら鼻息荒くそれを曝け出させる。
「レオンハルト様……脱がしますね……?」
と、最後の一枚を脱がせる。
するとそこには、
「あっ……」
「レオンハルト様のもの……」
既に臨戦態勢に入ったレオンハルトの剣があった。
収納されていた刃渡り18センチほどの魔剣。それが解放されたことで、誰もがうっとりとした表情でそれに視線を浴びせる。
この場にいるだけで20人近くの美少女達の視線を受け、主の喜びと血の昂りを示すようにピクピクと揺れ動き、天を向いている。
それはこれから151人の美少女の奉仕を受け、彼女達の最高の女体と戦って征服する――支配者の剣だった。
それが解放された瞬間から、彼女達は本格的な戦闘に自然と移り始める。
「……ちゅっ♡」
「あっ、抜け駆けずるい……」
下を脱がせ、先程から膝を付いたままレオンハルトの剣を凝視していたエクレアが、うっとりとした様子で、その先端に唇を落とした。
レオンハルトが反応を返し、メイドが声を上げる。最初にそれと斬り結ぶことが出来るなど誰もが羨むことだ。自然と、それを行ってしまったエクレアは頬を紅潮させながら、
「んっ、ごめんなさい……見てたら、愛おしくなってしまい……我慢できず……」
「いや、構わないが……そんなに俺のが欲しかったのか?」
そもそも謝るようなことではないが、とレオンハルトは彼女を見下ろして問いかける。しかし返答は別の所から来て、
「当たり前だよー、だってレオンハルト様のこれ、皆大好きなんだもん……ちゅー♡」
「勿論レオンハルト様のモノだからだけどね。皆レオンハルト様のこと大好きだから……ちゅう♡」
「見ただけで濡れちゃいます……んっ、レオンハルト様……早く、私達の身体で癒やされてください……ちゅ♡」
と、何名かのメイドが剣に顔を埋めてエクレアと同じ様にレオンハルトを見上げながらそこにキスを落とす。
美少女達が一人キスをするたびに、ピクッと動き鋭さを増す剣を、彼女達は愛おしそうに見詰めながら、指示を待つ。その間にも眼下では既に剣に舌を這わせての手入れが始まっているが、それぞれが周囲でレオンハルトに身体を、その自慢の乳房を擦りつけ、または手を取って揉ませながら、
「ほらぁ……今日は151人全員相手するんですよ……興奮、しますよね……?」
「どうするの? まずは……おっぱいでも味わうの?」
「くすくす、もう既におっぱい天国だけどねー。乳比べでもする?」
「誰でも好きな女の子から、襲っていいんですよ? 何人がかりでも……ここの可愛い女の子も、綺麗な女の子も、皆レオンハルト様のモノですから」
「レオンハルト様が私達を、レオンハルト様のモノにしてくれたんだもんね……?」
と、彼女達は己の身に刻まれた紋様を感じながらそう事実を告げる。
彼女達に刻まれたそれはレオンハルトの下級使徒である証であり、つまり彼女達はレオンハルトの所有物であることを意味する。
下級使徒という魔物達の上位の存在。それは、レオンハルトの庇護下で守られていることを意味していた。
魔人筆頭兼魔軍参謀として、彼を知らない魔物など存在しない。その威光は、パーティ会場での魔物達の反応を見ても明らかであった。
彼女達に手を出せばレオンハルトが黙っていない。ただのメイドの時ですらそうであったが、更にわかりやすい形で彼女達は守られることとなった。
それを説明され、理解している彼女達は、もはや最大ともいえた好感度を更に増大させる。
もう何でもやってあげたい。自分達を救い、守り、愛してくれた彼に、こちらからも愛をいっぱいあげたい。
その苦労を、悩みを、疲れを、全て癒やしてあげたい――それが下級使徒であるメイド達の総意だった。
戦いを終えて、城に帰っている時であれば、いつだってこうして、レオンハルトに身体を捧げて、癒やしてあげると。
もはやいやらしく、娼婦のようにレオンハルトを誘うことも躊躇わない。それでレオンハルトが喜ぶのなら、誰もが己の身体を武器にして、レオンハルトに襲いかかる。
その一身の愛を受けて、レオンハルトは衝動の箍が外れる。
そこからのレオンハルトは、
「――っ、お前ら……今日は寝れないと思え。存分に愛してやる」
「あっ……」
「んっ、レオンハルト様の、またおっきく……」
より魔剣を肥大化させて、獲物を狙い定めながらレオンハルトは彼女達を抱きしめる。
レオンハルトの剣を舐めていた4人はその自分達を征服してくれるそれにうっとりとして、更に戦闘を激しくさせ、運良くレオンハルトの両脇から抱きついていた2人は、その力強い抱擁に身を震わせて歓喜する。
あるいは彼に触れている者達も、そうでない者達も皆、一様にその言葉を聞いて、お腹の奥が熱くなり、太腿に液体を漏らす。
――そこからは、ただただ熱い時間だ。
「ちゅっ、ん、んんー……れろ、ぷはぁ……レオンハルト様……私達の為に戦って、守ってくれてるレオンハルト様……感謝してます……」
「んちゅ……ちゅる、れろ、……私達の為にも、頑張ってくれてるんだよね。……だから、いっぱい癒やしてあげる」
「レオンハルト様の、美味しい……お汁、飲みたいよぉ……」
「ああ、いいぞ……たっぷり飲ませてやる……ッ」
レオンハルトの魔剣に顔を埋める女の子達が、愛情たっぷりに舌を這わせ、あるいは咥えてみせる。その熱さと、滑らかなものが這い回る快感に、レオンハルトが剣気を放出させれば、
「あんっ……次はおっぱい? レオンハルト様、おっぱい大好きだもんね……」
「全身、おっぱいで埋もれさせて、天国にしてあげますね」
と、次はレオンハルトの好きな巨乳、爆乳の美少女達が寄り集まり、レオンハルトの各部位にたっぷりと自慢の胸を押し付ける。
背中から前から、全方位からレオンハルトの首に手を回して上半身をおっぱいで埋め尽くし、足すらもレオンハルトに抱きつくようにして挟み込みながら、両手を伸ばした先に、おっぱいを差し出して、そのたっぷり実った重柔らかさを掌で味わう。
そして興奮したレオンハルトの魔剣も、おっぱいに包み込まれてしまい、
「あっ、胸の中で大きくなってるー♡ レオンハルト様、これだーいすきだもんねー? メイド服にあんな穴開けるくらいだし」
「レオンハルト様すっごい気持ちよさそうね……全身に巨乳を押し付けられるの幸せ? これぜーんぶ、レオンハルト様のものだからね……? 興奮する?」
「あっ、んっ、腰振り、すごい激しいですわ……! ふふ、わたくしの胸、そんなに犯したかったんですのね……」
「エクレアちゃん、おっぱいおっきいからねー。Lカップあるらしいよ? ――きゃんっ。って、また激しく……」
「私のいやらしい胸の心地はどうですか? 胸の中で受け止めますので、遠慮せずに達してくださいね……」
全身をむにゅむにゅと押し潰すように押し付けられる果実に、官能を高めるレオンハルトだが、その魔剣も即座に包まれてしまう。
たぷん、たぷんと音が鳴り響き、腰の上でバウンドを重ねる乳房や、あるいは己から爆乳に向かって剣を突き立てて攻撃するも、その質量と吸い付いてくるような最高の感触、そして全身に押し付けられ、両手でも揉む快感にあっさりと敗北まで追い詰められる。
おっぱいに埋もれる天国を味わいながら順番に三桁を越える果実を征服して剣気を放出し、あるいは複数人で包まれて放出しながらも、しかし幸せも戦いも、まだ終わらない。
「きゃんっ……レオンハルト様に、襲われちゃう……♡」
「好きな女の子を、好きなだけ征服していいんですよ……♡」
「ほら見て……私の、もう準備万端だから……いつでも突っ込んで、出していいのよ……?」
広いベッドの上で、女の子の上に覆いかぶさると、その下に複数の美少女達がいるだけでなく、レオンハルトの周囲に集まるように、しなだれかかって来る。
誰もが目にハートを浮かべて腰をくねくねとさせてレオンハルトを戦闘に誘う中、そのうちの一人にとうとう剣を突き立てると、チャンスとばかりに攻め手はもう止まらない。
「あっ、あっ、んんっ! レオンハルト様、の、すっごい硬い……あぁっ♡」
「もっと、して、あっ、はぁっ、いいんだよっ……☆ ……んふ、やっ、あっ、広げられてぇ……すごいぃ……!」
「レオンハルト様の本気の素振り、すごいかっこいいよ……男らしくて、全然衰えなくてぇ……んっ、来たぁ……♡」
「はぁ、んっ、レオンハルト様、あぁ、剣の達人、だもんねっ。そりゃ、んんっ! んく、剣の扱いが、上手に決まってるよ……っ、はぁ、最高ぉ……♡」
一人ずつ、激しく愛を与えていく。
下に組み伏せ、あるいは四つん這いにさせて並べて順番に、あるいは上に跨がらせて、様々な型で剣を振るっていく。
その間にも、次々と仕事を終わらせたメイド達が部屋に入室し、服を脱いでベッドの上に上がって戦場へと入っていった。
さすがに151人は入らないが、それでも部屋が女の子達でいっぱいになるくらいには、入室を果たしてレオンハルトの相手を待ってレオンハルトを見詰め、自分を慰めながらそれを待ちながら、心の何処かでこういう意識もある。
――レオンハルト様は汚させない。
彼女達は、レオンハルトを侵食しようと背後でその蠢く影と、戦っていた。
何年、何十年、何百年とレオンハルトと過ごしてきた彼女たちには分かる。
レオンハルトの心に棘を刺し、己のモノにしてやろうとする女の影を。その女の影が、こう言っているのだ。
――これを、私の虜にしてやる。
尊大かつ傲慢に、己の美貌に溺れて、己に忠実な雄にしてやると。
そしてお前達に出る幕はない。有象無象の雌の一匹に過ぎないのだと。
それは確かに、単純な戦闘力であれば、彼女達では到底敵いそうにない強敵ではあった。
しかし、戦いであれば負けない。
長年レオンハルトと肌を合わせた経験は伊達ではないのだ。
たかだかまだ一年、レオンハルトを犯した程度では生娘に過ぎない。
こちとら約千年近い経験がある。例え何百年経とうが、小娘に渡しはしないと。
もし本当に彼が欲しければ、正々堂々と想いを抱き、それを告げてみろ。かつての自分達の様に。
それすら出来ない奴に、ベッドの上で負けはしない。彼女達はそう決心し、だからこそいつもよりも激しくレオンハルトを癒そうとする。
――さあ、かかってこい。
彼女達の武器はその肉体、唯一つ。しかし、一つであって一つに非ず、その武器は、百五十一にも連なっているものだ。
――対するそちらはどうだ?
絶世の美女だとは聞いているが、それがどうした。こちらも美貌には自信がある。
加えてそれが百五十一。しかもこちらはお互いに好きあってそれを行っている。
たった一人で、この物量も揃った愛の集合体とも言える我々に、勝てるとでも思っているのか。プライドが高く、彼に奉仕する度胸もない小娘が。
それでも、奪えるものなら奪ってみろ。
だが決して、彼はお前の思い通りにはならない。
情が湧くことは考えられても、お前の望む通りの結果には決してならない。
それを教えてやる。だから掛かってくるがいい――魔王。
彼女達には彼女達の戦いがある。女同士の戦いだ。
そしてベッドの上では、比喩ではなく、完全に美少女達の女体に埋もれるレオンハルトがいた。
一人ずつ剣で倒していき、しかし敵に囲まれるがその意志は折れぬ無双状態。その幸福過ぎる状況をレオンハルトは全身で、五感で、感じ続ける。
「ん、ちゅっ、あんっ、っ、れろ、んっ……! レオンハルト様ぁ、大好きです……!」
「ちゅる、れろ、はぁ、んちゅ、私達を、ん、下級使徒にしてくれた、あんっ、お優しいレオンハルト様……」
「愛してます……んんっ!」
「お慕いして、はぁ、んっ! おり、ますぅ……!」
全身から愛を囁かれ、それをぶつけるように戦闘を激しくしていく下級使徒のメイド達。
身体の下では、両手に花どころか、両手いっぱいに抱きしめた三人の美しく可愛い女達が、己に身体を、女体を、乳房やすべすべの肌をこちらにたっぷりと押し付けながら、荒い息を漏らして、キスをする。
顔には唇だけでなく、顔中至るところに美少女達のキスを受けて、陶酔するような気分になりながらも、剣を動かして相手を倒す快感を貪る。
背中にも覆いかぶさってくる彼女達の感触を感じ、全身が女体で埋もれる。女体の海で泳いでいるかのようだ。
ふと、室内の嬌声に紛れて、こちらを挑発するメイドの声が耳に届く。
「んっ、はぁ……こんなこと、してもらえるの、きっと、世界でレオンハルト様だけですよぉ……?」
言われ――そうだろうな、と、どこか冷静な思いが脳裏に湧く。
男であれば天国と見紛うような場所が、ここであった。
女体が触れていない場所などほぼ無く、どう動いても快感が湧いてくる。両手を徐ろに伸ばして辺りを適当に触ってみると、誰かのたっぷりと実った爆乳に指が沈み、誰かのむっちりとした太腿や臀部を撫で、それ以外のどこかの肌を触れて、喘ぐ声が聞こえた。
美少女の一人に剣気を放出してそれを抜いてやると、即座に誰かが己の剣に舌を這わせ、あるいは胸を寄せてくる。そしてすぐに別の女性を貫くのだ。
快感が止まらない。
それはレオンハルトの精神を、文字通り癒やすような堪らない心地であった。
……これ、だよな。
レオンハルトは内心で、やはり、と得心に至る。やはり好意があるのとないのとでは充足感が違う。
半強制的に犯される様な愛のないものは、ただ虚しいだけだ。どれだけ快感が強くても己の心に訪れるものは何もない。ただ一時的に満たされないものを誤魔化しているだけ。少し経てばまた負の気持ちが高まり、まだ誤魔化そうと同じことを繰り返し続け、いつまで経っても満たされない。
だがこれは違う。お互いに愛をぶつけるようなそれは、身体だけでなく心も満たしてくれるのだ。
それにレオンハルトは感謝を感じる。151人、この場にいない者も含めて皆が、こんな自分に好意を寄せてくれていることに。
少しでも犠牲が減れば、と始めただけのことで全ては自分の自己満足だ。だから感謝など、する必要はない。ここに残る選択を、自分の意志で選んだからこそ、彼女達は幸せを掴んだ。
その責任を、己は持たねばならない。彼女達を助け、好意を寄せられ、それに応えた責任だ。
下級使徒という己の配下という扱いにしたことも含めて、彼女達に応えなくてはならないし、また応えたいとも思う。
そのためにも、己も彼女達のために、受け身ではなく彼女達を求めたい。
だからレオンハルトはそれをひたすらに続ける。彼女達に、愛を与え、与えられる行為を。
「レオンハルト様ぁ、大好きぃ……」
「……ああ、俺も好きだぞ……っ」
好き、と言ってやると誰もが締め付けてくる。堪らずに剣を動かすと、嬌声を響かせる。
止めるわけにはいかない。何しろまだ何十人と己の愛を受けようと待っている者がいるのだ。
一人一人に耳元で愛を囁きながら剣気を放出してやると、誰もが幸せそうな顔で身体を震わせた後に、脱力する。
それがレオンハルトは好ましいと思った。
そして同時に、彼女達の愛を受けてもうひとつ思うのは――責任だ。
自分には、彼女達を、身内を守る責任があるのだと。
一度拾い上げたからには、最後まで面倒を見てやらねばならないのだと。
例えどんな苦難があっても、己は諦めるわけにはいかないし、失敗するわけにはいかない。
己の失敗は、周囲のあらゆる者達を危険に晒す。
己の行動一つで多くの人の運命を動かすことになるのは、魔人になった時から半ば覚悟していたことだし、時が経つに連れて理解したことではあるが、
……これからは、更に大変になるからな……!
ここからは更に気を引き締めなければならない。なにせ今の魔王は、あのジルだ。
戦争がなくなるからと己を鍛えることを止めることは出来ないし、気を抜くことも出来ない。油断ならない者達が沢山いる。
如何に魔人最強とはいえ、出来ることには限界がある。ある程度であれば越えてみせるという気概はあるが、そもそもそういった事態にならないことに越したことはない。
危険な相手を好みはするが、身内の危機と比べられるものではなく、出来る限りは対策を取る必要はある。
そのための身内でもあるが、これからも、そういった懸念を、己は持ち続ける必要があるだろう。
だが、こうやって城にいる時くらいは、身内との時間で身体と心を休めることが出来る。
食事や睡眠も重要だが、レオンハルトにとっては、守るべきものを再確認することが、何よりも己の心を奮い立たせるものであった。
ジル程度に、心を侵食されてたまるか、と。
彼女に関しても不安はあるが、己を安売りするつもりはないのだ。己の心が少しでも欲しければ、それに相応しい相手でないとレオンハルトは認めない。
ただ求めてくる相手を、レオンハルトは愛すことはないのだ。
それに見合った行動と――“意志”を示す者だけを、レオンハルトは認める。
彼女達はそれを示したが、ジルは違う。そうではなくなってしまった。
しかし、夜が更けていく中で、レオンハルトは僅かにジルのことを思い出し、こうも思う。
もしも彼女が、
――そして次の日。レオンハルトが部屋でようやく休憩を取った頃に、魔軍経由で伝言が届いた。
その内容をレオンハルトはメイド長から耳にするそれは、
「――アポイントメントだと?」
「はい。レオンハルト様に、是非お会いしたいと」
メイド長さんの頷きを、ベッドの上で聞いたレオンハルトは頭に疑問符を浮かべる。
何しろ、そんなことを態々してくる者など、魔物界にはいない。
特に城を訪ねてくるような魔人連中は、皆来たい時に勝手に来るのだ。
精々ケッセルリンクくらいのものだが、彼女の場合は魔軍経由でアポを取ることなどしない。その他の魔人は、ガルティアだろうがレキシントンだろうがカミーラだろうが、勝手にやってきて勝手に用件を済ませようとしてくる。
基本的には我が強く、あまり他人を顧みないのが魔人だ。そんな中で、アポを取るような人物と言えば――と、レオンハルトは考え、浮かぶ答えより先に、メイド長さんに問うことにした。
「……まあいい。それで、相手は?」
「はい。相手の方は――」
と、メイド長さんは告げた。アポを取ったその名を、
「――魔人、ジーク様です」
さすらいの美少女使徒「きゃー!!! とうとうジーク様が登場ですね!」
キャロル「だから、まだ出たら駄目ですの」
ポンコツ上司の世話をする天才使徒「ケケケケ、んもうっ、○○ー○ちゃんは空気読めねーな☆」
シャロン「貴方もまだ駄目ですよ?」
ポンコツ上司の世話をするキチ○イ使徒「およ? 見つかっちった?」
さすらいの美少女使徒「ジーク様ー! 早く私を見つけてください!」
キャロル「貴方まだ生まれてませんの」
さすらいの美少女使徒「ガーン……」
宝石使徒(青)「まあ、ターンで言うなら、まだ私達、○○○○様の使徒の方がベリー早いデース」
ポンコツ上司の世話をするキチ○イ使徒「まぁまぁ、元気出せよ。コオロギでも食べる?」
世界一臆病な使徒「それ食べるの○○ちゃんだけだよ……」
キャロル「だーかーら、まだ貴方達の出番じゃありませんの!」
ラウネア「…………(主に忠実な使徒女子'sの集まり。次回はジーク様)」