※この作品はR-18です。

魔軍参謀の憂鬱   作:黒岩

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前回についてお詫びと報告
ご指摘があった部分についての修正をしました。
ちょっとネタバレになってしまい申し訳ないのですが、該当部分についての話は直前まで未定としておきます。少し考えたいので。
私の浅い知識で皆様を混乱させてしまい申し訳ございませんでした。

……ということで本編をどうぞ


秘めた想い

 

「――おい! 何をしてる!?」

 

「……ああ? チッ……何だ、将軍ですか? どうかしました?」

 

「どうかしましたじゃないだろう! お前、まさか全員殺したのか!?」

 

「……いやいや、待って下さいよ。俺、別に殺したくて殺したわけじゃありませんよ?」

 

「何だと……?」

 

「いやぁ、将軍も知ってるでしょう? 俺、虐められてたじゃないですか。こいつらに。――腰抜けだ、ドラゴンの面汚しだ。……なーんて言われて」

 

「……それは」

 

「それで今日も、いつもの様に虐めてきたので……ちょっと決闘をしたまでです。こいつらが言うドラゴンの誇りとやらに則ってね」

 

「……だから、殺したのか?」

 

「ええ、当然でしょう。やらなきゃ俺も命が危なかったんですから」

 

「……同胞だぞ。それに、これまで一緒に戦ってきた。同じ部隊の仲間――」

 

「――黙れよ、偽善者が」

 

「……!」

 

「ここまで見て見ぬ振りをしておいて。仲間、だなんて言うんですかぁ、ライゼン将軍?」

 

「…………」

 

「おや、だんまりですかぁ? ……まぁ、別にそこまで怒ってないからいいですけどね」

 

「……すまない」

 

「チッ……いえいえ! 謝らないで下さいよ! こちらも口が過ぎましたし……それに俺、ライゼン将軍のことは尊敬してるんですから!」

 

「……しかし俺は――」

 

「いいんですいいんです! ライゼン将軍の立場もわかっていますから、ね……ひひ」

 

「……お前……変わったな」

 

「? 変わった? 確かに身体も大きくなりましたし、強くもなりましたけど……何が変わったって言うんです?」

 

「……魔王討伐の戦功を認められなかったからか?」

 

「…………別に? どうとも思ってませんが?」

 

「だが……周囲が認めていなくても、俺は認めているからな?」

 

「……あー、はいはい。そうですかありがとうございます。……もう行ってもいいですか?」

 

「……お前なら――」

 

「? 何でしょうか?」

 

「――強くなったお前なら、きっといつか……マギーホアに勝てると思うぞ」

 

「……それはどうですかねぇ……確かに王の座は色々と魅力的ですがね……」

 

「……いや、お前なら出来るさ。何せここまで伸びたんだ。頑張れよ」

 

「……んー、まぁ、ライゼン将軍が、応援、してくれるなら勝てるかもしれませんよ?」

 

「俺が応援すれば?」

 

「ええ、そうです。俺のことを、ちゃんと応援してくれますか? ライゼン将軍? 友人のマギーホア様じゃなくて、一部下でしかない俺のことをちゃーんと応援して、邪魔しないというのなら……その夢も叶うかもしれません。――如何でしょう?」

 

「……ああ、勿論だ。部隊の皆は仲間だと思っているし……お前の方を応援してやるさ」

 

「…………そうですか、それは良かった。これで安心して挑めますよ」

 

「……ああ、信じているさ――アベル」

 

「俺も信じていますよ、ライゼン将軍――くひひ……」

 

 

 

 

 

 夜の森。

 満天の星空が木々の間から垣間見えるその場所に、一つの家があった。

 その家は、普段は家主が帰ってこない空き家も当然の場所であったが、今は三つの人影が住んでいた。

 そして、そこに住むことになった発端である魔人レオンハルトは――

 

「…………」

 

「…………」

 

 ――現在、ベッドの上で女性二人に挟まれるような形で寝ていた。

 

 レオンハルトはその状況に何とも言えない感情を覚えつつも、

 ……何というか……本当、何なんだろうな、この状況は……。

 現在の状況を思う。ベッドに寝そべる自分の身体は左向きだ。そして自分から見て前に、ケッセルリンク。後ろにペールがそれぞれ横になっており、二人ともこちらに背を向けている。

 そしてレオンハルトは自らの感覚で二人の気配や息遣いの様子を察して、未だ二人が寝ていないことがわかっていた。寝付きが悪い可能性もあるが、今に至っては違うだろう。

 その答えを、レオンハルトは内心で言い当てた。

 ……恥ずかしいならやめとけって、あれほど言ったのによ。

 つい先程の出来事を思い出し、レオンハルトは息を吐くような思いを覚えた。

 

 

 

 

 

 レオンハルトはつい三十分前まで、とてもリラックスしていた。

 ペールが作った料理も、多少胃が痛かったものの、食べ終えて、薬草を身体に塗るなどして引き続き治療を受けた。

 その際、何故か二人の視線というか手付きがぎこちなかったものの特に問題なくそれを終えたのだ。

 しかし問題は夜。時刻は既に十時を回った、というところで、

 

「――そろそろ、寝る時間だな……」

 

「ん、そうだな」

 

「あ、はい。お休みしますか?」

 

 その言葉に二人が頷いたのを見て、レオンハルトは身を起こす。

 少しばかりの痛みが身体に走るが、それを気にしないようにしながらベッドの脇から立ち上がると、

 

「れ、レオンハルトさん? どうかしたんですか?」

 

「……何か必要な物があれば取ってくるが?」

 

 こちらの行動を見て驚いたのか、二人が少し慌てたように引き止めてくる。

 随分と熱心に看病してくれてるな、というのを感じながら、

 

「……いや、ベッドを空けないとお前らが寝れないだろ?」

 

「…………え、あ、は、はい?」

 

「…………いや、それは……」

 

 レオンハルトの言葉にペールは戸惑ったように首を傾げ、ケッセルリンクは意味を理解したのか、眉を下げて言い淀む。

 そして続けて説明するように、

 

「俺は魔人だから寝なくても問題はない。お前達が二人でベッドを使え。俺はそこらで適当に――」

 

「――だ、駄目です!」

 

「――駄目だ」

 

「は……」

 

 言葉を遮るように、強い口調でそれを否定してきた二人に戸惑う。

 だが、

 

「……貴方は怪我をしている。それを放っておいて自分だけベッドで寝ることなど、私には出来ないな」

 

「そ、そうです! それに、寝なくてもいいって言ってもそれは平常時の筈です! ちゃんと睡眠を取ったほうが回復も早いんですよっ!」

 

「……と、言われてもな……」

 

 二人の言葉を聞いて、レオンハルトは困ったように息を吐く。そして背後のベッドを指差しながら、

 

「ベッドは一つしかないぞ? おまけに狭いしな」

 

 ベッドの大きさは大人一人が寝る分には一応問題ないが、そこに二人や三人が並んで寝ることは厳しい。

 いや、厳密に言えば出来ないこともないのだろうが、それだとかなり密着して入らなければならない為、少々よろしくないだろう。

 なのでそういう提案をしたのだが、二人は納得出来ないようであり、おまけに、

 

「ならば私達が別の……床にでも寝ればいい。それなら解決だ」

 

 そんな事を言う始末だ。なのでこちらも言わせてもらう。

 

「馬鹿言うな。女二人床に寝かせて、自分だけベッドで寝るとか俺は何様だ?」

 

「命の恩人様だ」

 

「……そうだとしても俺の居心地が悪いんだがな」

 

「それは私も同じだ。負傷の身である貴方を差し置いて寝るのは居心地が悪い。どうか我慢してくれ」

 

 ……こ、こいつ……さては、意外と頑固だな……!?

 俄然とそう言い切るケッセルリンクの瞳には、意地でも引かない、といった強い意思を感じる。使う場面を間違えてる気がする。ベッドくらいで意地になるのはどうなんだ。

 ……しかし、どうするか……。

 こいつが折れないと寝かせることが出来ないが、自分としても折れたくはない。

 そしてこういう時、いつもの連中なら楽なのになあ、と思う。ガルティアみたいな男だったら問答無用で叩き出すし、カミーラ相手なら差し出すし、向こうも遠慮なく占拠するだろう。キャロルやハンティなら床で寝かせようが一緒に寝ようが別に構わないし、喜んで差し出してくるだろう。ハンティは違うか。

 スラルなら……まぁ、なんとかなるだろうな。何となくそんな予感がする。

 と、そんな事を考えながら案を模索していると、不意に声が上げられた。

 

「…………あ、あの!」

 

「あ?」

 

「どうかしたかね?」

 

 意を決したようにそれなりの声量を出したのはペールだ。レオンハルトとケッセルリンクの視線が、ペールに向けられる。

 ペールは視線を浴びて一瞬だけ怯むも、直ぐに深呼吸をして気を持ち直す。そして恐る恐ると、

 

「――さ、三人一緒に寝るのはどうですか……?」

 

 と、こちらを見上げて様子を窺うようにそう言った。

 レオンハルトは半目になる。そして若干呆れた様に額に手を当て、

 

「……いや、お前……それはねぇだろ」

 

「な、何でですかっ?」

 

 どうにも舞い上がっているのか、妙に勢いよく聞いてくるペールに、レオンハルトは息をつき、それを理解するように努めた後に、その見解を声に出した。

 

「……まぁ、そういう提案するってことは、お前は俺と同じベッドで寝ても構わないってことだな?」

 

「は……はい……!」

 

「……それはいいとしてもだ。ケッセルリンクのこともちゃんと考えろ」

 

 そう。仮にペールが構わなくてもケッセルリンクの了承を得なければ駄目だろう。

 そしてそんなケッセルリンクに視線を移してみれば、案の定固まっていたため、彼女を手で指し示しながら、

 

「………………」

 

「ほら見ろ。お前の突拍子もない提案で、ケッセルリンクが呆れて声も出ないようだ――」

 

「――わない」

 

「…………あ?」

 

 と、不意に小声が聞こえた。

 聞こえにくかったのと、信じられない言葉だった気がしたため聞き返す。

 しかし、

 

「……今、なんて――」

 

「……か」

 

「か?」

 

 レオンハルトが復唱する中、ケッセルリンクは何故かこちらから目を逸らすと、微妙に顔を赤くしながら間を開けて、

 

「…………か、構わない……と、言ったんだ……」

 

「…………そ、そういうことですっ」

 

「………………」

 

 ペールまでもが今度は顔を赤くしながら焦ったように言う。レオンハルトは無言。そして表情を作らないまま頭を抱えて瞼を閉じると、

 

「……好きにしてくれ」

 

 考え込んだ末に、彼女の提案に乗ることにした。

 

 

 

 

 

 ――そうして、今に至る訳である。

 

 更に言うならこの体勢も、

 ……色々と考えた結果何だよな……。

 寝る前にベッドの配置を決めたのだ。

 まず、身体が一番大きい自分が中央に陣取り、左右に二人を配置する。

 その際に全員が横向きに寝ることで、スペースを出来るだけ確保する。仰向けやうつ伏せで寝ようとすると横に並べた時に自分の身体に押されるように左右の二人がベッドからはみ出る為、必然的に身体が重ねることになってしまう。

 簡単に言えば、二人が自分の身体に身を寄せることで不可能ではないのだが、それは色々と駄目だろう。

 なのでこういった全員が横向きで寝る形になっている訳だ。

 レオンハルトはその感想を思う。それは単純明快で、

 ……ま、そりゃあ女の匂いや感触がくるよなぁ……。

 こちらの鼻孔をくすぐる二人の髪の匂いや、身体の感触を感じてそう思う。

 二人とも背を向けているため、自分にとって一番好きな感触はこないものの、それでも有り体に言ってかなり気持ちがいい。

 ……こういう時、小説なんかに出てくる不自然なくらい初心な男だったら慌てふためくんだろうなぁ……。

 読んだ本の登場人物、主に主人公になぞらえてそんな事を考える。

 しかし、そうはならんだろ。と、取り留めのない意見が浮かんでしまう。

 レオンハルトは持論を頭の中に展開する。そもそも男ってのはこういった状況で慌てふためくことはない、と。

 男性が女性の身体に興味を抱く頃。おおよそ十四、五くらいからだろうか。

 はっきり言おう。――その頃の男は猿である、と。

 性に目覚めながら、性の経験が無い。ないしは浅い男の頭の中は、特殊な環境や目的を持って育った、などの条件がない限り、ピンク色なのだ。

 まぁ、初心は初心と言っていいだろう。しかし、彼らはそういった経験を貪欲に愉しもうとするものだ。

 こういった状況になれば、おそらく八割の男性は性欲に流される。性の誘惑に勝てる男性は、あまり多くはない。

 だが、それも性の経験があり、慣れているのなら、もしくは興味が薄いのなら誘惑にも勝ちやすいだろう。

 一定の年齢を重ね、そういった経験を順調に積み重ねていったのならば、理性も働くし、性を知っているが故に、性欲に負けることもない。

 故にこういったスケベシチュエーションで、慌てふためく人種というのは、現実にはあまりいないのではないか、という持論だ。

 現実に聞いたことも見たこともない為、そう思うのかも知れないが。なのでそういった純粋な男が居れば逆に見てみたいな、とレオンハルトは思う。その時は喜んでこの持論を破却しようと。

 さて、ならば自分はどちらなのかと言うと、

 ……俺は楽しみたい派ではあるけどなぁ……。

 ただ、幾分か女性というものを知っているのと、そこそこの年を重ねているため動揺することはないが、状況の範囲内で楽しむくらいの余裕は持ち合わせているつもりだ。

 なのでこの状況はむしろ気持ちいい分、ぐっすりと眠れそうだ。実際人肌、異性を抱いて寝るのはリラックス効果があると思う。

 城でもたまに、キャロルがベッドに潜り込んでくるが、時たま黙認して抱き枕にしてやってるのだが、大人しい時のキャロルは実に抱き枕に最適だ。

 ただ、うるさい時は騒がしく、というか妙に体温が高くて熱いので、ベッドから蹴り出す。何か犬みたいな奴だな。

 そして思うのは、

 ……というか、こいつらは落ち着いて寝られるんだろうな……?

 緊張して睡眠が取れない、とかならちょっと問題だ。

 レオンハルトは二人が今、どんな思いなのだろうか、と何となく疑問を持ちながら二人の体温を感じて安らいでいた。

 

 

 

 

 

 ……う、う、うああああああ――!? わ、わわ私、男のひ、人と一緒に寝ちゃってますよ――っ!?

 ペールは内心、狼狽えまくっていた。

 背中には、同じくレオンハルトの背中がぴったりと張り付いていて熱を感じる。

 彼女は、自ら提案したことながら、とんでもないことをしでかしてしまったと思った。

 それもこれも、

 ……う、うぅ……け、ケッセルリンク様と、い、一応自分の為にやったこととはいえ、流石に大胆すぎじゃ――。

 ペールは自分の想いと、尊敬するケッセルリンクの事を考えてそうした。

 それは確信に近い思いを、彼女に憶えた為であった。それは、

 ――ケッセルリンクは、レオンハルトに対し、自分と同じ想いを抱いているのだということ。

 彼女のぎこちない様子や、会話を見聞きしていれば、それは明らかであった。

 しかし、同じ相手を――という部分に対して、別に含むところはない。相手が尊敬する人物ということもあるが、カラー的には、同じ男性を共有するのは決して珍しいことではないからだ。

 なのでケッセルリンクを応援することは問題ない。何なら協力しようと思うくらいだが、

 ……け、ケッセルリンク様、多分、私よりも初心な気がするんですよね……。

 彼との会話での狼狽えっぷりは、自分の比じゃない気がする。それでも、表面上はぎりぎりのところで取り繕っているのはさすがと言うべきなのだが。

 しかしそんな彼女に何かを期待するのも厳しいだろう。向こうは男性ド素人なのだ。

 自分は一応、書物でこういった恋愛模様はよく知ってるし、一応彼と過ごした時間も数時間程度ではあるが、長い。少なくとも百年間男性経験がない前長よりはマシだろう。決して馬鹿にしているわけじゃない、うん。

 ……で、でも、どうしよう……。

 しかしペールは手詰まりを感じていた。

 というのも、背中に感じるレオンハルトは、美女二人(自画自賛)に挟まれているのにも関わらず、

 ……すごいなぁ……全然落ち着いてる……。

 書物の中では、こういった状況に陥った男性は狼狽えがちなんですけどねぇ、という思いを抱く。やはり書物と現実は違うのだろうか。

 ……というか、ちょっと体勢キツいです……落ちそう……。

 元々一人用のベッドに三人で寝ている為、足や手の先がはみ出るのは仕方ないのかもしれない。

 だが、そこで気づく。よく考えてみれば自分は、

 ……そういえば私、いつも左を向いて寝ていたんでした……。

 しかし今は右を向いて寝ている。なのでちょっとばかり違和感を感じてしまう。

 どうしたものか。と、そんなことを思っていたのだが、

 

「…………!」

 

 不意に、ペールは天啓が舞い降りる。

 というか別に最初からそうすれば良かったのではないか、とも思う。

 ……いや、でも……それは慣れる為にも必要でしたし……。

 なのでそのやり方は間違ってない。しかしここからは、

 ……よし。

 ペールは少し迷ったが、それを決めた。

 というか、単純に寝づらいですし、とそんな事を考えながら身を動かして、反転させると、

 ……え、えいっ。

 ベッドから落ちないように、レオンハルトの背に身を寄せた。

 

 

 

 

 

 ……お、おおおおっぱいが来た――!?

 レオンハルトは狼狽えた。

 こちらの背中で身じろぎしたかと思えば、背中に押し寄せられる質量と熱の塊。

 それが自分の背中で押し潰され、形を変えている。

 まごうことなき巨乳だ。素晴らしいものだ。

 しかし、だ。レオンハルトは頭を抱え、

 ……お、落ち着け……落ち着け俺……! 今ここで何かを――もとい、ナニかを行う訳にはいかない……!

 出会って一日で即同衾&合体では、さすがによろしくないだろう。貞操感なんてものはどうでもいいにしろ、無理やりは好きじゃない。

 問題がズレているような気がしたが、とりあえず落ち着くことにしよう。そう、平常心だ。

 自分はこの背中の巨乳――そう、その枕を背にして寝るのだと思えばいい。そうやって素直に楽しめば何とも思わない筈だ。

 レオンハルトはそう言い聞かせ、一度落ち着いた。

 

 

 

 

 

 ……な、ななな、何だ……!? レオンハルトが急に……!?

 ケッセルリンクは、ベッドの中で男と一緒に寝ることに身悶えていた。

 背後、何故かレオンハルトが身体をビクッと動かしたことで、振動がこちらの背中に伝わり、

 ……お、男の身体が……こうも熱く、堅いものだったとは……!

 およそ百年を生きてきたが、初めて知ったことだ。

 というより自分は、こういった知識や経験については皆無であることに今更ながら気づく。

 男性についての生態については見て知ったつもりでいたが、触れ合ったことはないし、そうしたいと思ったことは無かった。

 しかしこうしてみると、彼の身体の熱や堅さが妙に心地よく、その上で、

 ……も、もっと触れ合ってみたくなるのは……一体、何故だろうか……。

 そんなことを思ってしまう。先程から、彼の熱が移ってしまったのか、身体は熱く、鼓動はとても早い。

 そして自分の考えが、どうにもはしたない考えのような気がして顔を両手で覆ってしまう。男性と少し触れ合っただけで、更に興味を抱くとは、

 ……ひょっとして……私は、不埒な女だったのか……!?

 と、そんな危惧を抱いてしまうのだ。

 そうでないとしたら――

 ……あ――。

 ケッセルリンクはそこで、ある可能性に気づいた。

 自分や、そういった異性に興味を抱く女性を客観視し、分析した結果だ。集落のカラーがよくそういった想いに駆られることもある。

 だが、そんなことがまさか。

 よりにもよって自分に?

 そんなことを考え、ケッセルリンクは、

 ……確かめなくては……。

 自分の内面を見抜く為に、行動に出ようとした。

 やはり手っ取り早いのは何であろう、と考え、出てきたのは、

 

「…………」

 

 ケッセルリンクは身体を動かした。

 それは、レオンハルトに背中を向ける自分の身を、前面に向ける為であり、

 ……ん、こ、これでいいか……。

 ケッセルリンクはレオンハルトと向い合せになる。

 彼の胸に顔を預けるような形となり、

 ……い、いかん。物凄く、凄まじく……恥ずかしいぞ、これは……!

 確かめる為とはいえ自分は何をやっているのだろうか。

 しかし、ここまで来たのなら引き返す道はない。

 故にケッセルリンクは顔をそっと上げて、彼の顔を見上げる。

 そこには、

 

「――――」

 

「…………ぁ」

 

 レオンハルトがいた。

 暗い部屋の中ではあるが、夜目は利くほうである。その暗闇の中で、

 ……綺麗な、顔だな……。

 金色の滑らかな髪がある。鋭く紅い双眸は閉じられており、その鳴りを潜めている。顔の造形は整っており、男らしさがありながらも、美しさもある。

 視線を下に移動させれば、彼の肉体がある。女性にしては長身の自分よりも大きい背丈だが、身体は全体的に細身だ。しかししっかりと鍛え上げられているのは、筋肉の付き方や身体を触った時の硬さで大いに理解出来る。彼は剣士であるから、おそらく余計な筋肉は付けていない、もしくは付けないようにしているのだろう。肉体美と機能美が共存した良い身体だと思う。

 そして彼の身体には、包帯が巻かれており、そこには傷がある。

 ……この傷が、この身体が、私達を――私を、守ったのか……。

 そんな事を想い、彼の身体に身を寄せる。少し動いたような気がした。しかしそれでも構わず、身を寄せ、

 ……ああ、そうか。これが――。

 ケッセルリンクはレオンハルトの身体に抱きつくように身を寄せて、自分の内心を理解した。

 この身が焦がれるような、愛おしくなるようなこの気持ちが、

 ――恋、か。

 ここに至って、ケッセルリンクは全てを理解した。

 顔が熱くなるのも、鼓動が早くなるのも、思考が定まらなくなるのも、全部――レオンハルトのことを思っていたからなのだと。そしてそれを自覚すると、

 ……ああ……なるほど……これはマズい、な。

 ケッセルリンクは彼の首元に顔を埋めて恍惚したように息をついてしまう。

 恋心を理解してしまった瞬間、それに溺れてしまいそうな感覚に頭が支配される。

 集落を出ていく、そして帰ってくるカラー達はこんな想いを抱いていたのか。道理で、熱っぽくなり、視野が狭くなるわけだ。これから抜け出すのは至難の業で、

 ……いや、しかし……抜け出す必要は……。

 今までの考えが一新されそうな程に甘美だ。そんなことを考えてしまう程には。

 別にカラーは恋愛を禁止されている訳ではないのだし、別にそういった関係になっても構わない筈だ。

 そうなるには当然、相手の許可が必要となる訳だが、

 ……あ――?

 と、ふとそこで、ケッセルリンクは気づく。

 半ば、自覚した勢いから、どうやって彼の気を引こうか、などと考えてしまっていたところで自分の進退に気づいたのだ。

 それは、

 ……私、には……そういった時間はもうない……。

 自分は、既に長を辞し、後は変化の時を待つのみの隠居人。

 彼と関係を深める時間はもう殆ど残っていないのだ。今この瞬間にも、自分は自分で無くなる可能性があり、それを思うと、

 ……それは……嫌、だな……。

 と、自然にそう思い、彼の身に強く身体を寄せてしまう。

 今までは、いつそうなっても構わないと思っていたのに、こうなると急に未練が湧いてくるのだから度し難い。

 しかし現実問題、それは必ずやってくるもので、自分が幸いを得る為には色々と条件が厳しい。

 だから、

 ……ふっ、私は情けないな……。

 ケッセルリンクは思う。

 自分は百年も生きておきながらも男性を――いや、恋愛の一つも知らないで達観していたのだから。

 知ったつもりであったが、実は知らない事だらけであったのだ。これほど滑稽な事はあるまい。

 されど、

 ……せめて少しの間だけでも……悔いのないようにしたいものだな……。

 ケッセルリンクはそうして愛しい人の首元に顔を埋めると、そっと口を寄せて想いを呟いた。

 

 

 

 

 ……お、おおおおっぱいが増えたああ――!!

 レオンハルトは慌てふためいていた。

 背後からの巨乳に耐えて、そろそろ慣れたと思った頃に今度は前面から抱きつくように巨乳が来た。

 背中と同じ現象が、こちらの上半身で起きるのだが、

 ……こ、こいつ、何で身じろぎしてやがるんだ……?

 抱きついてきたのは百歩譲っていいとしても、その動きのおかげで、巨乳がどんどんと押し付けられて辛い。

 ――具体的に言うなら血が集まり、腰を引かなくてはいけないくらいには。

 レオンハルトは自分の身を呪った。

 ……ここまでしておいて、何もしちゃいけないんだよなあ……くそっ、どういうつもりだこいつら……!

 一瞬、マジで襲ってやろうかと思うが、その考えはすぐに切って捨てる。

 しかし幾ら何でも生殺しだ。せっかく好物が目の前――どころか後方にもあるのに食べてはいけない、とはどんな拷問だろうか。

 レオンハルトはしばらくの間、前後からの巨乳の飽和攻撃に耐えることとなり、睡眠時間をかなり減らすことになった。

 




スラル「あぁぁぁ――!?」

キャロル「むぅ、私も久々にレオンハルト様と一緒に寝たいですわー」

スラル「ちょ、ちょっと、これは駄目でしょ!?」

ガルティア「……いやまあ、寝るくらいいいんじゃないか? お前もやればいいだろ」

スラル「……えっ」

ガルティア「一緒に寝るくらいなら、あいつも普通に頷くだろ」

スラル「そ、そんなこと……したら……えへへ……レオンハルトが緊張して――」

ガルティア「…………(よーしよし、矛先はずらせたな。このまま妄想しといてもらうか)」

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