※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

392 / 411
魔法の天才達

 

 天才とは自分のことだ──と、ガウガウは常にそう思っている。

 他人が聞けば「馬鹿じゃないの?」と呆れられるような自認だが、それでも天才であることは否定されない。

 

 何しろガウガウ・ケスチナという人物は紛れもなく天才であるからだ。

 

 魔道具制作者。付与師として自らの隣に並び立つ者はいない。魔法研究者としても最高峰であり、研究室で数多の発明品を開発して主であるレオンハルトや紅魔城、街の発展にも協力して多大な功績を上げてきている。

 おまけにいつまでもピチピチな美少女で性格もいい(※諸説あり)。弟子の教育能力にも優れているし、常識だって(ハンティに比べれば)ある。

 

 つまり自分は偉人なのだ。そんな自分の最高傑作こそ──命を持つ人工物の生成。

 

『アイシリーズ』と名付けたそれらの制作である。ガウガウはそのスペックを戦闘の最中で改めて振り返る。

 

「メイクドラーマー!!」

 

「ブラックアイ!! 吸収!! そして反射しろ!!」

 

『イエス! マスターガウガウ!!』

 

「ムム……ミーのマジックを防ぐなんてムカつくマジックアイテム!! こうなったらもっとマジックパワー込めてキル・あなたよ!!」

 

 宙を行き、魔人レッドアイとの魔法合戦を行うガウガウは決して自らの肉体や魔法で飛行しているわけではない。ガウガウの身を包むのは装甲型自律思考魔道具『ブラックアイ』である。

 

 黒い宝石を元に作り上げたブラックアイはガウガウの魔力にのみ反応し、自律思考を行う。普段はガウガウの胸元にペンダントのようにぶら下がってガウガウの命令にのみ反応する。

 だが魔法や物理的な危険が迫ると自動で装甲を展開してガウガウの身を守る。装甲はダイヤモンドドラゴンのライゼンを参考に作り上げた魔法吸収装甲であり、最強の攻撃魔法とされる黒色破壊光線も吸収して魔力に変換。その威力をガウガウ自身の魔力とブラックアイの魔力を使って倍増させて放つことができる。

 装甲の硬さはライゼンには及ばないもののハンティやリーの普通のパンチ程度なら30発以上はガード可能。その硬さによる肉弾戦も可能であり、魔力を放出しての飛行も行う。背中から触腕を伸ばして相手を攻撃。または拘束することも出来るし、キャロルのために開発した機関銃も腕に装備しているので射撃モードで鋼の弾を乱射することもできる。

 

 ガウガウが自ら戦闘する際の理想を詰め込んだ最高傑作の一つがまずブラックアイだ。

 しかし、レッドアイには通じない。

 

「無駄無駄! ミーは魔人! ユーのアタック痛くない! そもそもこのボディはハニーね!」

 

「まあ、そうだな。だが私にとっては意味があるんだよ!」

 

 ガウガウはブラックアイを操作してレッドアイの操るゴールデンハニーに物理的な攻撃を加えて破損させる。

 レッドアイから「オーノー!」という叫びと共に殺気。再び魔力を込めた光線が飛んできてそれを吸収しようとするが──

 

『マスターガウガウ! デンジャラスゾーン!』

 

「む……そうか。ふふ、さすがは私の作ったレッドアイ。並の魔法使いなら決して許容量に達しないブラックアイの魔力吸収量を数発で限界まで追い込むか──グリーンアイ。解析は順調か?」

 

『は。マスターガウガウ。魔人レッドアイの魔力量はガウガウ様の約20倍。ハンティ様の1.25倍にも達しています』

 

「げ……私は魔力量に自信がないからまだしもゴリラハンティより上か。これは魔力切れを起こさせるのは難しそうだな」

 

『はい。ですのでそれ以外の戦略を取ることを愚考します』

 

 レッドアイの魔法を受けたブラックアイが危険域に達したことを報告してきたのでガウガウはふっと笑いながら通信でグリーンアイに声をかける。

 するととてつもない解析結果が上がってきたためガウガウはうへぇと表情を歪ませた。

 レッドアイは元々魔力を高めるために寄生先から少しずつ魔力を集める性質を持っていたが、魔人になってそれがより強化された結果、魔力量に関しては他の追随を許さない。ガウガウは自らが制作したモノクルによって技能LVを確認することができるが、それによると魔人レッドアイは魔法LV3。伝説級の魔法使いである。

 ガウガウは魔法LV2でなおかつ魔力量は並の魔法使いの何十倍にもなるが、その更に何倍も魔力が高いのが最強の使徒であり同じく魔法LV3のハンティである。

 ハンティのヤバさはガウガウがよく知っている。戦闘に誰よりも長けた魔法使い。その一点で言えばハンティはあの人間時代のガイに匹敵するかもしれない怪物だろうと。

 だがそのハンティよりも単純な魔力量という意味では上を行くのが魔人レッドアイだ。肉体的な強さを持たない分、魔力だけは有り余るほどに持っている。

 

 そしてそれらを馬鹿みたいに消費して強力な攻撃魔法を連発してくるのがレッドアイの強み──長い時をかけて集めたレッドアイの魔力は並の魔法使いを何百人集めようが届かないほどに高まっている。

 

 さすがは私の最高傑作の一つだとガウガウは誇らしく思いながら、同じアイシリーズであり今回は解析を担当している『グリーンアイ』のことも思う。

 

 グリーンアイはホムンクルスの失敗作だ。ガウガウは失敗とは認めていないが、身体の臓器が損壊し、魔道具に代替しなければ生きていけない。

 だが発想を逆転させ魔道具人間として数多の魔道具を身体に取り付けて魔道具を遠隔操作できる魔道具を付けることで別の強みを持つことになった。

 

 それは──量産が可能という点である。

 

 グリーンアイのボディの制作にはガウガウでも1年に1体作れるかどうかという代物だが、作ってしまえばグリーンアイは魔道具を通じてそれら全てを操ることができる。

 つまりは個にして群。群にして個ということだ。グリーンアイの意思は他の全てのグリーンアイと共有される。全てのグリーンアイを機能停止に追い込まなければグリーンアイは死なない。

 ゆえに──あまりやりたくはないが──囮などにも使えるし、数に物を言わせた戦術も取ることが可能。素早い情報共有も可能で頭脳面にも優れているため今回もキリング商会の会長代行という立場でガイ派への潜入を行ってもらっている。

 一対一の戦闘能力という意味ではそこそこだが、不死性はアイシリーズでも群を抜いている。新たな種族の創造ともいえる大発明であり、ガウガウはグリーンアイを気にいっていた。従順で気が利くところが特に良い。

 

 全く優秀な子供達だと思いながら、グリーンアイの報告を元に更にレッドアイに対する実験を行う。こうして戦闘をする中でもレッドアイの思考パターンは確認できる──やはりと言うべきか、レッドアイの興味は己の魔力を高めることと人を殺すこと。

 

「やはり魔王の血による破壊衝動が原因か。まあ分かってはいたが……さて、解析にはまだ時間がかかるがどうするか……」

 

「何をブツブツスピークしてる?」

 

「ああ、気にするな。お前のすごさを再認識していただけだ」

 

「クケケケケ!! それはトゥルー!! ミーはすごい!! ストロング!! そしてこれからももっとストロングになってヒューマンをダイするね!!」

 

 ──人間を殺すのはまだいいが、歪められているのはやっぱり気に入らない。

 

 ガウガウはブラックアイの中で眉間に皺を寄せる。流れ弾として眼下にいるグリムリーパーらがレッドアイの魔法に晒されているが、それもレッドアイがまともな状態で判断したことならガウガウはそれもアリだと考えている。

 

 しかし破壊衝動で思考システムが乱されている上で判断していること。そしてレッドアイ自身が狂気に染まっていることをガウガウは憂いている。

 

 その理由は魔王の血だ。ガウガウの目的は、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 だからこそガウガウは、いや、レオンハルトはガウガウの研究を支援している。レオンハルトもまた魔王の血を解析することで得られる結果に着目しているのだ。

 ガウガウは既にレオンハルトの最終目標を聞いているからこそわかる。かなり難しいが、魔王の血の全容を把握すれば可能性はなくはない。

 

 ゆえにガウガウはグリーンアイの次にかの『パープルアイ』を作り上げたのだ。

 

 パープルアイはホムンクルスの成功体。製造に必要な数多の材料に、レオンハルトの精液を仕上げとして入れることで魔人の遺伝子情報も組み込んだ。

 そうして生まれた人造人間がパープルアイ。その性能は制作者であるガウガウですら驚くほどに高性能だ。

 

 まず戦闘能力。パープルアイは一度見た技を簡単なものなら再現することが出来る。それに加えてレオンハルトの影響か剣技に優れているし、肉弾戦も得意だ。普通の人間相手ならまず負けることはないし、強敵相手にも通じる奥の手が存在する。

 

 それが分身能力──そう、パープルアイは2人に分かれることができる。

 

 どちらもほぼ同じ姿だが性格が厨二病とメスガキという若干差異が生まれるのだが、それでも肉体的にはほぼ変わらず同じ性能を持つ。見た目は美少女でレオンハルトの好みに合致しているし、マッピング機能やプロジェクター機能など様々な機能もそのまま使える。

 この結果をガウガウは魂が複数ある魔人の遺伝子に影響を受けた結果と推測するが、ガウガウですら解明はまだ出来ていない。

 しかしパープルアイを解析すればまた発展があるかもしれない。普段はレオンハルトの使徒業務を手伝うというか代行させたりするのに使っているパープルアイは実はガウガウやレオンハルトの目的の達成に重要なピースである。

 

 ゆえに簡単に失ってはならない。だからレッドアイとの戦いには連れてこなかった。

 そもそもこの戦闘は決してレッドアイを倒すためのものではない。レッドアイの現在の性能とその思考回路。情報を得るために行っている実験なのだ。

 地上で戦っている人間達には悪いが、ガウガウは己の目的のために戦闘をひたすらに長引かせるつもりでいる。人間達が死んでも墓くらいは作るし、生き残ればあの3人のように一代限定で実験助手として雇ってもいいが実験途中で死んでしまった場合はどうしようもない。

 

「まあ頑張って生き延びてくれよ──時代が終わるまでな」

 

 小さく呟きながらガウガウは一応の主の目的を思い返す。レオンハルトはレオンハルトでとんでもないことを考えるものだなと。

 ある意味でハンティ以上にイカれているその計画にガウガウは従うつもりでいた。つまり──その時までレッドアイを足止めする。

 

「エスケープはバッド! 全員キル・あなたー!」

 

「うおっ!? 危ないな! そろそろ回避しないとマズイってのに──」

 

 レッドアイの魔法をひたすら受けて躱し、足止めをする。

 それが使徒としてガウガウに与えられた命令だった。

 

 

 

 

 

 ハンティは起きている事象に喜びを隠さない。

 己の放つ複合魔法はガウガウやイヴといった面々と研究した結果の産物であり、最新の攻撃魔法だ。

 異なる属性や魔法を組み合わせて同時に使用し、変質した効果を発揮する。

 攻撃魔法でありながら魔法科学の産物でもありその破壊力や効果は通常の魔法を凌駕するものばかり。

 

 ただし発動の難易度は非常に高く使い手を選ぶ──というかハンティ以外は使えない。

 ガウガウやイヴも同時に魔法を発動することまでは何とか出来てもそれを組み合わせることは出来なかった。曰く──頭が混乱しておかしくなりそうになるとのこと。

 

 それを聞いてハンティは仕方ないと思うと同時にだらしないとも思う。みんな普段はあたしのことをゴリラとか脳筋とか馬鹿にするくせに魔法を組み合わせることも出来ない。足して制御するだけなのに──いやまあそれが馬鹿ほど難しいのだが、ハンティにしてみれば張り合いがないから文句も言いたくなる。自分で自分に魔法を放つことが出来ればいいのだが、それが出来ないから複合魔法を受け止めることができない。出来れば自分で受けてみたかったのに……とハンティはいつもながら残念に感じる。

 

 しかしだ。眼前にいる敵は複合魔法こそ使わないが第壱階級悪魔でありガイと同じ禁呪の使い手である最古の魔法使いだ。

 その結果を見てハンティは口端を上げてしまう。霜が晴れる中、ニャングザイの周囲には大量の異形が召喚されていた。

 

「へぇ……! すっごい気持ち悪いじゃん。嫌だね、そんなの相手にするの……!」

 

「嫌と言いながらめっちゃ笑顔なの何にゃん? ──禁呪ネクロノミコンは死霊術の一種にゃ。その地に眠る死者を合成して使役する。だからどうしたってこんな見るだけで狂気に染まるような肉々しい異形になるのにゃん」

 

 ニャングザイの周囲で蠢く異形の怪物達はその一体一体が正気度を失わせる存在感を放っている。

 その中でも最も巨大な触手と牙が何本も生えている怪物の上に乗りながらニャングザイはそれらに言葉なく攻撃命令を出す。あるいは近くにいる生者に本能的に襲いかかっているのか。何十体もの異形がハンティに向けて殺到してきた。

 

「複合魔法サンダーストーム!!」

 

「! 今度は雷の嵐かにゃ……! 複合魔法と言ったにゃ。異なる魔法を組み合わせるなんて頭おかしいことしてるにゃあ」

 

「こんくらい普通の発想でしょうが……! 複合魔法ペネトレイトマター!!」

 

「右脳と左脳で別々のことを考えながら手元で数学と国語の問題を同時に解いてその答えを同時に口から発するような意味不明なことしてるって自覚あるにゃ? お前よく周りから頭おかしいって言われないにゃ?」

 

「言われないよ!」

 

「なら周りも頭おかしいんだにゃあ──禁呪エイボン

 

 そう。周りも自分とそう変わらないよね──とそう思いながらハンティは1番近くの異形の攻撃を軽く回避して跳躍。同時に今度は雷の嵐を発生させて異形達を攻撃する。起きた結果にニャングザイが驚きを見せたが、それでも冷静にまた別の禁呪を発生させた。

 ハンティの放った白い槍のようなものを飛ばす魔法をニャングザイは躱すことも防御することもせずに自らの身体で受け止める。それを見た時ハンティは──さすがは悪魔。肉体にも自信があるんだね! と思ったが、そのダメージが全くないことにさすがに違和感を覚えた。

 

「ダメージがない……? いや──異形が一体貫かれた。ダメージ転移だね……!」

 

「初見で見破るとはやるにゃん。まあそういうことにゃん。ニャンへの攻撃は全部他の何かが被ることになる。下手に攻撃すれば──お前の仲間を傷つける羽目に」

 

「──複合魔法!! ニュークリアパワー!!」

 

「うにゃっ!?」

 

 禁呪エイボンのダメージ転移。その説明を行うと共に悪魔らしく悪い笑みを浮かべてみせたニャングザイは、即座に瞬間移動して強化魔法でぶん殴ってきたハンティに虚を突かれた──「何の躊躇もしないにゃこいつ……!!」と。

 そして異形の一体が粉々に粉砕された結果を見て。

 

「物理攻撃も当然移るわけか……」

 

「移るわけか……じゃないにゃ!! お前本気で頭おかしいのかにゃ!? 仲間が傷つく可能性もあるって今ニャンが言おうとしてたにゃよ!!?」

 

「──さすがにここにいない特定の誰かに移せるとは思わない。何か条件がある筈だよ。まあ今思いついたんだけど、何となく大丈夫だと思ってね」

 

「禁呪じゃなくて別の意味で頭痛くなってきたにゃ……!」

 

 額を押さえるニャングザイを見てハンティは不敵に笑みを浮かべる。おそらく転移対象は予め触れたものだったり視界に映った相手だったりの何かしらのマーキングが必要だとハンティは見た。後付けでとりあえず殴ってから考えてみたがきっとそれは間違いではないだろう。

 それならば、とハンティは更に魔法を放つ。広範囲に魔法を放って異形と同時に攻撃する。順番に試していこうと。

 

「複合魔法──グラウンドゼロ!!」

 

「!」

 

 ハンティを中心に爆発が巻き起こる。

 周囲の木々。環境ごとニャングザイが生み出した異形を爆散させ、同時にニャングザイにも攻撃を与える。

 だがその結果は見るまでもなかった。ハンティは魔力の波長を感じる。地面から更に異形が生み出され、同時にニャングザイから攻撃魔法が飛んできた。

 

「──禁呪ハスター」

 

「っ……衝撃波……!? いや……!!」

 

 魔力の波。その空気から異変と危険を察知したハンティは即座に瞬間移動で別空間に移動して回避。そしてその正体が、己の複合魔法と似たようなものであることを確信する。

 

「あたしのアトミックレーザーみたいに原子からバラバラにする魔法か……これは受けられないね。あるいは同じような魔法で相殺するかかな」

 

 ハンティの代名詞ともいえる瞬間移動魔法はアドミラル空間という時が止まった別空間に出入りすることで瞬間的な移動を成し遂げる魔法である。

 そのためハンティにとってこの空間は絶対の安全圏であり、このように悠長に考えを巡らすことだってできる。やろうと思えばこっから一眠りして休憩してからもう一度現れることだって出来なくはない。興が削がれるのでやらないが。

 

「しかしどうしたものかね。無限に現れる異形で盾と牽制。本体への攻撃はダメージ転移で無効化。その上で魔法で攻撃してくるわけで……どう攻略しようかな」

 

 だが冷静になることはできる。とりあえずニャングザイはただ全力で殴って倒せるような相手ではないことは確か。禁呪の能力はなるほど、反則染みたものばかりでありハンティでも即座に攻略方法は思いつかない。

 それに加えて悪魔としての能力もあるだろう。今は異形の怪物の上でじっとして魔法を放つだけに留めているが、きっと身体能力もそれなりに高いはずだとハンティは推測する。──というかそうでないと困る。相手の魔法を攻略して殴り合いに持ち込む。そっからが楽しいのだから、殴って終わりだと楽しくない。

 

「一旦攻撃しまくってみて禁呪の効果が切れるかどうか試してみようか。それでどうにもならなければ──」

 

「──やってみるといいにゃ。ま、簡単にはさせにゃいけど」

 

「!? ──くっ……!」

 

 ──だがハンティが独り言を呟いていたその文字通りの瞬間に、ニャングザイの声が響き渡る。

 

 ハンティはその場から即座に退避。自らのいた場所を消し飛ばそうとする攻撃魔法に冷や汗を流しながら距離を取って相手を見る。ニャングザイが、そこにいる。その事態を正しく理解して。

 

「まさかあんたも……」

 

「瞬間移動なんて面白い魔法使うと思ったけどまさか次元移動だったなんてにゃ~。──ま、ニャンはすぐに気づいたけど。確かにこれは便利だにゃ」

 

 ──()()()()()()()使()()()()()

 

 否、正確には見て理解し、覚えたのだろう。ハンティを参考にして。

 そうしてハンティとほぼ同時に瞬間移動魔法を使ってアドミラル空間にやってきたニャングザイにハンティは警戒しながらも、マズいかもね……と喜びを露わにする。

 魔法の腕前でもこちらに匹敵する相手。そんな存在が第壱階級悪魔なんて。

 

「これで瞬間移動は効果的じゃ──ないとは言わにゃいけど条件は互角にゃ。後悔してきたかにゃ?」

 

「まさか。むしろ嬉しくなってきたよ」

 

「……その顔、今に歪ませてやるにゃ」

 

「ああ……やってみな!」

 

 力を出し惜しみしている場合じゃない。そう判断したハンティは真の姿である竜人形態を解放する。身体能力も魔法の強さも本気の状態であるこっちの状態の方が当然強い。

 

「アトミックレーザー!」

 

「無駄にゃ!」

 

 互いに同時にアドミラル空間から脱出。現実空間でまずハンティが魔法を放つが、ニャングザイはそれを回避する。受ける必要がない時までわざわざ受けたりしない。その行動を見てどこかに限界か、回数制限でもあるのかとハンティは更に考察するがそれより前に襲いかかってくる異形を拳で粉砕。二体目も蹴りで真っ二つにし、そのタイミングで飛翔。ニャングザイの放つ大気を震わす攻撃を回避。

 

「ドラゴンは風に敏感だからね! 当たらないよ!」

 

「はいはい。好きなだけ躱すといいにゃ。こっちは当たるまで撃つだけにゃし」

 

 ハンティは異形の触手が伸びてくるのを空中で回避する。この触手にも掴まれるわけにはいかない。捕まったらニャングザイはその触手諸共ハンティを攻撃するだろう。

 ならやはり異形の怪物を削りながらニャングザイにひたすら攻撃を仕掛けるしかない。結局はそれだ。ハンティはニャングザイの魔法を回避した勢いそのままにニャングザイに頭上から突撃する。

 

「力比べだよ……!!」

 

「あーそういう……確かにこれは転移できないにゃ」

 

 ハンティは両手でニャングザイの両手を掴んで捕まえる。やはり触れられる。そして掴むだけではダメージが転移することはない。

 ただ力を込めて絞め落としたり圧迫してダメージを与えられはしない。一定の力がかかるとそれが別のところに移される感覚がある。

 しかしニャングザイ自体は捕まえた。ならこのままマウント取ってのタコ殴りでもしようかとハンティが考えた直後。

 

「っと……!」

 

「むむ……結構力強いにゃね。魔法使いでか弱い女の子なニャンとはいえ第壱階級悪魔のニャンで押しきれないにゃ」

 

「こう見えてパワー系だからね!」

 

「どう見てもパワー系にゃ」

 

 ニャングザイによってハンティの腕が振り払われる。そして近距離で放たれる禁呪にハンティは身を捩ってダメージを最小限に。そして顔面を狙ったハイキック。ダメージは逸らされる。

 続いて鳩尾への攻撃。転移させられる。0距離でのアトミックレーザー。異形がバラバラになる。

 

「すごいね……! どこまで転移出来るんだい……!?」

 

「あーもう鬱陶しいにゃ……! ニャンは相手が苦しむところが見たいだけで戦いはあんまり好きくにゃいのに……! 戦闘狂の相手はだるだるにゃん!」

 

「あたしは楽しいよ……! 複合魔法強力粘着地面!」

 

「楽しむんじゃないにゃ! って、足が動かないにゃ!?」

 

「よしきた! タコ殴りタイムだよ!」

 

 普通の粘着地面よりも文字通り強力な粘着地面をニャングザイにかける。ダメージでないため転移はされない。数秒もすれば解除されるだろうがその間にハンティは下にいる異形諸共ニャングザイをひたすら殴る。絵面的には最悪だ。ニャングザイを殴る度に周りの異形がボコボコになって消えていく。

 

「ぐぬぬ……だから無駄だって言ってるにゃ! 氷雪吹雪!」

 

「っ!」

 

 そしてここでニャングザイが禁呪ではない普通の範囲系の攻撃魔法を放ち、寒さを感じながらハンティは理解する──なるほど。ダメージを転移できるなら自分を巻き込んでもいいわけだ。自分がダメージを受けることはないのだから。

 

「今のは効いたよ……もっともっと攻撃しないと私は倒せないけどね」

 

「それはこっちの台詞にゃ……! ほんとうざいにゃあ……! こうにゃったら──」

 

「? 今度こそ本気かい?」

 

 ダメージこそ受けてないが、構わず向かってくるハンティに苛立ちを見せるニャングザイが何思ったのか辺りを見渡す。

 ハンティが訝しむ中、ニャングザイはややあって何かを見つけたのだろう。悪魔らしい悪い笑みを見せて扇子で口元を隠す。

 

「──今度こそお前の仲間を巻き込んでやるにゃ」

 

「何を──って、しまった……!」

 

 ハンティの視界の中でニャングザイが消える。その現象に思い当たるものしかないハンティはそれが即座に瞬間移動によるものだと気づき、1秒遅れて同じく瞬間移動を使った。

 しかしほんの少しでも遅れればもう遅い──ニャングザイは既に見つけて辿り着いていた。

 

「にゃふふふふ……これでもうお前はニャンに攻撃できないにゃ……!!」

 

「! ミシェーラさん……!」

 

「な、なんなのだ!?」

 

 ──森の中でハンティを探していた同じレオンハルトの使徒の2人……そのうちの1人にニャングザイが接触し、ハンティはその瞬間を少し遅れて目撃する。

 

 ()()()()()()本当の戦いはここからだった。




今回は魔法合戦でした。というか魔法使いだらけなので次回も多分そうなる。
GL期も終盤なので今回は書いたけど出せそうもない設定を公開していきます。ということでレオンハルト人間牧場の歴代特A級一覧です。どうぞ。

『レオンハルト人間牧場の歴代特A級一覧』
1.アダムス・ハッピーハート:(GL25~GL95)最初の特A級。料理で評価されたが後にコロシアムチャンピオンにもなる。ミシュラン一族総代ガストロノミー・ミシュランとの決闘は伝説。レオンハルトシティで数々のレストランを開いた。人間街の初代町長でもある。料理人として下級使徒に誘われたが16歳の時に一緒に育ったC級の幼馴染と添い遂げるために功績を上げてレオンハルトからの褒美で彼女を牧場から救った上で結婚。そのまま人間街で生きて死ぬことを選んだ。彼の子孫ハッピーハート一族はミシュラン一族と並ぶ人間街のエリート一族として多数の料理人を排出することになる。レベル70 才能限界70 槌戦闘LV2 料理LV2

2.藤原白兎:(GL50~)レオンハルトの長女。ほぼ八百長だが試験は適切に行われた。戦闘力と一芸(超感覚)での特A級。コロシアムチャンピオン。レベル100 才能限界300 剣戦闘LV2。拳法LV2他多数技能。身長138cm B69(A)・W52・H77

3.イヴ・ミドラーシュ:(GL101~)レオンハルトの使徒。人間牧場全体の管理を行い、下級使徒筆頭を経験。内政能力、事務処理能力、秘書能力全てに長けていてそれらの業務をこなしてもなお余力を持つ。頭脳での唯一の特A級。読心能力を持つ。1000年に1人の天才。レベル80 才能限界230(使徒化後)。読心LV3他多数技能。155cm B80(D)・W54・H84

4.ユエ・ルーフェイ:(GL222~)美貌の特A級。下級使徒。副メイド長。かつてはNo.1娼婦。1年で客になった全ての魔物将軍や魔物隊長を満足させ魔物同士で彼女を巡った刃傷沙汰にまで発展したためレオンハルトが下級使徒として召し上げた逸話がある伝説の娼婦。下級使徒になった現在は娼館全体の管理者を務めている。一見して清楚なのに色気がある超美少女。なのに絶妙に隙があってどんな注文にも応えられる。それが人気の秘訣。たまにレオンハルトの許可を取った上で城の男性下級使徒の性処理をしたり女性の斡旋を行っている。ただし彼女との行為を経験すると普通の男性は中毒になる上にのめり込んでも決して実らないため破滅する。なので注意が必要。調教も得意。レベル25 才能限界42 性技LV2 調教LV1 魔物使いLV1 アイドルLV1 身長162cm B101(K)・W56・H87

5.ヘーパ・トース:(GL318~GL395)鍛冶師の特A級。魔軍の装備担当として働いたが戦争がなかったため日の目を見ず。彼の残した武器は後の世で名剣・名刀・宝として扱われる。生涯独身だったがレオンハルトに褒美として養子を取りたいと願い、晩年は多くの子供達に囲まれて幸せに生きる。鍛冶LV2 教育LV1 レベル35 才能限界35

6.ル・ゴール・ビュージ・エロソン:(GL540~GL592)建築家で芸術家。一芸(建築技能)での特A級。あらゆる芸術でも評価される。レオンハルトの新たな城を設計して上奏した。その設計図はレオンハルトの使徒リーや多数の弟子に受け継がれ、現在魔物界西にて建造中。両刀使いかつ変態で趣味は毎日の娼館通いや弟子とヤること。生前は戯骸とも寝たことがある。人格に問題はありつつも非常に優秀で男性ながら下級使徒にまで上り詰めたが娼館を貸し切った101Pの末に腹上死。子供が何人もいたが基本ヤることしか考えてないので全員に嫌われていた。彼の子孫は優秀だが一族をA級にするために後に権謀術数を巡らせることになる。レベル10 才能限界10 建築LV3 音楽LV2 絵画LV2 物書きLV2

7.ミシェーラ・姫原:(GL636~)レオンハルトの使徒。コロシアムチャンピオン。下級使徒になってレオンハルト様親衛隊の副隊長に人間の身で勤め上げた。代々A級を排出してきた人間街のエリート一族出身のサラブレッドで人間街町長で教師だった祖父を尊敬してる。戦闘力の特A級で全体的な能力も高い。なのにちょっとバカ。レベル88 才能限界182(使徒化後) 剣戦闘LV2。神魔法LV2他多数技能。ハニー体質。147cm B83(E)・W55・H80

8.フリード・ダイン・エロソン:(GL777~GL810)歴代最悪の特A級。人間街のエリート一族出身。非常に凶悪かつ計算高い野心家で幼少期から事故に見せかけてライバルを殺害。戦闘力で特A級に選ばれた後は瞬く間にコロシアムチャンピオンになり、褒美として魔軍への参加と牧場の戦闘指南役を申し出る。だがそれはフリードの計画の第一段階。城と牧場と外を行き来できるようになった彼は見どころのある外の人間や子供。城に召し抱えられそうな女を自らの駒にする。魔軍唯一の人間の部隊『人間傭兵部隊』を作り上げて自身はその隊長になって人狩りも行う。同時に優秀な人材を育て上げられるとレオンハルトに自らの有益さをアピールし、レオンハルトの情報を集めつつ取り入る。そうしていずれは魔人になろうとしていた。弱者を弄び、女は道具のように扱う卑劣漢だが妙なカリスマがあり、コロシアムの闘士を中心に彼は自らの勢力を密かに増やしていた。しかし彼にとっての不運は心を読めるイヴの存在。彼はイヴが何らかの理由で自分の計画に気づいていると察知し、更に慎重に立ち回ったがイヴとの熾烈な頭脳戦に敗北し、追い詰められた彼は武装蜂起。大量のぷちハニーをレオンハルトシティに仕掛けて多くの魔物兵を爆殺。一族の人間も殺し魔物将軍も討ち取った。レオンハルト様親衛隊と戦うも生き延びて逃走。その際に攫ったレオンハルトのメイドを人質にすることで魔王ジルに自分を紹介するように要求するも瞬間移動を使えるハンティに阻止される。最後はレオンハルトの怒りを買い、首を落とされた。彼の死後は人間傭兵部隊は解体され、牧場の評価に人格面も大きく考慮されることになった。レベル66。才能限界77。剣戦闘LV2 統率LV1 話術LV1

9.グリムリーパー(ヨアン・サンソン):(GL981~)レオンハルト人間牧場唯一の脱走者でコロシアムチャンピオン。アルビノで不能。彼の生まれた時期はA級を多数排出した人間街のエリート一族が自分の一族をA級に上げるために贔屓をしたり他の子供の妨害したりする暗黒期であった。幼少期はそんなエリートの子供に虐められていたが彼は魔物将軍や教師にバレないようにあらゆる方法で仕返しを行った。戦闘力の特A級。脱走した後は影の楔の棟梁に拾われて組織の最高幹部に。レベル80 才能限界82 剣戦闘LV2 シーフLV2

10.アイシス・ハッピーハート:(GL985~)おっぱいでの特A級。伝説のリラックスバストの持ち主。15歳の卒業時点で立ち会った使徒一同、魔物将軍も含めレオンハルト様に捧げるべきだと満場一致。速攻で下級使徒になってメイドに。乳がでかくて美少女だからA級と言われた者は他にもいるが特A級は彼女だけ。お町にライバル視されている。素直で明るい頑張り屋で自分のことを取り柄のない普通の人だと思っている。太腿と尻も大きい。抱き心地は最高で身体に触れると癒されるとメイド達からも大人気。妹にパティシエとしてA級となり下級使徒として城で働いているショコラ・ハッピーハートがいる。そちらはミシュラン十傑に選ばれるほどの料理上手だがこちらは普通。レベル5 才能限界100 巫女LV2 フクマンLV2 冒険LV1 プロレスLV1 幸運LV1 料理LV0 身長163cm B131(U)・W63・H105

感想、評価、良ければよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。