「――それで、最初はどこを探すか……だな。その二体が行きそうな場所とかはあるのか?」
レオンハルトは二体の聖女の子モンスター、ベゼルアイとセラクロラスと一緒に大浴場から出ると、見張りの魔物兵への説明と、貸し切りの終了を告げてから、二体に問うた。
町の中はそれなりに賑やかで、魔物の往来が多い。当然、魔人であるこちらへの注目もあるが、皆遠巻きに視線を寄越すか、避ける様にその場を後にするかの二択の反応を見せる。
魔人が来ることもあるこの町、そもそも己が管理しているだけあってか、普通の魔物よりは魔人に慣れているとはいえ、やはりその反応には畏怖が見える。時折、うちの軍の所属だと思われる魔物隊長らが敬礼してくるのを手で制しながら、ベゼルアイに視線を向けると、彼女は考え込む様に右手を顎に当てる。
「そうね……」
「ふぁ……」
因みに服装は、ベゼルアイが赤と黒のロングドレス。セラクロラスは首元から伸びる幅広のリボンのみ、という危うい格好だ。
だがこちらにとって一番目につくのは、ベゼルアイが左手で肩に乗せる様に持つ大剣の方だ。その身の丈を越える程の長さを持つ大剣は、先程見せた彼女のパワーを持って振れば、相当の威力が出るだろう。願わくば、それを受けてみたいものだが、今は無理だろう。本人にやる気がない様だし、無理矢理襲う気もない。
そんなことを考えながら、ベゼルアイの返答を待つ。セラクロラスには、こう言っては何だが、良い答えは返ってこなさそうだ、と思う。聞かれても眠そうに欠伸をするのみなので解らないのだろう、と、そんなことを考えていると、ややあってベゼルアイが、
「……甘いものが食べたいわ」
と、告げてきた。それに反応しつつ、甘いものを置いてる店を頭の中に思い浮かべ、
「甘いもの、か。――って、ん? それは残りの二体がいそうな場所でいいんだよな?」
「……私が食べたいのよ」
「……お前な」
何言ってんだこいつ、という目でベゼルアイを見る。真面目に考えていたのが勿体無い。
だが、そんな視線を受けても、ベゼルアイは至って真面目な顔で、
「と言っても、いそうな場所とかちょっと解らないのよね」
「……じゃあ、どうするんだ?」
「気配を探ることは出来るから、地道に町を回るしかないわね……というわけだから、まずは甘いものを食べにいきましょう」
「……セラクロラスは何かないのか?」
半ば諦めながらも、一応何かあるかもしれない、という思いでセラクロラスに尋ねる。しかし、
「ん……甘いもの、食べる……」
「お前もか……」
「あら、知らないの? 女の子は甘いものが好きなのよ」
「……よく知ってるし、改めて思い知らされた気分だ。……なら、こっちだ」
「話が解るわね」
微笑を浮かべたベゼルアイと、相も変わらず眠そうなセラクロラスを連れて大通りを道沿いに歩いていく。甘いものの店なら大通りに沢山並んでいるので、その中からお気に入りの店に連れていけばいいだろう。
しかしその際に、いつもの事であるが、
「……これは……」
「……言いたいことは理解るから言わなくてもいいぞ」
「まるで王様みたい」
「言うなって言っただろうが……」
「にゅ……すごーい……」
大通りを歩いていくこちらの周囲には、魔物達がいなくなっていた。
正確には、こちらが歩く道を確保する様に、皆が端の方に逸れている。まるで王様や、軍の凱旋の様に。それを見て、溜息が漏れるのを自覚しながら、
「有名過ぎるのも困ったもんだな……一応、大袈裟に騒ぐなって命令は遵守してるみたいだが……」
「慕われてていいじゃない。魔人ってもっと怖れられてるのかと思ってたわ」
「慕われてるだけならな……っと、着いたぞ」
そんなやり取りを交わしていると、目的の店に辿り着いた。
大通りの角にある、お洒落な外観のお店だ。そこは女の子モンスターの集団や、女の子モンスターと男の子モンスターのペアで行列の出来るお店であり、この町有数のデザート専門店である。
店に近づいたことで、多少のざわつきを感じながらもそれを無視し、パラソルが差してあるテラス席の元へ行く。すると、ベゼルアイが首を傾げて質問をしてきた。
「……? 行列が出来るくらい満席なのに、何故ここだけ空いてるのかしら?」
「ああ、ここは魔軍の重鎮だけが使える専用席だ。一般の席に混じると、客の空気が凍りつくからな」
なるほどね、とベゼルアイが得心した様に頷くと、店員がやって来る。それは女の子モンスターであり、
「れ、レオンハルト様! ようこそいらっしゃいましたっ! お望みでしたら、貸し切りにしても――」
「畏まらなくていい。それより、適当にオススメを見繕ってくれ」
「う、承りましたっ! 直ちにお持ちします!!」
注文を適当に済ませると、殆ど駆け足で店員が厨房に走っていった。
やはり、緊張してしまうのは致し方ないか、と思いつつ、品が届くのを待つ。先に店員が、ドリンクだけをトレイに乗せて戻ってくる。
「お待たせしました! トロピカルフルーツジュースです!」
ありがとう、と軽くお礼を言って受け取ると、いえいえいえ、と物凄い勢いで畏まりながら離れていく店員。もう少し、落ち着いた方がいいと思うけどな、と内心で言葉にしつつ、ベゼルアイとセラクロラスの感想を待つ。すると、
「ん……美味しいわね」
「おいしー……」
「そうだろう。俺がよく飲むやつだからな」
果物を使ったジュースは、自分がよく好んで飲むものの一つだ。店の方が覚えていてそれを出したということは直ぐに解った。だからどうという訳でもないが。
しかし、本当に美味しいのか、それをごくごくと飲んでいく二人。もしかして初めて飲んだのだろうか。しかしそれも、
……魔物であればそうだろうな。
人間の町であれば、こういった物は少なからず存在するものだが、魔物であるなら手を加えた料理や飲み物など口にする機会はない。聖女の子モンスターと言えども魔物であることには違いないのだ。口にしたことが無かったのだろう。
魔物兵であれば、良いものを食べたり飲んだりすることは多いのだがな。それを目当てに魔軍に入っている者も多いのだし。
と、こちらもジュースを口にしながら、何となく二人を眺めていると、不意にベゼルアイの方が、
「そういえば、この町だとお金が必要なのかしら? お店とかがあるくらいだし」
「いや、必要ない」
その質問に首を振って答える。すると、また新たな疑問が浮かんできた様で、
「……じゃあ全部、タダで提供してるの?」
「言ってしまえばそうだな……だが、だからと言って無制限に好き放題出来る訳じゃないぞ」
一息。テーブルを指でとんとんと叩きながら、レオンハルトは言う。
「ここで暮らせるのは魔軍に所属している者に限るからな。それ以外の者は店によって制限がある」
「制限?」
ああ、と頷きを入れ、
「例えば、この店の様な飲食店であれば、一人につきこちらで定めた一人前以上を頼むことは出来ない。それ以上を求めるのなら魔軍に入るか、代わりの対価を支払うか――」
「お待たせしました! スペシャルケーキセットです!」
と、話の途中だが注文の品がやってきた。
幾つかのケーキが乗った皿が三つ、それぞれの前に置かれる。それを見てベゼルアイが、
「……それで、話の続きは……」
そうやって催促しながら、しかし、視線は皿の上に釘付けの彼女を見て、息が漏れる。
「……とりあえず先に食え。話は後からでもいいだろ」
「……そうするわ」
「ふぁ……あまーい」
「……セラ。先に食べるなんてずるいじゃない」
「美味しい……」
もう既に食べ始めているセラクロラスを横目で責めるように見たベゼルアイだったが、直ぐに自分の皿に視線を戻すと、備え付けのフォークを手に取り、ゆっくりとケーキを口に運んだ。そして、
「どうだ、美味いか?」
「…………」
しかしその質問に、ベゼルアイは無言のまま固まる。
……口に合わなかったのか?
という予想は、すぐに覆された。ややあって、ベゼルアイの身体が動くと、
「――――!」
ケーキを物凄い勢いで食べ始めた。それなりの個数があったケーキセットは数秒足らずでベゼルアイの口に消えていき、あっという間に空になる。
すると、フォークを未だ手にした状態で、こちらを見て一言。
「……おかわりを貰える?」
「気に入ったんだな……。一応、一品限りなんだが――」
と、続く言葉を放つ前に、ベゼルアイの言葉が飛んできた。それは、
「――魔軍に入るわ」
「あ?」
短く呟いたベゼルアイに胡乱な視線を向ける。しかし続けて、
「私、今日からここに住むから。だからもう一品――」
「……いや、甘いものに釣られるなよ」
軽くツッコミを入れるも、ベゼルアイの表情は本気だ。よっぽど甘いものに飢えていたのだろう。レオンハルトは半目になるのを自覚しつつも、息を入れて、気を取り直し、
「……それはそれでありがたいが……別に入らなくても、今は俺と一緒だから好きなだけ食べてもいいぞ」
「……それは本当?」
その問いに頷きながら店員を呼び止める。そして、
「一通り、この店にある物を持ってこい」
畏まりました! という元気な声とともに、店員が下がっていく。そのやり取りを呆けた顔で見ていたベゼルアイは、ぽつりと、
「……レオンハルト君って神なの?」
「……甘いもの奢っただけで信仰を得るのは初めての経験だな……俺のも食べるか?」
皿を差し出しながら言う。するとベゼルアイはまたしても固まり、
「……やっぱり、甘いものの神なの?」
「甘味だけに神ってか?」
「…………」
滑った。ベゼルアイの視線が痛い。思ったことを何となく言ってしまったが、軽率な行いだったと後悔する。
……おかしいな……ウケると思ったんだが……お菓子だけに。
とりあえず滑ったことを挽回しようと咳払いをしつつ、
「……好きなだけ食べてくれ」
「そうするわ」
「んゆ、私も……」
好きにしろ、と手を払うようにして許可を出すと、二体の、特にベゼルアイの瞳が爛々と輝き始めた。こちらが差し出した皿のケーキを食べつつ、語尾に“♪”が付きそうな程、うっきうきな様子で、
「美味しいわ……」
と、至福の表情で食べ続ける。それを見ながら、
……随分と沢山食べるな……。
今日の分が無くなりそうな勢いだ。
だが、そうは言っても問題はないだろう。食材は定期的に町に運んでいるのだし、と楽観的に構える。
実際、先程は制限がどうのとは言ったが、魔物達が好きなだけ食べまくっても食料については問題ない。
魔物界には、ツリー都市――世界樹と呼ばれる木が幾つもあるからだ。
人間とは違い、魔物達が飢えることのない理由が世界樹だ。あの木は資源が豊富で、取っても取っても生えてくる程の生産性がある。
魔軍が問題なく運用出来ているのもあの木のおかげだ。魔軍の最大動員数は数百万以上あるが、その数を賄えるだけの補給が出来るのは世界樹のおかげである。この町に住む魔物くらいであれば問題にはならない。
ただ、輸送する手間はそれなりに掛かる。魔軍の半分はその補給の為に動員しているといっても過言ではない。重要度はかなり高いのだ。
この町に百万単位の魔物が住んでいるのならまだしも、たかが数十万程度が食っちゃ寝しようが、何の問題にもならない。そもそも一人、ありえないほどの大食らいを抱えているのだ。それに比べれば――と、思ったところで、
「――ん?」
不意に、大通りの方がざわつき始めた。
集団に沿う様に、不安や怯えなどの感情は伝播する。それを感じ取り、眉をひそめていると、横からベゼルアイの声が飛んできた。
「……あら、いるわね」
「あ? いるって……」
「聖女の子モンスター」
簡潔に、ベゼルアイはそう答えた。運ばれてくるケーキを口にしながら合間合間で喋る。
「この気配は――んぐ、ウェンリーナーね」
「ん……うぇーちゃん……」
セラクロラスもゆっくりと頷く。なら、と、こちらは立ち上がりつつ、
「それじゃ、連れてくるか。お前らはここで待ってろ」
「あら、いいの?」
「いいのも何も、ケーキが途中だろ。ケーキにフォーク刺したまま立とうとするな」
「……本能には逆らえないわ」
「……それじゃ、行ってくるぞ」
ええ、お願いね、と言いながらケーキを口に運ぶベゼルアイに半ば呆れつつも、レオンハルトは大通りに出ていった。
レオンハルトが最初に耳にしたのは、何体かの魔物達の声だった。
「お願いします! 俺と、子供を作って下さい!」
そこに集まっているのは全て、男の子モンスターであった。
数体の男の子モンスター。それも身体が大きく、一般の魔物と比べてもかなりの強さを持つ魔物が並んで、それぞれお願いをしている。
「俺の子を孕んで下さい!」
「いや、ここは俺の種で!」
と、そのお願いは全てこのようなものである。
そしてそうお願いするからには、当然、中心にいるのは一体の女の子モンスターであった。
「ええっと……その、どうしよう……?」
しかしそれは、ただの女の子モンスターではない。
ウェーブのかかった長い緑髪。そして、頭と手首に白いリボンを付けるのみの全裸の美少女。
聖女の子モンスターの内の一体――“命”のウェンリーナーがそこにいた。
「う~……誰にしたら……」
彼女は男の子モンスター達に囲まれ、それぞれに子を産んでくれと頼まれて困っていた。
ウェンリーナーとしても、魔物が集まるこの町に来たのは、一応はそれを果たす為である。しかし、優しくお人好しな彼女は、誰とすればいいのかを決めかねていた。
その間にも、男の子モンスター達はどんどんとヒートアップしていく。
「おい! 彼女、困ってるだろ! お前達は下がってろ!」
「ああ!? そういうならまずはテメェが下がれ!」
「そうだ! 抜け駆けしようったってそうはいかねぇ!」
「うるせぇ! 彼女だってテメェらみたいな弱っちい精子で孕まされるのはまっぴらごめんだろうよ!」
「この俺が弱いだと!? だったら見せてやんよぉ!」
「あ、あの……喧嘩しないで――」
「上等だこら!! ならテメェら全員ぶっ殺して、意地でも勝ち取ってやるよ!」
ウェンリーナーの言葉は、既に頭に血が上り始めた魔物達には届かない。お互いに睨み合って、戦闘態勢を取りながら、
「なら、最後まで生き残った奴が手に入れるってことでいいな!?」
「ああ! それが手っ取り早い!」
言って、男の子モンスター達は戦いを始めようとした。
「死ねぇ――!!」
だが、それはすんでのところで止められることとなる。
横から割り込んできた影によって攻撃が受け止められ、
「――お前ら、その辺にしておけ」
「ああ!? なん、だ、てめ……ぇ……」
文句を言おうとした男の子モンスターだったが、その姿を見て声が尻すぼみに小さくなっていく。周囲の魔物達も、その姿を見て驚きに息を呑んだ。
そして一体の男の子モンスターが、その名をゆっくりと呼んだ。それは、
「れ、レオンハルト様……」
「……この町での喧嘩は禁止していた筈だが?」
魔人レオンハルト。
魔人筆頭であり魔軍参謀。そしてこの町の管理者である彼を知らない魔物は、この町に存在しない。
圧倒的上位者の登場に、男の子モンスター達は揃って口をぱくぱくとさせる。自分達が何をしでかしていたのかを、ようやく理解し、冷や汗をかいていく。
そんな中、レオンハルトはその鋭い目つきを更に細め、赤い瞳で彼らを射抜くように見る。
「……少しくらいのいざこざが起きるのは理解出来るし、許容しよう。魔物の闘争本能を否定はしない。……だが、本気の喧嘩を、それもこの町でしようってんなら――」
と、レオンハルトは彼らを威圧する様に軽くオーラを滲ませ、
「俺が相手になってやる。……それが嫌ならさっさと散れ」
「は――はははいっ! すみませんでしたぁ――!!」
レオンハルトの睨みを込めた言葉に、男の子モンスターは揃ってその場から逃げ出した。
実力自慢の彼らだが、魔人に勝てると思うほど命知らずではない。それも相手は、魔人の中でも最高位の魔人筆頭にして、武闘派、戦闘狂として知られるレオンハルトだ。その彼が収める町のルールを破った時点で、問答無用で殺されてもおかしくはない。許してもらえるだけでも僥倖だ、と魔物達は思っていた。
一部、レオンハルト軍に所属している者達はその騒ぎを見て、さすがはレオンハルト様だ……! と、感動を露わにしているが、声を掛ける様なことはしない。かのお方が現在、遠征後のお休みであることは周知の事だし、そうでなくても一魔物兵程の身分では声を掛けることも畏れ多いのだ。
そのレオンハルトは、男の子モンスター達が去っていくのを確認すると、その原因となった少女を見て、声を掛ける。
「……お前が、ウェンリーナーだな?」
「――あっ、うん……」
自身の名を呼ばれ、ウェンリーナーは気づいた様に頷く。急な出来事に意識が追いついていなかったのだ。
目の前にやってきたレオンハルトは、ウェンリーナーの手を取ると、
「えっ、あの……」
「俺と一緒に来てくれるか?」
「それって……」
その言葉に、ウェンリーナーは考える。つまりそれは、
……子作りしたいってこと……?
おそらくそういうことだろう。そうに違いない。
故にレオンハルトと呼ばれていた彼を見ながら、ほんの少し考える。
目つきは鋭いが、よく見てみると優しそうで、かっこいい人だ。それに実際助けてくれたし、他に言ってくる魔物もいない。
断る理由はない。むしろ良いとさえ思える。なら、
「……うんっ! よろしくねっ」
「……? ああ、よろしくな」
手を取り、その腕に抱きつきながら笑いかけた。
……何だ、急にどうした……?
随分と距離感の近い奴だな、とレオンハルトは内心、首を傾げていた。
後、見た目が全裸なのが何とも言えない。魔物の中には全裸の奴もそれなりにいるので、そこまで気にする必要はないし、慣れているのだが、こうやって並んで歩いているのは絵面的にあまりよろしくない。
しかしまあ、少しの距離なのだからいいだろう、と軽い気持ちで考え、先程のお店まで歩いていく。途中、ウェンリーナーはこちらを見上げて、
「どこに行くの?」
と、聞いてきたので、あっさりと、
「ケーキ屋だ」
「ケーキ屋?」
やはり知らないのか、首を傾げるウェンリーナーに、続く言葉を放った。
「甘いお菓子を食べれる場所だ」
「あっ、じゃあデートなんだ。わーい」
「いや、デートって言うか……」
「えへへー、デート初めてだから嬉しいなー。ありがとー」
「…………まぁ、いいか」
きゃっきゃっと、嬉しそうにはしゃいでいるウェンリーナーを見て、別にいいか、と喉まで出かかっていた訂正の言葉を引っ込める。
無邪気な奴だな、とそんな感想を抱いていると、直ぐにお店に辿り着き、
「ここだ」
「わぁ~……甘くて美味しそうな匂い……!」
「……好きなだけ食っていいぞ。……とりあえず、席に――って」
ウェンリーナーを連れて、ベゼルアイとセラクロラスがいる席に戻ると、そこには、
「おいっ! どれだけ食べてやがる!?」
「……えっ?」
テーブルには、山盛りにお皿が積まれており、ベゼルアイの姿を隠していた。その影から、ベゼルアイがひょっこりと顔を出すと、
「あら、戻ってきたのね。ちゃんとウェーも連れて」
「あっ、おべーちゃん!」
「おべーちゃんって呼び方はやめてほしいんだけど……とにかく、久し振りね」
「むー、それを言うならおべーちゃんだって、ウェーって呼ぶのやめてよ。可愛くないよぉ」
「嫌よ、気に入ったもの」
久し振りの再開なのか、手を取り合って喜ぶ二体。それを見て、何となく責める気も失せたので、席に着きながら、
「仲良いんだな……」
「んゆ……うぇーちゃん……久し振り……」
「ああっ? いつの間に……」
不意に膝の上に乗ってきたセラクロラスに内心驚愕する。本気で気配が、というか、触れられるまで気づかなかった。そのことに戦慄しながらも、しかし相手は和やかに、
「あー、せらちゃんも久し振りー! 元気してたー?」
「……元気……ふわぁ」
「えへへ、眠そうなせらちゃん見るのも久し振りだねー」
「……俺の膝で寝るなよ」
「すぴー……」
聞いちゃいねぇ……、と頭を抱える。というか三体になってまた賑やかというか収拾が付かなくなってきた。身内で慣れてるとはいえ、こいつらも個性が強すぎる。
だが、ウェンリーナーはそこで首を傾げると、
「あれ? そういえば、おべーちゃん達は何でレオちゃんと一緒にいるの?」
「……そのレオちゃんってのは俺のことか?」
「うんっ、可愛いからいいよねっ」
よくねぇ、と言いかけたが、どうせ言っても直さない気がする。先程のベゼルアイとのやり取りを鑑みるに。なので無駄な労力だと諦めていると、続けてウェンリーナーが、
「あっ、もしかして私と一緒で、おべーちゃん達もレオちゃんと子供作るの?」
……ん? 俺の聞き間違いか? とんでもない事を言っている様な……。
改めて耳を澄ますと、更に続けて、恥ずかしそうなウェンリーナーが、
「私はさっき、レオちゃんに誘われたところだけど……」
「いや待て! どこでそんな話になった!?」
やはり話が変な方向に行きそうだったので、今度は全力で指摘する。
しかしウェンリーナーは首を傾げ、
「? だって、レオちゃんが子作りしようって誘ってきて……」
「あら、大胆なのね」
……捏造だ……!
あまりにも急激な展開に戦慄を覚える。というか、周囲で聞き耳を立ててる店員や客が、今の話を聞いてざわついているのは気の所為じゃないだろう。
このままじゃ変な噂が流れて大変な事になる。どうにか訂正しておこうと、思案していると、
「それで、おべーちゃんとせらちゃんもするの?」
「……私は保留中」
「んゆ……もうした」
「あっ、もうしたんだ。さすがせらちゃん」
「してねぇよっ!! 誤解を招く様な事を言うな!」
ひそひそとし始めた周囲の反応に本格的にマズいものを感じる。
だが、セラクロラスは首を傾げてこちらを見上げると、
「……したよ……?」
「そりゃあ未来の話なんだろ!? した、じゃなくて、これからするって話だ!!」
「ひそひそ」
「ひそひそ」
「――って、だから誤解を招くことを言うんじゃねぇ!!」
「今のは自滅じゃない」
「仲良いんだね~」
……もはやつっこむ気にもならねぇ。
これで最後の聖女の子モンスターまで揃ったらどうなるのか、と、何となく嫌な予感を感じてしまう。今からでも抜けてしまおうか……と、思うレオンハルトだったが、放っておいたら更に面倒な事になりそうな気配を感じたので、結局ウェンリーナーも加えて改めて三体にケーキを食べさせた後、聖女の子モンスター探しは続行されることとなった。
スラル「やっぱり、神って碌なものじゃないわね……!」
ハンティ「それには同意だけど、これに関してはまたちょっと違うような……」
ガルティア「神関係ないしな。女だからってだけだ」
ケッセルリンク「私もデートしたい……」
キャロル「それにしても、聖女の子モンスターはそれぞれ個性的な性格をしてますわね!」
ますぞゑ「…………」