悲しい事に、世の中は理不尽だ。上手くいって欲しい時に限って、何故か上手くいかない。それは分かりきっているので俺も『仕方ないね』で終わらせられる。でもね、この状況だけは本当に酷いと思います。神様どうにかしてください。
「……大井。とりあえずお前は落ち着け。そのどこから出したかよく分からない酸素魚雷を捨てろ」
「こいつ、提督に……絶対に殺してやる……!」
「ハァ……」
思わずため息をしてしまった。何故うちの艦娘は何かに集中すると人の話を聞いてくれないんだろうか。教育の仕方を間違えたのかな? それはちょっと残念かな……。
「大井先輩。今その男を殺して助けますから、少しだけそこで待っててください!」
「殺されるのは提督ではなく貴方よ、鹿島」
「……どうやら洗脳されているみたいですね。今すぐに解いてあげますからね……!」
いや~、しっかしこの問題児鹿島にも困ったな……。なんでこんな俺に反抗的なんだろ。これでいち、にぃー……三回目じゃん?
そこまで俺に死んでもらいたいのかな? 少し凹む。君ってそこまで暴力的に娘だったっけ。
「さて、お話もここまでにしましょう。全ては提督が死んでくれれば分かる事です」
「ちっ……提督、少しここで待っててください。一分で終わらせます」
「そっかあ……頑張って勝って欲しいけど、殺しちゃダメだよ?」
「……はい! 頑張ります!」
若干間を空けながらも大井は笑顔でそう返事をし、お互い構え合う。
さっさと俺を撃てば鹿島の勝ちなのに……何してるんだよ。めんどくさい事するな。鹿島のせいでコンビニ行けないやつじゃん。
「ふふっ……酸素魚雷をこちらに当てるのと拳銃を提督に撃つのと、どちらが早いんでしょうか?」
「こちらの方が早いわ」
「そうですか……ならやってみますか!!!」
鹿島は拳銃を俺に向けて発砲しようとするがーーーしかし、渇いた銃声の音は響くことはなかった。何故なら鹿島が急に倒れこんだからだ。
「アハハハハ! 何これ? あ、提督おはよう!」
「あ、ああ。おはよう川内」
鹿島が倒れた背後には川内が笑いながら立っていた。
鹿島が倒れた理由は恐らく夜戦忍者、川内の手刀のせいだろう。おそろしく速い手刀……俺は見逃した。みんなは見えた?
「提督、おはようございます」
「おっはよー提督!」
「おはよう神通、那珂」
川内の背後から神通と那珂が出てきた。
何故ここにいるんだ……という疑問は持っても無駄だ。だって忍者川内型だよ? 自身の気配を消す事なんてちょちょいのちょいでしょ。分からないけど。
「提督。これ、どうする? もう流石に我慢の限界だよ」
「それはすまない……。鹿島は独房に入れといてくれないか? 流石に気絶した子を俺が運ぶのは時間がかかるし」
「もうこれ処分しませんか? 命令してくれればこの神通、どんな内容でも遂行しますよ?」
「鹿島は大本営から送られてきた艦娘なんだ。だからその意味の処分は絶対に駄目だ。処罰の方にしろ」
「なら、那珂ちゃんが処罰を与えようか? 那珂ちゃん、提督のためなら幾らでも頑張っちゃうよ?」
「……俺がやるから大丈夫だ」
完全に川内型にペースのまれてるなあ……ここは大井に救援を頼もう。大井先輩たしゅけて〜という意味を込めた目を向けたら、大井は一瞬嫌な顔しながらも話を振ってくれた。
「……処罰は何を与えるんですか?」
「ん〜。とりあえず前回何やったっけ? 前回のやつ次第で決める」
「えっ、覚えてないんですか?」
前々回……つまり初回は反省文二十枚にして許したけど、前回は何にしたかな?同じような事してたら今回変えなきゃな。なんで覚えてないんだろう。
「うん……教えてくれない?」
「提督が二十回射精するまで鹿島をひたすら犯しました」
「---は?」
「提督がにj『それは分かった……分かったよ』……あら、そうですか? ならいいですけど」
全然覚えてないんだが……え、嘘だろ? マジでやらかしちゃったの?
「あ〜、提督その時お酒かなり飲んでたもんね……そりゃ忘れちゃうんじゃない?」
「……鹿島、処女でしたよ」
「」
川内と大井にそう言われ、必死に記憶を辿っても残念ながらその記憶は甦らなかった。言われても思い出せないところ、相当お酒に酔っていたのだと思う。
「大丈夫ですよ。最初の方は多少抵抗してましたが、最後の方は無抵抗でもはや恋人のようなセックスになってましたから」
「そういう問題じゃないんだよ……というかお前ら見てたのか?」
「ええ、バッチリ見てましたよ」
「何故止めなかったんだ……?」
「知りたいですか?」
「……いや、やっぱりいい。結局は俺の責任だからな」
「……そうですか。分かりました」
こりゃ鹿島に土下座しなきゃいけないな。それでも許してくれる……わけないよな。今回なんて一応俺を殺そうとしてきてるわけなんだし。こりゃ詰んだわ。
「そりよりも提督は何故ここにいたんですか?」
「え゛っ……さ、散歩かな? 随分といきなりだな」
「……」
神通に急に質問され思わず戸惑ってしまったものの、なんとか返答出来たと思った束の間にまた質問される。
「そうそう! 那珂ちゃんからも質問いいかな?」
「ど、どうぞ?」
「じゃあ、その前にちょっと失礼するね!」
そう言って那珂は正面から俺に抱きついてきて、俺の匂いを嗅ぎ始めた。
「すぅ〜っ、はぁ〜……」
とてつもなく嫌な予感がする。
出来るならばこの予感は外れて欲しい……!
「……」
「……?」
「……やっぱり違う……提督の匂いじゃないよこれ。微かに他の女の匂いがするよ……!」
不機嫌そのものの声で発してるので本気で言ってるのが分かる。
非常にまずいな……。嫌な予感が的中しちゃってる。
「気のせいじゃないか?」
「ううん。気のせいじゃない! 那珂ちゃんが提督の匂いを間違えるわけないもん! 提督、どういうことなの?」
「そう言われてもな……」
「……私も嗅いでよろしいでしょうか?」
「あ、私も私も!」
那珂にひき続き神通、川内が左右に俺に抱きつき匂いを嗅いできた。
「……確かに違いますね」
「うん、違う。近づいてみたら全然違う。どういう事なのかな? 提督、答えてよ」
少し咎めるような口調で言っている川内だが、目は異様に殺気立っていた。川内もかなり怒っているようだ。
皆さん匂いソムリエの素質があるのかな?ここにいないでどっかの番組に出た方がいいよ。
「……俺は何も知らないぞ」
「……ふふっ」
「え?」
神通がいきなり笑いだしたと思ったら、俺の左腕を思いっきり握ってきた。
うぐっ……神通に関してはもう鬼のレベルで怒ってるな。
この鬼神通!! 嫌い!! うぇぇぇぇぇん!
「提督、駄目じゃないですか。嘘をつくなんて」
「……なんの話だ?」
「提督が嘘ついた時は必ず声音と瞬きの回数に表れてきます。先程の散歩、という答えも嘘ですよね?」
「……それらが事実だとしても証拠がない。論より証拠、とは何回も教えたはずだが」
「実はちゃんと用意してありますよ、証拠」
「……出してみろ」
完全に追い込まれた。この状況をヤバいとしか表現できない。
生きた心地が全くしないよ……誰か助けて。