※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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悪魔的接待

 野球観戦を終え、球場を後にしたガイは魔人ジークと別れ、ミストラルと2人に戻った。

 時間はもう夕暮れ時。思ったよりも試合は長く、見れないものではなかったが焦らされてしまった。

 

(ここまで我慢してきたからな……後はこう上手い感じにどこかで襲えば……)

 

「この後はどうするの?」

 

「ん……おお、そうだな……」

 

 隣を歩くミストラルに聞かれ、ガイは考える──どこで、どのタイミングで襲うかを。

 さすがに街中で突然という訳にはいかない。ならば人気のない場所に誘う必要があるが、その口実をどうするかだ。ある程度信頼は得られてる気はするので大丈夫だと思うが。

 

(もうここまで来たらいっそ酔わせて持ち帰るか? ここまで我慢したんだ。後1、2時間くらいなら……)

 

「──お待ちしておりました」

 

「あ……」

 

「ん?」

 

 そしてガイが幾つかのレイプまでのチャートを頭の中で思い浮かべた時。不意に道先で少女が会釈をしてきた。

 その待ち受けていたかのような言動にガイは訝しむ。一方で、可愛いからコイツも襲いたいなと思いつつ、ガイはあえて鷹揚に頷いてみせた。

 

「何だ、お前は?」

 

「……イヴと申します。レオンハルト様の下級使徒の。あの、何度かお会いになってますが覚えていらっしゃらないので?」

 

「あ……」

 

 ガイはそこで思い出す。──以前会った時はもう1人の人格。そして服装が変わっているため、一瞬気づかなかったがその少女は確かに白兎の友人でありガイとも何度も会ったことのある相手、イヴだった。

 

「お……おお! 勿論覚えてるぞ! 今のは冗談だ!」

 

「……左様ですか……」

 

 ミストラルをどう襲うかで頭がいっぱいだったガイはそのど忘れを取り繕うように笑ってみせる。──内心ではちょっと焦りながら。誤魔化すように自分から話し出す。

 

「それで? この俺に何の用だ? あー……白兎と会うなら今日はちょっとだな……」

 

「……はい。我が主からの伝令を伝えに来ました」

 

「我が主……って、レオンハルトの奴か!」

 

 どこか一歩引いたような様子のイヴから伝えられるレオンハルトからの伝令とやらに、ガイは苛立ちを表情に出す。もう1人のガイがどう思っているかはともかく、こっちのガイはレオンハルトが嫌いだった。苦手だった。

 禁呪が使えた頃の自分と互角に戦い、魔剣を突き立ててやったのに死なない化け物。そしてガイの一応の上司であり、逆らいたくても逆らいにくい頭の上がらない相手。

 そんな奴のことをこちらのガイが好きになる訳もない。当然、ガイは警戒した。そして何かを言われる前に拒否した。

 

「呼び出しなら行かんからな」

 

「ふむ……レオンハルト様のお誘いを断ると?」

 

「別に仕事でも何でもないなら断るのも自由だろうが! 今日の俺は休日なんだ。あいつに命令される謂われはない!」

 

「そうですか……それは残念ですね……」

 

 ガイがそう言ってレオンハルトの誘いとやらを断る態度を見せると、イヴは肩を落としてみせた。

 

(お? 意外にあっさり引き下がったな。……しめしめ……それならこのままミストラルを連れてどこかへ……)

 

 レオンハルトの命令ということもあってもう少し引き下がってくると思っていたガイは肩透かしを食らう。そして、それならそれでミストラルレイプ作戦を実行するまでだとほくそ笑んだ。レオンハルトにこの街の滞在がバレているのが厄介だが、それくらいならどうとでもなる。いや、してみせると意気込んでいた。

 そう思っていたのだが──

 

「ガイ様のためにせっかく用意した美味しい料理も大勢の美女達も無駄になってしまいますね」

 

「…………何?」

 

「はぁ……皆ガイ様と会えるからと気合を入れて接待の用意をしていたのに……あんなことやこんなことをするつもりで……」

 

「…………」

 

「ですが仕方ありません。ガイ様が気乗りしないというなら今日の夕食会はキャンセルさせて頂きます。レオンハルト様にも、これからそう伝えて──」

 

 と、そう一通り口にしてイヴが踵を返そうとした。──ガイは咄嗟に口に出す。

 

「やっぱ気が変わった。レオンハルトの命令なら仕方ないな、行ってやろう」

 

「……! それは、こちらとしても助かりますが……よろしいので?」

 

「構わん。魔人として上位者の命令には従わんとな。──ということでミストラルはまた今度な」

 

「……え、ええ。分かったわ」

 

 ミストラルが少し困惑するほど呆気なく釣られたガイは、ミストラルに別れを告げるとニヤニヤと笑みを浮かべて歩き出す。

 

「よし、案内しろ」

 

「はい。ではこちらへ……」

 

 そうしてガイはイヴの先導の下、レオンハルトのいる場所へと向かっていった。

 

 ──そして残されたミストラルは、機嫌良く去っていくガイの背中を見つめて思う。

 

(……大人になって……そして魔人になってどう変化してるのかと思ったけど……案外普通ね)

 

 久し振りの再会にミストラルとしてはガイがどう成長したかを確かめていたが、思ったよりも大人らしくなったという感想を得る。

 良くも悪くも大人の男になったという感じがした。

 

(若干スケベな視線というか、身の危険も感じたけど……我慢してるだけマシね)

 

 かつてのガイとは似ても似つかないが、それも色々あったからだろうとミストラルは納得する。スケベになったこともガイが大人になったことを考えれば普通のことだ。

 むしろカラーの森を襲いにやって来る人間の雄よりもマシかもしれないとも思う。何が何でも女を優先するという訳でもないし、特別優しい訳でもない。むしろ粗暴になったように感じる。

 だがそれでも嫌悪感を抱けないのは……やはりミストラルにとって、ガイは特別思い入れのある相手だからだろう。

 

「親心……って奴かしらね……」

 

 ミストラルはそれを自覚する。かつての子供だった、おどおどしてあらゆるものに怯えていた頃と比べれば、魔人になって悪い人になったとはいえ、元気にしているだけで良いと思ってしまった。

 

「……さて、ガイもレオンハルト様の下へ行っちゃったし、私もそろそろ城に戻ろうかしら」

 

 レオンハルトがガイに会うということは、おそらく家族の時間は終わっているだろう。あまり帰りが遅いと己の主に何を言われるか分からないと、ミストラルは帰路につく。

 だがその足取りは今朝よりも少し軽いものとなった。

 

 

 

 

 

 ──レオンハルトシティ、とある店の一室。

 

「ぐはははは!!」

 

「きゃー!」

 

「やーん! ガイ様ー♡」

 

「…………」

 

 その店は、レオンハルトシティに数百とある店の中でも最もグレードの高い店であり、魔物将軍以上しか入ることの許されない会員制のレストランだった。

 そしてその中でも最も広いVIPルーム。魔物大将軍や魔人の方しか入ることの出来ないその広々とした個室に現在は──2人の魔人がいる。

 この街の支配者であり、魔物界の英雄として名高い魔人レオンハルトと新たに魔人四天王となった魔人ガイ。その2人は、互いに顔を突き合わせての酒宴を楽しんでいた。

 とはいえそれはサシ飲みという訳ではない。店に来たのは2人だけでも、周囲には接待としてレオンハルトに集められた人間の美女達が並んでいた。

 ざっと見ても20人近いその人間の美女達は全員がこの街の高級娼館で働く最高級の美女であり、接待にもそういうことにも慣れている極上の商売女達である。

 そしてその美女の殆どが、大股を開けてソファに座るガイの左右に侍り、酒をお酌し、つまみを口に運んでいた。酒もこの店で1番高いものであり、つまみに出される料理もミシュラン一族の料理人が作った最高のものばかり。

 それらを堪能してガイは笑っていた。そして、正面のソファに座るレオンハルトに機嫌良く話しかける。

 

「ぐははははは! 中々話せるじゃないかレオンハルト!」

 

「……気に入ってくれたようなら何よりだ」

 

「ああ、最高だ……! ぐふふ……!」

 

「あんっ♡」

 

「やーん♡ ガイ様ってば、やらしー♪」

 

 いやらしい笑みを浮かべながら、ガイは両脇に座っている女の子の胸や尻、際どいところに触れまくる。女の子達はそれに嫌がったりすることはなく、むしろ嬉しそうにガイの乱痴気騒ぎのノリに合わせるように楽しく笑っていた。

 

「飯も酒も美味いし女も良い女ばかりで気に入ったぞ……! さすがレオンハルトだ……! こんなことならもっと早くお前と仲良くしとくんだったわ!」

 

「……グレードの低い店に入り浸られても魔物達が萎縮するからな。話は通しておくからこれからは俺の指定する高級店に行くといい。それなら良いサービスが受けられる」

 

「おお、そうしよう! ありがとよレオンハルト! ぐはははは!!」

 

「ふん……」

 

 バカ笑いを続けて騒ぐ目の前のガイとそれに合わせる周囲の大量の女の子達とは対照的に、レオンハルトは静かにグラスを傾けていた。

 接待に集めた美女達も殆どをガイの周囲に宛てがい、レオンハルトの隣には左右に座るたった2人だけ。

 ガイが街にやってきたことをレオンハルトと同じく察知し、ガイの案内を自ら買って出た下級使徒筆頭のイヴと、ちょうどレオンハルトと共にいたため、付いてきた使徒のお町。

 2人はレオンハルトがグラスを空ける時に静かにお酌し、口を開くことはない。イヴはずっと微笑を浮かべながらお酒のボトルを手に持っているし、お町はずっとレオンハルトにべったりとくっついているだけだ。この酒宴を形にするための役割を担っているだけ。

 そしてそんな風に静かに酒を呑むレオンハルトに、ガイは見かねてちょっかいを掛けた。楽しそうに女の子のドレスの下に手を這わせながら。

 

「ぐはは! しかし悪いな! 俺ばかり女を侍らせて! お前はもうちょっと楽しまんのか?」

 

「十分楽しんでるから気にするな。俺には身内の女だけで満足だ」

 

「ん……」

 

 レオンハルトが軽く酒を持っていない方の手でお町の肩を抱き寄せ、満足してるというのをアピールする。抱き寄せられたお町がその言動に少し喜んでいたが、ガイは気づかない。レオンハルトの言葉を受けて更に笑う。

 

「ぐははははは! お前そういや巨乳好きなんだってな! その割にはそっちのイヴの方は小さいみたいだが!」

 

「ふふふ。小さくてすみませんね」

 

「……別にそれだけが好きという訳ではないがな」

 

「ぐはは、そんな爆乳使徒を侍らせといてよく言う! ……そっちも気になるが……」

 

 ガイの視線がイヴに。そしてお町にも向けられる。

 エロいことが好きなガイとしてはレオンハルトの女もまた気にはなった。ヤリたくないかと言えば嘘になる。

 だが──

 

「俺の女に手を出すのはやめておけ」

 

「……ぐははは! わかっとるわ! 女なんてこの世に腐るほどいるからな!」

 

 レオンハルトの静かだが、僅かに先程より低くなった声にガイはやはり藪蛇だと意識を反らす。

 確かにレオンハルトの女は極上の美少女ばかりだと聞くが、ここの女も負けてはいない。

 ガイとしては適当にエロいことが出来る女がいれば問題ない。良い女で楽な女であれば尚更良い。

 ジル相手はガイとしてもしんどいし、レオンハルトの女という狭いところを態々狙う必要もない。この世は魔物の天下なのだ。女とヤリたければ牧場から調達するなり野良を狩ってくるなり好きにすればいいし、幾らでも好きに出来る。あるいはレオンハルトの管理する娼館やこういう店に来れば楽しめる。──ガイはそれで十分だった。

 ガイにとってはレオンハルトが思ったより話せて波長が地味に合うのが僥倖だった。最初はただの化け物で堅苦しいだけのいけ好かない奴だと思っていたが、思ったよりもスケベなことに寛容だし、普段表に出ているもう1人のガイと比べれば柔軟な思考を持っているように感じられる。

 

「ぐはは! ぐはははは!」

 

「きゃーっ♪」

 

「ガイ様かっこいいー!」

 

「うはは、最高だ……! おいレオンハルト! せっかくだ、飲み比べでもするか!」

 

「……ああ、良いだろう」

 

 美味い飯に美味い酒に最高の女達。魔人として贅を尽くした接待を受け、ガイの気分は最高潮だ。陽気にレオンハルトを飲み比べに誘うほどである。

 そしてそんなガイの誘いを了承し、グラスを傾けながらレオンハルトはガイが己の思うように転んでいることに満足した。

 

 ──日中に街の警備を担当する兵から。そしてイヴからも報告が来た時はせっかくの休日の家族の時間を台無しにしてくれやがってと憂鬱と怒りがないまぜになった気持ちだったが、ガイに釘を刺しておくことも女を宛てがっておくことも重要であるため、それが叶ったことは良いことだった。

 それにガイが、レオンハルトの知るような「世界中の美女は俺様の物」──だと言うような思考の持ち主でないことも幸いだった。

 どうやらこのガイはエロいことが好きでも、全ての女を自分の物にしたいとか、女を大事にするという性質は持ち合わせていないようで意外にもその辺りには寛容だった。レオンハルトが女を侍らせてようが自分が気持ちいいなら問題ないとしている。

 ゆえに似ているようで少し違う。ある意味で器が大きいが、粗暴で優しさはあまりない。女に対しても、他の人に対しても。

 正しく『悪ガイ』とも言うべき人物だった。レオンハルトはそれを理解し、酒を飲み干していきながら思考を切り替えた。

 

(……さて。これでガイの方は問題ない。女も宛てがったし、そろそろ別室に移動か……あるいはもう少ししたら潰れるだろう。そうなったら俺も切り上げないとな……)

 

 予定外に時間を取られたが、本来なら今日は休日である。ゆえに子供と過ごすか女と過ごすか。色々と自由に過ごせる日であったため予定を立てていた。本来ならこの時間は子供達を全員集めての夕食会を行おうとしていたのだが……ガイがやって来たことによりレオンハルトは参加出来ない。

 今頃は子供達が和気あいあいと仲睦まじく夕食を楽しんでいるころだろう。それを思い、それに参加出来ないことにレオンハルトは小さく息を吐いた。

 

 

 

 

 

 魔人レオンハルトに子供がいることを知る者は少ない。

 地上では魔軍が跋扈しているが、その中でもかの魔人に子供がいることを知るのはその身内の者だけであり、今代の魔王ですらそのことを知らない。

 ゆえにその秘密は守られているし、その秘密が守られる限り害はない。

 そして地上で魔軍に──魔人レオンハルトに敵う存在がほぼ存在しない以上、害することの出来る相手も、限られている。

 レオンハルトは強く、その身内の魔人も強い。配下の使徒、魔軍もまた強大であり、その子供も強い。

 ゆえに人間如きでなんとかなる筈もない。仮にどうにか出来るとすれば魔王くらいのものであり、それ以外の誰も魔物界の英雄を脅かすことは叶わない。

 

 ──だが、地上以外にも範囲を広げれば、それを為し得る存在は幾つも存在した。

 

「──随分と発展しているようだね」

 

「は……」

 

 陽の光が存在せず、しかしそれでいて曇天の日のような仄かな明かりに照らされるその場所。荒廃した大地の上に立つ街並み。それらを一望出来る崖の上の屋敷に──声が響く。

 

「土地の管理者としては嬉しい限りだ」

 

「恐れ入ります」

 

 声を発するのは人の形をした者達だった。窓から街並みを見下ろす白と黒だけで出来た人形に、真っ白い髪をした少女とピンク色の髪となったその少女は畏まっている。

 その理由はその人の形をした怪物が、畏まる2人の女性と比べて上位の存在であるからだった。

 

「──プロキーネ様もお喜びになられていたよ」

 

「……それは重畳ですね」

 

 ──何しろ彼女達は絶対的な階級制によって管理される悪魔であり、畏まる2人の悪魔よりも来訪した悪魔は上位の悪魔であるからだった。

 その真っ白い髪を持つこの土地の領主である第参階級悪魔、フィオリ・ミルフィオリとその配下である第四階級悪魔であるインデックス・カラーは目の前の第壱階級悪魔に逆らう術を持たない。第壱から第壱拾弐まで存在し、それらに振り分けられる膨大な数の悪魔の中でも、第壱階級の悪魔は僅か数体しか存在しない悪魔界の絶対君主だ。

 その上には三魔子と呼ばれる悪魔王の子供達。その三体の悪魔しか存在せず、上昇志向の高い悪魔達が目指し、辿り着くことの出来る最高位が第壱階級だった。

 そして目の前にいる真っ黒い目をした女性の悪魔は、三魔子の長兄に当たるプロキーネの腹心を務める大悪魔であった。悪魔界の土地の管理。そこで起こる僅かながらの争いの裁定者でもあり、何が何でも自分で管理しなきゃ気が済まないプロキーネの補佐を務めるというだけでもかなり信頼されていることが窺える。

 そしてその第壱階級悪魔は自らと自らの主の判断を薄い笑みを浮かべながら称えていた。その意味はこの場にいるフィオリやインデックスにも分かる。その理由を、悪魔は自ら口にした。

 

「やはり引き込んでおいて正解だったねぇ。インデックス・カラー……魔人と悪魔の子という前例のない話が舞い込んできた時はどうなることかと思ったが、結果として悪魔界に利益をもたらしているんだ」

 

「……はい。寛大な裁定に感謝しています」

 

「気にする必要はない。利益が見込めると思ったからこそ許したまでだとも」

 

「それでも感謝しております。私とあの子……ライブラが無事でいられるのもレペルタン様の裁定があってのものですから」

 

 そう。インデックスがそう感謝を述べるように、この悪魔──レペルタンこそインデックスとその子供の処遇を決定した悪魔であるからである。

 ゆえにインデックスは自らの愛しい男の次に目の前の悪魔に感謝していた。悪魔であるがゆえに信用こそしていないものの、レペルタンの裁定次第では追手の悪魔などを差し向けられ、危険に晒されていた可能性もあった。その危険がなくなっただけでも大いに感謝する理由がある。

 だがレペルタンはその感謝を受けても微笑を崩しはしない。相変わらず表情の読めない真っ黒い目でインデックスを見下ろしていた。そして告げる。

 

「そうかい。なら感謝のお礼代わりに君の愛しい男とやらを悪魔界に連れてきておくれよ」

 

「……レオンハルトを、ですか?」

 

「ああ。私も一度お目にかかって見たくてね。少し前にかの月餅を殺し、ついこの間は君とライブラ君にちょっかいを掛けにいったネプラカスを半殺しにしたそうじゃないか」

 

「……既にご存知でしたか」

 

「当然だよ。地上で起きることには興味はないが、悪魔界の管理は仕事なのでね。レガシオ様経由で耳にしたよ。ネプラカスが魔人にやられたと楽しそうに話してくれてね。幾ら魔人とはいえ第参階級と第弐階級の悪魔を倒せる存在と聞いて三魔子の方々も少なからず興味を持っているんだ」

 

「三魔子の方々が……」

 

 レペルタンの言葉にフィオリが恐縮する。その存在は悪魔界の中ではかなり重いものだ。目の前の悪魔と同様に、地上で生きる存在にとっては遥かに強大な──魔王に匹敵するような存在であるがゆえに。

 

「まあ微々たる興味であるがね。神界や配下の悪魔に関するものと比べればすぐに忘れる程度のものさ。あるいはもう忘れているかもしれないね」

 

「……レペルタン様は、それ以上の興味をお持ちだと?」

 

「部下の夫に当たるものだからね。一度挨拶くらいはしておきたいと思っているよ。フィオリだってそうだろう?」

 

「それは……はい。そうですね」

 

 レペルタンの言葉にフィオリもまた同意する。インデックスやライブラから話には聞いていても、実際に会って話したことはまだないからだ。会ってみたい気持ちは理解出来る。

 そしてその気持ちをインデックスも同様に理解はしたが……。

 

「……それでは伝えておきます。ただ……その、彼は忙しいので来るのはいつになるか分かりませんが……」

 

「何、数千年後という訳ではないなら構わないさ。時間はたっぷりあるからね。100年でも200年でもゆっくりと待たせてもらうことにするよ」

 

 魔人以上に長い時を生きる悪魔にとって、時間の問題は些細なものだった。上位の悪魔ほどその傾向がある。この辺りは魔人とそう変わりない。インデックスは承諾した。

 

「ではその旨、確かに我が夫に伝えておきます」

 

「頼んだよ。……ところで、今日はライブラ君はいないのかい?」

 

「ライブラなら今は地上ですが……ライブラに何か用事で?」

 

 ライブラがいないことを理解したレペルタンはその返答を受けて、ふむ、と頷いた。そして僅かに目を細くしながら涼しい声で告げる。

 

「大したことではないさ。私は子供が好きなのでねぇ。久し振りに会ってみたいと思っただけさ」

 

「……そうですか。では、それはまたの機会にでも」

 

「フフフ、楽しみにしているよ。……さて、今日はお暇させてもらうとしようか」

 

「もうお帰りになるので?」

 

「残念ながら私は忙しいんだ。3日後はボレロ・パタン様の性欲が昂る日でもあることだし、今のうちに厳選して準備しておかないとね」

 

 言って、レペルタンはその場から一瞬で消えてみせた。悪魔の用いる空間移動。それによって部屋に充満していた重苦しい圧力が消え、フィオリとインデックスは立ち上がる。そして両者共に息をついた。

 

「まさかレペルタン様が直接お越しになられるとはね……あなたの夫にそんなに興味があるのかしら」

 

「趣味的にそっちの意味はありえないのでは?」

 

「そうね。……でもさっきも言ったけど興味があるのは私も同じよ。そろそろ一度くらい旅行でもしに来ない? 家族揃って」

 

「それはどうでしょうね。……だけど今度修行には来ると言っていましたわ」

 

「修行?」

 

「ええ。子分も連れてやって来ると」

 

「……へぇ。それならいいかしら。楽しみにしておくわ」

 

 そうして女性型悪魔達の会合は終わった。

 

 

 

 

 

 ──そしてその頃。

 

「ぶえっくしょーーーーん!! ずず……何だ、どこかで俺様の噂話でもしてんのか……?」

 

 大陸南部で巨大なリスの魔人が鼻を啜っていた。

 




今回はこんなところで。結果的に繋ぎの回になっちまった。レオンハルトのアレやコレの話は入らなそうなので次回以降。そしてケーちゃんの参戦フラグが立ちました。それとそろそろレオンハルトの魔剣も暴れそうだけど誰に向けて振るうかは悩み中です。良ければ好きなおにゃのこキャラを控えめに教えてくれてもいいよ。アンケートでも何となく見て参考にしますので(えっちなのとは限らない)良ければどうぞってことで次回もお楽しみに

良ければ感想よろしくねー。
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