というわけで日常っぽい本編どうぞ
ある日の紅魔城。
昼下がりの中庭には小さな影が幾つか集まっていた。
「――というわけでイヴさんの魔法のテストをします!」
「!」
と、肩に藤吉郎を乗せた状態で得意気な顔で告げたのは、魔人レオンハルトの娘である白兎。
そしてそれを受けたのはその友人である人間の少女、イヴだ。
「何がというわけなのかは分かりませんが……」
「はい。言ってみたかっただけですので当然ですね。説明しましょう」
相変わらずちょっと変なところがある子だなぁ、と半目を向けて苦笑するイヴは、しかし以前とは違って支給された可愛らしい服を着ていることから微妙に気分が良い状態だった。
なので特に不満でもなんでもなくその理由を耳にする。それは、
「イヴさんはこの間、魔法が得意と言っていましたし、実際どれくらい適正があるのかを調べてみようかと思いまして。その強さによっては、色々と出来ることも増えますし、イヴさんにとっても良いことかと」
「まあ……そうですね。牧場だと、魔法は最低限のものしか教えませんし、テストもそれに合わせたものになりますから、私のちゃんとした適正が測れたとは言い難いかもしれませんね」
と言って、イヴは頷く。
実際、牧場だと強すぎる魔法は脱走を誘発したり、危険が増えることから初級程度の魔法しか教えていない。
しかしそれでも、適性がないものはそれすらも使えないため、見分けるのは楽だそうだが、それでも選別出来るのは魔法を使えるか使えないかと、使えて手際が良いか、くらいだ。
なので魔法についてちゃんと適性が測れているかは疑問だ。イヴは己を、それなりの才能があると自負しているが、それは牧場の警備で見かけた魔素漢の心を読んで、ちょっとした中位の魔法を知って、おそらくは使えるだろうと判断したことからだ。
牧場内で使ったらバレるので使っていないが、今もその認識は変わらない。詠唱も憶えているし、理論もバッチリのはずだ。
なので今度こそ、イヴは己の得意な部分を見せてやろうと息巻く。心なしか胸を反らして。しかしその際に周囲から、
「あっ、白兎様とイヴちゃんだ」
「相変わらず可愛い~。胸反らして自慢気にしてるし、子供っぽくて可愛いよねっ」
「そうですね、胸の方も可愛らしく――ゲフンゲフン! ……失礼。素晴らしく上品なバストだと……」
「あははー☆ ベアトちゃん、それ絶対聞こえてるし、リムちゃん的にもムカつくからNG」
と、遠巻きに作業をしていたメイド達――1人を除いてどいつもこいつも巨乳がそんなことを口にしていたので、
「……ふふふ、とにかく、魔法の適性が高かったらいいですね。そうすれば、貧乳を馬鹿にする巨乳に天罰を与える魔法を開発しますのに……!」
「……私も応援します。是非頑張ってその魔法を完成させて下さい……!」
「はい、ありがとうございます……!」
白兎と、ガシッと固い握手を交わし合う。出会ってから最高に友情を感じた瞬間だった。
「おお、白兎様とイヴ様が友情の固い握手を……! あれは貧乳同士の誓いですね。間違いない」
「いつまでも何見てやがるんですか!? ぶっ殺しますよ、ベアトッ!」
「おや嫉妬が……ということで逃げさせて頂きます」
と、ベアトと呼ばれたメイドは中庭から二階の窓に跳躍して逃げていった。他のメイドもそそくさと離れて我関せずと言った様子を貫く。
それを苦々しく思いつつも、イヴは白兎の呟く声を聞いた。
「ぐっ……今に見ていることです……母上は胸が非常に大きいですし、その遺伝を考えると私も――」
「!? 裏切る腹積もりですか白兎さん!」
「いえ、そういうわけでは。ただ、もし成長したならそれは仕方のないことです。何しろ成長は本人の意志関係ない不可避なもの。そう、私が成長したとしてもそれは不可抗力なのですよ、ふふん」
「くっ……ずるいです……!」
何という裏切りだろうか。これほどまでに友情が儚いとは。
……いや、でも……この様子じゃ……。
しかしよく考えてみると、こちらより大分年上なのに、未だにこの容姿ということは、成長は期待出来ないのでは? という疑惑が残る。
そんな思いが生まれた瞬間、憎しみは全て消え、代わりに慈愛、憐れむ感情が湧いてくる。
「いや……そうですね。白兎さんが成長するなら、それは喜ばしいことです。応援してますよ」
「……? あ、ありがとうございます。そう言われるとなんだかバツが悪いですね……イヴさんもきっと成長しますよ!」
「はい、ありがとうございますね」
ニコニコと笑みを浮かべて感謝を述べる。
成長が絶望的な相手からの言葉だと思うと泣けてくるくらいだ。
それに比べて、まだ可能性が残っている自分などは、希望に満ち溢れているように感じる。夢は捨てずにいよう。
「……話が脱線しましたが、魔法の適性を調べるために、特別講師をお呼びしました」
「講師ですか?」
「はい。私の方はあまり魔法は得意ではないので、より魔法に詳しい高位の魔法使いを呼んでおきました」
へぇ、と期待の声を上げる。
高位の魔法使いに見てもらえるというのは、一応は魔法を得意だと自負する己としても興味がある。
「では藤吉郎。呼んできてください」
「!」
白兎に指示を受けた藤吉郎が白兎の肩から降りて、中庭からとある部屋の窓に入っていく。
おそらくはそこで待機しているのだろう。一体どのような人物なのだろうと頭の中で想像を張り巡らせる中、イヴは中庭から出入り出来る扉から出てきた二者を見て、目を見開いた。
特に、目に飛び込んでくるというか、目が行くのは先頭を行く一人だ。
緑色のボサボサ気味の髪に、魔女っぽい帽子と白衣。そして今の時代では見ない微妙に露出多めの衣装を着た、明らかに魔法使いの風貌をした女性がそこにいる。
ゆっくりと近づいてきたその相手を見て、イヴは段々と首を下に向けた。
「――あーい、ガウガウさんだよー……ふわぁ……」
「…………」
と、何故なら、大きな欠伸をして挨拶をしてくる相手――ガウガウと名乗った少女の身長が、白兎並に小さい上に、なんだか威厳のない、だらしない感じの相手だったからだ。
思わず言葉を失っていると、もう一人、後ろからやってきた相手が挨拶をしてきた。
「……えーと、あたしはハンティ。一応前にも会ったよね」
「あ……はい。ハンティ様ですね、存じております」
白衣と眼鏡を装備したのは、この間執務室でも出会ったレオンハルトの使徒、ハンティだ。
それに牧場の教育ではそれなりに名前が上がる人物なので、勿論知っているし、かなり目上の立場なので畏まらないといけない。しかし、
「まあ、他はともかく、あたしには楽にしていいからさ。それなりに気を抜く感じで」
「……分かりました。よろしくおねがいしますね、ハンティ様」
なので深く一礼しておいたが、ハンティの方は評判の割に気さくな人の様でこちらをリラックスさせようと笑みを浮かべて気遣ってくれている様子が窺える。
前見た時も思ったが――最強の使徒で、強い相手と見れば問答無用で殴りに行く戦闘狂で、男なんてどうでもいいと言い張り、女子力を逆方向に突っ走ってる直情的な人物だと習ったので、とんでもないゴリラなんじゃないかと思っていたが、格好良くてサバサバした感じの美人さんだ。
やはり評判と言えども当てにならないということだろう。男くらい幾らでも作れそうな感じだし、身長が高いのは素直に羨ましい。
……胸の部分は羨ましくないどころか、自分達よりも下ですね……。
しかし、それも含めて好印象だ。やはり下がいるというのは安心する。
もう一人も、何となくアレな雰囲気を漂わせているが、一応は聞いておこうと、イヴはにこやかな表情で視線を下にも向けた。
「それで、こちらの方は……下級使徒か何かで?」
「ああ、ガウガウはまあ……居候の研究者かな? 一応人間」
「一応か。まあ、私は天才美少女だからな。人間の範疇に入らないのかもしれないな……くくく、自分の才能が怖い……」
「というわけで家の魔法研究者二人、ハンティさんとガウガウさんです」
「…………そ、そうですか」
白兎が二人を差すように紹介するが、ハンティはともかく、ガウガウの方は残念な雰囲気を隠しきれていない。
というかこの人も子供に見えるのだが、また実は凄い年を食ってる魔人の娘だったりするのではないか、と疑念を抱いてしまう。
「――ん? どうした? 私の天才美少女っぷりに見惚れたのか? 何じっと見つめている」
「いえ……あの……失礼ですが、人間で、魔法研究者なんですよね?」
「む、疑ってるのか? 凡人そうな雰囲気の癖に」
「ぼ、凡じっ――……いえ、まあ、随分とお若い様に見えたので……」
凡人と言われてちょっぴりムカついてしまう。こんな胡散臭い人よりは才能ありますよ、と、内心で相手への憤りを愚痴の様なものに変換していると、
「ふっ……ま、しょうがないな。凡人では私の才能を見抜くことは出来ないだろうし」
「……ふふふふ、そうですね。ちょっと分かりませんので、出来ればその才能とやらを見せて頂きたいと思いますが」
今度こそムカッときたので、イヴは笑みを浮かべながらも皮肉を言うようにガウガウに突っかかっていく。
そこまで言うなら見せてみろ、と。どうせ大したことないのだろうと予想し、遠回しに“大したことない”と貶してやろうかと。
それか、もしかしてこの時点で怒るだろうかとも思う。それならば適当に流してやるだけだから問題ないと、イヴは余裕を見せて涼しい顔で反応を待つ。
だが、
「――良くぞ聞いてくれたな!!」
「えっ?」
と、ガウガウは失礼な事を言ったこちらに対して、不敵な笑みを浮かべて腕を組むと高らかに謳い上げた。
「私は天才美少女魔法研究者、ガウガウ・ケスチナ! 歴史に残る付与師であり、今後伝説になる偉人だ!」
「あー……始まった」
「付与師……確か、魔法具を作る人の事を、そう呼ぶと……」
「そうですね、魔法で作られた凄い能力を持つ道具の事を総称してそう言います。主に術式を組み込んで、魔力を注ぎ込んで作るそうですよ」
頭を抱えるハンティと、説明を捕捉する白兎に挟まれながら知識を引っ張り出した。
知識の上では知っているだけとも言えるが、一応はその辺りも勉強しているため、すっと出てきた。
その答え合わせとして白兎が口にしてくれるが、それを聞いて、ですよね、と己の記憶していた知識に間違いがないことを確認すると、更に機嫌良さそうに声を跳ね上げさせたガウガウの声を聞いた。
「くくく、その付与師として最高峰に位置するのがこの私だ」
「……そうなのですか?」
「まあ、一応……」
「ガウガウさんは凄い人ですよ」
ハンティは嫌そうに、白兎は真顔でそれを認めているので、その様子を見る限り本当なのかもしれないとようやく思い始める。
なのでどうしようかと対応に迷ったところで、しかしガウガウはこちらの対応を気にせずに続けた。
「今日はせっかくなので、私の天才的な発明品を見せてやろう!」
「あー、やっぱり脱線した……」
「細かいことを気にするなハンティ! ――よし、ではまずはこれだ!」
「……? なんですか、これ」
「ただの透明な服にしか見えませんが……」
と、皆が首を傾げる中、ガウガウが取り出したのはぴっちりとした透明の服だ。
それは何なのかと視線でも問うと、ガウガウは口端を吊り上げて説明した。
「これは、着て魔力を注ぐだけで透明になれる服、名付けて――“馬鹿にも見えない服”だ!」
「え、透明になれるのですか!?」
「凄いです……!」
「ふふん、そうだろうそうだろう! もっと褒めていいぞ、白兎!」
イヴが純粋に驚く横で、白兎は目をキラキラとさせて興奮している。しかし、
「いや、白兎には見破られると思うけどね……」
「……え……あっ」
ハンティが良い辛そうに指摘すると、白兎も気づいた様に短い声を上げる。イブも内心で、
……まあ、元から目が見えなくて、他の感覚で相手の位置や空間を把握してる白兎さんには、透明化は意味ないかもですね。
とはいえ、透明化だけでも充分凄いと思う。ワクワクしていた白兎は気の毒だが。少し慰めてやるべきかと思っていると、ガウガウが少し狼狽えて、
「で、でもだな、透明になれるのは本当で――」
「しかもそれ、一度透明になると24時間は透明になりっぱなしで途中で解除出来ないんだよね。服を脱ごうと思っても脱げないしで実験した時は大変だったなぁ……おまけに、解除された時には――」
「仕方ないだろぉ!? 凄い効果には代償は付き物なんだよっ! だからこれは失敗作じゃなくてちょっと面倒なだけ!」
染み染みと遠い目で口にしたハンティに、ガウガウが全力で言い訳をする。
その言い方だと失敗作にも聞こえなくはないが、
「確かに、充分凄いですけどね……」
「! お前は分かっているじゃないか! くく、ハンティよりもよっぽど物分りがいいぞ!」
「はぁ、ありがとうございます……?」
率直に凄いものは凄いと言っただけだが物凄く褒められる。一応お礼を返したが、そこまで喜ばれるのは不可解だ。褒められるのが滅茶苦茶好きなのか、褒められたことがないのか。そんな疑問を抱いているとハンティが、ガウガウの発言に対し呆れ顔で、
「あんまり褒めるとサボってぐーたらし始めるからあんまり褒めないでね」
「何故だ!?」
「今言ったでしょーが……」
……なるほど。何となく、二人の関係性が見えてきましたね……
要するにガウガウがトラブルメーカーというか、ちょっと変わってるというかイカれている方で、ハンティはそれを止める方で、苦労人であるということだ。
自分と白兎で言うと、常識人の自分がハンティで、変人の白兎がガウガウ。そんな感じだろう。
そうなってくるとハンティに親近感が湧いてくるから不思議だ。親しみやすいし、この人と仲良くするのもありかもしれない。
「はぁ……とりあえず、本題に戻ろうか。イヴだよね。魔法は何が得意?」
「あ、はい。一応は火の魔法が得意ですね」
「オッケー。それじゃあ、
「はい。……はい?」
自然な流れだったので一度は頷く。やっぱり、常識人相手だと話が早いなぁ、と。
しかし、よく見るとおかしかったので問い返すように首を傾げるも、ハンティも疑問を抱くように、
「? どうしたの? 調子悪い?」
「い、いえ……その……調子は良いんですが……ま、魔法撃つんですか?」
「そりゃあ見てみないと分からないしね。……あ、なるほど。耐久性の心配してる? 大丈夫だよ、これ丈夫だから。こんな感じで――白色破壊光線!」
と、ハンティが軽い調子で最上級魔法を発動させる。
白の光線がそれにぶち当たり、思わずイヴは“ひっ!?”と怯えて白兎の後ろに隠れる。
白色破壊光線は何も壊すこともなく、無事にその大きな壁のようなものに打ち消されたが、それを見てハンティは笑顔で言う。
「ほら、大丈夫でしょ。こんな感じで魔法撃っちゃって」
「い、いいいいや――ひぃっ!?」
と、イヴが声を震わせながら白兎の背中越しに断ろうとしたが、壁が動いたことでもう一度悲鳴を上げる。
その魔法を打ち消した壁はゆっくりと起き上がって頭をこちらに向けると、その口を大きく開けて声を飛ばした。
「――ん……やはり同胞か……。お前はまた魔法撃ってきたのか……寝てる時にやるなっていつも言ってるではないか……」
「だって、ライゼンの身体ならどこに当てても大丈夫だし。庭の植物とか花に被害与えても駄目だし、建物も壊したら駄目だしね」
「いやだからな……寝てる時に火とか光の魔法で“伝導超過”発動してしまうと気分的にあまりよくないんだ。睡眠中からいきなり血の巡りが早くなるし……だから殴ったり魔法放つなりで襲撃掛けるなら、せめて起きてる時にしてくれないか……? 襲撃自体は許すぞ。諦めたしな」
「? 嫌だけど? というか、ドラゴン的には勝負仕掛けられるのって名誉でしょ? 断らないんだからいつ挑んだっていいでしょうが」
「……俺が言うのもなんだがな――いつでもドラゴン脳はやめてくれ、頼むから……!」
と、巨体故に大きな声を上げて懇願するのは、巨大なドラゴンだ。
ライゼンと呼ばれるこの城の中庭に住み着いているそのドラゴンは、非力な人間でしかないイヴにとっては分かりやすい恐怖の形だった。
魔人とか使徒の方が身近な分、あまり恐怖はないが、ドラゴンという非現実的な存在を見て、しかもこれだけの巨体となると本能的な恐怖が襲ってくる。
ハンティと気さくに会話をしているところを見ると良い人――良いドラゴンなのだろうが、まだちょっと慣れない。
というか話を聞いてるとハンティの方もヤバい人の様な気がしてきて戦慄する。
「ま、まさかハンティさんまで頭がヤバい人だったとは……」
「ハンティさんは凄くヤバい方ですよ。最強の使徒の方ですし、強い相手と見るや積極的に勝負を挑んでくるバーサーカーみたいな人です。別名は始祖様とかカラーゴリラとも呼ばれているらしく、色んな意味で人気のある方です」
「まともな人はいないんですか、この城には……?」
白兎の背にしがみつきながら恐る恐ると問いかける。今のところ普通の人間がいなくて何とも言えないのだ。
すると白兎は考え込んだ末に、
「うーん……あっ! 料理長なら凄く優しくて良い人ですよ! お腹が空いてる人を放っておけなくて、とても強くて優しくて、家庭も持ってる上に料理が上手くて、皆に認められてる人です!」
「……本当に? 人間じゃなかったりしませんか?」
疑ってかかってしまうこちらに対し、白兎は自信満々に頷く。
「はい、確か人間だったかと思います。魔法も使えたと思いますし、良い機会です。紹介致しましょうか?」
「……そう、ですね。お願いします」
まだこの城に来て日が浅いが、ここの料理は口にしている。
あれだけの絶品料理を作っている料理長。しかも家庭を持っていて人間であれば、きっと普通の人だろう。
なので期待を込めて、イヴは白兎に紹介をお願いした。
――だが、
「フハハハハハハ!! 白兎様の御友人の方ですな!! 初めましてッ! 私が料理長ですッ!! 少し痩せ気味というのもあって、料理を振る舞いたいのですが構いませんか!? ミシュラン一族に伝わる調理法の一つ――“ジェノサイドミキサー”を使った栄養たっぷりの料理を振る舞いますぞ……ッ!」
「先程はどうも。私が料理長の娘のベアトリス。ベアトとお呼び下さい。お近づきの印に、私流のエロ調理術をお見せしたいのですが……発禁指定なので――え、イヴ様は15歳? あ、ちょっ!? メイド長様、連れて行かないで下さい! それならそれでやりようがあると言うもの――」
「…………は、はい」
白兎は目の前に現れた二メートル超の化け物と、その娘と名乗り、何故か服を脱ごうとしてメイド長さんに連れて行かれた痴女を無視して、白目を剥いた。
そして小声で聞こえるだろうと白兎に声を掛ける。
「は、白兎さん……これ、人間じゃないですよね……!?」
「……? いえ、立派な普通の人間ですよ。父上が一応人間だと言っていましたし、生物学上は人間らしいのでちゃんとした人間です。声が大きいのが私的にはちょっとアレですけど」
……そ、そういう問題じゃないですよね……!?
イヴは人とは思えない巨体とあり得ない程の筋力で行われるあり得ない動きと轟音から放たれる調理法とやらを見て、完全に頭をショートさせた。
そして傍らにいる白兎を見て思う。
……もしかして白兎さんって、かなりマシというか癒やし枠なのでは……?
殆ど確信に近い思いを抱きつつ、まともな生物がいない中庭の風景を見て、イヴは涙目のまま固く誓う。
「……白兎さん、私達、仲良くしましょうね……」
「っ!? は、はいっ! よく分かりませんが、う、嬉しいです……!」
――その日の一件。白兎からすれば、これから魔法の才能を見てそれを存分に褒めることで親交を深めようと思っていたのだが、その前にそれを達成できて、困惑しつつも嬉しい想いを得る。
――なおイヴは後日、きちんと魔法の才能は認められた。
しかし、たまにガウガウとハンティの研究室で助手としてサポートすることになり、部屋で頭を抱えることになるのだった。
「……前途多難です……」
スラル「――さ、お仕置きも終わったし、行くわよ」
レオンハルト「ど、どこに……?」
スラル「決まってるでしょ」
レオンハルト「ど、どこに……?」
スラル「――――ベッドよ」
※スラルちゃんの暴走は一先ずこれで終了ですが、たまに暴れます。次回は何するか未定。これから考えて書くので