丘の上の空間は、その問いと同時に僅かに静まった。
それは魔人の威圧感によるものではない。魔人の質問に対し、彼らが自ら息を呑んだからだ。
しかし呼吸の苦しさや肩に伸し掛かる重みが変化したわけではない。未だ最強の魔人──レオンハルトは彼らを突き刺すような紅い視線を向けている。
今までに感じたことのない圧倒的な力の塊を前にして嫌な汗が吹き出てしまう。だがその質問に対する声を魔人に返すことに遠慮はない。代わりに疑念のような、確認するかのような言葉でブリティシュが、
「……人にとって終わった世界で……何故諍うのか……だと?」
「──ああ」
解っているはずだ、とレオンハルトは告げる。石の上に腰掛けたまま、彼はその鋭い視線を一切逸らすことはない。見られていると全てを見透かされてしまいそうな深く、冷たい瞳だった。
だがその底知れない深さの中には、揺るぎない意志を感じる。
ブリティシュらにはその瞳の深さから何かを読み取れることは叶わない。何を考えているのか、どういう人物なのか、それらを見抜けるほどではない。
しかし、この魔人が自らの意志の元に行動していることだけは何となく解る。とんでもない達人であることも解る。
それほどにレオンハルトという魔人は、どこか達観した雰囲気を醸し出していた。畏怖を感じながらも逃げることなど考えず、その声に耳を傾けてしまうほどに、
「お前達は何のために旅をし、何のために黄金像を求めている? ……なぜ力を求める?」
「っ……! それは……」
最後の言葉に、ブリティシュだけでなく皆の表情が驚きで引き攣った。
それは旅の目標である黄金像の収集の正しさを証明でありながら、眼の前の魔人にはそれがバレていることの証左でもある。
つまり、何故力を求めるのかという質問は──力が手に入ることの証明であった。
無論、魔人の言葉だ。全てを信用は出来ない。
だがこのタイミングで、思わせぶりなその言葉。全てを信用することはなくとも、全てが嘘にも聞こえない。
黄金像には確かに何かがある。それが何かまでは分からないが、自分達が黄金像を求めたのは間違っていなかったのだ。
そして──だからというわけではないが。
魔人の質問に対して、その目的を誤魔化すことは不思議とする気は起きなかった。
もうバレているという開き直りか、せめてもの抵抗なのかは分からない。しかしブリティシュは、魔人を真っ直ぐに見返すと、
「……お前達を──魔人を、倒すためだ」
ブリティシュの意志を秘めた言葉に、一行は改めてその目的を思い出し、僅かながら心を再度奮い立たせる。魔人の存在感に圧倒されながらも、レオンハルトへの抵抗として眉を立たせる。
だが、それを見聞きしたレオンハルトは不意に小さな失笑に近い笑みを浮かべた。
「……ふっ、魔人を倒すため……か」
「……何が可笑しい。言っとくが俺達は本気だ」
「ええ、いずれ必ず、魔人を倒してみせます……!」
カオスや日光が殆ど睨むように視線を向けながら言う。自分達の目的を鼻で笑ったレオンハルトへと強く告げる。だが、レオンハルトは笑みを消す代わりに、酷く冷たい表情を向けると、
「悪いがそんな言葉は聞き飽きている。魔人を倒す、魔人を倒して祖国を、仲間を、人を助ける──人類が生まれて約二千年、誰もが口にしてきた言葉だ」
「……それの何が悪い。お前達魔人を滅ぼさないと、俺達は──」
「──“魔人を倒す”。言葉にするだけなら簡単なことだが、それを成し遂げるのは夢物語だと言っている」
「なんだと……?」
カオスが苛立ちを含んだ表情で眉を顰める。魔人の威圧感が無ければ、詰め寄るどころか斬りかかってもおかしくないほどだ。
しかし魔人はそれを許さない。その体から立ち昇る覇気のみで一行を押し留めながら言葉を聞かせる。
「魔人をたった一体でも倒せることが出来れば、大偉業だろう。俺は約二千年。人間がこの世に生まれ、狩猟を中心とした生活を行い、まだ国という言葉もない頃から人間を見ている。当然、誰もが魔人を倒すことを掲げて戦ってきた。中にはお前達を越える実力を持った戦士もいたが、実際に魔人を倒すことに成功したのは振り返っても数人程度しかいない。……この俺もかつては魔人と戦い、その力に敗れた者の一人でしかない」
口でいうほど簡単なことではない、と魔人は言う。何かを思い出すように、
「誰もが魔人を倒すと掲げ、身命を賭して戦ったが、たった一体の魔人すら倒せない。それを成す者達も確かにいるが、そいつらは誰もが尋常ならざる意志と力を持っていた」
「意志と力……それを成した者……」
呟く声に反応するように、レオンハルトは言う。懐かしい思い出だと、
「かつて人がまだ“国”を持ち、魔物との終わりなき戦争に臨んでいた時代には、多くの英雄がいた」
それは、
「一人は、夢を追い求め続けた東方の大英雄。
「……藤原石丸、ですか」
その名を日光が出すと、魔人は薄い笑みを見せた。それは先程のような冷たいものではなく、敬意や懐かしさ、喜びの感情を孕んだもので、
「ふっ、よく知っているな。文明が崩壊する以前の名だが……やはりJAPANの人間であれば伝承として伝わっているか」
「……ええ、死んだ父や祖父から聞きました。貴方達に殺されたので、もう聞くことは出来ませんが」
「そうか。精々、奴の話を聞いた祖国の人間として恥じない生き方をするといい」
日光の恨み節にも近い一言にも、魔人は表情を変えることはない。
彼女の複雑な表情を無視して、レオンハルトは言葉を続ける。その次は、
「もう一人は、正義を掲げて戦い続けた勇者。奴はどれだけ傷つき殺されようと決して心を折ることはなく、
「……そちらもお伽噺のような存在だね。勇者など……」
「だが、確かに存在する。もっとも、今の世の中では勇者がいたところで意味などないだろうがな」
「……どういう意味だ?」
「気になるならいつか調べて見るといい、ホ・ラガ。もっとも、そのうち嫌でも知ることになるかもしれないが」
「…………どうやら、私が知らない様々な事を知っているようだね」
ホ・ラガはその意味深な言葉の意味を読み取れず、結論として眼の前の魔人への警戒度を上昇させた。知識の上でも、己の知らないことを多く知っているのが眼の前の魔人なのだと。
そのレオンハルトは一度間を置いて今しがた語ったことを一行に噛み締めさせると、その上で笑みを消して、再び口を開いて言葉を繋げた。
「他にも多くの手強い戦士がいたが、とうとう魔人を、魔物を倒すことは叶わず人類は敗北し、この暗黒時代に突入した。──だが、よく考えてみれば当然のことだ」
「当然……だと?」
「必然と言い換えてもいいだろう。お前達も考えてみろ。──二十体近い魔人達にその下につく使徒、魔人級の実力を持つ七体の魔物大将軍、一千万を越える常備兵力。人間と魔物の数はそれほど変わらないが、人間の中において、戦える人間というのはかなり少数。対する魔物は、戦える数も人間より遥かに上だ。その気になれば、魔王様の号令で総数3億全てが戦うことの出来る兵士となれる。その上、魔物兵は通常の人間よりも強い。軍隊を指揮する者として言わせて貰うが、この対立で人間側が勝てる可能性はゼロに等しい。例え、魔王様や魔人といった突出した戦力が無くてもだ」
戦力は圧倒的に魔物が上。人間が勝てる道理など何処にもないのだと他ならぬ魔軍を指揮する魔軍参謀は告げる。
「魔人を倒し、あるいは届かせてみせた奴らは、どちらも突出した個の存在であり、そこには意志や技術、それぞれの強さがあったが、魔人を倒せるほどの強さを実際に持ち合わせていた。……だがお前達はそこまで至れていない。人間としてはそれなりの実力者だとは思うが、それは魔人の域に届きうるものではない」
「……それはそうでしょうね」
しかし、だからといって、はいそうですか、と諦めるわけにはいかないのが彼らだ。
ブリティシュは魔人の言葉に首を縦に振り、頷きながらも魔人を真っ直ぐに見返す。そして、
「力はまだ足りてないかもしれない。だけど、だからこそ……僕達は人を捨てる覚悟で旅をしている。いつか魔人を……魔王を排して、この世に人々の自由と幸福を取り戻すために……!」
例えどれほど絶望的状況だろうと、この暗黒時代を続けさせる訳にはいかない。
人間が苦しみ続けるだけの世の中を認める訳にはいかないのだ。
魔人を倒す別々の理由を持ち合わせていても、一行のその想いは同じである。
しかし、その想いを口にしながらもブリティシュには疑問がある。それは、
「……その上で、聞きたいことがある」
「……ほう?」
魔人が僅かに眉を上げたところで、ブリティシュは威圧感が増したのを感じつつも、言葉を止めない。大切な事だからだ。丘の上から見える街に視線を一瞬移しながら、
「あの街を……人間街や牧場を作ったのは、あんたなのか?」
「……ああ、そうだ。全て俺が考え、計画し、実行に移したものだ」
魔人の肯定にブリティシュは、そうか、と頷く。それを聞いた上で彼は質問した。
「……なら、どうしてあんなものを作った? 牧場はともかく、魔人が人間を優遇するなんて……何か狙いでもあるのか?」
先程見た人間街で幸せそうに暮らす人間達の姿や、牧場で苦しめられる人たちの姿を思い出しながら告げる。まだはっきりと瞼の裏に映し出せるほどに近く、強烈な光景だった。
そしてそれを作り上げたという魔人は、その問いを耳にして一切の表情を作ることなく、軽く息を入れると、
「……優秀で役に立つ人間を優遇しているだけだ。ただ魔物を楽しませるために牧場で飼うのは惜しいからな。才能のある人間にはより良い環境を与えて自ら働いて貰った方が効率が良い」
「……チッ、やっぱり魔物ってのは人間を食い物にしてるどうしようもない連中ってことだ」
「──
「っ……なんだと?」
不意にカオスの言葉に反応して、レオンハルトがその視線の圧を強める。再び呼吸が止まりそうな気を感じて怯みながらも言葉を返すと、レオンハルトは一行に圧を掛け続けながら言葉を続けた。
「……先程、お前達は魔物を排して人間の自由と幸福を取り戻すと言ったな? その上で言わせて貰うが……仮に人間だけの世の中になったとして、本当に自由と幸福に満ち溢れた世の中になるとでも思っているのか?」
「……それは、魔物がいなくなれば当然──」
「断言してやる。人間だけの世の中になったところで、平和な世の中を築くことは決してない」
「っ、それは、そうなってみなければ分からないでしょう! 人同士であれば、互いを分かりあうことが出来ます。それを……魔人の貴方に一体何が解る!」
「! この人間、言わせておけばレオンハルト様に対して……!」
日光の言葉に反応して、レオンハルトの横に控えていたキャロルが眉を立てて反応する。明らかに怒った様子で腰元の得物を取り出しかけたところで、
「止めろ、キャロル」
「っ……申し訳ありませんでした、レオンハルト様。少々取り乱してしまい……」
「構わない。お前の気持ちは分かっている。だが、今は控えていろ」
「はい……」
主に注意されて気落ちした様子で再び控える。その主の方はあまり気にしていない様子で、しかし日光と他の面子に向かって更に鋭くなった視線を向けた。
「さて話を戻そう──魔人の俺に何が解るだと?」
レオンハルトは言う。その言葉はあまりにも浅はかだと彼らに失笑を向け、
「――笑わせるな。たかだが二十かそこらしか生きてないお前らに人間の何が解る? 実際に人が蔓延る世の中を見たことがないお前らが、根拠のない言葉と理由を並べて、
「っ……!」
日光が魔人の言葉に表情を歪めながらも、返す言葉を放つことが出来ない。代わりにホ・ラガが、
「……なら、そちらは真実を、人間というものを知っているというのかね?」
「少なくともお前達よりかは知っている。俺は人間が誕生した黎明の時代に生まれ過ごし、魔人になってからも人間というものを見続けてきた。お前らみたいに希望的観測ではない。全て、何もかもを実際に観測し、経験として知っている。人間の醜さや何もかもをな」
その上で言わせて貰う、とレオンハルトが続けた。真に迫る迫力で、彼は言う。
「人の業と醜さこそが、今の世の中を作り上げた原因の一つだ。それがあるからこそ、人は人同士ですら争う。自分達こそが世界の支配者だという傲慢な考えを持ち、優秀な者に嫉妬し、周囲に欺瞞を植え付け、己を虚栄心で誤魔化しながら、己の利だけを強欲に追い求めて他者を滅ぼす。これが人の持つ“業”だ」
「…………っ」
「無論、その全てが悪いとは言わん。魔物にも人と同じ醜さがあるのは事実だ。魔物には、人よりも欲望や本能に忠実という業を持つ。……しかし、魔物には絶対的な支配者の存在があり、それが同族同士の大規模な争いを抑止する。ただ平和な世の中を作るというだけなら、
「っ、だが、それだと人間があまりにも救われないです……!」
「ああ、人間であるお前達がそれを目指すのは正当な行いだ。……今を生きる人間が、本当に幸福を感じていないというならな」
「なっ……何を言ってやがる……そんなのは当然──」
「……なるほど、そういうことか」
カオスが魔人の言葉に言い返そうとする声を差し止めるように、ホ・ラガが得心したように頷く。カオスが驚愕で言葉を止め、他の者達もホ・ラガに視線を向ける。それはレオンハルトも例外ではない。
皆が視線を向ける中で、ホ・ラガは気づいたことを口にする。それは、
「……牧場で暮らす人間は、今の状況を
「……えっ? そ、そんなわけ……」
「カフェ。先程の光景を、牧場の人間が言っていたことを思い出してみるといい。彼らは皆、今の状況に満足しているようだっただろう?」
「……!」
カフェがホ・ラガの言葉で目を見開く。それはこの街に来てから出会った人間達の言葉を思い出したからだ。
皆一様に、今の状況を受け入れて、平然と暮らす者達を見てきた。人間街で暮らす者だけではなく、牧場で苦しんでいるはずの人間も含めて。
そして、それこそがこの魔人が作り上げた牧場の根幹ともいえる効果なのであると、
「……お前達ですら、今日初めて魔物達の生活を見て知った筈だ。幸福というのは、こういうものなのだと」
そしてレオンハルトは確信を持ってそれを告げる。言葉が返ってこなかったことが彼らの真実の証明だ。
「今の状況を、不幸だと思わなければ……
「────」
それはあまりにも残酷で、欺瞞に満ちた解決方法であった。
このような世の中で人々に幸福を与えるために。不幸と感じさせないために出来る唯一の行い。
──幸福を知らなければ、不幸にはならない。それこそが、一行が知る由もない人々の救い方なのだ。
だからこそ、レオンハルトは己の行いに確信を持っている。
もっとも、嫌悪感や罪の意識を全く感じない訳ではないが、どんな茨の道だろうと、自分の意志で決めたことだ。覚悟はとうの昔に決まっているのだと。
「牧場で魔物に苦しめられている人間とて、苦しめられることが当然の事だと思わせれば幸福に他ならないだろう?」
「っ……こ、の野郎……!」
「ふざけた話ですね……!」
だからこそ、この反応はレオンハルトが予想していたものだ。
人々が、自分達の状況をとてつもない不幸だと知らずに、不幸を幸福だと思いこんでいる状況。その原因を前にして、憤らないわけがない。
「……人は自分にとって都合の良い空想のみを信じようとし、都合の悪い現実を認めようとしない。仮にお前達が牧場の人間に対し、今の状況を不幸なことだと言って聞かせ、あるいは解放して人里に連れて行ったとしても、何の救いにもならない。今まで自分が受けてきた仕打ちを思い出し、そこで初めて人としての尊厳を取り戻し──
だが、それを甘んじて受け止めながらも、レオンハルトは彼らに更に厳しい言葉を向ける。──
「あんたは……」
「!」
しかし、そこで静かに声を出した者がいた。ブリティシュだ。
憤るわけでもなく、表情を歪めることもしない。哀しそうではあるが、それよりも真っ直ぐにレオンハルトに視線を寄越してくる。
故にレオンハルトも、そこで期待した。何を言うのかと。この英雄は、どのような意志を見せるのかと。目つきを細めて彼を注視する。
ブリティシュからすれば鋭い視線が重厚な圧と共に伸し掛かってくる状態。
しかしブリティシュは怯まなかった。魔人を真っ直ぐに見つめ、
「……なんで、そんな配慮をする?」
「…………ほう?」
レオンハルトが眉を上げる。
眼の前の男は怒りで我を見失うこともせずに、魔人である己に問いかけてくる。真面目な声色で、
「あんたの行いは酷いが……まるで人間を案じているようにも見える。魔人であるはずのあんたが、何故そんなことを──いや、そもそもなんで僕達にそんなことを言って聞かせる? 黄金像を渡すことも、本当に力が手に入るなら、あんたにとって利にはならないはずだろう?」
「あ……」
「……まあ、確かにそうだね」
カフェが同じく気づいた様に短い声を上げ、ホ・ラガが同意するように顎に手を当てて頷く。それを見たレオンハルトは、問いかけられたことに対して、答えではなく、別の言葉で答えた。
「……一つは俺の個人的な趣味だ。俺は強い人間と戦うのが好きだからな。だが……もうひとつの真実を俺の口から言うことは出来ないな」
「……何故だ?」
「ふっ、大したことではない。だが、言わせて貰うなら──真実というのは、直視し難いものだからだ。残酷で、
「あんたは……」
「──さて、まだまだ聞きたいことはあるだろうが、そろそろ問答を終わらせよう」
レオンハルトはそこでブリティシュの言葉を遮り、問答を終わらせることを告げた。
次が最後の質問だと、
「改めて問おう。──お前達は何の為に力を欲する?」
何のために力を求めるのか。黄金像を欲するのか。旅をしているのか。その全ての意味を込めた問いを、
「──答えを聞かせてみろ」
「…………ああ」
ブリティシュは魔人の問いに、逃れることの出来ない圧を感じる。
仮に嘘や誤魔化しの類の答えを告げれば、一切の慈悲も容赦もなく殺されてしまう──そんなことを思わせる圧力だ。
有無を言わせない雰囲気の中、ブリティシュは皆に目配せした上で息を入れ、口を開いた。
そんなことは決まっている、と、
「色々と興味深い話だったけど……それでも、結論は変わらない」
「…………」
「そのような偽りの幸福を認めるわけにはいかない。あくまでも僕は、僕らは──最善を目指していく」
故に、
「魔人を倒すため──いや、魔人を倒し、人々に自由と幸福を齎すまで、どれだけ困難な道だろうと僕達は止まることはない」
それが、
「それが──僕達、今を生きる人間の“意地”だ!!」
「…………なるほどな」
告げられた意志のある言葉を耳にして、レオンハルトは眼を細めて一行を見渡す。
ブリティシュの誇りある信念に続いて、他の面子も同じ気持ちのようだ。
だが、その中に迷いがある者が混じっていることを、レオンハルトは見逃すことはなかった。
しかしレオンハルトはそれを指摘することはせずに見逃すと、石の上から立ち上がった。
「お前達の答えは分かった」
その上で、手元の黄金像をレオンハルトは懐に一度しまう。
「だが──それでも最低限の“力”無き“意志”であれば、そこに届くまでに虚しく散るのみだ」
「っ、何を──」
「まさか──くっ!?」
魔人レオンハルトは立ち上がり、身体を半身に動かすと、抑えていた気を僅かに解放してみせる。
瞬間、魔人から立ち昇る気によってその場の大気が震え上がった。
それが意味することは──先ほどまでの状態ですら、力を抑えているということ。
最強の魔人の底は、まだまだ知れない。そのことに一行は驚愕し、この後に起こることを予感して自然と武器を構える。
そしてその予想通りに、魔人が言った。それは、
「お前達の現時点の力が、俺の剣を相手に何処まで食い下がれるか──試させてもらおう」
「っ……戦う気か……!」
「この力は……さすがに規格外だな……」
「ほ、本当に……!?」
「くそっ……ふざけやがって……! 大体お前、剣なんて何処にも持ってねぇじゃねぇか──」
「──いや、
と、カオスの怒声に対し、レオンハルトは右手を宙に伸ばしながら答えた。
何をしているのかと疑問に思う直前、レオンハルトの右手は突如として空間に飲み込まれた。
そして手首まで飲み込まれたところで、その右手を引き抜くと、その得物が姿を現す。
「なっ……!?」
「魔道具の一種か……!?」
ホ・ラガが空間から出てきた剣をそう疑問する。実際、空間からとんでもない気配と共に現れたそれは、異様な物であった。
身の丈を越える程の長さを持つ、紅い刀身の剣。細長く、刀にも似たそれは、しかしその異様な気配が、通常の得物ではないことを確信させる。
魔人の剣気と呼応して禍々しく輝くそれをレオンハルトは一行に向ける。その銘の名は、
「──魔剣オル=フェイル。俺の愛剣だ」
「魔剣……!」
ブリティシュは本能的に剣を構える。己の得物であり、大事な愛剣──宝剣イングランドを。
他の者達も自分達の得物を構えて戦闘態勢を取る。だが、魔人と魔剣から感じる暴威に対しては気休めにしか感じられない。
本能が全力で警鐘を鳴らし、眼の前の魔人から逃げろと告げている。
しかし、黄金像の為に引くことは出来ない。手に入れたのなら即座に逃げるところではあるが、黄金像は魔人の懐にしまわれてしまった。
その内心を知ってか知らずか、金髪灼眼の魔人は魔剣を自然体で構え、
「安心しろ。ちゃんと手加減してやる。──それと、お前達は下がっていろ」
「畏まりましたわ!」
「楽しんでくださいねー!」
「ふっ、愉しむことは難しそうだがな……さあ、始めるか」
二体の使徒を下がらせ、最強の魔人は周囲を振動させるほどの闘気を立ち昇らせ、戦闘態勢に入る。
「お前達が打倒せんと目指す魔人の力、その頂きの一端を見せてやる。──死力を尽くしてかかってくるがいい!!」
「ッ、来るぞ!!」
ブリティシュが叫び、一行が陣形を整えた瞬間。
魔人レオンハルトが襲いかかってきた。
ただのラスボスに見える(今更)
というわけで、以前に要望があって考えてみたけど、晒す機会のなかったランス10風、フルスペックレオンハルトでも晒しておきます(唐突)
ランス10・レオンハルト(フルスペック)
突撃3
異常除去
真空波:物理1倍・AP消滅
団子斬り:物理2倍・3連撃
流水:支援配置[流水](1ターン、攻撃を無効化して反撃)
プロミネンス:魔法4倍 燃え100%
???:魔法4倍 凍え100%
作戦指揮:軍師効果2配置
分身:支援配置[分身(1/2)](一定ダメージで解除・毎ターン物理1倍の支援解除攻撃。最大2回)
瞬光:物理5倍(ダウン攻撃・AP消滅)
震天:HP半減攻撃(バリア貫通)
禍津風:物理1倍、5連撃(恐怖100%)
天羽々斬:5倍攻撃(遠隔・弱体100%)
魔仭王剣:物理20倍(2名ダウン[☆ランク高い者から優先] 混乱100%)
無敵結界
レオンハルト体質:???・解除不可
異常レジスト75%
回避10%
こんな感じじゃね(適当)