魔王城、スラルの私室では二人の男女が無言で過ごしていた。
魔王スラルと、魔人レオンハルトだ。彼らはお互いにソファに座った状態でそれぞれ別の本を開いている。二人の間に会話はない。というのも、
「…………」
「…………」
――気まずい。
レオンハルトは本に目を通しながらも、スラルの方を気にしていた。ケッセルリンク経由でデートに誘われ、そのための準備に時間を費やす。それはいいのだが、
……よくよく考えたら当日まで、こんな感じで過ごさなきゃならねぇのか……!
内心頭を抱える。よく考えなくても解る事だ。
自分は殆ど毎日の様にスラルの部屋を訪ねている。仕事で忙しすぎる日や、遠征中は当然それはないが、出来る限りは行くことにしているのだ。
故にこうなることは必然だった。スラルがデートに誘ってきた段階でこうなることは。彼女の方も解っている筈だと思ったが、先程から視線をチラチラと本と自分の方に行き来させているところを見るに、彼女にとっても想定外だったのだろう。最初に気づけ。
……ほんと、どういうつもりだ……?
解る様で解らない。彼女がどうしようとしているのか。
それも一ヶ月後になれば解るのだろうか。しかしながら、今は、
「……ん」
「っ!」
わざとらしく本を閉じて、伸びをすると、スラルも解りやすく肩をビクッとさせて反応した。
そんな彼女に向かって視線を逸しながら、
「……あー……今日は仕事も溜まってるからこの辺で戻るかな……」
と、あくまでも軽めに言う。何も気にしてないと言った風に。
するとスラルが本から顔を上げるも、視線を斜め上に向けて、
「そ、そう。仕事ならしょうがないわね……」
「ああ……仕事だからな」
「仕事だもんね……」
会話がぎこちない。いつもならここから会話が二転三転して、部屋を出るのに延長が設けられるのだが今日はそういうのを言い出す空気でもないし、自分としても言い辛いものがある。
何とも言えない沈黙の時間が数秒続くが、その空気を強引に振り払うように声を出す。
「……それじゃあな」
「! ま、待って!」
「……何だ?」
と、部屋を後にしようとしたところで慌てたようなスラルの声。何故引き止めたのか、よく解らないまま一応振り返ると、
「……そ、その……あの……」
「…………」
視線を斜め下に向けながら、迷っているのか口をもごもごとさせながら身体を揺らすスラル。
その様子に何とも形容しがたいむずがゆい気持ちになる。そんな彼女を見ているとこっちまで恥ずかしいというか、戸惑ってしまうというか、今直ぐここから離れたくなるが、
「……れ、レオンハルト……あ、あのね……」
スラルはやがて、戸惑いつつもこちらを見上げて、
「…………デート――楽しみに、してるから……」
「――――」
その言葉を聞いた瞬間、身体の何かが駆け巡った。
ドクン、と鼓動が跳ね、身動きが止まる。しかし、
「よ、要件はそれだけ! じゃあおやすみ!」
「……あ、ああ…………」
顔を真っ赤にしたスラルがこちらを部屋から追い出す勢いで言ったので、こちらはそれに従う様にゆっくりと外に出る。
扉が閉まり、そこから何気なく数歩歩いて部屋から遠ざかる。殆ど無意識の行動だ。
しかしそこで、壁に背を預ける。そして自分の胸に手を当ててみると、
……早い、な……。
何がとは言わない。ただ、それは強く、早くなっている。
身体が熱く、転げ回りたくなるような衝動が、胸の内で暴れ狂う。
頭の中では、先程の彼女の言葉、表情、仕草を詳細にイメージし、それを反復しており、
「…………スラル」
意味もなく、名前を呟く。すると胸の内の衝動が強くなり、耐えきれず頭を右手で抑える。
そして前髪に指を通しながら掻き上げ、同時に上を見上げる。
仕事があるのは本当で、早く行かなければならない。少なくとも理性はそれを訴えているのだが、
「…………スラル」
本能では、彼女のことを思っており、
……何だろうな……。
強く思う。先程の彼女を思い浮かべる。
その感想は、
「………………可愛いかったな……」
と、言ってしまい、
「――っ!」
……今、口に出したか!?
言ってからどうしようもなく恥ずかしい気持ちが湧き上がる。周りに誰もいないとはいえ、こんなところで先程の様な、
「……っ、ああ、クソ……!」
頭を掻き毟るように手を動かすと、自分への悪態をついて鬱憤を晴らす、
しかし先程の想いは消えておらず、
「くっ、とにかく、今は仕事に行くか……」
そうすればこのむず痒く恥ずかしい気持ちも収まるだろう、と、レオンハルトはその場を後にした。
――現場は既に、戦場と化していた。
「急げ急げ! どれだけ必要になるか解らんからな! とりあえず片っ端から運べ!!」
「図面は出来る限り早く、そして正確に引くように! とりあえず何にでも使えそうな建物から作りますわよ!」
「この一帯は整地、こことここは一旦掘り起こせ! 細かい部分は現場担当者の魔物隊長に伝えてある!」
「は、はいっ!」
夜が深くなる頃。
篝火で辺りを照らしながらレオンハルト軍の面々が作業を行なっている。
その数――およそ20万。
常駐するレオンハルト軍の全軍が集結し、平原での作業を開始していた。
レオンハルトの使徒であるキャロルによる発案から、どれを採用するかの会議に数時間。その間に魔物兵を招集し、それぞれの担当者を決めたら直ぐに平原に出て作業開始。
その多くは資材班、設計班、土木班に別れ、建築作業は先に骨組みだけを作らせ、整地を終えた場所から順次建てていく。その際に資材だけは常に運び続け、それらを司令部が纏めて指示を出していく。
作業は一日中行うが、それぞれの担当班を更に三つの組に分けて一日八時間の交代制で作業をさせる。人間を越える体力をもつ魔物達なら一週間くらいであれば徹夜で作業することも不可能ではないが、それが一ヶ月となるとさすがに無茶であるし、作業効率も落ちる。そもそもレオンハルト軍ではそういった休息はしっかり取らせなければならないことが決まっている。率いるレオンハルト自身がそういったことに厳しいからだ。
魔物将軍以上は魔物兵以上に働き詰めになるだろうが、それくらいで弱音を上げる者など将軍の中には存在しないし、任務となれば使命感に燃えて全力を尽くすのみ。どんなことであろうとだ。
そして最後に、完成予想図は人間の町で特に印象に残った部分を組み合わせて、華やかなものにするつもりだ。その図面はキャロルが書いている。どうにも記憶力が良いのか、町の外観を憶えているだけに飽き足らず、普段から様々な物づくりに挑戦していることから妙な素養があるらしい。
そんな中、作業現場に到着したレオンハルトは、
「――やってるみたいだな」
「あ、レオンハルト様! こっちですのー!」
紙束を左手に持って指示を出していたキャロルが手を振ってこっちに来てほしいと示してくる。レオンハルトがそれに従って正面まで行くと、
「では恐縮ですが、早速こちらの石をこの形に斬ってほしいですの!」
「ああ」
キャロルが指し示す場所には、魔物兵達が運んできた巨大な岩が鎮座していた。
その岩を、レオンハルトは魔剣で指示通りに斬っていき、石材を作っていく。柱や建物の土台に使うものや、木だけでは限界がある建築物の資材となるものだ。
使徒の指示を受けて、魔人自らが作業をする奇妙な光景だが、これはレオンハルト自身が望んだことなので問題はない。
むしろ魔人自らが作業に参加していることで、周囲の空気が引き締まる。
魔物兵にしてみれば多少面倒な作業だが、魔王様の為に、魔人筆頭が直々に命令したことだ。それに否応はない上、ここに出来る施設は、完成したら自分達も使わせて貰えるとのことで気合いが入っていた。良くも悪くも単純なのである。
そんなこんなで作業は夜通し行われ、時折交代が入りながらも延々と行われた。
レオンハルトとキャロルは通常の魔軍の業務もあったが、魔人や使徒は休息を必要としない。故に一ヶ月の間は、ずっと起きていることになるが問題は無かった。
作業は順調、ところどころ問題が起きることもあるが、逐次修正を入れながら改善していく。人間よりも膂力のある魔物兵らは、力仕事に於いて多いに役に立ち、完成までのノルマを着実にこなしていった。
その間、問題といえばレオンハルトの内心くらいなもので、その他については問題ない。
時折、協力者を集めて予行演習を行いつつも、肝心の本番の計画も練っていき、
――そして。
一ヶ月の準備期間。それを終えたレオンハルト達の前には、
「――終・わ・り! ましたわー!!」
「――ああ、完成だ……!」
――町が完成していた。
朝日が昇る中、完成した町を目の当たりにしたレオンハルト軍の者達は、達成感と感動から声を上げる。
近く、やってきた大将軍リーが、感嘆を滲ませた声色で、
「やりましたね、レオンハルト様……!」
「……ああ、やったぞ……! 俺達は、やり遂げた……!」
「やりましたのー! 最強ですのー!」
「うおおおおおおおお!! 俺達の町だ――!!」
同じく達成感に包まれていたのでお互いに手を叩いて喜びを分かち合う。キャロルも混ざってハイタッチをしつつ、将軍達もハイな様子で雄叫びを上げる。
「レオンハルト様、打ち上げをしましょう! 完成記念ですわ!」
「ああ、それはいいな! 準備した食材も余っているし、このまま――」
と、言ったところで、レオンハルトは我に返り、
「いや、それは今日という日を終えてからだ! 終わった後、記念の宴会を開くぞ!!」
そう。今日はデート当日の朝。
お昼に時間を指定しているので、今から準備しなければならない。作業は基本的に滞りなく進んではいたが完成はギリギリであった。
なので打ち上げはおあずけ。とはいえ、レオンハルトのその言葉に、魔物兵達は、
「おおおおおおおお!! 夜には宴会だ――!!」
「豪遊してやるぜえ――!!」
単純に喜んでいたので問題ないだろう。
その気を引き締めるように、将軍達が号令を掛け、
「では、役割がある者達は持ち場につけ! 何もない者は夜まで休憩だ!」
「今日が終わればお前らの大好きな宴会だぞ! ここの施設も使い放題だ!」
「はっ! 了解しました!!」
その言葉で魔物兵達が散っていく。それを目にしながら、大将軍が続けてこう言った。
「それでは、レオンハルト様。後は本番を成功させるだけです。――ご武運を!」
「ああ……お前も、ご苦労だったな……!」
「いえ、やりがいのある任務でしたので、苦労はありません!」
「……ふっ、そうか」
その言葉に笑ってしまう。真面目な奴め、と軽く小突きながら、レオンハルトはしかし内心を引き締め、
……とはいえ、ここからが俺にとっての本番だからな……!
色々と不安要素は自分の中にあるものの、ここまでやって失敗したではここまで作業をしてくれた部下達に申し訳が立たない。故に、
「何としても、成功させてやる……」
何をもって成功とするかはよく解らないが、とりあえず楽しませてやれば問題ない。
手段と目的が入れ替わっている気がするが、スラルを楽しませる目的は見失っていないのだ。
そうして正午12時。
レオンハルトとスラルの決戦の火蓋が、切って落とされた。
魔王城から北側。今まで何もなかった平地には、一つの町が出来上がっていた。
外壁で囲まれた建造物の群れ。町の入口から一本の線で繋がる大通りには、様々な出店が立っている。その出店では、様々な料理を提供しており、既に店の用意を終えた魔物兵達が待ち構えている。
大きな噴水と時計塔のある広場には、キャロルが人間の町を見て参考にしたお洒落かつ重厚な建築物が建ち並び、町の景観を整える。
大通りにある施設はどれも大規模なものであり、演劇場やコロッセオ、何やら遺跡のような建築物まで様々である。普通の家らしきものや、倉庫らしき物も多数存在するも、その殆どは娯楽の為のものであり、延いては魔王を楽しませる為に作られたものだ。
そんな中、町の中心である噴水広場には、一人の少女がいた。
魔王スラルだ。
彼女はその場所で待ち合わせする様に言われてやってきたのだが、一ヶ月で作られた大規模な町の姿に、驚きで口を開けながらここまでやって来ていた。
デートの緊張も忘れ、それに見入っていたスラルだったが、今は少しだけ落ち着いて噴水の縁に腰を落ち着けている。
しかし落ち着くと、それはそれで緊張がぶり返してきたので、今度は違う意味で頭を悩ませていたが、何となく前を見て、それに気づいた。
周囲には、店を構える魔物兵の姿があるが、意図的にスラルの方を見ない様に、そして近づかない様にしているのだが、そんなスラルに近づく者がいた。
それは、ダークグレーのコートを着た金髪灼眼の男。
彼はスラルが気づいたことにも臆さず、彼女の前まで確かな歩みで近づいていくと、一言、
「――悪い、待ったか?」
「……う、ううん。今来たところ」
スラルが戸惑いがちに言葉を交わす。ここしばらく、あまり言葉も交わすことなく、部屋に来ることもあまりなかったので、お互いに久々といった感じだ。
そのため、彼の姿を見てかなりドキッとしたスラルだが、それを加速させる様にレオンハルトは手を差し出し、
「……それじゃ、行くぞ」
「あっ……そ、そ、そうね……!」
自然にこちらの手を握ってくる。その瞬間、スラルの内心は荒れ狂った。
……あ、あああああ!? 手握られちゃったああああああ!? いや、普通だけど!! したことないわけじゃないけど!! な、何か駄目かも――!!
レオンハルトの行動に狂乱したスラルは、平常心のつもりで素っ気なく対応しようと努力しながら、彼を思う。
そもそも、
……というか、で、デートの為に町を作るって馬鹿なの? こ、こんな、私の為にこんな……。
いや、嬉しい。嬉しいが馬鹿だと思う。どこの誰が魔軍最精鋭の軍団をデートの為の街づくりに投入するのか。
確かに、ケッセルリンクへの相談からデートに誘うことになったのは良いが、後から考えてみるとどこに行くの、どこに行けるの? となったものだ。近くにデートスポットの様な町がある訳でもないし、観光出来る様な物珍しい場所もない。
なので色々と考えた結果、ピクニック的な感じになるのかな、と思っていた。それもまあ、雰囲気出そうな上、落ち着けそうなので結構いいかも、と考えていたが、
……まさかここまで斜め上の用意をしてくるなんて……!
やっぱ馬鹿だ。嬉しいけど。嬉しいけど後で文句を言おう。言いたくはないけど誰かが言わないと駄目な気がする。
そんなことを考えていると、
「……ん、あー……スラル?」
「……ふぇっ?」
「…………だ、大丈夫か?」
「あ、だ、大丈夫! 大丈夫だから、な、何!?」
急に話しかけられたことで変な声を出してしまう。急に体温が上がった気がするが、それを取り繕う様に声を上げる。今、明らかに変な人になっていないだろうか、と不安になるも、レオンハルトはそこまで気にした様子もなく、頷き、
「その、だな。今日は俺がこの町を案内したいんだが、それでもいいか? いや、お前が見て回りたいって言うなら好きにしてもいいが、出来れば俺が色々と……エスコートしたいんだが……あ、いや、されるのが嫌なら――」
「……? う、うん。それでいいけど……」
何だかそのままエンドレスに続きそうだったので直ぐに了承する。この町の事を知ってる訳じゃないし、彼にも彼の考えがあると思う。それ即ち、
……れ、レオンハルトが、エスコートしてくれる……!
と、内心で反復するとそれだけでニヤけそうになるから困る。それを隠す為に顔を背けるが、変な感じになっていないだろうか。今日は色々と気合いも入れてきたので、変な感じに思われたくないのだ。
しかし、
「っ、……スラル?」
「な、何……?」
名前で呼んできたので返事をする。すると、
「……今日の、お前――」
「え、何?」
今度は少し不安になりつつ聞き返す。今日のお前変だな、とか言われるのではないか、と疑心な気持ちでレオンハルトの方を向くと、同時に、
「…………………………か、かゎぃぃ、な……」
「…………へ?」
今、何と言ったのだろうか。
耳に聞こえてきた彼の小さな声は、
……可愛いって……言った……?
まさか、と思う。しかし耳に届いたのは確かにそんな言葉で、鼓動が滅茶苦茶早くなってるから多分それは本当に言ったことで、更にはレオンハルトの方も言った途端、こっちから顔を逸して表情を見えなくしてるし、段々と彼と繋いだ手が熱く――
「――あ」
そうして、かろうじて出た言葉は、
「……ありがとう……」
「…………あ、ああ」
お互いに顔を背けながら言い合う。顔が見れない。というか、
……頷いたってことは、本当に言ったってこと……。
あのレオンハルトが、私のことを。
仕事や戦いのことばっかり考えてるレオンハルトが、私のことを。
巨乳好きで、ちょっと真面目だけど馬鹿で、可愛いところがあって、何だかんだ頼もしくて格好いいレオンハルトが、私のことを。
そう思うと、
「~~~っ!!」
顔が熱くなる。というか叫びだしたくなる。多分だが、自分でも顔が赤くなっているのが解る気がする。それも、
……い、いきなりそんな事言うのは……ず、ずるい……!
彼の所為だ。
デートが始まっていきなりそんなことを言うなんて何を考えているのだろうか。今まで一回もそんなこと言ってきたこともないのに。よりにもよってこんな時にだ。
やっぱり文句が言いたい。嬉しいけど。何で急に嬉しいことばかりやってくるのか。
……ヤバイかも。ちょっとこんな調子じゃ、普通に出来ない……!
レオンハルトに変だと思われるかもしれない。考えがループした気がする。でも、変じゃなくて可愛いって言ってくれた訳で、
「……はぁ、スラル」
「! な、何!?」
また考えの途中に声を掛けられたので、つい大声で返してしまう。
しかし彼は、息を吐いて、何を思ったのか、少し落ち着いた様子で、
「……とりあえず、今日はお前と楽しもうと思う」
「……う、うん」
嬉しいので目を逸らしてしまう。だが、彼はそれでも構わず、だから、と台詞を続けると、
「少しだけ、落ち着いてやることにする。じゃないと埒があかなそうだしな……だから、お前も、出来るだけ素直に楽しんでくれ」
「――!」
「俺も、出来るだけそうするようにする。――と、そういうことだ」
言うと再び彼は顔を背ける。
しかし先程までとは違い、顔を反対に向けるのではなく、正面を向いたものだ。
それは彼の意思を表しており、
……それは。
思う。彼は、こちらから顔を背けることをやめるのだと。
それはつまり、
……私と、向き合った上で……一緒に楽しんでくれる……。
多分そういうことだ。
となると、彼の言うこちらもそうしろと言うのは、
……私も、彼と向き合って……。
その上で同じ様に楽しめ、とそういうことだ。
彼も私も、どこかそういった事を避けていた節がある。それは自分でも解っていた。
きっと彼も、同じ様なことを思ったのだろう。そこから進むことを避けていたと。
ならばその発言は、今までの関係からの脱却を示唆するものだ。
そこから逃げない。遠慮しない。その上で楽しみ、自分の中の気持ちに決着をつける。
……覚悟を決めなきゃ……。
改めて思う。元より今日はそのつもりで来たし、そのつもりで今日のことを計画したのだ。
だから、その一歩だ。
勇気を出して自分の想いに踏み込む。その一歩として、
「……レオンハルト」
「……何だ?」
言って、返事は行動で起こす。
それは、こちらの右手を握る彼の手を改めて繋ぎ直すもので、
「……で、デートなら、こういう繋ぎ方の方が良いかなって……」
「――――」
彼の指とこちらの指を、絡ませる様にして改めて手を繋ぐ。
すると一気に距離が近くなった様な気がして、
「……ま、そうだな……ただ――」
言う。多分同じ事を思った。
それは、
「恥ずかしいな、これ……」
「うん、凄く恥ずかしい……」
手の感触が、距離が近くて恥ずかしい。思わず手汗が滲んできそうで恥ずかしい。
だけど、
「……このまま行こっか」
「……そうするか」
――恥ずかしいけど、嫌じゃない。
そう思って、レオンハルトは自分を引っ張っていった。
私は彼についていった。
新しい関係を始める一歩として。
「――ま、今日は色々と楽しませてやるよ」
「――ええ、色々と楽しませてね?」
――二人で、初めてのデートを楽しもう。
……活動報告にさり気なく、魔人レオンハルトのプロフィール乗せときます(小声)