夕日に照らされた町がある。
そこはレオンハルトが、スラルとのデートの為に自軍を総動員させて作った魔物の町だ。
その中心にある噴水広場。大通りに連なり、待ち合わせにも使われたその場所に、再び二人の人影があった。
スラルは噴水の側にあるベンチに座ると、大きく伸びをしながら、
「んー……! 本当に色々あったなぁ……この町」
「疲れたか?」
レオンハルトが聞く。ここまでほぼ全ての施設を回らせたのだ。さすがに忙しなかっただろうか、と少し不安になる。
しかしスラルは首を横に振りながら、苦笑をレオンハルトに向け、
「疲れてはないわ。ただ、色々と目移りしてはしゃぎすぎたかも。――楽しかったから」
「ん……そうか。それなら良かった」
「うん、とっても良かった。レオンハルトと、頑張ってくれた皆には感謝しないとね」
「ああ、それは同感だ。後で褒美をやらないとな」
軽く笑みを入れて言うレオンハルト。実際、この後はこの町を使った宴会の許可を出してあるので、おそらく朝までどんちゃん騒ぎだろう。それが褒美と言えなくもないが、気持ち的にはもっと褒美を与えてもいいくらいだ。
他の、付き合ってくれたケッセルリンクやカミーラ達には、何かお礼しようと心に決める。
デートは上手くいっているし、最初の様なぎこちなさも無くなってきた。
筈だったが、
「…………」
「…………」
何故かそこで会話が途切れてしまう。
いや、お互いに、何となくではあるが要因は解っている。
そろそろ日も落ちて、暗くなってくる頃合い。町の中も殆ど見て回った。
なら、そろそろお開きにするか、と。そんな雰囲気を感じ取っているのだ。
しかしレオンハルトとしても不思議と、もうちょっと一緒にいたい様な、そんな気持ちが湧き上がってきている。
ならどうするか。とりあえず適当に話を長引かせてその間に考えようか、などと、
「……あー……そういえば、さっきの――」
「れ……レオンハルトっ!」
そう思い、声を掛けたところで、スラルに差し止められる。
彼女は近くに見える、背の高い大理石の建物を指差し、
「あ、あれは何? あれは行ってないよねっ! 私、あそこに行きたい!」
「ん……ああ、あれか……あれは……んん……」
「いいからっ! ほら、早くっ!」
レオンハルトが歯切れの悪い様子で唸る。
だがスラルは、そんなレオンハルトをせっつき、強引に手を引いて連れて行かせようとする。その態度に折れたのか、何ともいえない表情で迷っていたレオンハルトが、やがて小さく息を吐くと、
「……なら行くが――最初に言っておくぞ」
「な、何? 急に改まって……」
真剣な表情で、少し気圧された様子のスラルに言うのは、ある種の宣言であり、予防線だ。
それは、
「行くと決めたのはお前だからな――」
「えっ……それはどういう……?」
スラルは、その言葉に、若干不安になりながらも付いていき――そして直ぐにその理由を知ることになった。
そこは、広い高さのある空間だった。
全体を大理石で作った一面の白の空間は、とあるもので更にその白さが増している。
視界を軽く塞ぐ形で発生しているものの正体は――湯気だ。
空間の中心にある熱いお湯の入った槽や、床から発生する白い湯気。それらが存在する場所の名は、
――大浴場。
「…………」
スラルは、その浴場の一室、着替え用に区切られたスペースで、未だ躊躇をしていた。
それもそのはず、今から行うのは、
……れ、レオンハルトと……こ……混浴……!
まさか、まさかの事態だ。
まさかデートを引き伸ばす為の時間稼ぎに咄嗟に指を指して行きたいと言ってみただけの場所が、公衆浴場であったとは夢にも思わなかった。
この状況もそう。まさかのレオンハルトとの混浴。羞恥でどうにかなりそうな時間。
しかしその一方で、どこか期待のようなものを感じる自分もいて、結局ここまで来てしまった。
いつもの服を脱ぎ、用意されていた白い湯着を身に着けると、スラルは自分の身体をしげしげと眺める。
……おかしなところ、ないよね……?
ある意味で“無い”が、そういう意味ではない。
湯着を着ているとはいえ、レオンハルトに身体を見られるのだ。なら念入りにチェックしておきたいと思うのが乙女心だろう。
「というか……普通に恥ずかしいなぁ……」
裸ではないにしろ、湯着は腕や太腿など、それなりに露出がある上、身体のラインが出る。それはもう、殆ど見せている様なものであり、彼に中身を予測されてしまい――
「……やめよ。これ以上考えるともっと恥ずかしくなるし……」
そうすれば入れなくなってしまう。来たいと言ったのはこちらなのだ。急にやっぱやめる、と言うのも何だか嫌な感じだろう。
「……よし」
スラルは手をぐっと握り、覚悟を決めた。
浴場へと繋がる戸を開き、そこに足を踏み入れる。
すると早速、
「――! ん、来たか……遅かったな」
「っ!? れ、レオンハルト……!」
何でここに――ではない。当たり前だ。
ここは混浴で、貸し切りで、今まさにレオンハルトと一緒に来たところなのだから。決意もした。彼がいても動じない。いつも通り接しようと。
しかし、だ。一つ言わせてもらうとしたら、
……な、何よそれ!? ほ、ほ、殆ど裸じゃない!
レオンハルトが着ている湯着。男性用であるそれは、下だけを隠すものであり、上半身に関しては裸だ。彼の肉体か惜しげもなく晒されており、
「……まぁ……とりあえず……て、適当に身体洗って、入ったらどうだ?」
「そ、そうね……そうする」
言ってさささっと端の方に移動する。半分逃げる様に、撤退した形だ。意味は一緒。精神的に結構きてるので許してほしい。
そうして浴槽とは別の、お湯の出る湯口の湯と、石鹸を手に取りながら、身体を洗っていく。この際に、何気に湯着をはだけなければいけないので、結局背後に注意しながらも内心では彼のことを考えていた。
……レオンハルトの身体……すごい……!
何がどう、という訳ではないが、とにかくすごい。
身長が結構ある彼の身体は、女性の自分より当然大きいし逞しい。服を着ていると割と細身に見える彼だが、その実、中身はかなり鍛えられており、まさしく、無駄のない理想的な筋肉が備えられている。機能美の様なものを感じるのだ。おそらくは剣術、自分の戦いに最適な形を取っているのだろうと推測出来るが、この高鳴りはそういう意味に加えて、彼だからという要因が強い気がする。というか間違いなくそうだ。
頭の中が、先程見た彼の身体の記憶と、そこから連想される様々な想いで一杯になる。まだ湯に浸かっていないのに、身体が熱くなってきた。
と、そんなことを延々考えている間に身体を洗い終えてしまう。いつもよりかなり早く終わってしまったのは、別のことを考えながら手だけは高速で動かしていたからだろうか、と思う。
……い、一応、念入りに洗って……ん、大丈夫、の筈……。
再び自分の身体を確認する。問題がなさそうだと頭で理解すれば、とうとう、
「……それ、じゃあ……は、入るからね……」
「…………ああ」
レオンハルトの場所まで戻り、声を掛けながら湯に足を浸からせる。
お湯の温かさを感じながら、徐々に身体も沈めていくと、
「……熱く、ないか?」
「う、うん。大丈夫」
こちらを見て気づかいを掛けてくれるレオンハルトに振り向きつつ、問題ないことを告げる。
そして人ひとり分くらいの距離を開けて、そのまま浴槽の縁にもたれかかった。
思うのは、
「いい湯……」
と、思わず口に出る。それくらい心地よいものだ。
城にも浴室はあるが、それに勝るとも劣らない。むしろこちらの方が熱く、心地良い気さえしてくる。
それはレオンハルトも同感なのか、
「そうだな。城のも悪くないが、俺はこっちの方が好きかもしれん」
「そう、かも……というか、よくこんな大規模なお風呂作れたわね……?」
「……元々作る気は無かったんだけどな。ここには別の何かを建てるつもりで、他の場所と同じ様に地面を掘らせていたんだが、どこかの馬鹿が滅茶苦茶深い穴を掘りまくって、ふざけんなって元に戻させようとしたら……そこから温泉が湧き出た」
「え、えぇ……なにその幸運……?」
怪我の功名と言うべきだろうか、失敗から生まれた温泉だということか。そのおかげでこうやって気持ちよくなれるのだから良いことではある。
しかしレオンハルトとしてもそれは悩みのタネの様であり、縁に肘をかけながら、上を見ると、
「結果的に成功、良い結果を引き起こしたからな。俺としても何も言えなくなった……」
「あはは……まぁ、確かに感謝したいくらいね。……ほんと、この町はすごいなぁ……」
本心からそう言う。正直デートに誘うと決めてから一ヶ月で、ここまでの物が出来るとは思ってもいなかった。
掌でお湯を掬いながら、彼を見て、
「……本当に、ありがとね。レオンハルト」
「……気にするな。やれることをやっただけだ」
お礼の言葉は素っ気なく受け取る。それが当然だ、という態度で。
それを見て、
……そう、だよね……レオンハルトにとっては当然のことだし……。
ほんの少し、ほの暗い気持ちになる。
彼は魔人で、自分は魔王。そんな相手からの誘いだ。当然、やれるだけのことはやるだろう。
勿論、そういう仕事の様な気持ちで用意してくれた訳じゃないのは分かる。ここまでのデートでも、彼は本当にこちらのことを思ってやってくれたのは伝わった。
しかしそれは、自分の求めるものではない、と思う。大切にされているのは理解出来るのだ。その一方で、
……私はきっと……女性としては見られてないんだろうなぁ……。
諦観にも似たそんな考えが浮かぶ。
大切にはされていても、女性として見てもらえていない。そう思う理由は幾つもあった。
自分はどこまでいっても彼の上司である魔王だし、そういう素振りは全く見せないし、レオンハルトの好みからしても、自分は外れてるだろう。
きっとこの後も、風呂から上がれば解散することになる。
デートは終了。楽しい時間は終わりなのだ。
今も、こちらは胸が強く高鳴ってしょうがないのに、彼は全く動じず、普段どおり冷静な態度を貫いている。いつもより距離が近く、薄着の自分がここにいるのに。
「…………」
思い、何となく距離を詰めてみる。
人ひとり分の距離を、限りなくゼロにしようと徐々に距離を近づける。彼の身体が近くなり、心臓がバクバクと強く脈動する。
……もうちょっと、もうちょっとだけ……。
未練がましく、彼に近づいていき、そして身を寄せる。
すると反応が来た。
「……っ、スラル……」
彼がこちらに気づき、身体を一瞬だけ震えさせた。
やはり、
「……ごめん……その……こうさせて」
「――っ」
自分をそういった対象で見てくれないのだろう、と。
彼の腕に身を寄せ、顔を見上げる。
そこには、レオンハルトの軽く驚いた様な、こらえるような表情があり、こんなことをしてくる自分を受け入れ、我慢してくれてるのだと、そう思った。
だが、
「~~~っ! スラル!」
「えっ、あ、はい!」
急に大声で名前を呼ばれ、規則正しい返事をしてしまう。
そしてレオンハルトは立ち上がり、湯から身体を上げると、そのまま素早い動きでこちらに背を向け、
「……先に出る。出る……が――」
そのままこちらをちらりと見て、
「…………この後……お前の部屋に、行っていいか?」
「――えっ?」
不意の言葉に心を跳ねさせる。
いや、部屋に彼が来るくらい、日常茶飯事だ。別段驚くようなことではない。
しかし、このデートからの流れで、態々部屋に行くことを確認してくるのは、
……まさか、だよね……?
期待のようなものが、心を揺さぶってくる。そして口は自然と、
「……う……うん……別にいいけど……」
と、部屋への来訪を了承していた。
言うと彼は、再び正面を向いて、
「…………じゃあ、ここを出たら直ぐに向かうからな。……お前も、あまり長く浸かりすぎるなよ」
「わ、わかった……」
返事を聞くと、そのまま浴場を出ていってしまう。
心が落ち着かない。彼の言葉は、いったいどういう意図でのことなのかと頭が回り、それに合わせて鼓動が早くなる、
だが、何にせよ、
「……私も出ようかな」
さっとその身を湯から上げ、スラルは脱衣所まで小走りで向かった。
――そして、レオンハルトとスラルは日の落ちた夜の町から出ると、真っ直ぐに魔王城のスラルの私室まで行く。
道中、会話はない。
だがその足取りは、急ぎすぎというくらいに早く、レオンハルトの表情は仕事の時の様に真剣で、不思議な程であった。
そして、部屋に着くと、
「……スラル」
「な、何……?」
薄暗い部屋の中で、レオンハルトは名前を呼ぶ。
スラルが彼の顔を見上げて聞く体勢を取ると、
「……今日のデートは……あー……どうだ?」
と、何やらぎこちない様子で聞いてきた。
彼の様子がおかしいのが気になるが、問いには答えなければならない。
なのでスラルは、自然と思ったことを口にする。
「……そうね。――とっても楽しかった、かな」
そう、楽しかった。
彼との初めてのデート。ドキドキして胸がいっぱいになる。そして安らぎを得られた時間。
「初めての体験ばかりで、それを貴方と一緒にすることが出来て」
魔王である自分では、到底体験出来ないであろうことをさせてもらった。
「……夢みたいな……時間だった」
だけど。
足りないものがある。
実現出来ないことがある。
それを思い、
……あ、だめ……。
涙がこぼれそうになる。
それは、楽しい時間が終わるというのもそうだが、どこか悔しさが滲み出たもので、
「……だから……ありがとう」
としか言えない。
それ以上を口にすることは、怖くて出来ない。
彼に想い自分の想いを告げることは、迷惑になるかもしれなくて、拒絶されるかもしれなくて。
そして、
「今日は、楽しかった――」
何も言うことが出来ない――臆病な自分が嫌いだ。
それを理解っていて、なお何も出来ない臆病な自分が嫌になる。
だからこそ、
……夢は終わり。
臆病な自分に、これ以上のことが出来るはずも、起こるはずもない。と、そういうことだ。彼に向かって、必死に笑みを向ける。
しかし、これが中々難しい。笑おうとしているのに、今日を綺麗に終われるようにしようと、そう思っているのに、
「あ、れ……?」
それに反して、目元からは涙の粒が溢れ、
「っ……ごめん……何だか急に……!」
目元を拭ってそれを拭き取る。
しかし涙が溢れるのは止まらず、
「ごめん……なさい……」
彼に向かって謝る。こんな終わり方にしてごめんなさいと。
これでは彼も、どうしていいか解らないだろう。彼を困らせてしまっている。
そんな自分がまた嫌いで、再び彼に謝ろうと顔を見上げる。
だが、
「……スラル」
不意に名前が呼ばれた。
彼の瞳が、こちらをまっすぐに見詰めている。その上で、彼は言葉を続け、
「俺は――お前の泣き顔が嫌いだ」
「――っ」
告げられた言葉にまた泣きそうになる。
彼に嫌い、と言われただけで胸が急激に苦しくなる。
しかし、
「だから……お前には笑っていてほしい」
と、言って、彼は距離を詰めてきた。
「何……を……」
「……いいから、じっとしてろ」
そして彼は、こちらの顎に手を伸ばし、上を向けさせると、
「――――」
「んっ――!?」
唇を、重ねられた。
……え、あ……嘘……。
彼の感触が、唇から伝わってくる。どうにも現実味のない感触が。しかも初めてであるからよく解らないものだ。
しかしそれは今、現実として自分の身に降り掛かっており、心がかき乱される。
ようやくそれを現実と認識しはじめた頃、しかし唇は離れていき、
「……どう、して……?」
出てくる言葉はそんなものだ。疑問が先に来る。
何故なら彼は、自分をそういう対象として見ていないようで、
「何で……そ、の……口に……」
キス。という言葉は出せなかった。
しかし意味は伝わったのだろう。彼は軽く息を入れながら、目を細めると、
「……分からないか? なら、もう一度するぞ?」
「っ!」
その言葉に反応してしまう。
だがそれは当然、嫌、という意味ではなくて、
「……何で、私にしてくれるの……?」
聞く。しかし、
「――んっ!」
再び唇を重ねられる。
今度は感触をしっかりと感じられた。熱く柔らかい感触だ。
それはすごく、心地よいものであったが、それもまた離れていき、
「……分からないなら、もう一度するって言っただろ」
「っ……ん……そんな……だって……」
言う。それは内心の不安の吐露であり、
「私のこと……女の子として見てないでしょ? 私、小さいし……ケッセルリンクやあのカラーの子みたいに、大きくもないし……色々と面倒で――」
しかも、
「私、魔王なのに……」
「……んなの、関係あるか」
だが、そんな言葉はばっさりと切り捨てられる。
レオンハルトは少し強い口調で、
「俺は別に……魔王としてのお前を想ってる訳じゃねえ」
「で、でも――んんっ」
またしても唇を重ねられる。
今度は彼の腕がこちらの背に回って、深く抱きしめられながらのものだ。彼のしっかりとした熱く堅い身体に、己の身を包まれ、唇の感触を伝えられる。
そしてさらには、お腹の辺りに押し上げられるような熱を感じ、
……あっ……これって……。
それを認識した途端、下腹の辺りが締め付けられるような、そんな熱が感じられる。
彼はまた顔を離すと、抱きしめたままで、
「確かに、俺の好みとは外れてるかもな。……だが、それも関係ねぇ。まだ分からないか?」
「それ、は……」
言外に、もう一度するぞ、と言われている。
その言葉に顔がまた熱くなるのを感じながら、
「……まだ、分からない。だから――んっ」
という言葉は、再び口で黙らされた。
今度は、彼の舌が口内に侵入してくる。舌と舌が絡み合い、口を強く吸われる。
彼の腕はこちらの背中を撫で回し、時折後頭部や頬、腰の辺りを撫でながらこちらの身を内側に引き込んでくる。
全身で彼を感じて、
……んっ、レオンハルト、レオンハルトっ……!
やはり、誤魔化せない、
心の中で自分の想いを、はっきりと言葉にする。
それは、
――レオンハルト……好きっ、大好きっ……!
長年のその想いを強くぶつける様に、彼の身体に強く抱きつき、擦りつく様に身を寄せる。もっと近く、もっと近く、彼を感じたい、感じさせてほしい、と。彼の好意を感じる様に、自分の好意を感じ取れる様に、彼の首に手を回した。
想いを感じさせる。
レオンハルトは、抱きしめたスラルにひたすら、自分の想いをぶつけていた。
彼女の小さい身体に手を回し、キスを落とし続ける。
……やめられねぇ……。
思う。このようなキス。今まで幾らでもしてきた、と。
昔は、気持ちいいと思う以上のものはなかった。ただの、性欲を解消する手段の一つでしかなかった。
しかしそれは、好意を向けられることで、全然違うということが理解った。それが以前までの話。それだけでも心地良いものであったが、今回のは、
……あぁ……これは――何だ?
今まで自分が行なってきたキスとは、レベルが違う。
興奮が湯水の様に溢れてきて、冷静でいられない。余裕がなくなったのは、先程の風呂に入る時からだが、キスをしてからというもの、心臓が強く脈打ち、血が熱く滾っている。
情けないと思う。彼女の泣き顔を見て、それを止めたいと、こうしたいと思ってやったことだが、彼女を気遣う余裕が無くなってきている。
気がつけば自分の手は、彼女の身体を撫で回している。服の上からでも感じられるすべすべで柔らかな女の子の感触に、熱がどんどんと高まっていく。
お互いに息も絶え絶えになりながら、深くキスをすると、スラルがこちらに縋り付いてきて、
「レオ、ン、ハルトぉ……!」
「――――っ!」
熱っぽく名前を呼んできたことで、更に興奮が加速する。
駄目だ、これ以上は本当に止められなくなる、と。そこで一度、息継ぎするように口を離す。
お互いの口から出た一本の粘液の線が、伸びては落ちる。お互いに息を入れながら、
「はぁ、はぁ……悪い。もう、抑えられそうにない……」
言う。何とも情けない宣言だ。
ギリギリのところで理性を留めおきながら、こちらを見上げるスラルの肩を掴み、
「…………お前を、抱いても……いいか……?」
それを何とか口にする。それだけで、喉が乾いていくようだ。これで拒否されたらどうすればいいだろう、と思う。
だが、スラルは顔を下に向け、ちらちらとこちらに視線を向けながら、
「…………いい、よ」
「……! スラル……」
「レオンハルトの
「っ……!」
不意打ち気味に、スラルがこちらの膨らみを撫で擦ってくる。甘く緩やかな快感にたまらない気持ちにさせられるが、それをぐっと堪えて、彼女の言葉を聞く。
「私のこと……ちゃんと、女の子として想ってくれてるんだよね……」
「ああ……そうなるな……」
「だったら……いいよ」
だから、と。
「レオンハルト、私を――抱いて……」
「! ~~~っ! スラル……!!」
「あっ……れ……レオンハルト――」
上目遣いで恥ずかしそうに、“抱いて”と、口にするスラルの言葉。
その瞬間が理性の最期であり、内から溢れる衝動のままに、彼女をベッドに押し倒した。
そして、デートは終わった。
町ではレオンハルト軍の者達が宴会を開いて、酒と食事を楽しみ、それにガルティアやケッセルリンクなどの縁のある者達が参加し、さらなる盛り上がりを見せる。
――だが二人の時間は、まだまだ終わっておらず、宴会と同じく夜通し続けられることとなった。
気がついたらR-18に突入していたのは内緒……
ちなみに、私は夜通しこれ書いてました(白目)