というわけで本編どうぞ
大陸西部の森で迷子のサイゼルを連れ帰り、城に帰ってくる頃には日は完全に沈んでいた。
そして帰るなり、待っていたハウゼルと顔を合わせると、二人は微妙な、バツが悪そうな様子で視線を合わせ、
「そ、その……ごめんなさい、姉さん……」
「……い、いや、別に……その……」
ハウゼルが小声で謝るが、しかしサイゼルは謝ることは出来ずに、もごもごと言葉を迷わせる。
喧嘩の時のように険悪な空気にはならなかったが、どうにも顔を合わせづらい様子で、お互いにチラチラと相手の様子を窺っている。
それを察したレオンハルトは、今日のところはとりあえず解散だと言い渡した。
喧嘩したばかりだとお互いに遺恨が残らずとも、今すぐ仲良くしようというのも難しいだろうと。
なのでお互いに冷静になる時間を設けた方が良い。少し時間が経てば、お互いに少しずつでも歩み寄ってくれるのではないかと思った。
場合によっては、レオンハルトがそのために何か一計を案じ、動いてもいいのだ。
――そう言えば、何が原因で喧嘩をしたのかは教えてくれなかったな……。
キャロルはそれをどうやら知らないらしかったし、インデックスは意味深に微笑むのみで、帰り道でサイゼルに尋ねても顔を背けられるので答えて貰えなかった。
何となく思い浮かんだものはあるが、仮にそうだとしたらレオンハルトとしては何とも言えない。いや、厳密に言えば言えないこともないし、解決しようと思えば出来なくもないのだろうが、それをやるのには少し迷いがあるし、確定じゃないと出来ればやりたくないものだ。
なので一旦保留。そしてレオンハルトは、自分の休日が、ほぼ潰れてしまったことに何とも言えない虚しさを覚え、ある場所へ向かっていった。
ラ・ハウゼルは自室で借りてきた本を読んでいた。
だが、
「…………ふぅ……集中出来ませんね……」
息を吐き、本を開いたまま顔を軽く伏せる。
気を紛らわすために趣味である読書を行おうとしたのだが、本を開いても、集中出来るのは十分くらいであり、何度も溜息を漏らしては再び本に集中しようとするのが続いていた。
いつもならば数時間はずっと本を読んで楽しんでいられるのに、今日はそれが叶わない。
その原因は、
……私、どうなってしまったんでしょう……?
それは喧嘩の原因ともいえる自身の気持ちのことだ。
姉であるサイゼルに、レオンハルトとの予定を取られたように感じ、姉の身勝手な行動につい怒りをぶつけてしまった。
それだけならば正当な憤りだと思うし、特に悩む必要はないかもしれない。
だが、姉が黙ってレオンハルトと仲良くしていたりすることや、レオンハルトが自分との時間を過ごしてくれないことを考えると、何とも言えない感情が湧き上がってくるのを感じる。
それが原因で、ハウゼルは先程から集中出来ないでいた。
一体この気持ちはなんだろうと考えてみるも答えが出ない。
いや、厳密に言えば出かかってはいるのだが――それを考えると妙に顔が熱くなって取り止めてしまう。
「…………」
考える頭と身体、両方に熱が入って上手く働くことが出来ない。
これではいけない。明日からもレオンハルトと過ごすことは確実だからだ。
先程のようにまともに目を合わせられない事態となることは避けなければならない。
……お風呂にでも入りましょうか。
と、ハウゼルは自身の考えや心を少し落ち着かせるために、本を閉じて、部屋を出ることにした。
気づけばかなり遅い時間。本に集中出来なかったとはいえ、何度も集中を試みた結果だ。
そろそろ皆寝静まる頃だろうし、今なら誰かと鉢合わせるのは最小限で済むだろうと、ハウゼルは扉を開き、浴場へと向かうことにした。
その予想は的中し、風呂までは無事に辿り着けた。だが――
「――おっ……ハウゼルか……」
「あっ……」
風呂を頂いて部屋へと帰る道中、廊下を歩いていると、ばったりと今最もハウゼルの心をかき乱す存在と鉢合わせた。
……な、なんでレオンハルトさんが……!
何で、と思ってしまうも、彼の城なのだから当然だ。どこにでもいる可能性はあるし、鉢合わせる可能性だって少なくない。
やはり冷静になれない。動揺している、と自身の状態を理解しながらも、彼の顔を見ると安心するような、それでいてドキドキとしてしまう不思議な感覚になってしまう。
……う、あ……ど、どうすれば……?
いつもならここで、一緒に読書でもしないかと自然と言葉が出てきたり、普通に会話することが出来るのだが、先程の件で考えさせられることが沢山出てきたため、普段どおりの対応が取れない。
こう言ったら変に思われないだろうか、などのネガティブな思考が多発して、言葉を迷わせてしまう。
そうしてる間に、変な間まで生まれてしまうため、段々と気まずくなってしまう。
時間を取らせるのも悪いので別れるべきだろうか。でも話したい気持ちはあるという矛盾するような気持ちを覚える中、先に言葉を発したのはレオンハルトの方だった。
「――湯上がりか」
「あっ……は、はい……そうです……!」
湯上がりであることを問いかけられ、何故か恥ずかしい気持ちが大きくなりながらも頷く。
……でも、レオンハルトさんから話しかけてくれて良かった……。
それならば受け答えするだけなので、まだ楽だ。自分から話を振るのは、今のハウゼルにとって少し難しい。
だからハウゼルは、レオンハルトの言葉を待ち構えることにした。それならば対応は難しくないと思い――レオンハルトが笑みを浮かべて、口を開くと、
「ああ、道理で――
「…………えっ」
と、レオンハルトからの言葉に、ハウゼルの思考は一時、機能不全を起こした。
レオンハルトからのストレートともいえる言葉。色っぽいと褒められた。
それを頭で理解したハウゼルは、
「~~~っ!」
身体の熱が強くなるのを感じて、声にならない声を上げそうになった。
しかしそれを何とか差し止め、ハウゼルは顔を真っ赤にして、あわあわと慌てたように、
「い、いいい色っぽいって……そ、そんな……別に、私はそんなことなくて――」
「いや、色っぽいし、可愛いと思うぞ。勿論、いつも可愛いがな」
「な、ななななな何を言ってるんですか!?」
遂に抑えきれず疑問が噴出した。
可愛い、と告げられて思わず顔を背けてしまうほどの羞恥がハウゼルを襲う。
しかしレオンハルトの言葉は止まらず、
「ふっ……そうやって恥ずかしがってる様子も可愛いな。天使の様だ」
「はうっ……あっ……うぅ……レオンハルトさん……」
壁に向かって顔を背けていると、レオンハルトが近寄ってきてこちらの顔を覗き込むようにしてきた。
壁に追い詰められ、レオンハルトの身体と壁の間に自分の身がある。
しかもレオンハルトの左手がこちらの顔の横の壁に置かれている。その伝説的な状況の名を、ハウゼルは心の中で口にした。
……こ、これは……た、確か、か、壁ドンというものですか……!?
最近見始めた恋愛小説の中に、このようなワンシーンが確かあり、著者の補足で、“これは壁ドンって言うんですよう”と書いてあったので身につけた知識だ。
それを今、まさに自分が体験している。
本の中では、主人公の女の子が気になる男性にこのように迫られてしまい、その後は――
「……ハウゼルは頑張り屋だし、とても優しい良い娘で……そういうところ、好きだぞ」
「すっ、す……!?」
空いた右手で顎を僅かに浮かせられながら、そういうことを言われ、ハウゼルはもはや顔が熱くてしょうがなくなってしまう。
心臓の鼓動が痛いほどに強く脈打ち、身体も凄く熱い。特に、お腹の奥がきゅうきゅうと締め付けられるような熱を感じてしまう。
好き、と言われただけなのに、自分でもびっくりするくらいに動揺してしまっている。
それを思い――
「あ、ああああのっ、きょ、今日はそろそろ、お、お休みの時間なので、ここ、これで、失礼しますーーー!」
ハウゼルは自分の気持ちとは裏腹にその場から逃げ出した。
その場に留まっている様子のレオンハルトを置いてけぼりに、ハウゼルは急いで自室へと戻ると、自室の扉に背中をもたれかかり、
「はぁ……はぁ……」
胸を押さえて乱れた息を整える。
だが呼吸は整っても、身体の熱は収まってくれない。
それに先程のレオンハルトの言葉やその表情が思い起こされ、
……今日のレオンハルトさん、大胆だったな……。
と、ぽーっと虚空を見つめながら思い出してしまう。
いつもより積極的だったが、ああいうレオンハルトもとても良いと思う。もしあのままその場に居続けたらと思うと、
「あうっ……」
もしやそのまま、小説の中の様なことをしていたのではないかと思い、再び激しい羞恥に襲われる。
思わずベッドに倒れ込み、枕に顔を埋めてみるもその恥ずかしさや熱は消えない。
しかし同時に、残念の様なものを感じてしまったり、先程の言葉を思い出して嬉しさのようなものも感じてしまう。
それを想いながら、ハウゼルは腰のむずむずが大きくなり、自然と手を下に伸ばした。
「あっ……!」
自分の熱の発生源と思われるその場所を人差し指で恐る恐るなぞると、甘い感覚が全身を襲う。
ぴくっと身体を震わせてしまい、何だかおかしなことをしてるような気がする、と冷静な部分での指摘が頭に浮かぶ。
……レオンハルト、さん……。
いつも親切にしてくれて、自分達の面倒を見てくれている男性。
魔人の役目に気を落とす自分に、読書という趣味を与えてくれて、それに付き合ってもくれる優しい男性。
それでいてとても格好良く、頼もしい男性だ。
しかも、自分の事を好きと――
「っ、ふっ、はぁ……」
想い、ハウゼルは指をまた動かしてしまった。
すると先程も感じた“気持ちいい”という感覚が来る。止められない、中毒性のある快感だ。
レオンハルトの言葉や、表情、彼の事を想い、先程の事や、その先の事を何となく想像してしまい、濡れてしまっているそこで指を動かすと、
「あっ……あぁっ……んっ♡」
先程よりも強い快感がきて、甘い声が漏れてしまう。
自分の手を、太腿で挟み込んでしまうほどの快感を感じて、ハウゼルは未知の感覚のその先に行こうと自然に手を動かしてしまう。
「やっ、はぁ……ん……♡」
空いた右手で、今度は自身の胸に手を伸ばしてみると、熱を増幅させるような快感が背筋に走った。
レオンハルトを想像しながら胸を揉んでいくと、揉めば揉むほどに快感は強くなる。
……これで、下もしたら……。
と、頭の中の想像は、直ぐに止めることは出来ずに実行してしまう。
自分の大きな胸を揉み解すのと同時に、濡れたそこに手を這わせる。
「あっ、レオンハルトさんっ……んっ、レオン、ハルト……さん……♡」
気づけば自然に名前を呟いていた。
だがそうする方が、快感は強くなる。
自分の中のレオンハルトが、先程のように自分の名を呼んで、可愛い、とか、好き、とか言ってくれる妄想が頭に浮かんでくる。
そしてそれと同時に、顔を近づけてきて――その後で、こんな風に、
「あっ、あっ……レオンハルトさ、レオンハルトさん……♡」
もはや自分では制御出来ないほどに、激しく指や手を動かす。
腰が浮きそうなほどに甘美で強い快感を感じて、ハウゼルは自分の中から何かがくる感覚を覚え、
「っ! ~~~っ♡ あっ、ふっ……」
そしてやがて、身を大きく震わせて、声にならない声を上げた。
気がつけば、汗で自分の身体はびっしょりと濡れているし、汗ではない別のもので、下がびしょびしょになってしまっている。
そして段々とクリアになっていく思考の中で、ハウゼルは思った。それは、
……私、レオンハルトさんのこと――。
天井を見上げ、乱れる息を整えながらハウゼルはその想いを自覚した。そういうことなのだと。
「……また……お風呂、入らないと……」
自分がとんでもなく恥ずかしいことをしてしまったような罪悪感や羞恥に襲われる中、同時にまた会えないかと期待している自分がいることにも気づき、ハウゼルは身悶えするような夜を過ごした。
――紅魔城。
ハウゼルと遭遇し、そして逃げられた後のレオンハルトは特に気にすることもなく、自室へと戻っていった。
しかし道中、
「――ご主人様、そろそろお休みになられてはどうですか?」
「メイド長か……」
と、レオンハルトは目の前に現れた人物を視線で捉えると、ふらふらと近づいていき、
「あんっ♡ ……ふふ、いけませんご主人様。今日は私の担当ではありませんわ」
「知っているが――無理だな。今日は俺の剣が、特に獲物を欲しがっている。逃れられると思うなよ?」
「っ♡ 大分、酔っておられるようですね……」
いきなりメイド長さんに抱きつき、その豊かな胸元を鷲掴みにし、既に臨戦態勢に入っている剣を下腹に押し付けながらニヒルな笑みを浮かべるレオンハルトに、メイド長さんは主人の状態を正確に判断した。――酔っておられる、と。
レオンハルトが泥酔すると、このように積極的になり、少しキザになってしまうのは身内の間では有名な話だ。
かなり積極的になって自分から求めてくるため、使徒やメイドといった彼の女達からは好評ではあるのだが、レオンハルト自身が、それほど酒を飲まない質なため、滅多に見られることはない。
大体何らかの理由がない限りは酒を飲まないのだが、この場合は、
「察するに、休日が潰れてしまったことによる虚しさを白兎様に癒やしてもらおうと部屋を訪ねたら、イヴ様と遊ぶため、出ていって下さいと断られ、そのショックも重なって街に繰り出し、ガルティア様やジーク様辺りと飲みに行っていた――というところでしょうか」
「……ああ、そうだ。言うならば今の俺は、哀しみを背負うルーザー……お前達の様な美しい花に慰めて貰わないと地に伏してしまうだろう……」
「んっ♡ ……それは光栄ですわ」
相変わらず酔うと微妙に痛いことを言い出す主人だが、それもまた好ましいものだ。お酒で記憶を失くすタイプではないので、後からの自分の行動や言動に後悔することが多いのだが、それも含めて魅力的だと思う。
「では、こちらへどうぞ。私も含めて、たっぷりと慰めて差し上げますので」
「ああ……頼む……この俺の剣が餓えてしまっているからな……」
下ネタかつ痛いことを言いながらも、甘えるように胸を揉んだりいたずらしてくるレオンハルトを運ぶように寝室に連れて行く。
その際に衣服の下で主張をしている剣をさすさすと擦りながら、主人の官能を高めていると、
「! あら、レオンハルト。遅かったわね――あっ♡」
「んくっ♡ レオンハルト様、どうやら今日は酔っているみたいですよう……!」
寝室に入るなり、近寄ってきたインデックスやペールを抱き寄せた。
それだけで直ぐにレオンハルトの様子に気がついた部屋の中の美少女達は、期待するような黄色い声をあげて喜ぶ。
「ん……部屋に入る前からこんなにガチガチにして……いけない人ね……♡」
「やぁん♡ レオンハルト様に襲われちゃいますぅ♡」
インデックスやペール、メイド長さんや他のメイドが、レオンハルトのズボンの中に手を入れて、這い回る。レオンハルトが周囲の者達の巨乳や尻を揉み解したり、キスを落としながら、
「お前ら……今日の俺は、朝まで収まることはない。覚悟しろ」
と、その言葉を開始の合図に、寝室の中ではレオンハルトを慰めるための行為が行われ――その日は朝まで嬌声が絶えなかった。
そしてレオンハルトは酔いが覚めた後で、昨夜の自分の発言を思い出して身悶えすることになり、サイゼルとハウゼルはレオンハルトのことを意識し始めて、少し大人しくなった。
そんなわけで一旦姉妹の話はここまで。次回は妖術魔人です。
明日は個人的に用事があって一日中家にいないので投稿はお休み。
明後日、4月7日に次回を投稿しますので楽しみにしといてね