――SS420年
人間が国家を築き、数百年。
人類社会は確立されてきていた。
未だ大陸の半分は魔物達のものであることには変わりなく、魔軍の脅威と戦い続けていることにも変わりはない。
しかし、その生活は確実に慣れが生じ始めていた。それはひとえに、魔軍との戦争が領土を接している国が主であり、大攻勢も滅多にない為であった。
全体的に見ても半分か、それより少ない程度の国家。主に大陸東部から南部に掛けてその傾向が強まっており、魔軍の被害もあまりなく、ある程度の平和を謳歌していた。
――だが、誰かが言った。人間は欲深い生き物である、と。
余裕が出来ればそれ以上を求めてしまうのが人間なのだと。
それは人間の本能であり、仕方のないことなのだ。故に、権力者達は動き出した。
この時代になると、魔軍の脅威をあまり受けていない国家を中心に、あることが本格化してきたのである。
それは、人類同士での奪い合いだった。
彼らが欲しがるものは様々であり、人、物、土地、金、食料、権益、あらゆるものを求めて争う。
最初は、交渉し、お互いの欲しがる物を手に入れる為、妥協点を探り合いを続けた。
しかし、話し合いが決裂すると、後に残る手段は――奪うこと。
即ち――人類国家同士の戦争である。
魔軍が攻めてこないことを良いことに、奪われる側から奪う側へと。様々な大義名分を引っさげて。
欲に従い、人間達は自ら争いはじめたのだった。
――大陸中央部。
大陸の中心にそびえ立つ世界最高峰の山、翔竜山。それを取り囲むように広がる大森林地帯があった。その景色は辺り一面が緑。人の手が入った形跡は殆どない、原生の森林そのもの。方向感覚を狂わせ、一度迷い込めば二度と出られないともいわれている。
だが、そんな森に、今は二種類の人影があった。一つは、
「進め――!!」
「うおおおおぉぉぉおおおおおおおっっっ!!」
無骨な鉄の鎧を身に着け、剣を掲げる人間の男の姿。彼らはこの大森林から南に位置する王国の兵士達であり、この森の豊富な資源を狙って攻め入ってきた軍隊だ。
隊長らしき者の号令に従い、兵達は木々を切り分ける様に進んでいく。その瞳には、一様にもう一つの人影を映していた。
そのもう一つの人影が、
「――弓隊、放てぇ――っ!!」
「ぐぅっ!?」
「ぎゃあっ!」
森の奥から女性の声が響き、その一瞬の後に矢の雨が降り注いだ。少なくない兵達が、鎧の隙間を縫うように放たれた矢の犠牲となり、苦悶の声を周囲に響かせる。しかし、やられた兵の数は少なくはないが、多くもない。全体から見れば軽微でしかないのだ。この森林地帯の制圧を任された隊長は、それを思い、森の奥に見えた女性の影に向かって声を上げる。
「前方にいるぞ!! 突撃ぃ――っ!!」
「くっ……まずい。――少し下がるぞ!」
「は、はいっ!」
大勢の人間の兵が被害に構わず突撃してくるのを見て、女性は歯噛みしたように後退するように部下に命令を下す。そんな彼女達の姿を発見した人間の兵士達は、戦闘で昂ぶっているのか喜色が混じったような声で、
「ようやく見つけたぞっ! 今度はこっちの番だぜぇ!」
「あんだけ弓で攻撃してくれたんだから分かってるよなぁっ! 後で覚悟するんだな!」
「ははは、他の奴みたいに慰み者にしてやるぞぉっ!」
「……っ!」
その言葉に、女性が怯えの色を見せる。それは部下達も同じだった。
何故なら、彼女の部隊、兵士たちを撃退しようとしている女性達は、この森に住むもう一つの人影であり、そして純粋な人間種ではないからだ。
長い耳に額の赤や青のクリスタル、水色の髪を持つ女性だけの亜人種――カラーと呼ばれる種族である。
そしてこの森林地帯は彼女たち、カラーが住む土地であり、大規模な集落がある場所なのだ。
故に当然、ここを攻めてくる人間がいるならば戦わざるを得なかった。彼女たちは必死に弓を構え、足を動かす。
戦いは現在、一進一退の状況が続いている。カラーは生まれつき、高い魔力を持ち、弓を得意とする種族であり、それらと彼女たち特有である森の把握能力と土地勘を駆使した戦術で、人間達には数で劣るものの、その高い能力。つまり、質の面で何とか拮抗していたのだ。
だがそれでも、彼女たちが怯える理由。カラーの部隊は戦いながら後退するも、人間の兵にやられて捕まってしまった仲間を見る。
そこでは、
「いやあああああぁぁぁっっ!?」
「やめてぇっ! 離してよぉっ!!」
「へへ、苦労させやがって……! ちょっと一発抜かせてもらうからな……!」
「ふっ……くっ! はぁ、はぁ……やっぱ戦場でヤるのはたまんねぇなぁっ……!」
――多くのカラーの娘たちが、人間の兵士たちから暴行を受けていた。
それは、戦争の中では珍しくない光景だ。戦争の最中に捕虜になった女性や、占領した街の女性などは暴行、強姦されるのが、もはや常習化されている。それは、女性も一種の戦利品として扱われる為であり、兵達の戦う理由としても愛国心や金、名誉といったものが重視するも、略奪や暴行を期待して戦うものも多い。
それらは魔軍などでよく見られることで、魔物兵の蛮行は有名だが、人間の軍隊でもこれらは兵達の報酬としているのは周知の事実であった。国としても表立って言うわけでも、与えられるわけでもないが、はっきりと禁止にすることはせず、それは事実としてあるものだった。指揮官も基本的にはそれを黙認するし、むしろ率先して参加することも多い。
それに言うまでもないが軍隊というのは、男所帯である。
更に言うなら権力者も男で占められているし、これは強姦とは直接の関係はないが、平民の間でも、男と女、どちらが立場が高いか、といわれると男であった。
それは、人間が生まれてから未だ変わっていないこと。徐々に変わってきてはいるものの、まだまだ力が全ての時代では、狩りや戦いを担当していた男の方が立場は高く、それに比べて弱い女の立場は低かった。
そういった背景からだろうか、この光景は数百年前から見られる――戦争の付き物であった。
故に男だらけの兵達にとっての幸運は、カラーが見目麗しい女性だけの種族であることで、カラーにとっての不幸は、自分達が女性だけの種族であることだった。
――未だ、その隠された効果は知られずとも、カラーは男にとって恰好の餌であった。
もっともカラーの方も、人間の男を見下す傾向があるのは確かだが、今この場においてはあまり関係ないだろう。
「いやぁ……、もうやめてぇ……抜いてよぉ……」
「痛いよぉ……! 誰か助けて……!」
気づけば彼女たちの額のクリスタルが、赤から青に変わっていた。カラーの額のクリスタルは通常は赤色だが、処女を失うと色を青へと変化させる。
「っ……最高の戦争だぜ……! 戦いは面倒だけど、これがあるからやめられねぇんだよなぁっ!」
「魔軍なんかと戦うより、こっちの方が断然いいよな……くぅ……!」
兵士たちは若干、声を震わせながら、カラーの娘たちを犯し続ける。戦闘の合間であるため、時間は限られてるが、相手の撤退をある程度追い回し、前進すると、このように息抜きの時間が回ってくる。それが兵達の士気の高さに繋がっていた。
兵達はカラーの娘を犯し、順番待ちをしながらも思う。辺りはもう暗くなってきたし、時間がくれば少し休んでから今度は陣を張るため、隊長から号令がかかるだろう。夜の森での行動は集団であっても危険であるため、今日の仕事はほぼ終わりではあるが、兵達の時間制限はそれまでだ。強姦などという非道を行ってはいても、彼らは立派な国の軍隊である。上官の命令には逆らわないし、規律は守る。
なので、彼らはその時間の中でめいっぱい愉しもうと強姦を続けた。
そんな時だった。
「やっと俺の番か……そんじゃやっちまうか」
「いやぁ……もう無理ぃ……」
カラーの娘が身体を白い液体で汚され、目が虚ろな状態になっている。
そんな彼女に一人の兵士が近づき、
「へへ、悪く思うなよ。捕まったお前らが悪いんだからな……そいじゃ、ちょっと失礼して――」
そう下卑た声で、下半身を下ろそうとした時、
「――あ……?」
突如、辺りに霧が立ち込めてきた。そして、
「――――ぐ」
「……え……?」
カラーの娘の目の前にいた兵士が、突如、血を吐いて絶命した。
その腹には何かに刺された後がある。そして更に、
「ぐああああ――!?」
「な、何だ!? 何が――ぐっ……」
「気をつけろっ!! 何かが襲ってきてるぞ!!」
次々と兵士が断末魔を上げ、もしくは静かに音もなく地面に倒れ、死体になっていく。
兵達が半ばパニックになる中、そこでようやく、兵士の一人が、辺りを見渡し、上を見上げたところで、
「! ――いたぞ! 上だ!」
その叫び声に、兵達が上を見上げる。そこには、
「――――気づかれたか」
木々の隙間、闇夜に浮かぶ月を背にして枝の上に、見知らぬカラーの女性が立っていた。
その姿に、兵士たちは思わず見惚れてしまう。
それは赤いクリスタルと短めの水色の髪を持った、カラー特有の衣装とは少し違った白と黒の衣装をまとった美しい女性だ。整った顔立ちだが、その表情は無に近く、真一文字に結ばれた口と、冷たい視線をこちらに向けてきている。
見る限り女性にしては長身であり、その肢体はとても女性らしい魅力に満ちていた。服の上からでもわかる豊かな胸元やくびれた腰とその曲線が悩ましく、ここまで多くの見目麗しいカラーを見た兵達ですら驚く、非の打ち所がない絶世の美女。そんな女性がたった一人で目の前に現れたことに、兵達は少しの安堵と期待を抱いた。
「……はっ、なんだ、一人じゃねぇか。驚かせやがって」
「てっきり大勢で襲ってきたのかと思ったぜ」
安堵は相手が一人であるということ。そして、
「おい、姉ちゃん! たった一人でこんなとこ来たら危ないぜぇ? 何されるかわかんねぇしなぁ?」
「仲間の仇討ちかぁ? それとも、混ざりに来たのかっ!」
「そうじゃなくてもやっちまうけどな!」
ぎゃははは! と小馬鹿にするように声を上げて笑う兵達。
期待は今彼らが言った様に――極上の獲物がやってきたことによるものだ。
その下卑た視線と舌舐めずりに、しかし彼女は冷たい様子で、
「……ふん、下衆め」
鼻を鳴らしてそう吐き捨てる。その視線は心の底から兵達を軽蔑しきっていた。
ともすれば完全に見下したような様子で、彼女は一度息を吐いた。
「それに、敵を目の前にして随分と呑気なものだ」
「……あ?」
兵達が、疑問符を頭に浮かべる。彼らの返事を待たず、彼女が続けて、
「私は――お前達を殺しにきたのだぞ?」
「――っ!?」
「っ――!」
突如、彼女は静かな殺気を兵達に叩きつけた。とてつもない悪寒を感じ、彼らの身体が凍ったように固まる。
そしてその殺気の強さと、視線と共に浴びせられる圧力に戦慄した。兵達が二の句を継げないでいる中、唯一隊長だけが、ふっとある噂を思い出し、口を開く。
「……お、お前、まさか――」
だが、
「……悪いが、これ以上言葉を交わす必要性を感じないな」
そう言って彼女は、詠唱を行うと、
「――ダークミスト」
聞いたことのない魔法と共に、襲いかかってきた。魔法が発動され、周囲の霧が黒くなり、辺りを包み込む。
その結果、彼らの視界は真っ暗となり、兵達の視界を奪った。
「な、何だ――!?」
「何も見えねぇぞ! 一体どこに――」
兵達が暗闇で混乱する中、聞こえるのは、
「ぐっ――」
「どうすればいいの――」
「お、落ち着け! 相手は一人だぞ! まずは距離を――」
変なタイミングで言葉を切る、兵達の声と、何かが地面に倒れる音。
それは何が起こっているかを知らせるには、十分であり、その事実に兵達は恐怖した。闇の中で彼女の声が聞こえた気がした。
「私の同胞に手に掛けた罪――その命で償って貰おう」
と。
その瞬間、兵達は狂乱した。
「に、逃げろ! こんな暗闇じゃ戦うこと、も――」
「う、うあああああっ! く、来るなら来、い……」
「もう駄目だ……もう死ぬ、し、か……」
一目散に逃げ惑う者がいる。彼らは他の人や木にぶつかって満足に動けなくなった。その部分を狙い打たれて、屍を晒した。
辺り構わず武器を振り回す者がいる。彼らは周囲にいる味方を次々と斬り裂いていき、やがて自分も他の兵士に斬り裂かれた。
わけもわからず只々動揺してその場から動けなく者がいる。彼らは気がつけば殺されていった。
……何だ、これは……!
隊長は絶望する。向こうは見えているのだろうか、味方の声がどんどんと少なくなっていくのを感じてそう思う。それとも実はもう逃げていたり、偶然こちらの攻撃が当たって死んでしまっていたりするのだろうか。それすらも分からない。
視界を封じられた不利は覆しようがなく、こちらは何も出来ないまま殺されていく。その惨状を耳と背筋に走る悪寒で感じながら、隊長は思い出していた。
――夜にカラーの集落に攻め入ってはいけない。
何故なら、そこには王がいるから。
多くの魔法を使い、夜においては最強とも噂されるカラーの王。
その名は、
「夜の王――ケッセルリンク」
隊長はその名を最後に呟き、意識を飛ばした。
導入。オリジナル魔法に、微妙な性描写。
R-15ってどこからがアウトなのかがわからない……最近の一般作品って過激ですし……
駄目そうなら教えて下さい。駄目なら変えます