誰もが寝静まるような夜中。
野良の人間が隠れ住むそこは、静けさに満ちていた。
明かりが点いている建物はない。あっても、それは外に光を漏らさない密室のような部屋だけだ。
何故ならその明かりを元に、魔物達がこの隠れ里を発見して襲いかかってくる可能性があるからだ。
そうなってしまえば、大勢の人間が死ぬし、ただでさえ少ない人類のセーフハウスがまた減って、間接的に大勢の人間が困ることになるだろう。
だからこそ、迷惑を掛けないように窓のない宿の一室で小さな明かりを点けて集まっている五人は、リーダーであるブリティシュと、今回の収穫で得た黄金像を研究したホ・ラガの話を聞いていた。
「――それで、何かわかったのか?」
「ああ、ほんの少しだがね」
ベッドにて身体に包帯を巻いている状態で寝転がっているカオスが、ホ・ラガに問う。彼は魔人の攻撃をもろに喰らってしまったため、カフェの治療を受けた後で安静にしているところだった。
故にベッドを使っているカオスや、その側で一応いつでも治療出来るようにいるカフェ、何かを考えている様子で席につく日光や、ブリティシュらを前にホ・ラガが言う。この像は、
「……どうやら、この黄金像はとてつもなく古いもののようだね。少なくとも千年、二千年以上前から存在する代物だろう」
「何か力でも宿っているのですか?」
日光が聞く。しかしホ・ラガは首を振り、
「いや、これ自体に力が宿っている様子はない」
「え、じゃあ……ただの黄金なの?」
今度はカフェが意外そうに。そしてホ・ラガも、今度は首を縦に振ると、
「ああ、至って普通の黄金で出来た像だね」
「……なら無駄足ってことかよ」
「そんな……」
カオスが表情を歪め、カフェも気勢を落としてしまう。
魔人を倒せる手掛かりを得られるかと思っていただけにショックは大きい。
それも、魔人の強さを実際に目の当たりにしたばかりなのだ。
全く歯が立たなかったというその結果を考えると、やはり自分達の強化もそうだが、普通の方法だけでは駄目だと強く心に思ってしまう。
魔人レイ。そう名乗った人形の魔人は、雷を操る力を持ち、五人にその脅威を刻み込んだ。
途中であの、謎の黒髪のカラーが現れなければ、あそこで全滅していた可能性も高い。
故に彼らは、自分達の力不足を自覚し、同時に改めて思ったのだ――魔人は人では勝てない。その上位である魔王も同様だと。
であるならば、人を捨てるほどの覚悟で、力を手に入れなければならない。
自分達は未だ人を捨てることが出来ていないし、出来ていたとしても、実力が伴っていない。
だからこそ、彼らは情けなくも今回手に入れたものには期待していた。――が、それは実らなかったのだ。
しかし、ホ・ラガはそんな様子を見ても淡々と成果を告げた。気を使うことはなく、
「無駄足かはまだ分からない。一応、それなりのことは分かったからね」
「それなりのこと?」
ああ、と日光の問いにホ・ラガが続けて、
「これを手に入れた遺跡の壁画。あれを少し調べてみたが……どうにも、これと同じ様な物が4つあるようだ」
「あん? 黄金像が……4つ?」
「それを手に入れたら……何かが起きたりとか?」
「いや、それはまだ分からない。しかし……壁画には黄金像を4つ、台座の様な場所に鎮座するような光景が描かれていた。これを単純なヒントとして考えるとすると、どこかまた別の遺跡に、同じ様な黄金像を設置することで、何かが起きるのかもしれない」
「何か……か。それはまだ分からないんだね?」
「ああ、ブリティシュ。それは私にも分からない。単純に宝でも手に入るのか、力が手に入るのか……全く見当がつかない」
「…………」
それを聞いて、部屋の中が静寂に包まれる。
誰しもが無言となり、その成果を聞いて思い思いに考え込んでいるのだ。
しかし、最初に声を上げたのは、やはりリーダーであるブリティシュで、
「……でも、何かがそこにはある。その可能性は高いんだね?」
皆がその問いに、リーダーの言葉に注目する。視線が集まったことに気づいているのかいないのか。しかしホ・ラガは気づいた様子で、その問いに対して正直なところを答えた。
「ああ、何かはあるだろうね。何しろ、こんなものは普通じゃない。この黄金像も、調べてもただの黄金だというのに、いつ見ても不思議な違和感を感じてしまう。例えるなら、この世の物ではないような、不思議ななにかだ」
皆の中心に置かれているひまわり型の黄金像は、部屋の中の明かりを反射して光沢を放っている。
その見た目は見るからに黄金だ。黄金でしかないはず。
しかし、どこか不思議なものに感じるというのは、ホ・ラガほど博識ではなくても、どこか感じれるものがあった。
もっとも、気の所為だという可能性も高い。この雰囲気に、ホ・ラガの言葉に騙されてるだけかもしれない。
しかし、リーダーは少なくともそれを信じたし、その感覚を感じ取った。故に、皆を見渡すと、
「……なら、これを少し追ってみないか?」
「黄金像を集める……ということですね?」
「ああ。残り三つの黄金像を集めて、その遺跡とやらを探してみる。どうかな?」
ブリティシュの問いかけに皆が少し間をおく。しかし直ぐに、
「……ま、どのみち手掛かりも無かったしな。いいんじゃねぇか?」
「私も……賛成。ホ・ラガのいう変な違和感みたいなの、私も感じるような気がするし……」
「私もいいと思います。それに……我々の時間は限られてます。迷っている暇もありません」
「ブリティシュが言うのだから私は賛成だよ」
「皆……うん、そうか。なら、そうしよう」
満場一致での賛成。これはホ・ラガの説明が良かったのか、皆も黄金像には何かがあると思ったのか。それとも、リーダーであるブリティシュの人徳かは分からないが、とにかく彼らの方針は決まった。
世界の何処かにある4つの黄金像を集め、その先にある何かに辿り着くこと。
人類の暗黒時代を終わらせるために、彼らはその道を選ぶ。
――だがその先に過酷な運命が待ち受けていることを、今の彼らには知る由もなかった。
朝日が昇る時間。
レオンハルトは己の部屋のベッドの上で、浅い睡眠から目を覚ましていた。
……っ……久し振りに、寝たな……。
覚醒しながらも、まだ軽く微睡むような様子で久し振りの睡眠を感じ取る。
ここ最近は仕事も忙しければ、交友も盛んで、更には個人的に動かなければいけないことも多かったので、あまり睡眠を取ってはいなかったのだ。
それで健康的にどうなるでもないし、別に寝ずとも全く問題ないのだが、個人的に眠るのは嫌いではない。
特に、自分の愛する存在の温もりを感じながら寝るのは、体力の問題ではない、精神的な充足が得られるものだ。
薄く目を開けると、今は己を枕にしてまだ寝ている様子のお町がおり、彼女の柔らかさを感じられる。
時間的にちょっと前までは致していたこともあって疲れているだろう。しばらくは寝かせてやらないとな、と彼女の頭を軽く撫でながら思う。
自分としても、昨日は初めての相手を3人も致したため、体力的にはともかく、精神的には考えさせられるところもある。
思考に割く時間はそれなりに多いのだ。サイゼルとハウゼルの姉妹仲をどうしようとか、お町の今後をどうするかなどで色々と迷ってしまう。こういったふとした時に考え込んでしまうのは癖とも言える。
だが、そうやって考え込んでいると、
「……ん……レオン、ハルト……?」
「! 起こしてしまったか」
「いや……いい……朝からお主の顔を見れたのだからな……」
「……そうか」
「んっ……」
横のお町が身動ぎをし、瞼を擦りながら目を覚ます。まだ軽く微睡むような、ゆったりとした様子だがこちらに身を寄せて心地よさそうに顔を擦りつけてきたため、こちらも軽く頭を撫でてやると、気持ちよさそうに目を細めていた。
それを見ながらしばらく穏やかな時間を過ごす。レオンハルトとしてもしばらくはまだ仕事の時間ではないのだ。
故になんとなくお町の体温を感じながら考え事をしていると、
「……考え事か?」
「ん……ああ、まあな。別のことを考えてしまって悪いな」
「……いや、構わない……」
お町にそれを気づかれて問いかけられる。お町のことも考えてはいるが、どちらかというと、今後のことについての自分の都合を考えているようなものなので、特に何かしているわけではないにしろ、少しバツが悪い。
しかしお町はそれを聞いて何を思ったのか、一度は気にしていないと首を振ったが、そのまま少し身体の位置をこちらの顔まで上げると、
「んっ……!」
不意に、こちらの頭に手を回して抱きしめてきた。
すると顔が、寝る前まで散々味わったお町の爆乳に埋まってしまう。
一体何を、まさかまたやる気なのか、と一瞬頭に過るが、どうもそういう雰囲気ではない様で、お町はそのままこちらを優しく抱きしめたまま、
「仕事の事を考えているのだろう……? お主は、いつも忙しそうにしておるし、考え事も多そうだからな……」
「…………ああ」
間を置いてから頷く。谷間に埋まってるため、声がくぐもるというか、上手く声を発せないため、声を出してみたところで頷いた形だ。
だが、お町には伝わった様子で、ぎゅっと更に抱きしめられると、
「それを、我に止める権利はない……我は、お主のそういうところに救われた身だからな……。だが、こういう時くらいは、我にも癒やさせてくれ……」
蕩けるような柔らかさと温かさに包まれながら、今度は逆に頭を撫でられる。
こういったことをやられるのは初めてではないし、こういったことを言われるのも、実はよくあることだが、
「……ありがとう」
だからといって、嬉しくないわけでもないし、ましてや感謝の気持ちを抱かないはずもない。
自分にとっては、こういったことも含めた身内との時間が、一番の癒やしになるのだから。
こういう時間こそが、己に選択をさせてくれるのである。
だからこそ、レオンハルトは少し顔を上げて、声を出しやすいように位置を調整すると、
「……お町。お前にお願いをしてもいいか?」
「愛しい男の頼みに応えぬ我ではない。何でも言ってくれ。……また奉仕でもするか?」
「いや、そういうわけではない。……たまに思うんだが、お前達は俺を何だと思ってるんだ?」
何故かお町が奉仕することを申し出てきたので、苦い気分で否定しつつ問いかける。別に俺は、性欲の権化でも、毎日おっぱいを味わわないと気が済まないおっぱい星人でもない。
しかしお町は頬を僅かに染めたまま、こちらの身体の上に乗っかってきて、たわわな乳房をむにゅむにゅと押し付けてくると、
「……昨晩、あれほど我を激しく愛していたではないか。乳も執拗に触れていたし……それに、“ここ”はもう準備が出来ておるようじゃが……?」
「…………これは男が陥る朝の生理現象だ」
どうやらお町の身体の下で自己主張を続けているそれを確認して告げてきたようだが、それだけでもないようで、
「しかし、生理現象だろうと、朝のこれを鎮めるのはお主の女の役目だと聞いた。だから、我に任せてほしい……」
「そんなことまで聞いたのか……」
どうせペールだろうな、と息を吐くが、これもいつものことである。
しかし無理にやめさせることもない。時間もまだある。なのでレオンハルトはそれを受け入れることにすると、既に下に向かって移動し始めたお町に向かって頷きつつも本来の用件を告げることにした。
「まあ、それなら頼む。……だが、お願いはまた別のことだ」
「別のこと?」
お町が剣を自慢の胸で包みながら首を傾げてくる。昨晩も味わった奉仕の心地よさを感じながらも、レオンハルトは真面目な顔でもう一度頷き、その思いついたお願いを口にした。
「お前の古巣で配下だった――JAPANの妖怪達の事だ」
……まあ実は、お町さんの戦闘本番をカットしたので短くなったという裏話があるんですけどね(小声) そのうちこっそり加筆するかも? 書かなかったのか気分の問題なので。前回のおっぱい描写と途中まで書いた本番で満足してしまった(賢者タイム)
そして、次回は地味に人気がありそうなキャラが出ます。
因みに2日おきに投稿になってるのはGW中ということでやること作って個人的にお休み貰ってるだけなのであしからず。というわけで次回も“多分”二日後です