※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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お町

 紅魔城内部の廊下を歩いている者達がいる。

 それはこの城の主である魔人の姿と、それに追従する何名かの使徒や連れてきた者達、狐や褐色の男の姿だ。

 彼らは白兎やイヴも含めてJAPANでの冒険を一時終えて、城に帰還したところであった。そのついでに、先程までいた執務室での手続きのようなものを終え、金髪ツインテールの使徒と、薄紫色のロングの髪の使徒が声を掛けた。

 それは説明の様なもので、

 

「では、戯骸さんは街に住むということでよろしいんですの?」

 

「末知女殿さんは、こちらへのお住まいを希望ということですよね?」

 

 二人の問いかけには、既知の相手への気安さと、新しい顔の相手への親切の二つが同居していた。

 そして先に声を発したのは戯骸の方で、末知女殿は後から、

 

「ああ、俺は色々と出て回るしな。まあ、レオンハルトが良いって言うなら城でもいいんだが……」

 

「……我は、レオンハルトと同じ住まいでよい」

 

 二者の告げた言葉は、どちらもこの城の主に関係するもので、自然と視線がレオンハルトの方に向く。

 それを受けたレオンハルトはどうも渋い顔をしながら息を入れ、

 

「……戯骸は……いや……その……だな……」

 

「――とまあ、嫌がられてるみたいだからな。城に来れるってだけで自重しとくぜ」

 

 と、戯骸が特に不満に思うでもなく笑みを浮かべた先は、戯骸を連れてきた張本人である白兎だ。

 白兎は自分の父であるレオンハルトの方を向いて不満顔になると、

 

「……父上はずるいです。妖怪王さんも私が説得してお友達になろうと思っていたのに……その上、戯骸さんを城に住まわせないなんて……ガッカリしました」

 

「いや……それはだな……」

 

 またしてもしどろもどろになってしまうレオンハルト。心の中では、末知女殿の方もそもそも連れて来る気はなかったし、それどころか関わる予定もなかった。

 3日前にJAPANで偶然にも出会い、何やら絶望して消えかねない状態だったのでそれを防ぐためにも少しばかりアドバイスを行いはしたが、それで道を見つけたら後はさようならになると思っていたのだ。

 だがしかし、その予想に反して末知女殿はレオンハルトに付いていくことを希望した。

 あまりにも意外な提案にレオンハルトは狼狽えながらも、妖怪であることを理由に断ろうかとも考えた。しかし、

 

「レオンハルト。我の為に、オロチの鱗を取ってきてくれたこと、重ね重ね感謝する……」

 

「……まあ、白兎が言ったことだからな。感謝は白兎にしてくれ……」

 

「あの冒険は楽しかったですね」

 

 そう。妖怪はJAPANから、基本、出ることが出来ない。

 妖怪の具現化に必要な妖力は、JAPANでオロチが発生させているものであるため、短期間ならともかく、大陸に長く留まることは出来ないのだ。

 しかし、それはあくまで基本であり、例外はある。妖怪が大陸に留まることの出来る方法が。

 その方法こそが、オロチの体の一部などのアイテムを手に入れて、それを所持しておくことだ。

 この方法は一部の妖怪には知られており、そしてレオンハルトも知っており、その昔にレオンハルトが白兎に教えたこともある。

 故にその、妖怪はJAPANから出られない、という拒否は成立しない。

 しかも白兎に頼まれてしまっては断りにくいし、末知女殿の方も、自分から新たな道を見つけろと言っただけに、道を閉ざしたり、放っておくのも躊躇われる。

 故に結局は迷宮に潜ってオロチの体の一部を取りに行ったのだが、その頃にはレオンハルトも、拒否する理由を考えることもなく、受け入れたとしてこの先をどうするかを考え始めた。

 だがそれでも、不可解さは抜けきれないし、周囲の反応やこのところの予定の詰まり具合のせいで気苦労が絶えない。妖怪という大陸にいては見ることの難しい存在を城に招き入れたというのに、周囲の反応は何とも解せないものだ。

 今の、こちらに耳を寄せてくるペールの様に、

 

「……レオンハルト様ってば、また随分と大きい獲物をゲットしてきましたねー、このこのー」

 

 やめろ。肘で突いてくるな、と視線で威嚇する。まるで俺が胸に釣られて拾ってきたみたいじゃないかと。

 だがペールは視線で威嚇しても悦ぶだけなのであまり意味がない。それどころか、城の新入りとして新しく入ってきた末知女殿にキャロルとともに絡んでいき、

 

「よろしくお願いしますね、末知女殿さん。……なんだか呼びにくいのでマチさんって呼んでもいいですか?」

 

「フルネームでも格好いいと思いますの。狂星九尾・末知女殿――悪の親玉みたいですわ!」

 

「わかります」

 

「わからないでください、白兎さん……」

 

 ペールが名前が呼びにくいと言ったところで、キャロルがいつもの如く気の抜けるような事を言って、白兎がそれに頷く。イヴがそれに静かにツッコむのだが、もはやどこにも常識人がいなくてレオンハルトは頭を抱えたくなる気持ちだ。

 

「名か……確かに我も、あまりこの名前は……どうすればよいかの……?」

 

 だが、末知女殿が皆にそう言われて、こちらを窺うような表情で見つめてきたので、それに答えざるを得ないと知る。

 しかしこれについてはそう悩むこともないな、とレオンハルトは一息つきながら、

 

「……そうだな。JAPANで生まれたことだし、お町、とかにすればいいんじゃないか?」

 

「お町……」

 

 その名を告げてやると、末知女殿を筆頭に皆がその名前を軽く呟いた。その上でまずはペールが頷き、

 

「お町……いいですね! お町さんって呼ぶとなんだかしっくり来ますし、そう呼ばせてください! ――長い付き合いになりそうですしね……くふふ」

 

「お町、か……なら、お言葉に甘えて、そう名乗ることにしよう」

 

 どうやら末知女殿も新しい名であるお町を気に入ったようで、あっさりと頷いてみせる。

 それに続いて白兎らも、お町に向かってその名を呼びながら、

 

「むぅ……本人がそう言うのなら仕方ないですね。では、お町さん、私とお友達になりましょう。妖怪のお仲間がいるのは格好いいですし」

 

「……俺の時もそう言ってたが、ひょっとして毎回そう言ってんのか?」

 

「いえ、戯骸さん。白兎さんは最近、そういう、なんか格好いいものに嵌っているだけですので、毎回というわけでは……なんか色々とすいません」

 

「うきー!」

 

「謝る必要はねぇけどよ」

 

 白兎が相変わらず友達になろうとお町に声を掛けていたが、それを見ていた戯骸が疑問を口にして、イヴの謝罪を引き出してしまう。藤吉郎も一緒になって謝るポーズをしていたりするが、それを聞いていた白兎は、むっとして、

 

「ば、馬鹿にしているんですかイヴさん!? 私はただ、仲良くしたい相手に声を掛けているだけですよ! 優秀な冒険者は仲間を増やしていくものですからね!」

 

「いえ、馬鹿にしてるわけでは……くす」

 

「なんですかその意味深な笑みは! イヴさんはもぉーっ!」

 

 珍しくやり返すことが出来たイヴがニヤリと笑みを浮かべると、白兎が軽く憤ったように声を荒げる。

 そんな姿も可愛いなぁ、とレオンハルトが一瞬、現実逃避気味の感想を考えていると、一方のお町の方では、

 

「ここは、随分と賑やかな場所よの……」

 

「ふふん、そうでしょう! とっても賑やかですのよ!」

 

「住んでる人も多いですからねー。……それと、お町さん? せっかくですので、私のちょっとした教えを受けてみませんか? レオンハルト様も喜ぶような感じの教えなんですけど」

 

「レオンハルトが喜ぶ教え……どういうものなのだ?」

 

「ええ、まあ、簡単ですよう。というわけでまず最初に教えておくのがですね。レオンハルト様は、お町さんみたいなお胸の大きな女性が――あ痛ッッッ!?」

 

 とんでもなく余計なことを言おうとしていたので、ペールの尻に思い切り平手打ちをかますと、ペールは尻を押さえてその場から飛び跳ねた。

 そのまま尻を擦りながらこちらを見て、

 

「ちょ、レオンハルト様! こんな真っ昼間にしかも人目が多い中でスパンキングプレイするなんてどうしたんですか!? そういうことなら後で……って、あ、滅茶苦茶痛い、これ……後から効いてきた……! う、うくっ……プレイどころじゃないですよこれ……!」

 

「いいから黙ってろ。これ以上恥を晒すな」

 

「……? 主よ、喜ぶ教えとは……」

 

「気にしないでいい」

 

「?」

 

 絶妙な力加減の平手で痴女を黙らせると、首を傾げて疑問符を頭に浮かべるお町を誤魔化す。首を傾げた際に胸元の危ない美爆乳がたゆんと揺れたが注視することはない。

 だが実際、ペールもそうだが、そういった反応が多くて困るのも事実だ。

 何しろ、このお町はかなり胸が大きい。自分が今まで見てきた数多くのモノの中でも最大の大きさだ。

 それだけに周りからも目を引くし、周囲の者達も、通りすがる度にこちらに意味深な笑みを浮かべてくる辺り、後でそのことを話題に出されることは確定しているし、先程白兎と共に白兎の母親である紅月のところに行ってちょっとした会話をしたのだが、白兎がいなくなった後でちょっと弄られてしまったので何とも言えない気分だ。

 昔からそうなのだが、そういうつもりはないと言っても大多数の人からは信じて貰えないので定期的に憂鬱になる。身内はそこのところは分かってはいるのだが、夜のこともあるのでそのことを弄られやすいのだ。

 だが自分は別に、大きさで対応を変えたり、それに目を奪われるようなことはないのだ。なので極めて普通に、レオンハルトはお町の言葉に対応する。

 

「……なら、またあのいなり寿司を食べたいのだが……」

 

「ああ、それは構わない。食堂に行ってメイドにでも言えば出してくれるだろ」

 

 と、いなり寿司が食べたいというので食べる方法を教えておいてやる。生活についても基本はペールやらキャロルやらメイド長さんやらに任せておけばいいので、別の用事を済ませにいこうとその場を後にしようとすると、くいっと後ろから服を掴まれ、

 

「……どうした? まだ用事があるのか?」

 

「……お主も一緒に来ないのか?」

 

 そんなことを、お願いするような、自然な上目遣いで言われてしまい、レオンハルトは真顔になる。

 なんというか、この調子だと今までの経験上、()()()()()()()()()という気がしてならないため、レオンハルトは頭を悩ませざるを得ないのだ。

 いつもの事ではあるが、いつもの事だからといって適当に済ます訳にはいかない問題だし、そういう部分には真摯でいきたいのだ。

 故に、食事に誘われたことにどうすべきかと悩んでいると、

 

「――あっ、レオンハルト! こ、こんなところにいたのね」

 

 と、廊下の影から、不意に女性が飛び出てきて近寄ってきた。

 それはこの城に住む魔人姉妹の片割れ、姉の方であり、

 

「……サイゼルか。どうかしたのか?」

 

「べ、別に? 偶然見かけたから声を掛けただけだけど?」

 

 じゃあ、こんなところにいたのね、という探してる風の台詞はなんだったのか、とレオンハルトが思いながらも、その指摘は憚られると無言でいる。しかしそのサイゼルは何やら強気な様子で、

 

「あ、あー、でもそうねー。折角だから、ちょっと……そ、外にでも行かない? 暇だし、さ。ちょっとご飯でも食べながら……こう……つ、付き合いなさいよ!」

 

 と、今度は何やらわざとらしい演技でそう誘いを掛けてきた。

 レオンハルトはその誘いに一瞬悩んだものの、予定を考え、それほど長い時間は取れないなと思い、

 

「……悪いが今は――」

 

「あっ、レオンハルトさん!」

 

 しかし、断ろうとしたところで、今度は別の角から魔人姉妹のもう片方が現れて近寄ってきた。

 妹のラ・ハウゼルが本を胸に抱えながら、

 

「レオンハルトさん……その……今日は一緒に本を読みませんか? レオンハルトさんと語りたいことがいっぱいあって……あ、空いてる時間があれば……」

 

 と、今度はおずおずと遠慮がちにハウゼルが読書に誘ってきた。

 その態度はまた露骨で分かりやすいものではあるが、サイゼルの誘い方に比べればまだ受け入れやすいものだ。

 とはいえ今直ぐには無理なので、レオンハルトは息を入れながら、

 

「……まあ、夜であれば構わないぞ」

 

「! 本当ですか! あっ、あの、あのじゃあ……私、待ってますから……えへへ」

 

 夜であれば、と頷いてやるとハウゼルが心底嬉しそうにはにかんで見せる。

 だがやはりと言うべきか、ハウゼルが横から入ってきたことに対して、姉の方が反応した。

 

「ちょ、ちょっとハウゼル」

 

「! な、なんですか姉さん?」

 

 ハウゼルもサイゼルの呼びかけに若干だが身を強張らせながら反応すると、サイゼルが何やら探るように、

 

「……ほ、本を読むんだったら、あたしも行っていいわよね?」

 

「っ……それは……ね、姉さんは読書嫌いだって言ってたじゃないですか。何で急に……」

 

「た、たまには読みたくなることだってあるでしょ。構わないわよね。図書室は誰でも使っていいはずだしさ」

 

「うっ……それはそうですけど……うぅ……でも……」

 

 ハウゼルがサイゼルに詰め寄られてこちらをチラチラと見てくる。

 そんな風に助け舟を期待されても困るんだが……と、レオンハルトが何とも言えない気分になっていると、また背後から、

 

「……よく分からぬが……お主は我と一緒に来てくれんのか……?」

 

「いや……少し待て……ちょっと考える……」

 

 お町がコートをくいくいと引っ張ってきたので、レオンハルトは頭の中を整理する。色々と予定が詰まっているのだが、

 ……仕方ない。書類仕事は引き続き、分身にやらせておくか……。

 基本的に仕事は本体か分身のどちらかでフル稼働しているのだが、分身と本体の二人掛かりでやっても終わらなかったりするので、出来れば仕事をある程度終わらせ、休日を作るためにも自分自身が仕事に回りたかったのだ。

 しかし人付き合いなどの予定や、どうしても外せない用事――魔王の呼び出しや、今回のような突発的なやるべきこととなると、どうしても自分自身が行く必要があるので仕事から抜けざるを得ない。特に人付き合いで分身を遣わせるのは失礼過ぎる行動だとレオンハルトは認識しているので、仕事以外の人と会う用事には分身は使わないし、仕事であっても大事な相手には極力分身は使わない。使うのはどうでもいいことで突っかかってくるようなレイやレキシントン、後はメディウサ相手くらいだ。

 故にレオンハルトは今日の自分自身の予定だった仕事を分身に任せっきりになることを計算しながら、人と会う用事に対してもスケジュールを確認しながら、考える。

 ……食事は大丈夫だし、夜も空きはあるから問題ないとして……外に出るのは……サイゼルの事だからまた修行を見たいとかそういうことだろう……夕方にするか。

 と、レオンハルトは頭の中のスケジュールを調整すると、その通りに、

 

「……サイゼル。夕方なら時間が取れるからそれでいいか?」

 

「! あ、そうなんだ……ふ、ふーん。そ、それなら別にいいけど?」

 

「それで、ハウゼルは先程言った様にまた夜にしよう」

 

「……は、はい。……では……その……出来れば、わ、私の部屋でどうですか?」

 

「…………ああ、分かった。後で部屋に行く」

 

「あっ、はい! では、そういうことで……!」

 

 咄嗟の場所指定だが、レオンハルトはそれに問題ないと頷きを入れる。

 部屋に呼び出されることに、何やら予感を感じてしまうが、それを気にしないようにして、最後に背後に振り返り、

 

「よし……ならお町。これから食事ついでに食堂に案内してやる。付いてこい」

 

「……そうか。それなら良かった……」

 

 お町が静かだが、静かに微笑を浮かべた。

 それを見て、レオンハルトはほっと息を吐くと、他の者達に向かって、

 

「キャロル、ペール。お前達は仕事に戻っていろ」

 

「了解ですわ!」

 

「畏まりましたー」

 

 と、敢えてこの場では白兎らには声を掛けずに行く。

 サイゼルとハウゼルが来た時点で、親子としての会話は謹んでおり、白兎やイヴなどの事情を知る者も主に対するように押し黙っていた。

 だが白兎はこちらに向かって小声で、

 

「……行ってらっしゃいませ」

 

 と、下級使徒としての何気ない挨拶を行ってくれた。

 だがその響きは、レオンハルトを癒やすのに充分なもので、

 ……はぁ……やっぱり白兎を見ると癒やされるな……欲を言えば、昔のようにパパと言って欲しいものだが……。

 忙しい中でもかなりの癒やしとなる白兎の可愛さを再確認する。

 最近は微妙に反抗期が来ているような気がするが、まだまだ可愛いものだ。

 レオンハルトが知る娘の反抗期というものは、例えば、パパと一緒に風呂に入らないとか、下着を一緒に洗濯しないで、とか、

 ……うっ……想像したら吐き気が……。

 もし嫌われたらショック過ぎて鬱になりそうだ、と思いながらも、レオンハルトはなんとか持ち直してお町を食堂まで連れて行く。

 きつねうどんを与えたらまた凄い喜んでいたので良かったな、と素直にそう思い、レオンハルトは次のやるべきことを確認して、その通りに動き始めた。

 

 

 

 

 

 ――その頃。中庭では、

 

「はぁ~~~……ライゼン……ちょっと戦ってくれない……?」

 

「……二週間後なら構わぬぞ」

 

「ぐっ、ライゼンまでそんな決まり守るなんて……あたしはどうすれば……!」

 

 ハンティが中庭のテーブルに顔を突っ伏して項垂れていた。

 周囲には、いつも基本的には中庭に定住しているライゼンと、ハンティと同じ様にパラソル付きの席に座ってお茶を飲んでいる、彼女の友人のインデックスやガウガウがおり、

 

「たった二週間でしょう? 我慢なさい。そんなだからカラーゴリラとか呼ばれるのよ?」

 

「言い出したのはあんたでしょうが……!」

 

「やーい、やーい! ざまぁハンティ! これも日頃から私に魔法を撃ってくるからバチが当たったんだね! いやー! この二週間は快適にダラダラ過ごせそうで良いね~。ふふふーん! たららら~ん!」

 

「ぐっ……ウザい……殴りたい……!」

 

 友人二人の言に拳を握りながら悔しそうに耐えるハンティだったが、ガウガウの発言に対して、インデックスはカップをテーブルに置きながら、

 

「あら? でも、戦闘は出来ないけど、罰は与えたら駄目とは言われてないから気をつけた方がいいんじゃない?」

 

「へっ? い、いやいやそれは……!」

 

 ガウガウが首をぶんぶんと振りながらその言葉を必死に否定する。しかしハンティはニヤリと笑みを浮かべており、

 

「あー……なるほどねー……それなら大丈夫ってことは――」

 

「お、おいやめろ馬鹿! 何余計なこと言ってくれてんだよ!? あ、はーい! 私謝りまーす! ごめんなさーい! だからやめてくださーい!」

 

 と、全力で掌返しの謝罪を行うガウガウに、しかしハンティは笑みを浮かべたまま立ち上がり、

 

「ガウガウに罰を与える名目でなら、暴れてもいいということ……だよね……」

 

「ひぃっ!? た、助けてライゼン! やべー奴がやべー事言いながらやべー事しようとしてる!!」

 

 ガウガウが全力でライゼンの足元まで移動して擦り寄る。しかしライゼンは困ったような様子で、

 

「……すまんがそれはもう、俺にはどうすることも出来なくてなぁ……ドラゴン的にはよくあることなので諦めてくれ」

 

「私ドラゴンじゃないんですけどっ!? 滅茶苦茶人間なんですけどっ!?」

 

「あはは、大丈夫大丈夫。ちょっとおしおきするだけだからさ」

 

「じゃあなんでいい笑顔で剣持ち出してるのさ!? ちょっとー!? レオンハルトさーん! いや、レオンハルト様ー! ここに命令違反してるあなたの使徒がいますよー! 誰でもいいから助けてくださーい!!」

 

「フハハハハハハッ! 料理長である私が来たッ!!」

 

「城内一のエロメイドである私も来ました!!」

 

「すっげーやべーよこの城! 助けを呼んだら今度はやべー一族のやべー男とやべー女が来たよ! もうお前らでいいからなんとかしてくれ!!」

 

「……静かにお茶を飲むって話だったけど、これはこれで面白いからいいわね」

 

「良くないよっ!?」

 

 中庭では、ハンティの二週間戦闘禁止の罰を発端にちょっとした騒ぎが起きていたが、人知れずに直ぐに収束した。

 




次からはエターナルヒーロー結成後の冒険やら、レオンハルト勢の色々です。恋愛模様が色々とカオスになってきましたね(白目) レオンハルトってヒロインなのでは?
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