──それは今より千年以上前の記憶。
『──よいか……かの魔人の剣技は王道にして無敵の剣……正面から臨まば勝ちの目は無し……』
JAPANのNAVA地方にひっそりと建てられた屋敷には彼女の教えを受けた者達が一様に集まっていた。
その声は威厳ありしもしわがれきっている。その身は病と老いに侵され、今にも命の灯火が消えようとしている。
『忘れるな……邪道を……忍びの技を以て挑め……忍びの技を全て極めしもの……その秘奥でかの魔人に刃を突き立てよ……』
だがその老婆は死にゆくその寸前まで明確な強い意思に満ちていた。
己はそれを見た。教えを受けた者達の中で最も若い身である自分は最後列からその顔を見た。声を聞いた。どれも死にゆく老婆のものではない。
会ったことはない。しかしそれが己の血に流れる帝の血──かの藤原石丸の色を不思議と感じさせる。
『ああ……だがこうして今際の際になってみると……あの時のことも懐かしく……口惜しいのう……今になって挑まずにいたことを後悔しておる……見果てぬ夢……父様がそうしたように……たとえ敵わずとも頂きの高さ……感じてみたかった……そうすればきっと、この私も……──』
忍者の始祖ももたん──藤原桃は最期にそう言い残し、穏やかな笑みを浮かべて生を終えた。
途端に泣き崩れる一族郎党。郷の者達。
だが己だけはその最後の表情と言葉の意味を問うていた。曾祖母様は、何故に一生を使って目標とした父の仇に対し何も成し遂げられなかったというのに──あのような穏やかに逝けたのだろうと。
後悔していると言いながら一切の後悔もない様子で。満足したように生を終えた。
その理由が己には──藤原杏にはわからない。理解できなかった。
数年、数十年と経ち、普通の人が一生を終えるほどの年数を過ごし、忍として極まりながらもわからなかった。
己に魔人に対する憎しみはない。だからその気持ちはどうしたって理解出来ないのは当然だが、仇に対して何も成せなかったというのにああも満ち足りた顔で逝けたのは本当にどうしてだろうか──。
皮肉にも一族の使命に最も無頓着である己が忍の秘奥を極めてしまった。ももたん様の遺言に従うならば、己はかの魔人に、藤原石丸を一騎打ちで討ち果たした魔人レオンハルトに挑まなければならない。
無論、幼き頃からずっとそうせよと言われてきた相手だ。己の技にどれほどの意味があるのか──それを確かめるためにもそろそろ潮時だろうと見ている。
だがこうも思った。もしかすると挑むことで見えるものがあるかもしれないと。
世界最強の剣士。一族の多くが挑むことすら出来なかった高みに対し、直接相対すれば己にもまた見える境地があるかもしれない。
あるいはあの時のももたん様の気持ちも理解出来るかもしれない──そう思い、藤原杏は忍として、藤原の一族の者としてここに立っている。
そしてその剣技が確かにももたん様や高祖父石丸様の言い伝え通り、王道にして無敵の剣であることを理解する。どんな強力な戦士の攻撃も巨大な魔物の攻撃もこの魔人の力には敵わず、速さは風を超え、技は天武の域に達し、心は鋼の如し。
故にこちらが辛うじて勝るは邪道の技。忍びとして翻弄することのみだ。手裏剣で牽制し、変わり身によってあらゆる攻撃を受け流して躱し続ける。そして返しとして雀の涙ほどに小さな傷を与え続けるのみ。
だがそれも効果はある。ももたん様の言う通り、忍の秘奥は確かに世界最強の魔人に通用していた。
「二刀流じゃと……?」
「ああ。すぐに味わわせてやる。気を抜くなよ」
しかし、その風向きが変化したことを藤原杏は機敏に察知していた。
魔人レオンハルトが赤の長剣にして魔剣オル=フェイルを右手に。そして左手に聖刀日光を構えたその時に藤原杏は最大限に警戒を行う。
それは長年の経験が、忍びとして極まっていたからこそ働く直感だった。
気を抜くなよ──その言葉通り、藤原杏は気を抜かずにその二刀の切先。刃の揺らぎを見ていた。だからだろうか、
「──“常闇”」
「っ……!!?」
──喰らった。
気づいた時には、既に。レオンハルトは己の身体を通り過ぎ、二刀の刃で変わり身の身体を斬り裂いていた。
(なんじゃ今のは……!?)
藤原杏はその術理が分からないままに印を結んで再び変わり身を置く。二刀になったレオンハルトの動きの一切を見逃すことなく見ていた。瞬きすらしなかった。
だが二刀の刃が揺らめいたその瞬間に、レオンハルトは動いてこちらを一閃。己は斬られ、変わり身を使って逃れていた。
「……反応出来ていないようだが大丈夫か? ──次、行くぞ」
「っ……忍法・霧隠れ!!」
魔人の声。それと共に剣気を感じ、藤原杏は霧を発生させて己を隠す。
霧など一瞬でかき消されるであろうがそれでも構わない。重要なのは相手の動きを見切ること。
ゆえに藤原杏は霧の中に隠れながらあえて己の瞼を下ろして周囲の気配。空気の流れだけで魔人の動きを感知しようと試みる。藤原杏の予想が正しいのであれば今のは王道とは違う。忍びの技に近いもので──
「──見えたぞ」
「!」
──鋼同士が激突し、弾かれる音。
それは藤原杏がレオンハルトの剣撃を見切り、防げた証だ。
代償として小刀が弾かれ腕に痺れどころではない痛みが走るが問題ない。藤原杏はその剣理の正体を笑みすら浮かべて回答する。
「その二刀の技……真髄は幻惑じゃな。あまりにも速く滑らかな二刀の動きで剣の虚像を作っておる。相手がその虚像に意識を向けた瞬間に本物は死角から一瞬で踏み込み一閃──故にその技は謂わば暗剣。王道とは正反対の邪道の剣じゃ」
藤原杏が淀みなくそう答えてみれば、魔人レオンハルトは僅かに目を見開いてすぐに笑みを零した。先程までの鉄仮面とは違う素の表情。魔人としての破壊衝動を解放したような活き活きとした様子で反応する。
「くく……こうも早く見抜かれるとはな。正解だ。さすがは石丸の子孫……いや、忍者の頂点に達しているだけはあるな」
「お主には全く及ばぬが多少は剣の心得もあるのでな。それでも邪道の剣でなければ見切ることも叶わなかったじゃろう」
邪道だからこそ邪道に通づる自分もすぐに気付けた。藤原杏は冷や汗を流しながら新たな短刀を抜いて構える。
それに対してレオンハルトは嬉しそうな顔を崩さない。己の技が防がれたというのに嬉しそうな顔をする。やはり戦闘狂じゃな、と藤原杏は思いながら。
「だがそれでこそだ。二刀流は手数と奇襲が強み。お前の忍術──真っ向から破らせてもらう」
「!」
レオンハルトが再び消えた──否、己の背後に回って二刀を振りかぶっていた。
藤原杏はそれを察知する。そしてすぐに変わり身で逃げた。しかし。
「二刀流奥義──“宵闇”」
(っ……手数が……!!)
一瞬──いや刹那。ほんの僅かな時の間に百近くの斬撃が発生し、藤原杏は必死の対応を余儀なくされる。
躱せるものは躱し、躱せないものは受け、受けきれないものは全て変わり身で流し、その流している間に連続で変わり身を使うことで全て流す。
「はぁー……ふぅー……!」
結果として何とか無傷で乗り切るも藤原杏は呼吸を荒くしていた。
何しろ己の限界。変わり身を一瞬の間に何十と使うことになったのだ。
その高速のやり取りは達人でなければ何をしていたかも分からぬだろう。杏自身、よく対応出来たと自分で自分を褒めたいくらいだった。
だからこそ杏は自分でも気づかぬ間に笑みを浮かべていて。
「きっついのう……! 今の技、少しでも妾の対応が遅れておれば真っ二つじゃったぞ。殺さぬのではないのか?」
「安心しろ、その時はしっかり寸止めしてやるさ……! それに楽しくなってきただろ? お前も楽しめ。戦いは己を傷つけられるような存在と戦ってこそだ」
「……ふはっ、なるほどのぉ……確かにそうやもしれんな」
遅れて藤原杏も気づく。思えば自分は今まで、同格以上の相手と戦ったことがなかったと。
相手は全て格下。そして戦えば一瞬……いや、戦いに発展させることすらない。
己の技は忍びとして極まりすぎて邪魔者をすぐに、苦労することなく始末してしまえた。
だからこそ杏は退屈だったし、戦いに関してもあまり気乗りしないタチだった。己の強さならどうとでもなる。そんな気持ちで生きてきたから。
だからこそ──なるほど。己の技で倒れぬ相手。己の全力で臨んでもなお敵わぬかもしれぬ相手。
その強大な魔人との戦いは……。
「──馬鹿じゃのう……我が血は……!」
──どうにも血が沸き立ってしようがない。
そう、だからこそ己は笑い、ももたん様も後悔を口にしながらも己を強くしてくれた高みの存在に感謝したのやもしれぬ。
おそらくは藤原石丸も──。
「……それはなんだ?」
「何、丸薬じゃ。一族に伝わる秘伝の1つでの。普通の強化では攻撃に移ることも出来んので使わせてもらうぞ」
「構わない。好きにしろ」
「忝ない」
そして目の前の魔人レオンハルトもまた同じ性質なのじゃろうと藤原杏は長年の難題に納得を得る。
答えを知ってしまえばなんと容易いことか。こうして秘伝の丸薬を飲むのを待ってくれるのも理解できる。忍びとしては相手の強化や準備を待ってやる必要はなくその前にやれるならやってしまえ、となるがそうしたくない気持ちも理解できた。
「──百像分身の術」
強化された肉体で最大まで分身を生み出し、準備を整える。
己は人間。そして邪道の忍び。
故にこそ勝負は長くない。相手が手数で押してきている以上、対応出来なくなったその瞬間が終幕であると藤原杏は理解する。
「では今度こそ……参る」
「ハハハッ、来い!!」
準備を終えて分身の数に高揚する剣の王に対し、藤原杏は初手から全力を振り絞る。攻勢に出れるこの瞬間こそ絶好の好機。
いわば助走付きのスタートダッシュだ。レオンハルトが受けに回ろうとしているこの瞬間だけはこちらの方が速く、そして攻撃を仕掛けられる。
「──“穿・四門五月雨”!!」
「っ……!」
分身と共に一斉に、レオンハルトの肉体を交差するように斬りつける。
その斬撃は雨の如し。常人であれば細々な肉塊となって地に落ちるほどの凄惨な忍びの秘奥。
「ハハッ、やりやがる!!」
「これで倒れぬとはどんな身体しておる……!」
「今度はこちらから行くぜ!!」
しかしレオンハルトは、最強の魔人は倒れない。
その現実に、絶望して然るべし目の前の光景にどこか安堵すら覚えながら藤原杏は武者震いをしてしまう。命の危機を感じる。本能が警鐘を鳴らしている。
だがそれも戦の華と言うべきかと今度は受けた。レオンハルトの奥義に対し、藤原杏は再び変わり身を使い。
「“暁闇”!!」
「ぬ、おっ……!!」
──幾つもの虚像で以て剣を四方八方から振り下ろすレオンハルトの奥義から逃れた。
その剣はまさに必殺の暗殺剣。正面から放っているにも関わらず、相手の隙を作って奇襲を仕掛けてしまう二刀流の極意。
幾つかの虚像を見抜けずに分身が一気に半分ほど削られ、再び変わり身を連続させる地獄を味わいながらも藤原杏の心には防いでやったという達成感と喜びがある。
「これもまた筆舌に尽くし難い……! 死にかけたが……何とか防いだぞ……!」
「やるな……! だが休んでいる暇があるのか? すぐに反撃してこねぇならこっちからまだ攻めさせてもらうぜ!」
魔人レオンハルトは強者との戦いを楽しんでいる。藤原杏の限界を引き出させようとしている。
故にこうして連続での攻勢に出た。これはただの技の掛け合いにあらず。間違いなく死合いなのだと言うように。
「わかっておるからこその隙よ……!」
「!」
──そして藤原杏もそれを利用して疲れている己の分身を見せつけ、その隙を突くように奇襲を仕掛ける。
レオンハルトの驚きを意味する目の動きと笑みを確認しながらも、藤原杏は秘奥を遠慮することはない。
「“鋭・紅破旋空”……!!」
「ハハハッ、痛ぇ、痛ぇなぁ……! 嬉しいぜ……!」
それはまるで風の如く、炎の如く。
疾走し、焼き切る忍の秘奥がレオンハルトに傷と痛みを与える。
だが大した傷ではない。レオンハルトもその二刀を以て杏の奥義の殆どを受けきった。
与えられた傷は僅か。然れどもその僅かな傷でさえ与えられるのはレオンハルトにとって喜びでしかない。
──たとえ真の本気でなくともそれは強者の証であるのだから。
「本当に嬉しいぜ……ただの人間が……それも武術で俺に傷を与えるなんてな……! 久し振りに欲しくなる……!」
「おお、熱い求愛じゃのう……! その誘いは悪くはないが、妾としてもここで終わるのは偲びない。自分でも意外ではあるが……勝利は諦めぬぞ……!」
「──それでこそだ藤原杏ッ!!」
レオンハルトの二刀の剣が。
藤原杏の忍の技の数々が──交差し、火花を散らす。
受けるのは無謀。そう判断したのは誰だったか。間違いなく己である筈なのに、今や傷を覚悟でそれを行っている己に呆れを感じる藤原杏。
「ふふっ、苦しいのう……」
だがその自嘲も楽しみの色を覗かせる。
死が見える幾億の刃も今の自分には祝福の花火に見える。
より近い死を前に生を実感している。
そして思えば過酷な奴隷の身を演じていたのも生来そういうのが好きだったのやもしれぬと得心し、しかし勝利も得ようとする度し難い自分にやはり自嘲した。
なんと汚い。なんと卑怯な。
しかしその邪道。何をしても結局のところ勝ちたいと思う己こそが。
「藤原の流儀よの……!!」
──負けず嫌いな藤原の血である。
それを理解し、放った一刀。死力を振り絞った一閃は、確かに魔人レオンハルトに届く。
忍の秘奥は確かに世界最強の剣士に届く。藤原石丸が一端を見せ、藤原桃が出した結論は間違っていなかった。
そして、だからこそ──
「──“無限泡影”」
「……!!」
──
己が目指した高みは本当に強かったのだと。
この魔人に挑んだ石丸は凄かったのだと。
そして……この魔人に通じる技を考え抜いた曾祖母様は凄かったのだと納得した。
二刀流の奥義。幾つもの虚実が入り混じる斬撃を、見抜くことが出来ず、躱すことも受け切ることも変わり身で全て流すことも出来ずに幾億の斬撃という手数に追いつかれた杏はそれを悟った。
──ああ……存外に妾は一族を大事に思っておったのだな……。
胸に斬撃を浴びて血を流しながら、祖先を誇りに思う。
それが確かめられただけでも無駄ではない。
生き続け、技を高めてきたのは無駄ではなかった。
「妾の負けじゃな」
「ああ。俺の勝ちだ」
勝負の決着は唐突に訪れる。
しかし濃密な時間であったと杏は思う。
「1つ。敗者の身で厚かましいことこの上ないがよいか?」
「言ってみろ。楽しませてくれた礼だ。無理難題でなければ聞いてやる」
「感謝するぞ」
だから告げた。これほどまでに己に楽しみを与えてくれた魔人に対し、感謝の印として。
「勝者への報酬じゃ──妾を犯すといい」
──あえて台無しになるようなことを口にしてみせた。
…………そういえば勝負の前にそんなことを言ってたな……さて、どうするか。
俺は影の楔の棟梁にして藤原石丸の子孫、藤原杏との勝負を終えて満足気に息を吐きながらも、冷静になった頭で今の状況について考えた。
どうやら山脈側での戦闘には決着がついている。中央も人間の生き残りはいない。左翼は分からないが、膠着状態か押し込んでいるか。あるいは暗示が解けているかのどれかだろう。
つまり自分が行くべきところはない。このままでは若干支障が出る。
そして何よりだ。俺は勝負において相手に合わせる主義だ。
だからこそ──
「……俺は本来、戦場でそういう下品なことはしない」
「ほう? 潔癖じゃのう。青姦も解放感があって気持ち良いぞ?」
「知っている。──だが、あえてお前に合わせてやる。お前に俺が満足させられるか、最後まで確かめてみろ」
──俺は藤原杏との勝負に乗る。
すると藤原杏がふっと楽しげに口元を変化させ、遥か後方の崖から気配が動くのを感じた。この気配は……ケイブリスか? 穴に隠れているのか……覗き見されたくはないが……まあいいだろう。
「……だが、傷の方は……大丈夫そうだな」
「ああ、この程度で死ぬほど妾は軟ではない。呪い付きじゃからな。多少普通の人間より頑丈でもある──ということで早速始めるとしようかの♡」
言うと藤原杏は舌舐めずりし、短い丈の着物をつまみ上げてその白く細めの太腿や褌に包まれた股間を見せつけてきた。
俺がそれを観察していると、納刀した刀から声がくる。ああ、そういえばと。
『──本気ですか……?』
「ああ、日光。見たくないなら目を閉じていろ。これも俺の流儀だ」
『……………………』
「……ふむ。ではどうする? 即ハメするか? それともフェラチオでもしてやろうか? 妾はどちらでも構わぬぞ。んっ……」
言いながら自分で自分の準備を整えたのだろう。さすがはくノ一と言うべきか、股間が湿っている。
「……どうやら身体は問題ないようだな」
「ふふ、妾はろりぃがいわゆるガチロリではないからの。肉付きも薄いが女性らしく付いておるし、腰つき。尻のラインもしっかりしておるじゃろう? これが大の男すら夢中にさせる合法ロリというやつじゃ」
藤原杏は己の肢体の説明をしてくるが、言われずとも分かっている。俺の女の中ではリムやトールに獅子またまた。胸が大きいため少し違うがインデックスやミシェーラなども体型的には近いか。小柄で華奢だが女性としての肉付きや曲線はしっかりあるタイプ。
「そして妾はテクニシャンじゃ。NGは何一つないぞ。得意技はやはり咥えることかの。それと妾のまんこは身体のサイズを見ればわかるがきつきつ。その上で伸縮自在であっつあつじゃ。今まで何人の男を夢中にさせてきたか……」
「そうか。なら試してやる」
「ちなみにシチュエーションプレイも対応しておる。妹演技や可哀想な奴隷演技。娘の演技など……好きな癖があるなら言ってみよ」
「必要ない」
こちらを夢中にさせようと手管を発揮し、流し目を送ってくる黒髪お団子ロリに対して俺は局部を見せつけてやる。己の肉体を操作してすぐにそこを隆起させた上で。
「おおう……♡ 良いモノを持っておるのう……これは妾の中もいっぱいになってしまいそうじゃ……♡ いや、あるいは入らんかものう……♡」
「お前から誘ったことだ。しっかり受け止めてもらうぞ」
「無論じゃ♡ さあ、もう準備はよいぞ……♡ その大きいものを後ろから……一気に貫いてくれ……♡」
ふりふりと尻を振りながら男を誘ってくる藤原杏は確かに男慣れしているのだろう。その手練手管に淀みはない。
そしてだからこそだ。俺はその狙いを粉々に打ち砕いて完全勝利を決めるべく、藤原杏の丸く小ぶりな尻を掴んだ。
「──お前の狙いはわかっている。その手管……木っ端微塵に打ち砕いてやろう」
「っ!! な──なんじゃとぉ……! んんっ……♡」
──そうして俺が行ったことは簡単だ。
藤原杏の褌をずらし、その小さくも伸縮自在の筋に己の肉棒を、あえて無遠慮にぶち込む──そうして
「な、何を……って、平気なのか……!?」
「くノ一の手管は悪いが知っている。男を誘い、行為の最中や事後に暗殺する。お前がくノ一であると分かった時点でこの手段を用いてくるかもしれないと予想はしていた。──だから敢えて乗ってやった」
「チンコでクナイを押し潰してるのに刺さらんとかどんなチンコしとるんじゃ……!!?」
「それを言うならお前もこうしているのに刺さっていない。毒が効かないであろうことはまだ分かるがな──ふん」
「んんんっ……!」
そう気づいていた。だからこそ完璧に勝利するために、時間稼ぎも兼ねて挿入を敢行した。
驚く杏に対し、俺は腰を動かして肉棒の傘で中にある小さなクナイを全て掻き出してやる。出血していないのは流石だなと言う感想を抱きながら全てを排出させた。
「ん……♡ はぁ……よもや陰茎すら一流とは……これは妾の完全敗北じゃの。くノ一の最終手段すら見破られ、まさか真正面から打ち破られるとは」
「毒は効きが悪い。それに力を入れていないただの刃が俺の肌に刺さる筈もない。とはいえ不快ではあるが」
少しチクッとするが問題ない。藤原杏の忍として俺を殺そうとする手段はこれで完膚なきまでに打ち砕いてやった。
だから本来ならもうやめても構わない。というか普通はこんなことしない。人間時代は戦場の習いとしてやることもやっていたが、魔人になってから戦場ですることは控えている。
相手が同意した上にくノ一だから。そして周囲に誰もいないから特別にしたことなのだが──
「流石と言う他ないの……雄々しくそびえ立ち、刃を立てようと傷1つ付けられぬこの硬さと逞しさ。多くの処女を奪い、女を魅了してきた王の剣……云うなれば覇王剣、か」
「誰が覇王剣だ」
「んんっ♡ ──ならば世界一の山、翔竜山になぞらえて翔竜剣か。あるいは皇帝剣の方がよいか?」
「ネーミングの問題じゃない。人のチンコに変な名前を付けるな」
「んぐぐっ♡ やるのぉ……♡ ならば妾の完全敗北ということで……このまま別の勝負と参ろうか……♡」
……少しばかり調子に乗っているようだし、このまま分からせるか?
いや、それでも草原のド真ん中でセックスするのはやはり……だがこれも時間稼ぎかもしれない。──確かめるために俺は頭の中で別の奴に交信した。
(聞こえるかシビュレー)
(──ああ、閣下。ふむ、私の交信魔法は問題なく作用しているようだね。それで、私に連絡してきたということはもうそろそろかな?)
(それを聞きたい。もう少し適当な理由を付けて時間を稼ぐ必要はあるか?)
──事前に連絡が取れるようにしていた相手。バークスハム一族の元族長である悪い占い師シビュレーの声が頭の中に響く。
そしてこちらの声もまたシビュレーには届いていた。かつてガイとシビュレーが連絡を取り合っていたという魔法。それを用いている。そうして相変わらず含みと艶のあるハスキーな声でシビュレーは占いを告げてきた。
(さて、私の占いはもうそこまで万能なものではありません。時間を稼ぐ必要があるかどうかは分かりませぬな──どちらにせよ結果は変わらないでしょう)
(つまりは……)
(ええ。未来は見えませぬが、魔王ジルとガイの状況は遠見で見ています。ですので……もう時代の終わりは変わらぬでしょう)
(……そう、か)
──そうして時代が終わると告げられ、俺は不思議な、そして複雑な想いを胸に感じる。
最初から全て理解していた筈だというのに、だ。いざその時を目の前にすると──
「む……どうしたと言うのじゃ……?」
「……悪いが遊びはここまでだ」
「ええっ!? 途中でやめるなんてそんな殺生な!! 妾のどちゅどちゅハメ潰しセックスは!?」
「これはお前に完全勝利するためにやったことだ。そんなに続きがしたけりゃ後で城に来い。……今はそんな気分じゃない」
先程までの藤原杏との戦いによる喜悦が冷める程に──
一応R-18小説なので遠慮なくこういうシーンも入れられる。そしてこれがGL期最後のそういうシーンです。遂に次は時代が終わります。次回はもう書けてるので明日の18時です。お楽しみに。
感想、評価、良ければよろしくお願いします。