※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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毎回決まった時間に投降しようとはしてるけど、間に合わない時は次の日とかに回すか、直ぐに投稿するかで迷うやつ。
というわけで本編どうぞ



姉妹喧嘩の結果

 紅魔城の中庭には、見上げる者達の視線が集中していた。

 

「ねえ、何あれ……?」

 

「あれ、サイゼル様とハウゼル様じゃない?」

 

「何か戦ってるけど……誰かに知らせた方がいいよね?」

 

 と、まずメイド達が最初に空を見上げた上で、報告しようと何名かが城の中へと戻ろうとする。下級使徒ではあるが、ただの人間である彼女達に、魔人の喧嘩をどうするかなどの判断はつかないものだし、どうにか出来るものでもない。

 故に誰か上の者に報告しようとしたのだが、上空での異変を察知し、既に城にいる使徒達は中庭へと集まってきていた。

 そして周囲のメイドと同じ様に空を見上げながら集合するなり、

 

「戦ってますわね」

 

「戦ってますねぇ」

 

 キャロルとペールが、呑気にサイゼルとハウゼルの喧嘩を見上げて呟く。

 空では拡散する炎と、収束する氷が激突し、音を中庭まで響かせている。

 何故喧嘩しているのか、と理由が不明だし、出来ればそれを止めたほうがいいと理解しているが、

 

「……あれだけ高いところで戦っていると、さすがに手出しが出来ませんな」

 

 と、同様に見上げながら呟いたのはリーだ。

 魔人級の戦闘力がある使徒でも、飛べるわけではないし、そもそも無敵結界があるので止めれるかどうかは微妙なところである。

 

「レオンハルト様は魔王城にお勤めに行ってますし、どうにも出来ませんわ!」

 

「大声で呼んでみたらどうです? キャロル先輩、声大きいですし」

 

「なるほど、やってみますわ――サイゼル様ーーーー!!! ハウゼル様ーーーー!!!」

 

 と、キャロルが一度大きく息を吸い、その後に大声を空に放つ。

 高音かつかなりの声量で放たれる声は、上空で戦う二人の魔人に声を届かせるのに十分だった筈だが、

 

「……反応はありませんな」

 

「むぅ……失敗ですわ」

 

「相手しか見えてないかもですねぇ」

 

 見上げ、反応がないことに皆で唸る。どうしたものか……と、皆で次の案を出そうとしていると、

 

「……あたしなら飛べるし、あそこまで行けるんだけど?」

 

 と、ハンティが真顔でそれを指摘する。

 だがそれを言うと、皆が微妙な顔をした。特にペールが、

 

「駄目ですよう。始祖様、相手が強い人の場合、止めるんじゃなくて戦いに行こうとしてるじゃないですか。場合によっては被害拡散しますし」

 

「……別に、そういうわけじゃ……ただ、止めようとしたら抵抗されるし、叩きのめさないと捕らえられないじゃない? だから無理矢理こう――ボコボコってするだけよ」

 

「なんかそれっぽいこと言ってますけど、戦ってる時すごい楽しそうにしてますよね?」

 

 今度はペールが半目でそう指摘すると、ハンティは、うっ、と怯み、しかし眉を立てて反撃した。

 

「仕方ないじゃない! 合法的に暴れられるの気持ちいいんだから!」

 

「完全に主張が危ない人じゃないですか!? そんなんだからカラーゴリラって言われるんですよう!?」

 

「ハンティ様……最近、開き直ってますな……」

 

「元気なのは良いことですわ!」

 

 もはや完全に戦闘狂染みた危ない人の様になったハンティにペールがツッコミを入れ、リーが渋い表情になる。キャロルがうんうんと頷いているのがよく分からないが、後輩が元気である分には細かいところは気にしないのだろう。

 

「とはいえ、どうしましょうか……魔法でも撃ってみます?」

 

「……飛行魔物兵を招集し、投降を呼びかけるというのは如何でしょう?」

 

「もしくは、全員で力を合わせて、空に向かって料理長をぶん投げますの! 驚いて喧嘩を止めるかもしれませんわ!」

 

「……何だろう。キャロルの案が一番上手くいきそうな気がするのは……もしくは、やっぱりあたしが――」

 

 と、皆で案を出し合い、もう仕方ないから戦闘狂を解き放つかを悩みかけたところで、

 

「――なら、私がちょっと行ってくるわ」

 

「え……あ、ちょっと!」

 

 不意の声の持ち主が、そう言うなりハンティの制止を無視して羽を駆使して空へ上がっていく。

 それを見てペールが、

 

「ああ……まあ、話を聞いてくる分には適した人材ですし、良いんじゃないですかね。しばらくはこっちに被害はこなさそうですし、駄目なら別の案出す感じで」

 

「いや、あたしでも話くらい聞けるんだけど……」

 

「ハンティはカラーゴリラだから無理よ。何だかややこしい話みたいだし――私みたいな、いい女じゃないとね」

 

「誰がカラーゴリラよ!?」

 

 と、態々ハンティを小馬鹿にした様な声を送ってきたことで、ハンティがイラッとした声をぶつける。

 それから逃げるようにして空に上っていった彼女に、周囲の面々は、とりあえずどうなるかを見守ることにした。

 

 

 

 

 

 空の上では、魔人同士の戦闘――姉妹喧嘩が続いていた。

 分厚い炎の壁を展開し、中距離を保つように空を行き、サイゼルを追い詰めていくハウゼルは、姉の強さに中々の苦労を強いられていた。

 ……やりますね、姉さん……!

 言葉には出さないが、内心でその強さを口にする。姉の戦い方は、少しだけ、自分より慣れたものであるからだ。

 やはりレオンハルトと模擬戦をしていたというのは事実なのだろう。その結果に、やはりレオンハルトさんは凄いな、と感嘆を得るし、姉の強さも良いことだとは思う。

 しかし一方で、姉が自分に内緒で、レオンハルトと過ごしていたことには憤りの様なものを感じてしまい、

 

「っ、そろそろ諦めてください! 今日は、私がレオンハルトさんと過ごすんです!」

 

 言葉とともに、炎をお見舞いする。

 先程から続く戦闘で、ハウゼルも戦いには慣れてきたし、己の力の振るい方にもコツが掴めてきた。

 周囲に炎を広く展開し、常に有利になるように位置取りを行う。放射状に放てる炎は、攻撃にも防御にも使える万能の武器だ。

 相手の遠距離からの攻撃は炎の壁で防御し、近づいてくる相手にも、炎を展開すれば相手は近づくことが出来ない。触れるだけで相手を傷つけることの出来る炎は、盾として優秀だ。

 だが、

 

「っ、あたしが一緒に過ごすのよ! あんたは留守番でもしてなさい!」

 

「! くっ……」

 

 サイゼルの氷のレーザーが、炎の切れ間を通すように飛んでくる。

 何とか躱すことは出来たが、中々に難儀させられる攻撃であった。

 サイゼルの氷の力、“氷結の女神”から放たれるレーザーは“燃える塔”の放射状の炎とは違って、高速かつ集中されたもの。

 防御に関しては、広く展開出来る分ハウゼルの方が有利だが、攻撃速度、連射性能はサイゼルの方が上であり、ハウゼルは早い判断を迫られる。

 距離にもよるが、レーザーを撃つのと同時に炎を放つのでは、若干遅い。かなり直前で、レーザーを防御することになるのだ。

 炎も遅いわけではないし、激突すれば両者ともその攻撃を止められるのだが、どちらかと言うと迎え撃つのが得意なハウゼルの性質は、どちらかと言うと攻め立てるのが得意なサイゼルに押されていた。

 それでも狙いが甘ければ問題ないのだが、サイゼルの狙いは悪くないものであり、ハウゼルの練度の低さも相まって、どちらかと言うとサイゼルの有利とも言える状態になっている。

 しかし勝負の行方はまだ分からない。サイゼルの方は勝てると思っているのか、更に攻撃を激しくしているが、ハウゼルは少し構えて、動きを見切ることに集中し始める。

 

「姉のあたしが勝つんだから……!」

 

「いえ、私が勝ちます……!」

 

 どちらも勝つために、全力を尽くしているそんな時。

 

「――貴方達、そろそろ止めたら?」

 

「っ!?」

 

「なっ!?」

 

 と、不意に、声とともに、空を斬り裂く第三の攻撃が飛んできた。

 炎と氷の間を通るように飛んできた攻撃は――大型の鎌だ。

 お互いしか見ていなかったサイゼルとハウゼルは、それに驚くように距離を取り、間に入ってきた相手の姿を見た。

 

「あんた誰よっ! 邪魔しないでくれる!?」

 

「っ、貴方は――」

 

 サイゼルの方は露骨に追い返そうと敵意を見せたが、ハウゼルの方は間に入ってきた相手を見て、若干の躊躇いを見せる。

 見知った顔であったからだ。

 

「……男の取り合いはまあ別にいいけど、そのための手段が戦闘ってのは女子力がとても低いわ。――愛しのレオンハルトに嫌われるわよ?」

 

「は……はぁ!? あ、あああ、あんた、何言ってるのよ!?」

 

「い、いいい愛しって……そ、そんなの……!」

 

「あら、可愛い反応。初心なのか、自覚無しなのか、どっちかしら」

 

 したり顔で告げるその女性に、両名とも顔を赤くしてしまう。

 

「そ、それよりあんたは誰なのよ……!」

 

「私? 私は――」

 

 と、女性は不敵な笑みを浮かべて告げようとする。

 だが、ハウゼルにとっては知ってる相手だ。

 人間とほぼ変わらない姿を持つ女性だが、その肌の色は白だが、少し暗い色となっている。身長は低めだが、スタイルの良さ、特に胸は大きく、露出の高い衣装を身に着けている。

 だが特徴的なのは、額に青いクリスタルを持つことと、長い耳、頭から生えている2本の角と、背中から生えている蝙蝠のような羽、そして尻尾だろう。

 身の丈を越える大きな鎌を肩に抱え、本を片手に持つのは、彼女が図書室の司書であるからだ。

 その者の名は、

 

「インデックス。紅魔城の図書室の司書と――()()()()()()()()()。よろしくね?」

 

 

 

 

 

 インデックスは二人の魔人の喧嘩を一時的にでも差し止めることが出来たことに、僅かな安堵を得る。

 だが、図書室の常連で面識のあるハウゼルの方はともかく、面識のないサイゼルの方はこちらに向かって眉を立て、いつ攻撃してくるとも知れない状態だ。

 故にどうにかして冷静にして、喧嘩を完全に止めさせないといけない。

 別に命令されたわけでもないが、レオンハルトの女としては当然のものだ。

 ……点数稼ぎ、とも言えるわね。

 その微妙にせこせことした思惑を、インデックスは恥じない。

 好きな男に尽くすのは、いい女であれば当然のものなのだ。

 そのために、インデックスはカラーとしてこの城に来るのではなく、悪魔となったのだから。

 

 ――それは数百年前のことだ。

 

 カラーの女王としての任期を終え、後継者に女王を継がせたところで、インデックスは考えた。

 今のまま、レオンハルトの元に行き、下級使徒となることは出来る。

 それだけの交友を深めてきたのは無駄ではないし、前に遠回しに聞いた時も許可は得られたのだ。

 だが、まだ一番になるには程遠く、使徒になるにも好感度は低いような気がした。

 これで子供でも出来れば良かったのだが、やはり魔人の子を孕むには確率が低いようで、子宝には恵まれなかった。

 しかも別の女に先を越されてしまい、インデックスとしては歯噛みしたい気持ちになる。

 親交をもっと深めたいが、下級使徒のままそれを成すというのは、中々に難しいことのように思えた。下級使徒の好感度が低いわけでも、蔑ろにされるわけではないが、どうせなら、好きな人にとって唯一無二の特別になりたいと思ってしまうのは女として当然のことだろう。

 だからこそ、インデックスは考え、ちょっとした賭けに近い策を講じた。

 レオンハルトの城に掛かっているという永久保護魔法に入ることなく、変化の時を迎えたのだ。

 そして天使か悪魔のどちらかになった上で、レオンハルトの元に行く――という策だ。

 結果的に、それは成功したと言える。個人的には天使になると思っていたので、悪魔になってしまったのは甚だ遺憾であったが、ともかく成功したのなら良い。

 悪魔になり、悪魔としての生を新しく迎えたところで、インデックスは魂の回収任務としてレオンハルトの元へと行き、真の名を教えて、彼の使い魔となった。

 悪魔は真の名というものがあり、これを知られて契約を結ぶと、絶対の服従を誓うこととなる。

 これを無視すれば灰となって死んでしまうらしく、中々に怖いデメリットだが、好きな男に服従するなら何のデメリットでもない。

 むしろこうすることで、下級使徒の様に城に籠もるのではなく、外に自由に行くことが出来るため、レオンハルトとともにいる時間を増やせるし、悪魔となって戦闘力もかなり向上したため、単純に役に立てる。

 悪魔の任務とやらは鬱陶しいが、強制というほどでもないし、頑張って階級を上げてみるのも悪くない。

 ただ命令されるのが大嫌いなため、やるとしても自発的にやるのみだ。

 今は第五階級だが、もう少しあげて第三階級にでもなれば、悪魔界に領地を貰えて部下もつくらしいし、それも悪くない。その地位や部下を使ってレオンハルトの役に立つことが出来るのだ。

 ――とはいえ、今はこの二体の魔人の喧嘩を止めるのが先だ。

 どうやら二体ともレオンハルトの事を少なからず好いているような気がするし、ライバルとなるため、蹴落とすのが正解だとも思うが、

 ……良い女は、そんな卑怯なことはしないわ。

 そう、やるなら出来る限り正面勝負だ。

 自分を如何に魅力的に見せるか。アプローチを掛けて、口説き落とす。

 そのためなら天使だろうが悪魔にだってなるし、こうやって魔人の喧嘩を止めることだってする。

 何故なら良い女だから、とインデックスは二体に聞こえるように声を送った。

 

「男を落としたいなら、他の事で勝負するべきよ」

 

「な、何言ってるのよ! 邪魔だからどきなさい! どかないと――怪我するわよ!」

 

 と、サイゼルの方がレーザーを放ってきたので、インデックスは咄嗟に大鎌を振るう。

 

「危ないわねっと……!」

 

「っ……! 邪魔なのよ!」

 

 はぁ、とインデックスはレーザーを弾いて、溜息をつく。

 

「……やめといた方がいいわよ? 私は悪魔だから無敵結界は突破出来るのだし」

 

 そして言うのはちょっとした牽制というか忠告だ。

 魔人に備わる無敵結界は、悪魔には通じない。

 実際に戦えば、多分だが自分は負けるかもしれないし、やられても困るのだが、こう言っておけば少しは躊躇するだろう。

 

「そ、そんなの……知らないわよ! 邪魔するならまとめてやっつける! 折角、ハウゼルに勝てるかもしれないんだから……!」

 

「あら、中々の脳筋ね。私の親友のカラーゴリラと良い勝負だわ」

 

「――ぶっ殺すわよ!?」

 

 眼下から怒声が聞こえてくるが、無視する。というかどんだけ地獄耳なんだ、とこちらがツッコミを入れたい気持ちになるが、

 

「……貴方もやるのかしら、ハウゼル?」

 

「っ……私、は……」

 

 サイゼルの方に身体を向けながらも、ハウゼルに横目で語りかける。

 どうやら見知った者が割って入ってきたことで、ハウゼルの方は少し冷静になり、これ以上続けることを躊躇しているようだ。

 これならば、喧嘩を止めることも難しくないような気もする。

 しかし、

 

「やらないならあたしの勝ちだからね! レオンハルトと付き合うのはあたしよ!」

 

「は、はぁ!? どうしてそうなるんですか! ふざけないでください姉さん! レオンハルトさんと付き合うのは私です!」

 

 と、サイゼルの言葉を受けて、ハウゼルが再び張り合い始める。それを見て、

 ……何か、聞いてるだけだと、完全に雄を取り合う雌の構図ね。

 何となく、レオンハルトとの時間を奪い合っているのは理解しているが、本質的にはそれで間違っていないかもしれない。

 まあレオンハルトは優秀な雄だし、初心な雌が惹かれるのも、同じ雌として理解出来るものだが、にしても初々しくて可愛らしく感じる。

 一瞬、“このまま放っておいてもいいんじゃないか”とも思うが、一応は魔人の喧嘩で危ないため、インデックスはそれを止めるために、言葉と鎌を放つ用意をする。

 無敵結界は突破出来るとはいえ、魔人との戦いとなると厳しいことに変わりはないのだ。

 

「ふぅ……少し、冷静になってもらわないとね」

 

「あんたも敵ね! だったら、先にあんたから――」

 

「っ!」

 

 と、サイゼルがこちらに向かってぐんぐんと距離を詰めてくる。

 魔人の飛行する速度は中々に高速で、直ぐに距離が縮まろうとする。

 しかしその時、インデックスはそれに気づき、声を跳ね上げさせた。

 

「――急に飛び出したら危ないわよ!」

 

「はぁ!? 何を言って……――っ!?」

 

 と、次の瞬間――サイゼルは横から飛んできたものに気づいた。

 それは、自分達よりも遥かに大きい飛行物体。

 真っ直ぐと中庭の上空に向かってくる高速の生物。

 それを見る皆は、“あっ……、あのタイミングは……”と、次の瞬間に起こる事件を想像した。

 サイゼル自身も、迫りくるそれをスローに感じながら、

 

「へぷっ――!?」

 

 ガンッ、とぶつかり、ボールのように空中で跳ね飛ばされた。

 無敵結界により、ダメージこそないが、巨大な飛翔生物に激突したサイゼルは、涙目になりながら空中で吹き飛んでいく。

 それをぶつかってからようやく感じた巨大飛翔生物であるドラゴン――ライゼンは、

 

「――ん? 今……ひょっとして、何か当たったか?」

 

「ね、姉さーーーーーん!?」

 

「うわぁ……人身事故……」

 

 思わずハウゼルが叫び声をあげ、インデックスや、地上にいる者達がドン引きしながら呟いた。

 

 

 

 

 

 外から帰ってきたライゼンは、自分が事故を起こした事を少しして理解した。

 自分は、何かの生き物を跳ね飛ばしてしまったのだと、

 

「こらあーーー!? ライゼン、あんた何やってるの!?」

 

「思いっきり轢いてましたねぇ……」

 

「無敵結界があるから大丈夫だとは思いますが……なければぐちゃぐちゃですな……」

 

「逮捕! 逮捕ですわ! 轢き逃げで逮捕ですのよ!」

 

「に、逃げてはおらん! そこだけは主張させて貰う……!」

 

 地上から非難の声が上がり、ライゼンは冷や汗をかいてしまう。

 ……何たることだ……よもや、飛行中の事故を起こしてしまうとは……!

 空を生きる者としては恥ずかしいことだった。

 かつて、ドラゴンが多く生きていた自分達の時代では、この手の、飛行中に誰かと誰かがぶつかったという事故はあまりにも多く、それが原因による喧嘩も絶えなかったため、激突事故は罰則を設けたり、皆で“安全飛行月間”と称して気をつけたりしていたものだが、それを施行していた自分が、まさか事故を起こすとは夢にも思わなかった。

 横では、確か新たな魔人であったラ・ハウゼルという女子が、自分が轢いてしまい、涙目で飛んでいった姉を呼んでいるし、悪魔となったカラーの娘は、呆れるように肩を竦めると、半目をこちらに向けて、

 

「私……第一発見者とかで事情聴取受けるのかしら? ねぇ、なんて言ったら良いと思う?」

 

「む、むぅ……すまぬ……この辺は、空を飛ぶものが少ないから、注意を怠ってしまった……」

 

「ね、姉さんは!? 姉さんは無事ですか!?」

 

 と、ハウゼルなどは姉の安否が心配なのか、空中でおろおろとしてしまっている。

 言われてライゼンも、皆とともにサイゼルの姿を探していると、

 

「…………」

 

「あっ、姉さん!」

 

 ふらふらと、墜落した平野から戻ってきたサイゼルを見つけた。

 その身体に、怪我などはなく、

 

「良かった……姉さん、無事だったのね」

 

「ふぅ……怪我は無かったか……」

 

「だからといって、罪は軽くなりませんのよー!」

 

「そうですよう、ライゼンさん! 大人しく下に降りて来て下さい! 速攻で免停しますから!」

 

「ぐ、ぐぅ……こんな筈では……」

 

 これだけ身体が大きいのに、一度も事故を起こしたことがないというのが自慢だったのに、まさか前科者になってしまうとは、とライゼンは項垂れる。

 しかしそんな横で、サイゼルは空中で立ち止まると、こちらやハウゼルを見て、

 

「――う、うわあああああああん! もう嫌ああぁぁああああ! い、家出、家出するーーー!」

 

 泣きながら、ぴゅーっと逃げるように物凄い勢いで空中を飛んでいってしまった。

 それを見て、ハウゼルが、

 

「ね、姉さん? あ、ちょっと……ど、どこに行くんですか!? ね、姉さーーーん!?」

 

 誰も止める暇もなく、姉が飛んでいってしまったことでハウゼルが戸惑いを見せる。

 その結末を見て、インデックスが、大きくため息を一つ、

 

「……喧嘩は止まったけど、面倒なことになったわね……」

 

「す、すまない……」

 

 ライゼンはただ平謝りをするしかなかった。




ギリ○ム「事w故wはwほwら、起wこwるwよ~♪ いきなり来る~wwwww」

マギー○ア「事故がほらwww、起きるよ~♪ 突然さ~♪」

七○「……運がない時は、しょうがないー」

カ○ーラ「事故がもし起きたらー、落ち込まないでー……♪」

ノ○「いい気になってるとー」

アベ○「調w子w乗wっwてwやwっwてwるwと、バチが当たる~wwww」

ハ○ティ「……忘れてると事故は起きるさー」

ライゼン「き、貴様ら……!」

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