ランスシリーズは過去の歴史で詳細が少ない部分があったり、描写のない(少ない)キャラがいるため、幾つもの独自設定がどうしても出て来てしまいます。
自分なりに考察や想像で歴史やキャラを作っていきますが、そこはこの作品を読む上でご了承下さい。
何が言いたいかって言うと、スラルちゃん見たい
「おい! 何やってやがんだ! 俺を早く守――れ」
都合、七体目の魔物隊長を斬り捨てると、相も変わらず周囲の魔物兵が悲鳴を上げながら混乱する。
「ひぃッ!? だから俺はこの集落を襲うのは嫌だったんだ!」
「はぁっ!? テメェ乗り気だったじゃねぇか!」
「うるせぇんだよ! とにかく俺たちじゃ敵わねぇ! あの方を呼んで来い!」
「出てくるわけねぇだろ!! 俺はさっさと――ぎゃあっ!!?」
俺は喚いてる魔物兵を袈裟に斬る。
「い、言わんこっちゃねえ! 逃げるぞ!」
「うわぁあああああああああ!!」
俺は逃げていく魔物兵を尻目に剣を振り、滴る魔物の血を払うと息を吐く。
……さすがに疲れたな。
もう味方の陣からはかなり遠くに来てしまった。彼らは大丈夫だろうか。情に厚いとは言えない俺も長年一緒に戦ってきた兵達には思うところもある。一応、これだけ混乱させればそうそうやられることはない筈。
しかし、そろそろ兵の疲れも限界に近いだろう。この所の魔軍の侵攻は頻度を増してきており、それに鞭を打つような連日の攻勢。俺の中で撤退の文字が浮かび上がる。
だが、俺は曲がりなりにも王だ。
そんな柄じゃないし、戦うくらいしか脳はない。実際の権力は長老達が握っているとはいえ、だ。
ここで残りの魔物将軍を倒さないまま撤退すればどうなる?
撤退するに当たって兵達を休ませるためには戦線を後退せざるを得ないだろう。
なら、途中の集落は犠牲になる。
予備兵力なんてものは存在しない。女性に戦わせることも提案したいが、そんな事を長老達が許すはずもない。
幾ら化け物と腫れ物扱いを受けようが良心くらいはあるのだ。余裕がある内は見捨てない。
自身の身体の状態を確認する。
細かい切り傷はあれど、致命傷や大きな傷は皆無。ダメージらしいダメージは受けていない。
問題は疲労のみ。ならば魔物将軍を倒すまでは保つ。
そして魔物将軍を倒した後は魔軍の瓦解に合わせて撤退、か。
俺は気を引き締めると魔物の群れに向かって突撃していった。
そしてさらに三体の魔物隊長を倒した後、俺はやっと目標を見つけた。
「な、もうこんな所まで――!」
「!」
俺は言外に首を取るという意思を込めて止まらず魔物将軍に突っ込む。
「お前は何なんだ! くそっ、魔物兵をゴミみたいに斬り捨ておって……くっ、おい、俺は下がるぞ。足止めを――」
「逃さん――」
俺は力を振り絞り、両手で剣を振り回しながら、突き進む。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!」
魔物兵をまた一人、また一人と斬り捨て――
遂に魔物将軍の眼の前まで辿り着く。
「これで最後――!」
「く、クソっ! こんな所で終わる訳には――!」
と、魔物将軍の腹に剣を突き刺そうとした瞬間。
俺は突然、気配を感じ――直ぐ様左側面を剣で防御した瞬間、衝撃が来た。
「が、がああああああっっっ!?」
防御した筈があまりの衝撃の強さに身体が吹き飛ばされ、浮いた身体が地面に衝突し、土煙が舞い上がり、魔物兵をも巻き込んでようやく止まる。
……何だ、何が起こった……?
手を地面に突き、身体を何とか起こしながら顔を魔物将軍の方へ向けるとそこには何かが立っていた。
人間ではない。細長いシルエットからそれは理解る。
なら、あれは……。
やがて土煙が晴れていき、その姿が露わになる。
真っ先に目につくのは白い身体。そして次に羽。赤い目に爪。
その存在を前にした為か、はたまたそれに受けたダメージの為か、俺は呆然としたまま魔物将軍が呟いたその名前を聞いた。
「メ、メガラス様――!」
魔王の血を分けた忠実なる配下――魔人メガラス。
その存在を前に人間である俺は頭の中に最大限の警鐘を鳴らした。
「…………」
少しの時間を置いて立ち上がった俺を見ているのか、しかしメガラスは何も言葉を発しない。
ただじっと見つめているだけ。
そんな姿を不審に思ったのか魔物将軍が声を掛けた。
「あの、メガラス様……?」
「…………下がれ」
「――は?」
ようやく口を開いたメガラスの言葉を理解出来ず、思わず間の抜けた声が出る魔物将軍。
「え、それはどういう……?」
意味を理解出来ず、問い返してみようとするもそれは同じくメガラスの言葉に遮られる。
「……戦いの邪魔だ」
「は、はっ! つまりメガラス様があれのお相手をするということで……?」
「…………」
これ以上は語らぬ。さっさとしろ。メガラスは態度で言外にそう示しているようであった。
「……わかりました。おい、お前らメガラス様の戦闘の邪魔にならぬよう少し下がるぞ!」
「え、いいんですか?」
一人の魔物兵が聞き返すが、魔物将軍はうむ、と神妙に頷いた。
「メガラス様であれば確実に仕留めるであろう。お前たちは邪魔にならぬよう離れた所で見ておけ。俺は前線の指揮に徹する」
「……は、了解しました!」
そのやり取りを最後に魔物将軍と魔物兵らが離れていく。その場には俺とメガラスだけが残った。
……中々マズい状況だな。
さっさと魔物将軍を倒さないといけないのに、目の前には魔人。俺は最初の一撃と疲労で満身創痍。
最悪、兵達は隊長や自分達の判断で撤退することも出来るかもしれないが、俺の方は逃げることも困難。
俺は返答は期待出来ないな、と思いながらも口を開く。
「……見逃してくれたりはしないんだな?」
「…………」
それこそ愚問だ。とメガラスは戦闘の意思だけをこちらに見せてきているように感じた。
やるしかない、か……。
「レオンハルトだ」
「…………メガラス」
名乗ってはくれるんだな。と、最後に感想を抱いて戦闘は始まった。
戦闘は先程と同じ、メガラスの超高速の突撃から始まった。
「ぐううっ!」
俺は攻撃の瞬間、必死に横に転げるようにしてなんとか回避する。
くそっ、こいつさっきも思ったがあまりにも速すぎる!
見てから回避はほぼ不可能と判断するしかない。回避するには攻撃の意を読んで、その瞬間思いっきり動いて避けるしかない。
「…………」
メガラスは俺が攻撃を躱した事に少し驚いたのか、一瞬だけ間を空ける――が直ぐ様再度の突撃。
絶対に俺に向かってくるんなら――!
俺は横っ飛びで回避しながら両手で俺が居た場所に剣を振った。
「…………!」
メガラスが今度こそ驚いたのか、慌てたように空に方向転換、飛んで回避する。
空に飛び上がったメガラスはまたしても俺の事を一瞬見つめる。
まさか人間に見切られるとは思わなかったとでも言いたげだ。俺も速さにはそこそこ自信があったんだが、その自信も今日でばっきばきにへし折られた。
それに飛ばれたらどうしようもない。俺の攻撃手段は剣だけ。魔法なんて使えない。
だが、それは相手にも同じことが言える。メガラスがどれだけ速く、空が飛べたとしても魔法が使えない以上、俺にダメージを与えるなら、俺に近づくしか無い。
さて、どうする? 躱すことだけなら出来る――とか考えていたら来る!
俺は攻撃の瞬間を見て、横に飛ぶ。さっきよりも速い気がする。そして剣を振り回し――
俺の身体は宙を舞った。
「っ――ぁ――ッ!」
声にならない叫びが口から漏れ出る。そのくらい瞬間的に感じた衝撃は凄まじかった。
痛みで声が出ない。なんなら考えることすら億劫だ。
だが、今ので一つ分かったことがある。というより当たり前の話だ。
こいつの超高速の突進は直進だけ、という訳ではない。少しだが、曲がることが出来る。
完全に方向転換するならブレーキが入るだろうが、曲がるならそれは必要ない。だが、それだけで俺に攻撃は当たらない。
恐ろしいのはこいつも俺の動きを見てから行動を変えた事だ。あれだけのスピードを出せるならメガラス自身の反応速度もそれ相応であるのが必然。しかも相手は魔人。人間の反応速度なんて本来上回るのが当たり前の筈だ。
メガラスは俺が右か左かどちらかに避けるのを見た瞬間、突撃をその方向へと曲がるようにしたのだ。
結果、右方向に避けた俺を見たメガラスが右に全力で曲がりながら突撃したことでメガラスの突撃に俺は直撃した。
ふざけやがって、スピードが速いだけの魔人じゃない。こいつは戦士だ。
いや、分かっていた筈の事か。俺の知識はメガラスがホルス最速の戦士であることを知っている。それを正しく理解出来なかった事が――いや、それも違うか。この負けは必然だ。
ルドラサウム世界の運命、魔人と人間の覆す事が出来ない絶対的な差、それが埋まることが無い以上、魔人と戦う状況になった時点で俺の負けは確定していた。
「……く……あぁ……」
くそ、こんなとこで俺は終わるのか。ともすればまた転生出来るかもしれない。だが、それは俺じゃない。俺という自覚があるだけの別人だ。
正真正銘、俺の人生の終着点はここでしかない。
「…………」
メガラスが気づけば俺の近くまで来ていた。戦士として俺の死を見届けてでもくれるのだろうか。まぁ、文句の一つでも言ってやりたいがもう口はほとんど動かないし、別段悪い気分はしない。存分に見届けてもらおう。
「…………!」
あ、なんだ? 突然膝なんかついたりして。そこまで敬意を表する必要はないんだが。
様子のおかしいメガラスをぼーっと眺めていると、俺の顔に影がかかった。
……誰だ? お迎えか?
そいつは小柄な少女だった。白い髪に紅い瞳、表情は固く俺をじっと見つめている。
確かにこの世界には天使もいるが、天使ってこんな姿じゃ無かった気が……いやまぁ、何でもいい。身体も苦しいしお迎えでも介錯でも早くしてくれ。
「……そう、わかったわ」
少女はどうやらメガラスと何か二、三言会話か何かの確認をしたのか理解したように頷いた。
「ねぇ、貴方……その、私についてきてくれる?」
はぁ? 俺に言ってるんだろうか?
いや、何でもいいから早くしてくれ。天国でも地獄でも好きにしろ。
俺は何とか最後に、首を縦に振る事で答えた。
「そ、そう……約束だからね」
少女は何故か目を逸しながらもじもじと頷くと、やがて決心したようにしゃがみ込むと指先を俺の口元に運んだ。
あ……? こいつ何して――ぐぅううッッ!?
――身体が熱い。熱い。熱い。
身体の内側で何かが暴れ回り、肉体を弾き飛ばしそうだ。
先程まで消えかけていた痛みまで復活し、身体のあちこちが壊され、作り変えられるような感覚。
無限にも一瞬にも感じたその熱さが無くなった時。
「――――あ?」
俺はその場で立ち尽くしていた。
俺は――どうなった?
……生きてるのか?
両手を確認、問題なく動く。
周囲を確認――しようとして眼の前にメガラスと先程の少女がいた。
少女は俺を頭から足の先まで一通り眺めると、興味深いといったように頷く。
「どうやら問題ないみたいね。それじゃ行くわよ」
「は、はぁ? お前何言ってんだ? ていうかお前、俺に何した?」
気が動転していた所為か俺が普段、集落の人間に対する口調とは違って完全に素のような喋り方で問いかける。
「それは後で教えるからとりあえず行くわよ。メガラス、運んであげて」
「………………………………………………………………」
何だか物凄く嫌そうな気配を感じた後、メガラスは俺を手で掴んで持ち上げた。
「なっ、お前、だから何なんだよ!?」
俺はメガラスに宙吊りにされながらも少女に疑問を叫ぶ。
少女はジトっと睨むと、やれやれとでも言いたげに首を振った。
「じゃあ先に一つだけ」
「あ?」
「私の名前はスラル。そして――――魔王よ」
「――――は?」
その少女、スラルと名乗った少女は俺にとんでもない爆弾を落としていった。