眼前で起きている凄まじい光景を、戦闘を見守る隊員達は信じられないという面持ちで見ていた。
「まさか、隊長があんな……」
「今まで、実力を隠してたんだな……どちらも」
「ああ……隊長もやべぇと言ったが……新入りの……ガイの方は、もっとヤバそうだな……!」
ぷちハニーによる爆発をバリア一つで完璧に防いでしまった結果を評して言う。
まさか、あの隊長ですら、こうやって実力を晒したロラン隊長ですら勝ち目がないのかもしれない。
誰もがはっきりとは口にしないものの、それを誰しもが予感していた。
そしてそれは、当人でさえも、
「……ははは、そうやってあっさりと防がれると、
そう、本当にまいってしまう。
今まで隠してきた己の実力。その本気中の本気を、初見である手の内を見せてなお、それを容易に対処してしまう。
もう今までのように、隊員達から期待されるような、完璧な騎士であり続けることは出来ない。魔物狩りにおいても手加減していたことが露見してしまったのだ。今までの実績があるとしても、多少評価は落ちるだろう。
そのリスクを受け入れてまで、この勝負に本気を出して臨むことにした。なのに、
「君は、軽々と越えていくんだね……」
「──俺の方が強いからな。当然だ」
バリアを継続しているガイが告げる。
そう、当然なのだ。相手は自分よりも強いのだから。こちらの攻防をあっさりと対処してもおかしくない。
それは分かっていた、今も分かっている筈なのに──
「ふ、ふふふ……」
──どうにも、我慢ならない。
相手が己をあっさりと越えていくことが、どうしても。
「──白色破壊光線!」
「っ……!」
直後、白の奔流が自分がいた場所を通過し、地面を穿つ。
光線。レーザー系の魔法は躱すこと自体は難しいものじゃない。こちらから見れば点の動きでしかないのだから、そこから身体をずらしてしまえば避けられる。
だが、ガイの不敵な笑みにロランは嫌な予感を感じた。
「そんなにもこれが欲しいのか?」
と、ガイはカオスを掲げてみせる。
何を、と思った矢先、ガイはこちらではなく、山の谷間の方にカオスを振りかぶり、
「え、ちょっ!? ガイ、お前まさか──!?」
「ははは! 欲しけりゃくれてやる! 取ってこい!!」
「ぎゃーーーーー!?」
「!? くっ──!?」
ガイがおもむろにカオスを振りかぶり、谷に向かってぶん投げる。
世に二つとない伝説級の魔剣だ。それほど貴重なものを投げ捨てたのをみて、咄嗟にロランはそれを拾おうと動いてしまった。
──そういうことか……!?
直後に狙いに、相手の小細工に気づくも、拾うことを止めることも、防ぐことも出来ない。
慌てて跳躍し、カオスを手にとって回収する。すると、
「ぐっ、これがカオスの……!?」
「はははは! 引っかかったな! 喰らえ! 黒色破壊光線!!」
「儂もいるんですけどーーー!?」
空中でカオスの叫びが響く。
先程の白色破壊光線よりも更に威力の高い黒色破壊光線。見るのは初めてだが、魔法の最高峰、最強の威力を持つことは知っている。
それをガイの魔力で放たれれば、それは通常のものよりも威力が高いことは明白で、
「くっ……! 炎の矢!」
ロランは咄嗟に懐からぷちハニーを取り出して自分の真横に当たる空中に放り投げると、一瞬の間を置いて炎の矢をぷちハニーに向かって発動する。
すると、少し離れた場所で爆発が発生し、こちらを爆風で吹き飛ばそうとした。
空中での回避を行うためのやむを得ない処置。だが、
「ぐっ、あっ……!?」
爆風に加え、黒色破壊光線をほんの僅か掠ってしまう。
たったそれだけで、戦闘不能に持っていかれるほどの威力を感じ取り、しかし何とか地上に着地する。
「デビルビーム!」
「っ……!」
今度は範囲攻撃となる闇の魔法の拡散が、こちらを襲う。
今度こそ躱しきれずに吹き飛ぶが、苦鳴はなんとか押し殺した。
その時に、こちらの気分を悪くするだけであったが、相手の得物であるカオスも手放してしまい、ガイがあっさりとそれを拾ってしまう。
「よし」
「よし──じゃない! お前、儂を本気で捨てる気じゃったじゃろ!?」
「そんなことはないぞ。あいつが絶対に拾うだろって思ってたからな」
「拾わなかったら儂、谷底に真っ逆さまなんですけど!?」
ガイが不敵な笑みを浮かべながら、囮にされたカオスの苦情を流してしまう。
それを視界で確認しながら、しかしロランはダメージを受け流すことが出来ないでいた。
……まったく、嫌になるね……。
たった一度、相手が攻勢を仕掛けてきただけで、己は瀕死の様相を呈している。
膝を突き、長剣の方を杖のようにして息を乱す。戦闘でここまで追い込まれたのは、子供の時の訓練を除けば二回目。慣れているとは言えない。
だからだろうか。こちらが弱りきり、戦う力がないと見て、ガイはカオスとのやり取りを打ち切ってこちらに視線を向けた。
「だがまあ、終わりだろ。──おい、負けを認めるか?」
「っ……」
そんな屈辱の発言がこちらに掛けられる。
周囲の言葉も耳に入ってきた。隊員達の、心配そうな、息を呑んだ、
「隊長の負けだ……!」
「あのガイって奴、こんなに強かったのか……!?」
「いや、ありゃ仕方ねぇよ……ガイが、あんなに化物染みてたんだからな……」
そんな言葉が耳に届き、己自身でさえもそれに僅かながらでも得心してしまう。
それがたまらなく──嫌だった。
幸いにも彼らはまだ自分には幻滅していないらしいが、そんなことはもはやどうでもいい。
嫌なのは、我慢ならないのは──こんなにも弱い、己自身だ。
己を掻き毟りたくなるほどの嫌な気分に、もはや笑いがこみ上げてくる。
「ふ、ふふ、ふふふ……僕が、負ける……?」
あんなにも……生まれてから今日この時まで、戦いに身を捧げてきた自分が?
たった一日たりとも、剣を振ることをサボった日はない。逃げ出した時でさえ、己に染み付いた習慣は消えてくれることはなかった。戦い方を変えたとしても、戦いから逃げることは遂に出来なかった。
その時に気づいた。自分は、この宿命から逃れることが出来ないのだと。
逃れることを、望んではいないのだと。
これは──“因縁”だ。
己に役目を課した偉大なる祖先との、人生を掛けた決闘なのだ。
これに
だから自分は、己自身の手で、それを成すと決めたのだ。
だが、選ばれたのは己ではなく、何処の誰とも分からない若者である。
こちらから見れば、ぽっと出の、あまりにも唐突に現れた規格外の存在である。
確かに強い。その強さは、こちらを心の奥底で無理やり納得させてしまう程のものだった。
──諦めろ。
──お前は選ばれなかった。
──相手はお前より強く、その使命を果たすのに相応しい。
──だから諦めろ。お前は負けたんだ。
そんな言葉が己の内に木霊する。
だが、
「……この程度で、僕が諦めるとでも……?」
──ふざけるなよ。
「何年……何十年、戦ってきたと思ってる……?」
それは相手ではなく、自分に対しての言葉だ。
「──
ふざけるな。
未だ魔人にすら届かない相手に、魔人を目標としてきた己が、同じ人間相手に諦めるとでも思っているのか。
「まだやるのか?」
「当たり前でしょう……!」
ガイのあっさりとした言葉が耳に届き、ロランはそれに是と返す。
分かっている。その温度差を。
ガイは己ほど、この戦いに意味を見出している訳でもない。ただ挑まれたから返り討ちにしているだけ。己は足元に転がってきた石ころだ。
──
己がただの石ころだと言うならば、転ばせて転ばせて──何度も転ばせて、怪我を負わせ、最終的には打ち負かしてやる。
石ころというのは、思ったよりも硬いのだ。己の何倍もある相手が軽く蹴りつけた程度では壊れない。
「僕に負けを認めさせたいなら、全力で踏み潰せ……ッ!!」
軽く蹴りつける程度で壊れるものではないと知れ。
足を振り上げて、全力で踏み潰せ。
それでもなお、己は砕けない。やるなら同じくらい硬いものをぶつけてこい。
昔からだ。昔から、どれだけ戦いが嫌で、課せられた使命が嫌であっても。
「負けることが……諦めることが……僕は、大嫌いなんだよ……!!」
そう。逃げれば負けたことになる。
逃げれば諦めたことになる。
それに気づいたからこそ、己は一度逃げ出した筈の場所に戻ってきた。
己が目標とする存在を一度見て、絶望しかけたところで気づいた。
「さあ、行くぞ──」
長剣と短剣を右手と左手に構えてみせる。
そうして行うのは自分が持つ最大の必殺技。相手に必ず勝つための、全身全霊の技だ。
「ちっ……来るなら来い!」
「油断するなよ! 何かやってくるぞ!」
相手が剣を構えたのを見て、こちらもスイッチを入れる。
思い出すのは己が今まで培ってきた全てのもの。
闇に生きていた時代に得意としていた、己の本来の戦闘スタイル。
しかしそれは、培ってきた剣の腕も無駄にはならない。
魔物を皆殺しにした時と同じ様に──殲滅するだけだ。
「っ、増えやがった!?」
「残像だ! 惑わされるなよ!」
己は動く。
最後の力を振り絞り、残像が見えるほどの速度で相手の周囲を動き回る。
速度は己が最も得意とする部分である。
それだけ高速で動きながらも、足音を殺すことは造作もない。
どんな相手も、魔物でさえも──相手が気づく前に、その首や心臓を掻っ切れば死ぬ。
ならばこちらの方が劣っていようとも、必ず勝機はある。
「──“アサルトモーメント”……!」
相手の視界から己が消え、相手の背後を取った短い瞬間。
己は右手に持った長剣と、左手に逆手で持った短剣を振るい、相手の急所を狙った。
……獲った──ッ!
高速の思考の中で、己の必殺技が通じたことを確信する。
これで己の勝ちだと。
だが──
「──そこかぁ!!」
「っ……!? ぁ……」
ガイは完全に消していたはずの己の気配すらも読み取り、振り向きざまに魔剣を振るった。
長剣と短剣が弾かれ、そのまま剣を横っ腹に喰らう。
その時に斬れなかった情けを感じ取りながら、ロランは酷い悔しさの中で思った。
──見誤っていた。
やはり、相手は己より数段強かった。
相手の実力を見通せないということは、それだけ強さに開きがあるということ。
これほど格差のある相手は、二度目だ。
一度目は他ならぬ相手。己の目標でもあった──
「……ガイ。君は……」
『──人としては悪くない……が、その程度では無駄だ。
地面に倒れ、その言葉と姿を思い出しながら、
「君は……魔人を、倒しに行くのか……?」
「……知るか。俺の邪魔をする奴は誰であれ殺す。魔人だろうと誰だろうとな」
ガイの答えは使命に満ちたものではなく、どこまでも自由で身勝手なものだった。
だがそれを羨ましく思う。
自分も、それだけ身軽であったのなら、と。
そして同時に、己を越えた相手を心配に思い、
「魔人は、強い……途方もないほどに……」
「あ? 戦ったことでもあるのか?」
その問いに頷く。
一度目の敗北がそれだったのだ。よく覚えている。
「ええ……今のように本気を出して……無敵結界を解かれ、手加減されてなお……剣の頂には、全く届かなかった……」
「…………」
「それは……まさか……」
ガイは無言だったが、カオスには覚えがあるようだった。
「取る手を尽く防がれ……命を見逃された……君も強いが、あれほどではない……どちらとも戦った僕には分かる……」
「……ふん! 見る目がないな。俺は最強だ。誰よりも強い」
「いやいやいや……自信過剰すぎじゃろ……」
カオスの低いトーンのツッコミを受けてなお、ガイは自信たっぷりにそう言ってみせる。
カオスは呆れているが、それでこそ、
「……ふふ、そうか……なら、君に任せるとしよう……副隊長」
「──はい、ここに」
「お、おい! 急に行くなよ!?」
呼べば魔女がすぐ近くまで寄ってきていた。まるでそれを予見していたかのように。
少し遅れてガイともっとも仲の良いクーベロもやってくるが、ちょうどいいと、ロランは気絶する前にそれを口にする。
「……鋼の騎士団としても、魔人を倒す力を持ったガイを全面的に支援することを誓おう……副隊長とクーベロは、これからガイのパーティに入り、そのサポートを頼む……」
「了解しました」
「お、俺もかよ!? いやまあ、構いませんけど……」
淀みなく了承する魔女と、狼狽えながらも了承してくれるクーベロを見て満足していると、横から当人の声が割って入った。
「おい、何を勝手に決めてる。俺は──」
「不服かい? 一応、決闘の報酬として考えていたことさ……これからは金や食べ物、物資の心配はしなくていい……これでも、僕は顔が広くてね……別の里でも支援が受けられるようにしておくさ……各地の情報も、出来る限り集めて君に渡そう……それから──」
「よしいいだろう! 俺に任せろ!」
「ガイ、お前な……」
クーベロが呆れるような視線をガイに向けるが、ガイはニヤリと笑みを浮かべてほくそ笑んでいる。
だがこんな時代だ。その判断は正しい。物欲に走ったとしても何も問題はない。
「……では、後のことは任せるよ、副隊長……そろそろ、気を保つのも限界だ……」
「承りました。……しかし隊長。思ったより余裕そうにも見えますが……もう少し働いてみては?」
「意識を保つことには自信があるだけだよ……察してくれ。身体中がボロボロで休みたいんだ……」
「はい。では後の事はおまかせを」
任せる、と最後は言葉にならずに、ロランは全身から力を抜き、意識を一度手放す。
──彼なら任せられる、と。己の中に納得を作り、満足を得ながら、憑き物が落ちたかのような顔で、ロランは眠りについた。
決闘が終わり、隊長であるロランが気絶すると、その場は慌てたように動き出した。
「た、隊長! お、おい! 早く里に戻るぞ!」
「ああ! 早く治療しないと……!」
「私、ちょっとだけ回復魔法使えます!」
「隊長を運びながら回復魔法を使える奴は隊長につけ!」
と、命に別状はないが、瀕死の状態のロランを助けようと誰もが動く。
それはロランが本性と真の実力を露わにした後でも、前と変わらないものであり、
「……さすがは隊長だな……まあ、あの人の人望は凄まじいし、特に問題にはならねぇか」
「……ちっ」
「そこで舌打ちとか分かりやすいの~……なんで儂と相性が良いのか何となく分かってきたわ」
うるさい、とガイは半目で呟くカオスに向かって短く返答する。
というのも、決着の瞬間に、ガイは一つ、予想外の事が起きたからだ。
それは、自分の中にいるもう一人のことで、
『おい、せっかく決闘のどさくさに殺してやろうと思ったのに、何で邪魔した?』
『──決闘のルールは予め通達されていただろう。相手が負けを認めるか、戦えなくなったら決闘終了。殺すことは禁ずる、とな』
『ちっ……態々介入してきやがって……』
そう。ガイは普通に峰打ちではなく、斬る気満々だったのだが、そこをもうひとりのガイの強い意志でふいにされた形だ。
とはいえ、結果的にはこれで良かったというのも理解出来る。
『もし殺していたら、また居場所が無くなるだろう……お前も、それは理解しているとは思っていたがな』
『……うるさい! そんなことは分かってる!』
もうひとりのガイの呆れるような声を聞いて軽くイラつく。
正直、こうやって人の事を考えながら動くのは窮屈なのだ。正直、もうとっくに目立ってしまっているし、決闘くらいであれば殺しても問題ないとは思ったが、あの人望を見るに、もうひとりのガイの判断が正解なのだが、それを認めたくはなかった。
ああやって色々と協力してもらえるらしいし、それはいいのだが、ガイとしてはもうひとりのガイの変な責任感の方が頭を悩ませる。
『カオスの所有者となった以上……やるべきことをやらねばな……』
『…………ふん』
魔人に対する今までの経験や、ここまでの経緯から、もうひとりのガイは魔人を倒すことを半ば決意してしまっている。
そしてガイ自身も、もうひとりのガイほどではないが、魔人を倒して好き勝手してやろうと思っていなくもない。
せっかくカオスを手に入れたのだ。好き勝手過ごすことが出来ればそれでいいが、魔人をいざとなった時に倒せるというのは助かる。
なのでカオスを捨てる気も、立場を捨てる気もなかった。
ただもうひとりのガイの正義感というか、責任感だけが不安であった。
「──さて、それじゃあガイには、少し提案があるのだが……」
「なんだ? つまらないことだったら犯すぞ」
「代償が厳しすぎねぇか?」
「ふふふ、それでも構わないが……」
「って、こっちは乗り気だし……」
クーベロがガイと魔女の言葉に気を揉み、一々ツッコミを挟む。そういう性分なのだろう。苦労しそうな奴だ、とガイは特に気にすることもなく、魔女に顔を向けた。
「いいから言え」
「……まあ、晴れてガイはこれから、魔人を──正確には魔王を倒す使命を帯びた訳だけどね。さすがにすぐに倒しにいくことは無謀すぎる。今は力をつけることが先決だと思うのだけど……そこのところ、実際にその力をもつカオスはどう思うかな?」
「……そうじゃな。確かに、ガイは強いが、今すぐ戦いに行くには不安がある。力や経験をつけることは賛成だ」
魔女に意見を求められたカオスは、自分なりの私見を述べる。やはり、今までの記憶や経験からも、魔人を倒すには準備を整えてからの方が良いだろうと。
魔人が正真正銘の化け物だと知っているカオスには、魔人を早く倒したいという使命に突き動かされてなお──いや、突き動かされているからこそ、もう少し力をつけるべきだという魔女の言葉に賛同したのだ。
だがガイの方はそれを理解していない様子であった。何かを苦労するのが嫌だという面倒くさそうな表情を浮かべ、
「別に俺はこのままでも構わんがな」
「その自信は大切なものだけどね。まだ強くなれるのならそれに越したことはないだろう?」
だから、と魔女は告げた。
ガイがもっと強くなるための提案として、
「どうにも、ガイは剣もそうだが、魔法の才能があるみたいだからね。剣についてはよく分からない私でも、魔法についてなら道筋をつけることは出来る」
「……何をする気だ?」
嫌な予感がしながらも問いかける。
魔女はニヤリと口端を歪めて告げた。簡単なことさ、と、
「──君を、私の“故郷”に招待したい」
何故なら、
「そこには、
故郷へ来ることの利点を、魔女はガイに向かって説く。
未来視の魔女はガイに力をつけさせるために、彼を多くの魔導書が待つ故郷へ、招待することにしたのだった。
決闘を行っていた隠れ里のある山の中腹。
その広場を見渡せる崖の上で、機能性を重視したようなドレスを身に着けた金髪ツインテールの少女は、その場にいる商人としての部下達を背後に、感嘆するような声を発した。
「──良いものが見れましたわね。色々と順調そうですし」
「に、人間にも、おっかない奴がいるんすね……」
「ああ……あんな化け物とは戦いたくねぇな……」
商家のお嬢様、といったような少女に、その部下ともいえる商人の格好をした人間達は先程まで行われていた光景に肝を冷やす。
人間を下に見ている彼らだが、今の戦いを見て人間を侮ることは出来ない。
やはりこれまで以上に慎重になろうと心に決めながら、彼らは上司である少女に声を掛けた。
「それにしても……観戦するならあの場にいても良かったのでは? どうせ気づかれないでしょうし……」
「あの魔剣が無ければそうしてましたわ! 魔剣があると、貴方達はともかく、わたくしは気づかれてしまうそうですのよ!」
「そ、そうなんですか……にわかには信じ難い話ですけど……」
一応、上司である少女からあの魔剣の効果をさわりだけでも教えてもらった彼らだが、その効果は正直、全く信じられないものであった。
幾らなんでも、魔人を殺せる武器など、荒唐無稽にも程がある。
彼らは彼らの主君の強さ、恐ろしさを知っているため、それはあり得ないだろうと己の中で断じた。
だが、自分達が仰ぎ見るべき主自身が、そう言っているのだから蔑ろには出来ない。
自分達はただ、言われたことをやればいいのだ。
「それで、これからどうするんですか?」
「ふふん、決まってますの! この情報をお届けし、褒めてもらうのですわ!」
自信満々に言って、褒めてもらうことを想像して目をキラキラとさせる少女。相変わらずだなぁ、と思いながらも、聞くべきことは聞いておこうと遠慮気味に口を開く。
「いや、あの……店の方はどうします? 放置ですか?」
「──? ああ、そうですわね。別に放置しても構いませんけど……商品を無駄にすると勿体無いおばけが出てしまいますわ!」
「つまり……?」
「品物だけこっそり持ち出す準備をしておくのですわ! 襲撃前夜に行えば間に合いますのよ!」
「了解しました。では、うし車の手配をしておきます」
「いつも通り、本部の人間として出入りして、輸送を通達しておきます」
少女の言葉に二体の商人が頷く。
少女は相変わらず高いテンションのままで、
「ええ、それでよくってよ! 貴方達も、あのガイとかいう人間には気をつけなさいな! 接触は基本厳禁ですのよ!」
「畏まりました。では──」
「早速向かいます──」
命令に恭しく頷き、商人達はその場から、崖とは反対側にある岩山の斜面を駆け下りていく。
商人とは思えない身のこなしを見せながら仕事に戻っていく二体を見て、残された少女は満足そうに鼻を鳴らし、
「ふふん。さすがはわたくしですわ。完璧な仕事振りですの」
と、そう言って自画自賛を行いながら、荷物を纏めていく。
彼女自身も、大規模な商会の代表として色々と人間の隠れ里で忙しい日々を送っているのだ。
だがその次の仕事は、
「このままやって来る制圧部隊に合流しないといけませんわね。後、帰りにお子様方へのお土産をどこかで――」
地図を取り出しながら少女は足を進める。地図を広げて見ながら、そのまま山道を降りていくような何気ない動作で、少女は眼の前の崖から
だが少女に動揺はない。落下によって髪や衣服が揺られるも、地図に目を走らせながら少女は息をつく。
「はー、見届け役というのも大変ですわー。暴走しがちな不届き者ですし……」
そうして下の岩場に着地し、そのまま次の崖をまた飛び降りていく。
少女は異常な身体能力を見せながら、主から言い渡された次の仕事へと向かっていった。
闘将とおんなじで、03でヘンダーソンが自分達ヘルマン軍6000をサファイア一人でも殺し尽くすことが簡単だろうとか言ってる辺り、鋼の騎士団全軍でも使徒一体(最後に出てきた謎の元コマンダー)に全滅させられるかもしれないという事実……まあ実際には相性もあるし、それなりに強い奴で足止めしたり、頑張ったら勝てなくもないだろうけどね。今回のロラン隊長や、トーマみたいな奴なら()