魔王城の大広間に轟音が発生する。
それを起こした男──ガイは己の内に走る痛みや何もかもを無視して破壊の煙をじっと見ていた。
『どうだ……?』
「……いや」
自身の左手に持つ魔剣カオスとの短いやり取り。その意味は今の攻撃がどの程度通じているかという確認と問いかけだ。
あらゆる魔法効果を重複させ、強化することの出来る禁呪“ヌメロロジー”を発動させて放った黒色破壊光線は本来の威力の10倍。
それも現在のガイが持つ膨大な魔力から放たれるそれは一般の魔法使いが使うものと桁違いの威力を誇る。
ゆえに、相手が魔人であっても通用するだろうと。そう見ていた──その見立てはやはり裏切られる。
「──やるな」
「!?」
その声が聞こえたのは、煙を晴らす斬撃──真空波が飛んできたのとほぼ同時であった。
更にその声が聞こえたのはガイの背後から。
斬撃を放ち、それがガイに届くより先に距離を詰めたレオンハルトはたった1人での挟撃を成立させ、その絶技を以ってしてガイに反撃を行ってきた。
「魔法の威力は申し分ない。この俺にも手傷を負わせるほどだ。禁呪と言ったか、どうやらその効果は魔法の効果を増幅させる物のようだな」
「ふっ!」
間近で聞こえたレオンハルトのその言葉に、ガイは返答することはない。
代わりとしてカオスの振り下ろしという返す刃をお見舞いする。その刃の速度は今までのガイの何十倍も鋭く重いもの。レオンハルトの剣に対応し、それを受け止めるほどだ。
そしてそれもまたレオンハルトはその紅い双眸を細めて分析する。
「そしてこの俺についてくる程の身体能力。それもまた禁呪の力か。まさか魔法1つで対応してくるとは、禁呪とはいえ面白いことをしてくれる。代償はある筈だが戦闘に支障をきたすほどではないか」
「随分とお喋りだな……!」
「戦闘中のお喋りは嫌いか? なら返さなくてもいい。俺と戦闘を成立させる人間は実に600年振りになるからな。こう見えて気が昂ぶっているんだ。おかげでつい饒舌になってしまう」
『儂らの時は戦闘ですらなかったってか……! どこまでも舐め腐った奴じゃの……!』
カオスが鍔迫り合いの最中にそう割って入れば、レオンハルトはそれを鼻で笑う。それは肯定の意味だった。
「そういうことになるな。だがそう悲観するな。お前達もまた人間レベルでは最高峰だった。十分合格点ではあったが……俺に力を出させるには足りなかっただけのこと」
『ならガイの強さは貴様を脅かすのに十分っちゅうことか……! それは良いことを聞いたのう……! この手応えから見ても──貴様を殺すことは可能じゃ……!』
カオスの刃がレオンハルトの持つオル=フェイルを僅かに押す。
それはガイの力がレオンハルトに迫るほどである証左であった。
あるいは──僅かに上回っている。
その微妙な力の具合をレオンハルトもまた読み取ったのだろう。世界最強の剣士である彼は、その剣を相手と合わせただけでその力量を察することも出来る。ガイの力が確かに、自分を殺しうる脅威であると認識したレオンハルトは──しかし、不敵な笑みを浮かべていた。
「クク……そうだな」
「っ……!」
『ぐぅっ!?』
瞬間、レオンハルトの魔の気配が更に一段と強くなる。
物理的に放出されたと感じるほどの濃密なレオンハルトの気配に思わずガイとカオスはむせ返りそうになる。
鍔迫り合いの最中、間近で向けられるレオンハルトからの敵意や殺意。覇気や鬼気と言うべき全ての気配を凝縮したその正体は──レオンハルトの破壊衝動だ。
「本能が警鐘を鳴らしている。数百年動くことのなかったそれがようやくだ……! ああ、感じるぞ……お前は強いな……! その身に余る魔力に禁呪の力……! 魔を滅する剣……! 確かに俺を殺しうる力……!」
「ぐ、力が……増している……!」
『何じゃ……!? 剣の気配まで……!』
剣が押され、レオンハルトの力が増していることを察したガイとカオスは僅かに呻く。
だがそれが、数百年振りに発揮しようとしているレオンハルトの本気の一端だ。
そのパワーに置いてもレキシントンやノスを凌ぐ。レベルにして300を超えたレオンハルトの強さ。
普段は破壊衝動と共に押し込められているレオンハルトの力が、ゆっくりと鎌首をもたげていた。
「感謝するぞガイ……カオス……おかげで久し振りに戦いが楽しめそうだ……! 強者にのみ向けられるべき俺の破壊衝動を発散することが出来る……! お前らの血を見ることでな──!」
「ッ!」
『ぬおっ!』
そしてその力は突然、爆発したようにガイの身体を弾き飛ばすことで発揮された。
「簡単にやられてくれるなよ……! さあ、行くぞ──!!」
そして間髪入れずに、距離を詰めようと飛び込んでくるレオンハルト。
最強の魔人との戦いが始まった。
魔人レオンハルトはガイの力を感じ取り、心が沸き立つのを抑えられなかった。
魔人は皆、血を好む。それはどんな穏健な魔人であろうとだ。レオンハルトとて例外ではない。その身には魔王には圧倒的に劣るが、破壊衝動を持ち合わせている。
だがレオンハルトはそれを極力抑え込めている。元来の趣向ゆえか、弱者に対しての破壊に興味は持たず、修行によって剣を振り発散するか、魔人同士の喧嘩によって発散するか、あるいはまた別のことで発散しているものだ。
だがそれでは満足出来ない。レオンハルトが個人として求めているその衝動は、強者との戦いでこそより発散されるのだ。弱者を殺しても満足は出来ない。そんなものは腹の足しにもならない。
だがレオンハルトの求める強者のラインに届く人間は少ない。
磨けば光る可能性を持つ人間。見どころのある人間であればそれなりに見ることは出来るが、それは本来レオンハルトが求める強者には程遠い。遥か下の物だ。
レオンハルトが興味を持てる。楽しめる相手となると最低でも魔人級。ある程度本気を出せるのは魔人四天王級が必要となるが──そんな相手は滅多に存在しない。
人間であれば1000年以上昔に戦った藤原石丸。600年近く昔に戦った勇者クエタプノなどが当たる。
それは2000年近い時を生きてきたレオンハルトにとって、あまりにも少ないものだ。
それでも最初の頃はまだ楽しめた。レオンハルトが、まだ今よりもっと弱かったからだ。
だが強くなるに連れて、求める強者のレベルは高くなる。
そして徐々に強者は現れなくなった。
戦いのないという意味では、退屈な日々を送っていた。そんな時に現れた超新星こそが──今、レオンハルトの目の前にいるガイという男だ。
禁呪という魔法を使ってこちらとの戦闘を成立させるガイは貴重な存在だ。魔法使いの強者。今まで、レオンハルトがあまり戦ってこなかった相手だ。
魔軍においての魔法使い。その最強クラスといえば──あるいは魔人レッドアイ。
生物、無機物問わず寄生し、膨大な魔力を用いて破壊をもたらす魔法生物。
あるいはレオンハルトの使徒であるハンティ・カラー。
瞬間移動魔法を始めとする様々な魔法を高レベルに用い、複合魔法などの新魔法すら開発してしまった戦闘系の魔法使い。
あるいは、技術や知識という意味ではレオンハルトの城に居候し、研究を続けるガウガウ・ケスチナ。
レッドアイを生み出した優れた付与師であるガウガウは魔道具の制作において他者の追随を許さない天才だ。
そしてあるいは──魔王ジルなどもそうだろうが、そのジルを除けば……これほどの魔法使いにレオンハルトは出会ったことがない。
今まで出会ってきた魔法使い。魔王を除いた全ての相手を上回っている。そんな相手に、
……俺の剣を試すことが出来る……!
それを思い、レオンハルトは自然と笑みを浮かべた。剣を握る手に力が籠もる。発揮した力に反応して剣が唸る。四肢に力が漲る。
魔法という不可思議の力が、どこまでの物か。どこまで剣に抗えるのか。
「速さでは付いてくるか! ならこれはどうだ!」
「!」
対応してみろ──と。レオンハルトは目の前のガイを試すべく、己の技を披露した。
「一瞬連斬──“団子斬り”!!」
──それは剣の達人。もはや神の領域にまで至ったレオンハルトのみが使える理を無視した剣撃。
ガイの四方。上下左右から振るわれる4つの斬撃は、そこらの武芸者をあっさりと4等分にしてしまう反則級の剣技。
これをどう対応するか。それをレオンハルトは見逃さなかった。この程度で死ぬなら興醒めだ。その信頼に応えるように、ガイが魔法を発動する。
「禁呪“ハルマゲドン”」
「ッ!」
瞬間、ガイを中心に極光が──爆発が巻き起こった。
それは城の大広間を、そして予め張ってある衝撃用。破壊用の結界がなければ城全体を燃やし尽くし、吹き飛ばすほどの極大の爆発だった。
それを間近で受ける──そう思ったレオンハルトは、その爆発が届く。届いて身体を焼いた瞬間にダメージを軽減するべく奥義を放った。
「奥義──“禍津風”!!」
それは剣を嵐の如く振るう人の想像を超える連撃。
その剣技によって振るわれる連続の斬撃は、比喩でもなんでもなく嵐となり得る。
例えるなら鎌鼬。それが、何百と一気に発生する如く。
レオンハルトの斬撃が、竜巻のようになって周囲に吹き荒れ、近くにあるあらゆるものを両断する。
それは禁呪の爆発でさえ例外ではない。
僅かに対応が遅れながらも技を放ったレオンハルトは、その爆発を周囲に全て斬り捨てることでダメージを軽減した。
だがそこで一息つくことはしない。すぐにガイの姿を確認し、次なる技を放つ。
「中々の威力だ……! 次はこっちからもお返しするぜッ……!!」
『あれは……! ガイ! あの技は受けるな! あれはヤバい!』
「……!」
レオンハルトが上段に大きく構えたことで、カオスは何かを思い出したのだろう。1度放ったことのあるその技を見て主人に注意を促した。その直後に、レオンハルトはガイを叩き潰すべく剣を真っ直ぐ振り下ろす。
「“震天”──ッ!!」
「……っ!!」
地割れを起こし、天を割るほどの強烈な振り下ろし。
人間程度は粉微塵に出来るその斬撃をカオスの注意通り、ガイは受けなかった。地面を揺れるのを感じたのか、ガイは空中へ逃げるが、レオンハルトは逃さない。
「距離を取ったところで安全だと思うなよ……! そこはまだ俺の間合いだ!」
「安全だと思ってはいないさ……! だが、この距離は魔法使いの距離だ!」
互いに剣を、魔法を放つ。その動作に緩みも遅れも存在しない。
「“天羽々斬”!!」
「禁呪“スティグマータ”!!」
レオンハルトの突き。そこから発生する白い奔流。極太の剣気。
ガイの言葉と共に発生する白い光線。白色破壊光線にも似た光の攻撃が──レオンハルトの剣気と激突する。
「ぐっ……!」
「クハハ! やるな!」
その破壊の激突は、互いに余波を与えることでの痛み分けとなる。あまりにも規模が大きすぎて相殺された僅かな余波でさえ互いに届き得た。
ガイがうめき声を上げる中で、レオンハルトは喜びの笑い声を飛ばす。過去を振り返ってもあまりないものだ──自らが出血することなど。
それをこうも容易く成したガイに、レオンハルトは徐々に高揚していく。
もはやその傷すらも、戦闘の楽しみなのだ。レオンハルトにとっては。互いの負傷は戦いを彩るスパイスでしかない。歓迎すれど忌避するものではないのだと、レオンハルトは怯んだガイに続けて攻撃を加えようとして──
「ッ!?」
──そこで気づく。自らの身体の内側を蝕むものに。
そして発生する激痛に。レオンハルトは、身体を一旦その場に留めることで対応した。その痛みに慣れ、現状を正しく把握し、敵にこの隙を突かせないように。
「これは……毒か……! 俺の体力……力を弱めている……!」
「気づいたか……! だが気づいたところでそれは治せまい……!」
『よっしゃ! やったぞガイ! このまま一気に攻めて攻めてやっちまえ──ッ!』
「ああ。分かっている……!」
「っ……!」
自らの身体を蝕む毒。そして激痛を感じながら、レオンハルトはガイの突撃を捌く。
おそらくは先程の禁呪の効果。あれはおそらく、魔法というよりはそれこそ呪いに近いものなのだろう。受けた者の体力と力を削り、そして激痛を与えるという弱体化の呪い。
痛みに強い自身でさえ、眉をひそめてしまう痛みにレオンハルトは驚く。これは確かに効くと。激痛はこちらの集中力を乱し、毒は徐々にこちらの能力と体力を削っていく。
「ざっと数時間ってところか……? 中々えげつない魔法を持ってるじゃねぇか……!」
「安心しろ! そこまで時間は取らせん!」
カオスを使ったガイの剣撃。その技術はレオンハルトより遥かに劣るとはいえ、その身体能力はレオンハルトに迫ったもの。弱体化の効果も相まって、レオンハルトは対応に僅かに苦慮する。
だがその対応もすぐに終わる──その頃にはガイもまた次の手を打っていた。
「“粘着地面”……!」
「!」
その対応に苦慮した一瞬の隙を突いて、ガイがレオンハルトの足元に魔法を発動させる。
それは触れたものに粘着して足止めする普通の魔法。いわば、小細工と言うべきものだ。
「舐めるな……! こんなものが効くと思うなよッ!」
「1秒でも足止め出来れば十分だ!」
そう。レオンハルトの身体能力なら無理やり、地面を破壊して足を抜くことが出来る。
だがその時にはガイがまた少し早く魔法の手を打っていた。ガイの周囲に浮いていた9つの魔法球。それらが拡散することで。
「何だと……!?」
「“黒色破壊光線”!!」
ガイの魔法がレオンハルトに向かって飛来する。
足止めされたレオンハルトはそれを斬ることで防御とした。続いてやって来る9つの魔法球からの黒色破壊光線も、避けつつ避けきれないものは断ち斬ろうとして。
「ぐっ!? なんだ!?」
レオンハルトは、動かした足が再び引っ付いたように動けなくなったことに困惑した。
先程の粘着地面の効果かと思ったが、その範囲内からは逃れるように動いた筈。だが、その場所に粘着地面が置かれていた。その意味を、レオンハルトはガイの言葉で理解する。
「魔法球は魔法を重複させることが出来る……それぞれ別のタイミングで、別々の魔法を使うこともな……! 悪いがそこも通行止めだ……!」
「ッ!」
粘着地面の重ねがけ。そうすることでレオンハルトの足を再び止めたガイは次なる本命の魔法を放つ。
こちらの行動を読み切ったようなその罠にレオンハルトが称賛と驚嘆を覚える中、ガイは9つの魔法球の照準をレオンハルトに合わせた。
「そしてこちらが本命だ……!」
9つの魔法球がそれぞれの色で光り、高速回転を始め、魔法光を発生させる。
そうして放つのは先程の黒色破壊光線? 10のような力技の魔法ではない。やはりそれも禁じられた──魔法の破壊光線だった。
「禁呪!! “九色破壊光線”!!」
「ぐ、おお……!?」
9つの魔法球から放たれた破壊光線が収束し、より強大な破壊光線となったその禁呪が──レオンハルトに降り注いだ。
ルドラサウム大陸東部。その平原で、周囲の警戒を行っていたハンティはその気配に気づいた。
「……!」
「どうかしましたの? ハンティさん」
「もしかしてまた人間を捕らえたことを憂いてるんですか? 始祖様のそういうところは美徳ですけど、ちょっとは割り切った方が楽だと思いますよう?」
「浮かない顔ですな。何かありましたか?」
同じく周囲を見回っていたレオンハルトの使徒、キャロル、ペール、リーもハンティの反応を見て声をかけてくる。
ハンティは僅かに答えることに迷ったが、迷った末に答えた。念のため見ていた、その戦いの気配のことを。
「いや、ちょっとね……レオンハルトが随分と楽しんでるみたいだからさ」
「それは良いことですわね! レオンハルト様が楽しんでおられるならそのガイという人間もここまで監視してきた甲斐がありますわー!」
「ふむ。レオンハルト様が楽しむ……やはり、それほど強い人間ということですな」
「なら問題ないじゃないですか。それなのにその表情をするってことは……もしかして始祖様、自分も行きたいとか思ってます?」
「……別にそんなんじゃないっての」
お気楽な使徒連中。レオンハルトへの忠誠心が限界を超えている他の使徒の言葉にハンティは呆れる。主に忠誠心を抱かない使徒の方が珍しいとはいえ、ハンティとしてはもう少し信頼を下げてほしいところだ。レオンハルトというだけで盲目的に信じてしまう当たりがあるキャロルとリー辺りは特に。
そしてハンティがげんなりしていると、話題はまた別のところに移る。
「それじゃないなら……あっ。もしかしてこの間志願してきた使徒候補の事ですか? あの人、始祖様と真逆ですもんね」
「真逆……? よく分かりませんが、それは一体どういう意味で……?」
「いやいやリーさん。真逆じゃないですか。主にある部分が……」
「あー分かりましたの。確かに真逆──って、駄目ですわよペールさん! その煽りは禁句ですわ! そして地味にわたくしにも効きますからやめてくださいですわ!」
「あはは、ごめんなさーい」
「あんたらね……というかペールだね。後でお仕置きかな。どこが真逆なのか、後で聞かせてもらうよ」
「じょ、冗談ですよう! 冗談! それに誰もどことは言ってないじゃないですか!」
自分をからかうことが慣れてきたペールを軽く睨みつつ、ハンティは息を吐いた。
こうして勝手に色々と憶測されるくらいなら話しておこうとハンティは少し待って改めて口を開く。
「はぁ……ま、この面子なら隠すことでもないけどさ。レオンハルトが楽しみすぎて、
「アレとは……まさかアレのことですか? まさか……人間相手にそれは……」
言うと遠回しにありえないという言葉がまずリーから返ってくる。
ハンティとしてはそれもありえると思っているが、どうやらそれは少数派の意見らしい。続くペールとキャロルの言葉も同様で。
「えー? アレって……そりゃアレのことですよね? ならありえないですよう。1000年前の藤原石丸の時にも出さなかったじゃないですか。多分レオンハルト様的にはよっぽどのことがなければ見せない気がします」
「わたくし、レオンハルト様のアレも好きですわー! でもハンティさんとの模擬戦くらいでしか出してないですし、出すことはないと思いますの! わたくしとしては、もっと見たいのですけど……」
「見せないとは限らないでしょ。それこそほら、あのクエタプノって勇者の時はあのまま続けてれば見せてただろうし。相手が魔王を倒しかねないってレベルの相手なら……幾らレオンハルトでも劣勢は避けきれないだろうからね」
「だからってそこまで追い詰められますかねぇ? それに多分レオンハルト様の気分にも寄りますよ?」
「ま、それはそうなんだけどね……」
ハンティが懸念を口にすれば他の使徒達の間でも様々な意見が出る。さすがにない、というのがハンティ以外の意見ではあるが、ハンティとしてはちょっと怪しいと思う。この苦戦具合なら遠からずアレになってもおかしくない。そう思っている。
「最近のレオンハルトは特に期待してるというか……戦いがあまりなかったのもあってかなり疼いてるからね。我慢出来ずに暴発する可能性もあると見てるね。あたしは」
「……ガイという人間はそれほどですか」
「ふむぅ……始祖様がそう言うならそれもありえるんですかねー。ま、ペールちゃん的にはレオンハルト様がいいならいいと思いますけど。アレになったところでレオンハルト様はレオンハルト様ですし」
「同感ですわ! レオンハルト様はアレでもレオンハルト様ですの! なのでこれ以上、この話題をするのは駄目ですのよ! この話題は外部にバレるまでは禁句ですわ!」
「まあ誰もいないとはいえあまり外で話すことではないですねー」
「……ま、そうだね」
キャロルの注意によってその話題は中止にされ、ハンティもそれに素直に従う。誰も周りにいない平原。一応注意はしているとはいえ、話題に出さないことを律儀に守るキャロルはさすがの忠誠心と言う他ない。ハンティとしてはこれくらいなら全く問題ないと思ってしまうのに。
それにバレたところで……という思いもある。レオンハルトへの評価がまた多少上がるだけで特に問題ないと思ってしまうのだ。
……というか、大っぴらになってくれた方があたし的には合法的に挑めてありがたいっちゃありがたいか……。
なんてことを思いもする。さすがに使徒として最低限のラインは守るので、それを喧伝するようなことはないが、心の中では欲望に忠実にそんなことを考えてしまっていた。
とはいえ4人の使徒にはレオンハルト自ら教えていることなのでバレずともある程度は挑めるのだが。ハンティとしてはあのレオンハルトも含めてレオンハルトだからこそ、出来れば良い勝負をしてみたいと思う。
そして魔王城から感じる強い魔の気配を感じて更に思う。
あのガイという人間が、本気で魔王ジルに迫るほどの実力を持ち、レオンハルトを上回る力を持っていたとしても。
──
魔王を追い詰める力のガイの強さは凄まじい。
ということで次回は「レオンハルト体質」が遂に発揮されます。お楽しみに。
良ければ感想よろしくお願いします。