レオンハルトは、自分の部屋で昼食休憩を取っていた。
仕事が忙しい時や食堂まで行くのが面倒な時などは、自分の部屋まで食事を運ばせている。
つまり、大体いつもの事だ。こういったことが許されることが、幹部待遇である魔人の良いところだろう。
「――では、頂くか」
「はい、頂きますですわー!」
隣の机で同じ様に昼食休憩を取るキャロルと一緒に手を合わせて挨拶を行う。
今日の昼食は、大陸東産のそばに、こかとりすやイカマン、オホホウフフなど数種類の具材で使った天麩羅。薬味としてネギと胡麻、そしてレオンハルトが特に好む大根おろし、そして先日に幾つか取ってきたカラーの森原産のわさびが乗せられている。
レオンハルトは早速、箸でそばをつゆに浸して啜った。すると、
……相変わらず、良い仕事をしているな。
濃いつゆの味と、そばの風味を味わう。そのまま天麩羅にも箸を伸ばしながら思うのは、魔王城に常駐するコックの腕だ。
食事は人間のコックが作っているのだが、それがかなりの腕前なのだ。新しい食材を持っていけば、新しい料理や、既存の料理にアレンジを加えて別の味を生み出す上、要望にも限りなく応えてくれる。
今持ち上げたこかとりすの天麩羅も、自分が要望したものだ。サクサクして、ジューシー。旨味が衣の中にしっかりつまっているが、そば用なのか油は少量で味も主張しすぎない。上品な味だ。こかとりす好きの自分も大いに満足させる一品である。
……ふぅ、やっぱり仕事中の安らぎといえばこの時間だな……。
一日の大半の時間を仕事で占めている自分にとって、仕事中の食事は息抜きと楽しみとなるものだ。
特に誰とも関わらない状態で、静かに食事を取るのが素晴らしい。賑やかなのも嫌いではないが、一日に一回くらいは落ち着いた時間を取りたい。隣で、「美味しいですわー!」と声を上げているキャロルもいるが、これは許容範囲としておく。美味そうに食べてるし、汚い食べ方をしている訳でもないし。
と、レオンハルトは再び食事の手を進める。今度は薬味を摘み、それをつゆに落としながら、
「――ん?」
「あら?」
と、不意に、部屋のドアがノックされた。
使徒と二人揃って疑問の声を上げるのは、それが食事休憩中であるからだ。
同じ様に、城で仕事をこなす魔物将軍や魔物隊長にも食事休憩はあるし、自分達が食事休憩を取っていることは知っている。というか、食事の時間を中断させられるのはあまり好きではないので、緊急や急ぎの要件でなければ食事を終えるまでは訪ねてくるなと命じてある。いつでも来ていいとなると、食事を取れる時間が無くなってしまうのだ。もし来てしまったら仕事を優先せざるを得ない。自分には、魔軍参謀としての責任があるのだし。
故に、誰かが来たということは何か用事があるのだ。それも急ぎの。故にキャロルは立ち上がり、来客を迎えようと扉を開ける。自分も、一度箸を置いて迎える準備を終えると、
「今出ますわー……って、あら? ケッセルリンク様ではありませんの!」
「ああ、食事中にすまないな」
「……ケッセルリンクか。別にいいから気にするな。何か要件があるんだろ?」
訪ねてきたのは、魔人四天王の一人であるカラーの魔人、ケッセルリンク。彼女は入室してそうそうに食事中に訪れたことを軽く詫びると、こちらに視線を向けて、
「うむ……実は――」
ケッセルリンクはそこで言葉を一度区切る。
そして簡潔に一言、
「次の休みの日に――主とお出かけしてほしいのだが」
「…………あ?」
告げられたお願いに、あんぐりと口を開けてしまう。
それくらい、よく分からない言葉だった。
……主……って、スラルだよな……あいつとお出かけ?
それを何故ケッセルリンクが言うのかも解らないし、どうしてそんなことを頼むのかも解らない。故に確認の意味も込めて、
「……スラルと、俺が……出かけるのか? というかどこに?」
「その通りだ。スラル様から伝言を任されてな。どこに行くのかは任せる。それと――」
頷きを入れて質問に答えると、しかし、ケッセルリンクは再び言葉を止め、今度は少し頬を赤くした。
そして微妙に言いづらそうな様子で、更に衝撃的なことを口走った。
それは、
「――これは……スラル様からの…………で、デートのお誘いだ……」
「……………………」
今度こそ、思考が固まる。
そんなことを態々言いに来たのか、と食事を再開しようとしていた腕も止まり、そばがつゆの中に落ちる。
そしてしばしの間、頭で理解することが出来なかったが、やがて何とかそれを呑み込むと、
「……………………はぁ?」
……俺と、スラルが、デート?
「……………………マジで言ってるのか?」
こちらの言葉に、ケッセルリンクはただ一言。
「そうだ」
「……………………マジか…………」
レオンハルトは事実を認識すると、思わず息を呑み、何となく天井を見上げた。
思うのは、
……それはつまり……いや、でも――。
上手く頭が回らない。更に言うなら、混乱してるとも言える。
その原因は彼女にもあるもので、自分にもあるものだ。その原因を思うと、どうにも顔が熱くなってくる。
しかしどれだけ悩んでも、確実に、
……次の……つまり一ヶ月後の休みに……アイツとデート、か…………どうするべきだ……?
レオンハルトは、それに付き合わざるを得ないし、どうするかを考えなければいけなかった。
「……では、失礼する」
「あ、ケッセルリンク様! さようならですわー!」
「…………どうする……? どうすれば……」
要件を言い終えたケッセルリンクは、元気よく見送りをしてくれるキャロルに微笑で応え、そのまま部屋の外に出た。レオンハルトの方はどうやら、その余裕がなくなった様であり、頭を抱えたまま色々と呟いている。
だが、了承はしてくれた様なので構わないだろう。長居する訳にもいかない。故にそのまま、隣にある自分の部屋まで戻り、扉を閉める。
すると、
「――ど、どうだった……?」
早速、不安そうにこちらを見上げる主――スラルがそこにいた。
結果が気になって仕方がないのだろう、こちらが返事を返すより早く、
「もしかして……こ、断られたり――」
「いえ、大丈夫です。――快く受け入れてくれました」
「っ! ほんと!?」
答えを教えると目を見開いて再度の確認を取ってくる。どちらも二度聞いてくる辺りが似ているな、と微笑しながら、
「ええ。どういったデートにするか、かなり悩んでいました。彼も気にかけているのでしょう」
「ふ、ふぅ~ん? そっかぁ……」
彼の状態を詳細に伝え聞かせると、主は少しそっけない冷静な態度で偽るも、顔のにやけが隠せておらず、やがてどんどんと笑みが深くなり、最終的には、
「もうっ、レオンハルトったら……ほんとしょうがないんだから……えへへ……」
顔に両手を当て、嬉しさが溢れ出してしまったかのように、もじもじとし始めた。
断られると思っていたのもあって、嬉しさもひとしおなのだろう。しかし、ケッセルリンクに言わせてみれば、
……主の頼みや誘いを、レオンハルトが断るはずがないと思うのだが……。
断られた時にショックだし、そもそも直接言いに行くのが恥ずかしい、とのことなので代理を引き受けたが、前者の可能性は皆無に等しい。後者に至っては、その時が来れば更に恥ずかしいと思うのだがどうする気だろう。
と、冷静に考えてみたが、ケッセルリンクとて、
……これが私であったとしたら……。
冷静でいられるかは微妙なところだ。自分ははっきりと想いを伝えているので、その部分についての恥ずかしさはそこまで大きくないかもしれないが、彼と二人きりで出かけるとなると、それは中々心躍るもので、
「……楽しみですね」
「うんっ! レオンハルト、どこに連れてってくれるんだろ……」
「当日までのお楽しみかと」
そうだよねー、と、スラルはるんるんと鼻歌を歌いながらスキップし始めた。
……やはり、勧めてみて正解だったか……?
本当に只の少女の様に喜ぶ主を見ていると、自分のことの様に嬉しくなる。主も満足している様だ。
後の問題は当日。実際にレオンハルトがどんなことをするかという部分で、
……まぁ、レオンハルトなら大丈夫だろう。彼は、落ち着いて物事を進められる男だ。
加えて女性にも優しい、紳士的な男だ。きっちり主をエスコートして、そして満足させてくれるだろう。
ケッセルリンクはそのことを、微塵も疑っていなかった。
「――会議だ!! 今から今度の休日に俺が魔王様を連れて行く場所を今直ぐ考えろ!! どんなことをするかもだ!! 採用されたやつには俺が褒美を与える!! だが、何も思いつかない奴には休日に地獄のトレーニングを味合わせる! 喜べ! 魔人も即魔血魂間違いなしの昇天メニューだ! どうだ、気合いが入っただろ!? じゃあスタート――!!」
「畏まりました! でしたらまず――」
「レオンハルト様!? 恐れながら展開が早すぎます!!」
「というか仕事の話をするのでは!?」
会議室を使い、キャロルや魔物大将軍のリー。加えて麾下の主要な魔物将軍も集めたレオンハルトは、部下全員にそれを宣言した。
しかしキャロルは直ぐ様理解して提案をしたのに対して、大将軍に将軍たちは戸惑っていた。皆を代表して、大将軍リーが手を挙げ、
「魔王様と出かける場所を決めるとは、一体どういうことですか? ……もしや、次はどこを攻めるかという暗喩では……!」
おお、と魔物将軍が唸るも、それを即座に、
「違う! ただのデート的なやつだ! 遊びに行く場所を考えろ!!」
「え、ええっ!?」
「し、仕事は……?」
「魔王様の命令以上に重要な仕事なんてねぇだろうが!!」
「うっ、それは確かに……」
その答えに納得の色を見せる魔物将軍達。しかし普段と気色が違いすぎる議題と、レオンハルトの様子に及び腰となる。
だが、そんな中、
「……う、うむ。遊びに行く……つまり、楽しませる場所を考えればよろしいのですね?」
大将軍リーが気を落ち着かせる様に咳払いをしてから、冷静に質問する。どうやら気持ちを切り替えた様だ。
やはり年長は違うな、と思いつつ、レオンハルトはその疑問に対し笑みを見せ、
「その通りだ! 冴えてるな!」
「あ、ありがとうございます。でしたら――」
と、レオンハルトの賛辞を丁寧に受け取りつつ、提案を口にしようとした時だ。
「むっ、……わたくしにいい考えがありますわ!!」
「あっ、ちょっ――」
大将軍リーの言葉にかぶせる様に大声を出しながら、キャロルが手を挙げる。邪魔をされてしまった大将軍が声を上げようとするも、キャロルが押しのけるように前に出て、強引に、
「スラル様は本がお好きなので、人間の町の図書館に行ってみてはどうでしょう!?」
言い切った。なるほど、確かにスラルは本が好きだ。毎日読み耽っているし、詳細は知らないが自分でも本を書き残すほど。
しかしそれは、
「――却下だ! というか俺達が人間の町に入ったらそれどころじゃねぇだろ!!」
「あっ、それもそうですの……」
言われて気づいたキャロルがしゅんとする。
確かに、自分やスラルは、見た目こそほぼ人間ではあるが、その存在感やオーラが違いすぎる。特にスラル。自分はまだ、気配を隠してみれば何とかなるかもしれないが、魔王であるスラルはそうはいかない。この城の者や身内は慣れていて感覚が麻痺しているが、普通の人間がスラルと遭遇したら、普通は卒倒する。そんな状態ではスラルも楽しめない。
なので却下だ。しかし、次に大将軍リーが手を挙げると、
「……では、占領下の町を使うのはどうでしょう? それなら人払いも容易ですし、気兼ねなく町を使えますが……」
「……悪くはない。――が、却下だ」
「それは……」
大将軍や将軍達が疑問の色を見せる。それも当然だろう。
占領下の町なら、魔物であっても気兼ねなく使える。確かにそうかもしれないし、一見悪くない提案だ。しかし、
……それも結局、スラルがそれどころじゃなくなっちまう。
そう。人間を襲うことを、あまり快く思っていないスラルに、人間が虐げられた痕跡を見せるのは彼女を複雑な気分にさせるだろう。
だが、それを口にはしない。代わりに別の理由を言う。それは、
「占領下の町とは言っても遠すぎる。魔王様は遠征を好まないし、出来れば近場の方が都合がいいからな」
「ああ、なるほど。それもそうですね」
「ふふん、却下されましたね……! これで一勝一敗。ですが私の方が勝ち点は多いですわ!」
いつの間にか勝ち点制に!? と大将軍が絶句するも、こんなのはいつもの事だ。ライバル同士でお互いを高め合うのは良いことだし、放置。独り相撲にも見えるが気の所為だろう、多分。
それよりも、
「他に何かないか!」
「……でしたら、近くの野原でピクニックなどはどうでしょう?」
とある魔物将軍が挙手しながら言った。それは、
「……今の所一番良いな! その案は候補として一旦保留!」
「あ、ありがとうございます!」
「まさか、思わぬ伏兵が……! くっ……!」
キャロルが魔物将軍を睨む。しかし、魔物将軍はさっと目を逸らすことで逃げた。トレーニング回避確定と、褒美に一歩近づいたことで魔物将軍も強気になっているのだろうか。飴と鞭はやはり効果的だな、と自分の采配は間違っていないことを確信する。
そして続いても、魔物将軍から、
「はい! ここは敢えて、城の中で何かサプライズを用意して楽しませるのはどうでしょう!?」
「それは最終手段だ! 俺としてはそれを選びたいが、魔王様はあくまでも出かけることを望んでいる! なので保留!」
「くっ……わかりました」
魔物将軍が苦悶の声とともに引き下がる。すると再び、別の将軍が勢いよく、
「では、ピクニックよりも更にアウトドアな方向で行きましょう! 外でバーベキューなどをして楽しんでは!?」
「おお! 悪くない、悪くないぞ! 確かに目的もなくただピクニックするよりは良いかもしれない! 保留!」
「ありがとうございます!」
「き、貴様……! 私のピクニック案を潰したな……!?」
「馬鹿め……! 魔物社会は実力主義だからな……お前より私の案が優れていただけのこと……!」
何やら魔物将軍達が火花を散らしている。競い合うのは良いことだ、とそれを流すと、更に、今度は大将軍が、
「……ですが魔王様はもうちょっと落ち着いた雰囲気が好みかもしれません。ここは外で釣りをしたり、花畑で花を摘んでみたり、最後は丘で星空を眺めて過ごすなど、ゆっくり落ち着いた楽しみを提供しては?」
「……おお! 確かに良い案だ! その方が魔王様も楽しめるかもな……!」
確かに良い案だ。それに感心して候補に加えると、将軍達とキャロルが、
「リー様! 私達の案を奪わないでください!」
「しかも、同時に複数の案を……!? くっ、これが将軍と大将軍の差なのか……!?」
「ぐぬぬ……小癪ですわ……! さすがは七星と並ぶわたくしのライバル……!」
「……悪く思うな。これも会議だ。私は案を出しているに過ぎん」
極めて落ち着いた物言いで言い返す大将軍に、ぐぬぬと歯を食いしばるキャロルと将軍達。
それを確認すると、周囲を見渡しながら、
「もうないか!? ないなら――」
「はい!」
発案を打ち切ろうとした時、キャロルが挙手をした。
故に彼女を見て、それを許可する。
「よし、何だ!」
「はい! わたくしが提案するのは――」
そこでキャロルは一息。気合いを入れて、それを発案した。
「スラル様とレオンハルト様専用のデートコースを、今から作成しましょう!!」
……それは――って、ん?
「……デートコースを、作成……?」
「んん……?」
その言葉に自分だけでなく、将軍達も首を傾げてその言葉の意味を考える。作成とはどういうことだろうか、と。
その沈黙を受けてなお、キャロルは手応えを感じているのか、胸を張って自信に満ちた表情になると、
「こうみえて、わたくしは人間の町によく出入りしますわ! なので、お決まりの娯楽や、どういったものが好まれるかを熟知していますの!」
「……それで?」
「はい! つまり、その知識を活かして、デートに最適な施設を作り上げてしまえばいいのですわ! 具体的には、劇場であったり、塔のような高い景色が見渡せる場所であったり、食事の屋台や、ちょっとした娯楽施設などなど――」
と、キャロルは、自分が知る限りの人間の娯楽を羅列していった。それを、将軍達とともに聞き入る。
だが、レオンハルトとしてもそれは、
……そういった普通のデートが難しそうだから悩んだんだけどな……。
そう。最初はそれを考えた。考えたが、人間の町に行く訳にもいかないし、魔物の町などにそういった施設はない。
しかしお出かけを楽しみにしているであろうスラルに、普通のデートを提供しては男として恥だ。なので魔物将軍達を集めていい案を募ろうとしたものの、
……それは最初から無理だと――
故に諦めていたのだが、
「作る、か……」
そのことを思案する。
次の休みの日まで、一ヶ月近くある。その期間と、魔軍の資材、そして魔物兵による人海戦術を使えば、
「…………いける、のか……?」
半信半疑で呟く。
すると議場の皆がこちらに視線を向けており、
「どうでしょうか、レオンハルト様!」
「…………」
キャロルが言い切った後に確認を求めてくる。そのことを考え、
……確かに、ピクニックやアウトドアでもいいだろうが――
と、レオンハルトはしばらく目を閉じて思案する。そして、ある事を思い、決定打を見つけると、勢いよく机を叩いて、
「――よし、それで行くぞ!」
「ええっ!?」
「わーい! わたくしの勝ちですわー!!」
決定を告げると、キャロルが飛び跳ねて喜び、将軍達が驚きの声を上げる。
その中で、比較的冷静な大将軍が、こちらを向いて、
「し、しかし、本当に作れるのですか? 色んな意味で……」
うんうん、と将軍達が頷いている。しかしそれを跳ね返すように、
「……いや、いける! 確かにギリギリだが、この軍の人員を使って今から取り組めば……何とか出来る気がするぞ!」
「ほ、本当に大丈夫ですか?」
大将軍が重ねて問う。しかしそれに答えたのは、キャロルで、
「あら、自信がありませんの? それはいけませんわ! わたくし達は魔軍一の精鋭たるレオンハルト様の軍ですのよ! 貴方も大将軍なら、もっと自信を持つのですわ!!」
「し、しかし……」
「わたくし達を誰だと思ってますの! やれば出来る! 為せば成る! レオンハルト様に仕えるわたくし達の辞書に、不可能という文字はありませんわー!」
「…………」
キャロルが勢いで言うと、大将軍リーは沈黙してしまう。
しかし、ややあって顔を上げると、
「……了解しました。ならば、今直ぐ計画を煮詰めましょう」
「だ、大将軍閣下!?」
リー大将軍の言葉に将軍達が戸惑いの声を上げる。だがそこで、リー大将軍は彼らに落ち着いた、しかし熱さが垣間見える声で、
「ここまで言われて引き下がっては、無敗を冠する我が軍の名が泣こうぞ……! 任務を任せられたのなら、レオンハルト様の名誉にかけて、それを完遂するのみ……!」
「よく言いましたわ! それでこそわたくしのライバルですの!」
「……リー様……」
「大将軍閣下……」
将軍達が大将軍の言葉を受けて、その瞳に熱が籠もっていく。そのやり取りを一通り眺め、
……微妙に大事になった気がするが……まぁ、いいだろう。
うちの軍は任務を絶対に遂行させる優秀な指揮官が多い。後、戦闘狂と堅い奴も。これも個性だろうか、一体誰に似たのかと思いながら、
「――では、これより作戦を開始する! 各員、作戦遂行の為に、奮励努力せよ!!」
「畏まりましたわ!」
「承りました!」
「おお……!」
魔軍参謀として真面目な号令を掛け、キャロル、大将軍、将軍達とで気合いの声を上げる。それを満足そうに眺めて、
……一ヶ月後。それまでが勝負だ……!
レオンハルトは当初の悩みも忘れ、謎の使命感と責任感で、絶対に成功させると息巻いた。
――こうして、魔軍最精鋭の軍団であるレオンハルト軍は、一ヶ月後の“デート”の為の任務に、全力で取り組むこととなった。
ガルティア「何だこいつら、戦争でも始める気か?」
ケッセルリンク「大事になっているな……」
ハンティ「この場にいなくて良かった……」
キャロル「古来より、デートは戦争と同義ですのよ! 生きるか死ぬかの戦いですわ! ならこれくらい真面目でもおかしくありませんわ!」
ますぞゑ「…………」
ハニ子「うふ、ますぞえ様も、そうだよ(便乗)と言っています」
ハンティ「あっ……あんた達はそっち側に付くタイプなんだ……」