大方の指示を出し終えて、動く準備だけを先に整えた魔人レオンハルトは、自分の部屋に魔人ラ・サイゼルを招き入れた。
素直にやってきた彼女に対し、まずやることはベッドに座る自分の隣に座らせて向き合うこと。いつもなら、ここからは素直じゃない彼女の誘いを敢えて受け、戦闘を開始することもあるが、今日は違う。
今日やるのはサイゼルの悩みを解決するための“練習”だ。
「──よし、サイゼル。準備はいいな?」
「じゅ、準備……? よく分からないけど、一体何をするのよ?」
ああ、と頷く。彼女と視線を合わした上で、
「とりあえずは……俺に“好き”と言ってみろ」
「…………え?」
告げた瞬間、サイゼルの表情が固まる。
しかしややあって、その内容を脳が認識し終えたのか、顔を段々と赤くさせると怒った様に、
「ば、ばばば馬鹿じゃないの!? そんなこと……!」
「なんだ、嫌いなのか?」
「そういう訳でも……そ、そうじゃなくて! なんでそんなことを言わないといけないのよ!」
言葉をまごつかせながら、サイゼルは声を大にして言う。いつも通りのバレバレな態度だが、この態度の意味をほんの僅かでもハウゼルが読み取ってくれれば問題は即解決。
しかしそれが上手くいかないのは、ハウゼルの天然っぷりと、サイゼルの素直じゃない態度が原因だ。このどちらかを僅かでも修正出来れば、姉妹仲の修復もそう難しいことではないのだ。
「……サイゼル。お前は自分の気持ちを相手に伝える練習をするべきだ。お前は相手に誤解されやすいからな」
「うっ……で、でも……」
敢えてハウゼルとは言わないが、そう言うと思い当たる節があったのか若干怯む。そんな彼女を説得するように、
「ほんの少しでも気持ちを伝えることが出来れば、他人との仲を深めるのに大いに役立つ。相手が妹であろうと、誰であろうとだ」
「……でも、あたしは──」
「……いつも言っていると思うが、俺としては、お前とハウゼルはそれぞれ別の強みがあると思っている。比べてしまうのは分かるが、それを気にすることはない。お前が自分で言うように、自分は出来るんだと堂々としていればいい」
「…………」
押し黙ってしまったサイゼルを無言で見つめる。
サイゼルが優秀な妹のハウゼルにコンプレックスを持っているのはよく理解しているが、同時に、彼女が妹を大切に想っていることも事実だ。
ならばその部分は乗り越えられるはずなのだ。複雑な思いから、顔を合わせると素直じゃないことを口走ってしまうが、実際には妹を心配したり、一緒にいたいという気持ちの方が強いため、コンプレックスの方はそれほど重くはないと思っている。
ならばその本当の気持ちを伝えられるようになればいい。だからこそ、
「……わかっ……てるけど……」
「──なら、まずは“好き”と好意を言葉で伝えてみろ。まずはそこからだ」
「っ、だ、だからって、そんな急に言われても……もうちょっと簡単な──」
「いや、お前の場合はそれさえクリア出来るなら解決したも同然だからな。“好き”と直接的な言葉を言うことが出来るようになれば、多少素直になることくらいは容易になるだろう」
「…………そ、そうなの?」
「ああ、安心しろ。お前は必ずハウゼルと仲直り出来る。俺が保証しよう」
確かな自信を持ってサイゼルに告げる。そもそも二人は嫌い合っている訳ではないのだ。少し気持ちのすれ違いが起きているだけ。
ならばそのすれ違いを改善し、お互いの気持ちさえ伝わってしまえば、後は仲の良い関係を保ち続けられるだろう。そのためにも、ハウゼルに対する様に、羞恥を感じる相手へ気持ちを伝えなければ練習とは言えないのだ。
自分で言うのも面映い話ではあるが、とレオンハルトも別の意味での羞恥を感じつつも表には出さずにサイゼルの言葉を待つ。
膝の上に置いてある手がぎゅっと握られているのを確認しつつも、その直後、サイゼルは意を決したのか、ゆっくりと口を開くと、目を逸らしながら、
「……すっ、……す、す……す……!」
音が一つだけではあるがもう少し。もう殆ど言っているようなものなのだから恥ずかしがる必要はないだろうとレオンハルトは内心で応援しつつ、それを見守る。しかし、
「…………あぅ」
何故か言葉を止めて、顔を俯かせてしまう。こちらも微妙に気が抜けてしまい、
「……もう殆ど言っているし、こちらとしても気持ちは分かっているのだから言えるだろう。何故そこで止める?」
「だ、だって……その……あんまりにも見るから……」
「それも練習の一環なんだがな。でもまあ分かった。それならまずは顔を見ずにやってみろ」
「う、うん……」
……かなり前途多難だな……。
分かってはいたことだが、こうまで気持ちを直接的な言葉にするのが苦手となると中々に骨が折れるかもしれない。言わせるための方法が無いわけではないのだが、それを今やってもあまり意味がない。だが、
……いや、よく考えれば“それ”をすればあっさりと解決するんじゃないか……?
そこまで考えたところで、姉妹仲をあっさりと改善出来る可能性の高い案を思いついたが、それを実行するのはこちらとしても心の準備というか、ちょっとどうかと思うようなものだ。
しかし一定の信頼性というか、問題を解決出来るだろうという確信はある。だが、
……まだもう少し様子を見るか……。
それを実行するのは、真っ当な方法を試してからでも遅くはないのだ、とレオンハルトはサイゼルを見て、
「す、す……す…………………………………………き」
「……もう少し間を縮められないか?」
「~~~っ、だって……恥ずかしい、し……」
遅くはないはずだ、と自分に言い聞かせるように思いながら、サイゼルの練習にしばらく付き合い続けた。
その仕事は、魔軍に所属する魔物兵にとって極めて重要かつ誰もが経験する仕事であった。
荒野を、森を、平原を、雪原を、岩山を、大地を。それぞれの道を行くのは緑、青、赤といった色の集合体。大勢の魔物兵であり、魔軍の大部隊だ。
数にして二個軍。一つの任務に対して計4万の兵を動員して行うのは、それだけその任務が魔軍の生命線であるからだ。
無論、敵戦力に対する遊撃や防衛、制圧任務を任されたのであればこの数はおかしくはない。だが、今の魔軍に敵がいないことは周知の事実だ。
人類という下等種族でありながらも、最大の敵勢力が滅び、魔軍の管理下に置かれて久しい。故に敵など何処にもいないのだ。
精々、野良の人間──魔物討伐隊や冒険者、隠れ里を探して人狩りを時折行うのが関の山であり、それであっても動員される兵力は最大で一個軍あれば足りる。野良で戦える人間の数は、魔物の数に比べて圧倒的に少ないのだ。
じゃあ何の目的でこれほどの数を動員しているのかというと、答えは簡単。──補給だ。
大陸西側から大陸各地に向かって行軍する彼らは、どの部隊も大量の荷車を引いていた。家畜として使える“うし”──人うしではなく、本物のうしを使って引かせていたりはするものの、その数が膨大なのはやはり、生物である以上は必要不可欠な物資、主に食料などを大陸西側のツリー都市周辺で賄っているからに他ならない。
人類にはほぼ知られていないことだが、大陸西側には世界樹と呼ばれる巨大な樹が存在し、その周辺では食料などの資源が大量に採れる。
故に古くから魔物が集落を作る場所であるのだが、その世界樹は困ったことに大陸西方にしか存在しないのだ。
世界は今や魔物が支配している。本拠地である魔王城は大陸東部にあるし、世界各地に人間牧場や魔軍の居留地が存在するのだ。
その土地で作物などを育てて補給の手間を削減しようとはしているものの、大陸北部などは中々に作物が採れないし、肥沃な土地での農業も、世界樹周辺で何もしなくても自然に採れる大量の食料資源に比べれば微々たるものでしかない上に、コストも掛かる。人間牧場で抱えている人間を奴隷の様に働かせれば解決するのではないかという声も、この体制になって直ぐに出てきたが、忘れてはならない。人間を養う必要だってあるのだ。
人間が食べる食料など粗末なものでも構わないし、それほど多くを必要としないとはいえ、それでも億を超える人間を食わせるには膨大な食料が必要なのだ。
つまり魔軍というのは世界を支配し、人間に永遠の生き地獄を味わわせるという政策を魔王ジルが発令した瞬間から、人間を養わなければならなくなってしまったのだ。
ある程度餓えさせるのは構わないが、大量の餓死者を出させる訳にはいかない。人間牧場にいる人間を殺せば、それが魔人や使徒などの支配者階級などではない限り、処罰されてしまう。
実際には眼の届かない場所で小規模の殺しは起きているものの、目立つような、露骨な大量殺人は行わないのがこの時代の魔物達の暗黙の了解となっていた。
故にどうしても殺したければ、野良の人間を襲う。野良の人間であれば殺したとしても何も言われない。生け捕りにするのが好ましいとはいえ、野良の人間には戦う力や考える力を備えてる場合も多いし、抵抗も激しい。故に野良の人間に対しては殺しても構わないという実質的な許可が出されているのが現状だ。
加えて、人間牧場で家畜となった人間達は、痛みや苦しみに対して慣れてしまっていて反応が悪いことも多く、嗜虐趣味の魔物達の間では不評なのである。そのため、人狩りが魔物達の間で流行するのも仕方がないことだと言えるだろう。
ともかく、生かして苦しめる以上は、生きて貰わなければならない。そして、生きるには食料が必要不可欠。各地の人間牧場、そこに住む多くの魔物兵達を食わせ、人間達も食わせるためには、多少の畜産、農業を営んだところで間に合わず、やはり世界樹から無限に供給される食料に頼らなければならないのだ。
幸いなのは、それさえ行えば食料に関しては心配がいらないこと。何とも都合の良いことに、魔物が食うために存在するような世界樹は、それこそ何千年という単位で食料を供給し続けている。
とはいえ一度に採れる食料には物理的な限界もある。次に食料などが生えてくるまでには長くはないとはいえ、多少の時が必要なのだ。
重要なのはそのサイクルを途切れさせないこと。食料が生えてきたら速やかに収穫し、それを各地に送り届ける。現在の魔軍は全体の半分をこの収穫、補給に回している。世界を魔物が統一し、戦争は無くなったが、牧場の管理と補給があるため、魔軍の仕事というのはなくならない。
万一でもこの補給が途切れれば、多くの魔物と人間が飢えることになる。ある程度の備蓄はしていても、消費量が膨大であるため休むことは出来ない。
故に世界最大の都市となったレオンハルトシティへの補給任務に従事しているレオンハルト軍の魔物将軍は、同僚の魔物将軍らと通常よりも多い三個軍を率いて、西側から持ってきた食料を街へ届けようと行軍をしていた。
報告が届いたのは、そんな折のことだった。
「将軍、偵察に出ていた部隊から報告が」
「聞こう。どうした?」
安全な補給任務を行うための、補給路の偵察。いつも行っていることであり、基本的には問題が出ることは少ない偵察に、今日は報告があった。
魔物将軍は自らの役目を全うするためにも、報告にやってきた魔物隊長に報告を促す。敬礼と共にハキハキとした声で、
「はっ、報告致します。ここより東、約30キロ離れた森の入り口で野良の人間、それも冒険者と思われる人間らを確認したとのことです」
「……ほう? 珍しいな。この辺りに野良の人間が出るとは……」
「同感です。如何致しましょうか?」
野良の人間というだけならそこまで珍しくはないが、大陸東部。それもレオンハルトシティに近づくに連れて、野良の人間というものはあまり見なくなるのだ。
というのもレオンハルト軍による哨戒が多いこの辺りは、野良の人間もあまり近づかない。魔軍の部隊がうろうろとしている場所には、さすがの魔物討伐隊なども警戒して近づかないのだ。
とはいえ少数の冒険者であればこういうこともあるかと思う。魔物将軍は頷き、
「偵察部隊はどうしている。引き返して来たのか?」
「はい。最初は相手が少数だったこともあり、生け捕りにしようと戦闘を行った様ですが、相手の逃げ足が早く、森の中に逃げ込まれてしまった様です」
「ふむ……」
逃げられる、ということはそれなりに戦闘力を持つ人間か、と魔物将軍は推測する。冒険者であれば程度の差はあれ戦闘力は持ち合わせているというのが普通だが、
「如何致しましょう? 森の中に追撃部隊を出して捕らえますか?」
「そうだな……どうするか」
「……もし追手を出すのであれば、追撃の指揮は是非とも私にお任せ頂きたく──」
と、魔物隊長が勇猛にもそんなことを言う。
張り切っているのだろう。野心だろうか。出世するために武勲が欲しいのだろうか、と思う。手柄といえば野良の人間を制圧するくらいしかないため、無理ないことではある。
それとも、単純に何をやっても基本的には許される野良の人間を痛めつけたいのかもしれない。人狩りは趣味でも任務でも人気があるのだ。
だが魔物将軍はそんな血気盛んな魔物隊長にこう言った。
「──いや、
「……え?」
魔物隊長が間の抜けた声を出してしまう。だが直ぐに我に返りつつも疑問が晴れないのか、続けて顔を窺うように声を掛けた。
「あ、あのお言葉ですが……何故追撃なさらないので? 相手は少数ですし、捕らえることも難しくないでしょう。ここで追撃してしまった方が……」
そんな問いに、魔物将軍は頷く。
「ああ。無論、捕らえるとも。補給を終えた後でな」
「……補給が優先なのは分かりますが、部隊を分けて追撃しても良いのでは? 他の軍ではそうしていると聞きますが……」
その言葉を聞いて怒らずに魔物将軍は、なるほど、と思う。合点がいったとも、
「そういえばお前は他の軍から異動してきたのであったな」
「……はい、その通りですが、それが一体……?」
どういう意味か分からないと、頭に疑問符を浮かべる魔物隊長に魔物将軍は答える。行軍の足を止めずに、
「人間を軽視している部分がそれらしい。うちの軍出身であれば、この場合は追撃を出すことはない」
「……どういう事ですか?」
やはり分かってはいないようだと、魔物将軍は頷く。いいか? と、
「少数とはいえ、人間の冒険者相手を追いかけて森の中に入ると、それなりの被害が出る可能性がある。部隊を分散させたのなら尚更な」
と、魔物将軍は講義をするように説明を続ける。
「人間というものは、基本的に魔物より脆弱な下等種族だ。それはいい。実際に劣っているのは事実だ。しかし、連中も馬鹿ではない」
言う。遠く、確かに見える木々の入り口を見て、
「人間牧場にいる能無しの人間共を見ていると、つい軽視し過ぎてしまうが、野良の人間というのはそれなりに強さを持ち、なおかつ狡猾であることが多いのだ。それこそ、魔物兵どころか……あまり認めたくはないが、我々の様な魔物隊長、魔物将軍よりも強い個体も少数ながら存在するという」
「は、はぁ……」
あまり理解出来ていない魔物隊長に近づき、今度は軽く問う様に、
「考えても見ろ。世界はどこもかしこも魔物の世界で魔物がいない場所の方が少ないくらいだ。だというのに連中、未だに野良で生き延びている。隠れ、逃げ、時には戦う。そんな連中が牧場にいる連中と同じだと思うか?」
「……思いません」
「だろう? まあうちだとコロシアムで戦ってる人間なんかが良い例だな。娯楽かつ教育が行き届いているからこそ、安心だと見ていられるが、強さを持った人間は猛獣とおんなじだ。しっかりと首輪を繋げていないと牙を剥くし、首輪をつけていても何かの弾みで危害を加えられるかもしれない。我々よりも強いというならのなら尚更だ」
「そ、それは……」
魔物隊長がゴクリと唾を飲み込む。そんな奴の肩を叩きつつ、
「ま、それほど心配する必要はないのだがな。ただ、人間というのは個体差が激しい生き物だ。特に野良の個体であれば、生意気にも知恵を使って、こちらを嵌めてくることだってある。奇襲、待ち伏せ、撹乱……見晴らしの良い場所ならともかく、森林地帯や岩山なんかの入り組んだ地形に少数の部隊で入り込めば、その手のゲリラ戦術でお陀仏になる可能性が高い。魔物討伐隊なんかが良く使う手だな」
「……なるほど。それは……」
「意外と怖いだろう? その視点で見てみると、その少数の冒険者が森に入っていったのは……私には、
うちの軍だって弱くはない。むしろレオンハルト軍は魔軍の中でも最強の精鋭部隊と言われており、それに恥じないだけの練度を持つと自負出来る。
偵察部隊とはいえ、その部隊から逃げることが出来る人間というのは――弱い筈がないのだ。
「追撃部隊を森に出して、捕らえられる可能性も勿論ゼロじゃないが……こっちにはそんなリスクを一々負う必要はない。街は目と鼻の先だ。さっさと補給を終えつつ報告して、大部隊で囲めば負けはない。相手が冒険者だろうが、森に隠れ潜んでる魔物討伐隊だろうが、どんなにいっても数は千を越えない。一個軍でも充分押し潰せるし、二個軍でも連れていけば向こうの勝ち目はゼロだ。逃げるしかない」
「……なるほど」
そう。どれだけ野良の人間強く、多かったとしても、その数は精々数百といったところだ。確認されている大規模な魔物討伐隊も、その数は千に届かない程度しかいないと報告が上がっている。
であれば、4万もいれば多少強い個体がいても押し潰せる。
強いて問題を挙げるとすれば、
「……まあ、その間に逃げられてしまう可能性はあるし、面白味のない作戦ではあるがな。これが趣味でやってる人狩りならあまりにもつまらない。だが──これは任務だ」
何よりも重要なのは、これが任務中であることだ。
魔物将軍として、補給任務に従事している今、態々少数の人間を追いかけて補給を遅らせる訳にはいかない。
となれば行動は一つ。
「仕事に自覚と責任を持たなくてはならない。補給が定刻よりも遅れれば、それだけレオンハルト様、延いては街に住む多くの同胞に迷惑を掛けることになる。今は補給を優先し、街に到着した後、報告を行い対処するのが最良だ」
「……自分が間違っておりました。反省し、次に活かせるように精進致します」
「気に病むな。今度、講習会への紹介状を書いてやろう。キャロル様やリー様の戦略、戦術講義は中々に面白く、軍務の役に立つぞ。時折、レオンハルト様が直々に訪れることもあるから気を引き締める必要はあるがな」
「……ご指導頂きありがとうございます」
「うむ」
どうやら分かってくれたようだ、と魔物将軍は満足そうに頷く。教育するのはいいが、中にはそれでも軽視してしまいがちな者もいるので、素直な者はそれだけ優秀だと見ることが出来る。
何しろ己や他の魔物将軍でさえも、一応念を入れるようにその手の教えを叩き込んではいても、実感として人間を下に見てしまうのは避けられないのだから。
「……少し予定よりも遅れているか。少し急がせろ」
「はっ、畏まりました」
「補給が遅れると困るからな。それに──」
「? なんでありましょう?」
うむ、と魔物将軍は頷き言う。個人的な理由として、
「今日はこの後、友人らとパーティの予定が入っていてな。高級店に予約を入れてしまったし、遅れると損をする」
「……畏まりました」
羨ましい、といった視線を受けつつも敢えてそれを気にしないようにして、魔物将軍は軍を率いて街へと急いだ。
──その一方。森の中では、
「……チッ、あまり釣れなかったな、もうちょっと嫌がらせしておきたがったんじゃが……」
「この辺りの魔物は他の地域よりも統制が取れているようだね。動きに迷いがない」
「加えて、多少強さも上がっているような気がします」
「ほ、本当に忍び込むんだよね……」
「……まあ、目的のものは手に入ったからね。これで上手くいくと良いんだけど……」
と、言う五人の冒険者。その目の前には、幾つかの魔物兵の死体が転がっており、彼らの視線は
“エターナルヒーローの冒険 ~4つの黄金像~”は、そろそろ佳境やねって。神の試練と同じくらい、下手したらそれ以上のイベントが待ってそうな予感。次回は忍び込むかな?