というわけで本編どうぞ
始まった戦いに、ライゼンは咄嗟の回避を行った。
いきなりだな! と感想を得て、横へと疾走を行う。
通常のドラゴンの十倍程の巨体を誇るライゼンだが、その機動力は並のドラゴンを凌ぐ。獣の様に四足を使い、アベルの飛びかかりを避けると、避けきれたことに安堵する。
まともに食らったとしてもダメージを負うことはないだろうが、念には念を入れることに越したことはない。敵はあのアベルだ。正気を失っているとはいえ、何かダメージを負わせる予想外の手段を使ってきてもおかしくはない。
故に回避。幸いにもこの地下回廊は広い。自分が疾走し、暴れ回っても問題ないほどに。
だがそれはアベルも同じだ。アベルは攻撃を避けられたと見ると、今度は助走付きで更に別の相手に向かった。
「カミーラァアアアア!!」
「アベル……! 貴様はここで殺す!」
相手はカミーラ。咆哮し、その名を呼びながら彼女に向かって突っ込む。
その怒りすら感じられる感情の昂りは、ライゼンに対するものよりも大きい。が、それも致し方ないだろう。
ドラゴンにとって、アベルにとって、カミーラとは全ドラゴンと戦争になってでも欲しかった相手だ。正気を失っていたとしても、その相手を完全には忘れてはいないのだろう。
攻撃を加えようとするアベルに対し、カミーラは飛び上がってその手を広げた。
両の手にある五本の指から伸びるのは、ドラゴンの爪。それも魔人になって強化された、変幻自在かつ、あらゆるものを斬り裂く爪だ。
それによってアベルを切り刻もうとカミーラは攻撃を避けながら爪を操る。
だが、
「カミーラ!」
「っ、くっ! 速、い……!」
アベルの機動力を甘くみてはいけない、とカミーラに声を上げ、フォローに入る。
爪を躱し、カミーラに向かっていったアベルを吹き飛ばすように突撃し、躱されながらも間に入る。
その間にもアベルは雷を纏いながら、その速度を高めている。
地下回廊の最下層ホールを滅茶苦茶に駆け回り、大気を操って周囲を破壊しながら速度を増すアベルは、正に災厄。かつての魔王の姿に相違ない。
その規模こそ以前より劣ってはいるものの、戦闘スタイルに変わりはないようだ。
「この速さは、中々に辛いものがあるな……!」
「ああ、気をつけろよ! 奴は元々、速さだけならドラゴンの中でも上位だった。それが魔王になって力を増し、奴は最速のドラゴン──いや、最速の魔王となったのだ……!」
そう説明している間もアベルは駆け回り、カミーラを守るこちらに四方八方から攻撃を加えてくる。
空を往くドラゴンは、地上での機動力を疎かにする者も多いが、アベルはそうではない。
四足を器用に使い、時折ステップを踏み、あるいは尾を利用し、緩急でタイミングを外しながら加速を続けていく。
それはかつて、彼が己の指揮下にいる際に教えたものだった。
地上だろうが空中だろうが、アベルはこちらを凌ぐほどに速い。だが、
「ふん……だが、以前よりは遅いな……!」
そう言ったのは同じく昔のアベルを知る魔人、ノスだった。
彼はローブを翻し、拳を握りながらも戦意を立ち昇らせる。
アベルの戦闘を見てなお、沸き立ち、凶相を浮かべていた。
「ああ……! かつてのアベルなら、その姿を視認することすら難しい! 大勢の同胞が、奴に触れることすら出来ずに散っていった程だからな……!」
その無法者としての顔に思うところはあるが、その意見には同意する。
やはり魔王としての力はもう殆ど残っていない。絞りカスの如き力しかないのだろう。その強さは以前よりかなり落ちている。
だがそれでも魔人を上回るほどの力は見せている。そのことが、ノスを愉悦させ、そして一方で憎悪させた。
「その力、血沸く……が、忌々しい奴だ……! 今はもう、貴様の時代ではない……! ジル様の時代だ……!」
「ガアアアアアアアアアアッ──!!」
「ふん……! 言葉も介せぬ獣が、ジル様と並び立てると思うな……! オオオオオォォォ……!」
ノスがアベルの攻撃を受け、一瞬表情を歪ませたが、口元には笑みも残る。
ローブを脱ぎ捨て、ノスは低い体勢で突進した。
「貴様はここで始末する……!」
それは巨大な岩を想起させるものだった。
地竜の特性である“膨張硬化”。
ダメージを受ける度に、その箇所の装甲が硬く分厚くなっていく。
岩石を思わせるノスの肉体は無骨で、それ故に凶悪だ。
「潰れろ!」
大地の拳がアベルに向かって振るわれる。
それは容易に躱されるように思えた。しかし、
「──ミストモード」
気がつけば、ケッセルリンクの姿がなく、そこには霧が漂い始めていた。
瘴気や荒れる大気に交じるのは黒い霧。
そして彼女の声が聞こえるのは、その霧からだ。
「思うところもあるが、これも任務だ。早々に、始末させてもらう……!」
そう、その霧はケッセルリンク自身。
物理攻撃の殆どを受け流し、それでいてケッセルリンクの攻撃はどこから飛んでくるかも分からなくなる、反則級の能力。
ケッセルリンクが幾つか持つ魔人としての能力の一つが、アベルに牙を剥く。加えて、
「舐めるなよ……!」
カミーラも未だ健在。
今度は上空に羽ばたき、その手から闇のブレスを放出する。
魔人四天王の内、3体が意図せず攻撃を合わせる。
「アベル、悪く思うなよ!」
そしてそこにライゼンも加わった。
四天王以上の力を持つドラゴンが体当たりを敢行する。
ライゼンの堅牢な鱗と巨躯による体当たりは、それだけで必殺の威力を持つものだ。
あらゆるものを砕き、あらゆる攻撃を通さない無敵の突進がアベルに迫る。
しかしアベルは、それら全ての攻撃に対し、行動を起こすことで退避してみせた。
それは、
「ギィガアアアアアアアアアアアアアアッ!!」
「……! 大気が……!」
アベルが一吠えすると、その頭上の黒雲と、周囲の大気が荒れ狂う。
それによって己を覆おうとしていた霧状態のケッセルリンクが払われる。
霧とてケッセルリンク自身であるため、大気で散らされれば実体と化して攻撃することも難しい。
そしてその雷雲から迸る稲妻は、直接カミーラを狙った。
「っ、チッ……!?」
普通の雷であればともかく、アベルの力を纏った豪雷は無敵結界を貫通し、カミーラに傷を与えうる。やむを得ずブレスで雷を吹き飛ばし、カミーラは舌打ちを発した。
その眼下では、ノスが既にアベルに肉薄していたが、
「グルゥ……!」
「っ……オオオォォ!」
アベルがステップを踏み、ノスの突進を躱してみせる。
そして一瞬、横に飛んだアベルは、そのままの勢いでノスに横っ腹から噛み付いた。
「離せ……! 忌々しい愚物が……!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアア!!」
アベルが噛み付いたノスの肉体を地面に向かって叩きつけ、衝撃を与えた後で横に投げ飛ばす。
言ったとおり、離してやったぞと言わんばかりの行動だが、実際にそれを言うこともなければ、正気を保っていたとしても言わないだろう。
既にライゼンが迫っており、そんな余裕はない。
「グウウウ!!」
「逃がすか……!」
アベルはライゼンに対しては攻撃で出迎えることはせず、その突撃を躱そうと試みた。
が、ライゼンもそう安々と逃しはしない。疾走するアベルを追いかけるようにホールを駆ける。
こちらを振り切ろうと緩急をつけ、何度もフェイントを入れてくるが、その程度には引っかからない。
なにせ、瞬間移動する血気盛んな同胞や、色々な面で化け物な強敵と戦っているのだ。
この程度で今更振り切れると思うな──そう心で思い、ライゼンはアベルを追いかけた。
すると、
「グガアア!!」
とうとうアベルが飛行し、宙へと逃げようとする。
だが、それをライゼンは見逃さなかった。
宙へと逃げていこうとするアベルの下をわざと通過し、即座に反転し、己の背をアベルに向けるようにする。
そうすると、アベルにとっては予想外の攻撃が飛んでくる。
「グギャアッ!?」
それは、ライゼンの尾だった。
「以前のお前であればいざ知らず、正気を失い、力も衰えたお前ではこれを避けきれまい……!」
そしてただの尾と思うなかれ。
魔王の攻撃にすら耐えるダイヤモンドボディ。それは尾とて例外ではない。
柔軟性を兼ね備えながら、その硬さを誇るライゼンの尾は、ムチのようにしなって相手を打撃する。
しかもライゼンの速度を乗せた一撃だ。人間の作る城くらいならこれだけでも粉砕出来る。
宙に昇りかけたアベルを打撃すれば、アベルは壁に向かって吹き飛ぶ。
負った傷に咆哮を上げながらも、しかし、壁に激突する前には復帰して翼でバランスを取ってみせた。
「耐久力も、未だ並ではないようだな……!」
これは長期戦になるやもしれない。そう思いながらも、ライゼンはふと、もう一体も何処かにいるのだろうかと周りを探ってみる。しかし、
……気配がない? これは、隠れているのか……?
機を窺ってでもいるのだろうか。あの異形の魔人の姿が見えない。
あれほどの強さの魔人がこれほどまでに気配を消してしまうなど、ある意味恐ろしいものだ。あれに不意打ちされれば堪らないだろう。
アベルにも似た戦闘スタイルなのか、とライゼンは期待し、アベルに再び向かっていった。
地下回廊の最下層から離れ、眼下を覗き込んでその戦いを見るのは魔人ケイブリスだ。
彼は戦いが始まった瞬間、必死にここまで退避した。
それもそのはず、彼のポリシー的には、今回の状況はあり得ない。
……あっぶねー! 危うく、アベルと戦う羽目になるところだった……!
そんなのはごめんに決まってる。そう思って、ケイブリスは内心で毒づく。
そもそも、元とはいえ魔王と戦うのなんて狂ってる。
しかもあのアベルだ。ケイブリスは最古の魔人。当然、アベルにも仕えていたため、アベルの強さはよく知っている。
最速とまで言われる機動力に、自身も参考にした狡猾さ。
雷属性を無効にしてしまうAV体質。天候を操る力。ドラゴンとしての強さ。
はっきり言って、今までの魔王の中でも上位の存在だ。例え魔王でなくなったとしても、ケイブリスとしては戦う気の起こらない相手だ。
魔人四天王だろうと戦うことは出来る限り避けたいというのに、それ以上の存在と戦うなんてあり得ない。
そう考えたケイブリスの行動は、やはり逃げ、戦いが終わるまで隠れ潜むことだった。
ただこれはこれで問題がある。一応これはレオンハルトから言い渡された任務だからだ。
……どうする……? 戦うのはありえねぇが、戦ってないと報告されたらそれはそれでまずい……! アイツらを脅すか? いや、そんなことをしても聞くような連中じゃねぇ。あのライゼンだっていやがるんだ……くそ!
どうにかして自分が逃げたことすらもレオンハルトに隠したいが、それすら不可能となると、何かそれらしい言い訳を考える必要がある。
だが切羽詰まったこの状況では、中々良い考えが思いつかない。
……か、形だけでも戦ってみるか? 戦うフリをするとか……戦ってるフリして、逃げ回ってみるか?
危険だが、ひょっとしたらそちらの方が一応戦ったという事実が残るため、マシかもしれない。
それにケイブリスは、なんだかんだでこちら側が負けるとは思っていなかった。
四天王が3人。ドラゴンの化け物が1体。そして何より、後からレオンハルトもやって来るのだ。アベルに待っているのは破滅。それしかない。
そしてだからこそ、ケイブリスは今のうちに戦ってるフリだけでもする必要がある。
「そ、そうと決まればこうしちゃいられねぇ……! 今のうちに、どこか不意打ち出来る場所から──」
と、ケイブリスが慌てて踵を返し、眼下で行われる人外の戦闘を覗き見ながら隙を窺う。
とはいえアベルは速い。魔王時代よりは遅く、今のケイブリスであれば視認出来るとはいえ、攻撃を当てるのは至難の技だ。
ひょっとしたら、一発全力の攻撃を当てれば倒せるんじゃないかと欲も湧いてくるが、まず一発を当てるのが難しいんじゃないかと。
「──あ? あれは……」
と思っていると、それは起こった。
眼下。空を往くアベルに対し、何者かが飛来し、アベルに体当たりを仕掛ける。
その白い体躯に、ケイブリスは見覚えがあった。当然だろう。一応は仲間の魔人だ。
「メガラスの野郎か……!」
「グッ!?」
「!? お前は……!」
アベルが操作する地下回廊の大気。その嵐の中を、真っ直ぐに飛来する白い影が、アベルに向かって体当たりを行う。
ライゼンがその者を見て、懐かしい、と思う。先程も見かけたが、ここ最近は懐かしい者とよく関わるな、と、
「メガラスだったか……!」
「…………」
しかし名を呼ばれても、メガラスは返事を返さない。
彼は無言のまま、アベルに向き直り、戦う意志を見せる。そして一言。
「……加勢する」
簡潔に言って、彼は再びその場から飛翔した。アベルの反撃の意を感じ取ったのだろう。事実、空に浮かぶ黒雲は次の瞬間、メガラスに向かって雷を落とした。しかし、
「……!」
それを、メガラスは躱す。
彼は速かった。飛ぶだけで大気を打撃し、衝撃波を発生させる彼は、全魔人の中でも最速。音速を超える飛翔速度を誇る、最速の魔人だ。
速さに耐えうる白い外骨格で相手に当たるだけでも、ダメージは入る。
そして今の、全盛期より遥かに実力が下がっているアベルであれば、メガラスは彼を捉えることが出来た。
かつてアベルに仕えていた魔人は何を思って戦闘に参加したのか分からない。だが、それがこちらにとって優位であることには違いないものだ。
「感謝する!」
「…………」
戦士として感謝すると、無言だが、今度は確かな肯定を受け取る。
やはり彼は戦士だ、とライゼンは改めて確信する。かつての戦いでも、彼は敵側で唯一、戦士としての誇りが垣間見える存在だったものだ。
多くの同胞を手にかけられたことに思うこともあるが、それも正当な戦いによるもの。恨むには値しないし遺憾もない。
異種族ながらドラゴンの誇りに付き合うことの出来る相手。それがメガラスだ。
──だが、彼の加勢があっても、
「グ──ガアアアアアアアアアア!!」
「チッ……煩い奴だ……!」
アベルの猛攻は止まらない。
メガラスが与えたダメージくらいでは小揺るぎもしないのか、大気を操りながら再び空間内を駆け回るアベル。
全盛期より衰えたとはいえ、魔王の暴威を振るい咆哮するアベルに忌々しげに舌打ちをするカミーラを見ながら、しかしライゼンは目を鋭く細め、奴が行う動作を見た。
「! ブレスが来るぞ!」
それはドラゴンの代名詞とも言える必殺技──ドラゴンブレスだ。
全てを灼き尽くす雷の吐息。アベルが備える必殺のブレスの構えを見たライゼンは皆に退避するように声を上げる。
かくなる上はこちらもブレスを──と、ライゼンが動作に入った時だ。
思わぬ一撃が、アベルに見舞われた。
「────“スクイレルザン”!!」
それは、ブレスの動作のために機動力を僅かに落としたアベルを狙って放たれた一撃。
アベルの頭上から、縦回転と共に落下し、そのままの勢いで大剣による斬撃を放ったのは、今まで姿の見えなかった魔人だった。
「ケイブリス……!」
「……逃げたと思っていたが」
ケッセルリンクが驚き、ノスが思っていたことを口にする。
しかしそれが聞こえていないのか、ケイブリスは自身の必殺技を放った後で、地面に向かって着地しながら切羽詰まった声を漏らしていた。
「し、死んでねぇ……!? くそっ、やっぱり無理だったんだ……! でも見ましたか!? 特に、か、カカカカミーラさん! 俺様、ちゃんと戦ってますよ!」
「…………」
そのいつも通りとも言える小心で保身に満ちた様子にカミーラも普段の冷たい視線を向ける。
だがそのケイブリスの一撃は、全くの無意味という訳ではない。
「ギ、ガアッ……グ……!」
「さすがに効いたか、アベル……!」
痛みを感じているのだろうか。苦しそうな呻きを発したアベルにライゼンが、心の内でケイブリスを称賛する。
そしてすぐにケイブリスも気づいたのか、自身の攻撃が通じた様子のアベルを見て、
「あれ? 思ったより効いてる……? もしかして俺様、アベルより強いのか……?」
と、何やら己の実力に疑問が生じたようでぶつぶつと呟いていた。
だが他の者はそのアベルの隙を見逃さず、既に攻撃の体勢に移っているし、アベルも苦しみながらもまだ倒れるほどではないのか、迎撃の構えを見せた。
しかしこの戦力なら、とライゼンはこちらが優勢であることを理解する。
かつての戦争の終盤のような、多対一の構図ではあるが、
「恨むなよ、アベル……! 既に死したお前を、自然に還す為だ!」
「グゥ……殺スゥ……!!」
そして地下回廊で轟音が響き、戦いはさらなる激戦へと移行した。
この地上で最も強く、恐ろしい存在の居室では男女の声が響き合っていた。
天蓋付きのベッドの中で、誰もが魅了される肢体を弾ませるのは魔王ジル。
そしてその下にいるのは、最強の魔人。魔王の懐刀である魔人レオンハルトだ。
そこで行われる行為はいつものこと。ジルが魔王になってから600年続けられてきた行為だ。
尤も、愛情などというものは見えない──が、それだけ肌を重ね合わせれば、お互いに相手のことが解りもする。
故に魔王ジルは気づいた。そのレオンハルトの状態に、
「……最近は、随分と昂ぶっているな? レオンハルト」
「……解りますか」
レオンハルトもそれを理解されてることを理解し、神妙に頷く。
息を軽く乱しながらも、レオンハルトは粛々と、そしてジルは喜悦を感じている様子で楽しそうに告げた。
「ああ。お前のことは最近、より分かるようになってきたぞ……くく、んっ、しかも今は、こうして繋がっているのだからな……」
ジルが己の下腹を蠱惑的に手でなぞる。その中にある普段よりも大きい感触を確かめ、己の快感を高め、そして締め上げるように。
並の男では腰が砕けてしまうほどの快楽を、ジルの中は孕んでいた。
が、レオンハルトはそれを受けても表情を少し歪める程度しか反応しない。
──だが、今日のそれは少し趣が違った。
ジルの中が更に窮屈になると、それに応えるようにレオンハルトのモノも一回り大きくなって跳ねる。
「くっ、はっ、あぁ……」
ジルが己を突き上げるその存在感に天井を見上げ、堪らないと言わんばかりに嬌声を漏らすが、それでも会話が止まることはなかった。
「くふふ……最近、色々と動いているだろう……? 魔軍を動かし、魔人を動かしている……んっ、それと、何か関係があるのか……?」
はぁ、と艶の籠もった吐息を漏らし、ジルは身体を前に倒し、己の下にいるレオンハルトと肌を重ね合わせる。
その逞しい肉体と、ジルの大きな胸が合わさり、横にはみ出すようにいやらしい曲線を描いている。
レオンハルトの頬に黒く染まった手を当てながら、ジルは問うた。
するとレオンハルトは、いつもと違い、軽い笑みを浮かばせた。
「ああ……そうだな。関係ないとは言い切れない。俺も、期待しているのだろうな」
期待。その言葉の意味を理解しながらも、ジルは不可解だった。
「強い人間がいると報告には聞いたが、お前を燃え上がらせるほどの筈はないと思うがな……」
「それはそうだが、やってみなければ分からないこともある」
と、更に口元を歪めてみせるレオンハルト。
そのことに、ジルは反応した。
なにせ、夜伽においてレオンハルトが己に笑みを見せてくれたことなど、これまでの記憶にないものだから。
それだけに、ジルは腰の奥から堪らない気持ちの昂りが湧いてくるのを自覚し、一際強く身体を抱く。
「っ、そう、か……お前が愉しみだと言うなら良いだろう……好きにしろ……!」
強がりとも言える魔王の威厳を出しながら、だが、とジルは命令する。
「……今日はいつもより発散したい気分だ……その昂りを、私に強くぶつけろ……!」
と、尻をレオンハルトの腰に強く押し付け、その存在感を貪るように動く。
ジルの奥がレオンハルトのものと接触し、それを押し付ける感触にジルは嵌っていた。
そしてレオンハルトの方も、おそらくは──
「……分かった。魔王の命令であれば仕方ない」
「──ぁ……!」
尻を両手でホールドされ、凄まじい快感の波が襲い来る。
そのことで頭が真っ白になる前に、ジルは確信した。
──レオンハルトも、
無意識にだが、それを確かに感じ、ジルはそのことを内心でほくそ笑むと、自身にもたらされる絶大な快感を享受した。
相変わらずのジル様とレオンハルト。しかし攻略の糸口が見つかったとか見つかっていないとか。
次回はまた色々。そろそろ表の戦いや、ガイ君にも動きがありそうです