あれから少し経ってからお風呂に上がり、現在洗面所にいる。
「提督さん、髪拭いて〜!」
「ん……」
タオルを手にとって阿賀野の頭に軽く押し当てる。頭皮の水分を吸収したら、今度は髪の水分を軽くポンポンとする。
「ふふっ……提督さん、女性の髪の毛を拭くの上手くなったね」
「そう言われてもあまり嬉しくないぞ」
「私は嬉しいもーん!」
彼女たちと一緒に過ごすのが多くなったせいかこういう事をするのも増えた。この鎮守府の過去の事を考えれば、まさかこうなるなんて誰も思わなかっただろう。
「提督さ〜ん、ドライヤーやって〜」
「……それくらい自分でやってくれ」
「えぇ〜……じゃあそれはやるからブラッシングやってくれない?」
「お前なあ……」
「お願い!」
わがままやなこいつ……でも憎めない。俺が甘すぎるだけなのだろうか。
「わかったわかった。やればいいんだろ、やれば」
「ん〜、提督さん大好き!」
「はいはい。それはいいからさっさとドライヤーをかけなさい」
「んも〜、提督さんってば……」
阿賀野の言った事を適当に受け流しつつ、櫛を探す。
「あれ、櫛どこいった?」
「え? 阿賀野はここら辺何も触ってないよ」
周りの艦娘たちがここに色々と物を置いていくせいで何処にあるのか全く分からない。これはいい加減掃除をしなければまずいな。
「流石に今からこのぐちゃぐちゃな状態で探すのは面倒だな……よし、櫛の予備なら寝室にあるしそこでやろう。俺は先行っておくから、阿賀野はドライヤーかけ終わったら来い」
「わかった!」
そう言うと俺は洗面所から離れ、寝室に向かう。
「……?」
すると何故か寝室から謎の音が聞こえる。神通がまだいるのだろうか。
ここで考えていても時間の無駄なので、とりあえず寝室の扉を静かに開けた。
そこには──
「ずるいずるいずるい……♥ こんなエッチな匂いを残しているなんて……んっ♥ こんなの、我慢出来るわけないじゃない……私もこんな事してほしい……♥」
そこにはベッドでうつ伏せになり、シーツに顔を埋めながら腰を浮かしてオナニーをしている矢矧が居た。
「提督♥ 提督♥♥ 提督♥♥♥ 私にも奥に提督の精液の匂いをつけて孕ませてよぉぉぉ……う゛くうぅッ……♥♥」
矢矧は寝室に入った俺に気づかないまま、自分を慰み続ける。
こういう時はどうしようか……よし、一旦ここから出よう。外から声をかければやめてくれるはず。矢矧にもプライドがあるからな……それよりもバレたら、非常に気まずい雰囲気になりそうだ。
自分の思考が一段落したころ、矢矧が気付く前に寝室を出る。そして気付かれないようにそっと扉を閉め、一息間を置く。
「……提督さん? 寝室の前で何やってるの?」
「あっ」
運悪く、ドライヤーをかけ終わった阿賀野がここに来てしまったみたいだ。
「ねぇ、どうかしたの……? そんなまずい顔なんてしないでよ……」
「いやそういうわけではないんだが……中で矢矧がな……」
「矢矧? 矢矧がどうかしたの?」
一瞬言おうか迷ったものの、姉だし大丈夫かと思い訳を話す。
「矢矧が……寝室で自慰をしてるんだ」
「自慰……?」
「そう、自慰」
阿賀野は少し戸惑ったものの直ぐに切り替え、返答する。
「えっと……矢矧は今日まで秘書艦になるの楽しみにしてたの。だから、その……あまり怒らないで欲しいというか、嫌いにならないで欲しいというか……」
歯切れが悪いものの、なんとなく阿賀野が言いたいことは分かった。
なんだかんだ阿賀野も矢矧のお姉ちゃんとしてちゃんと働いてるんだな、と心の中で感心する。
まあ俺自身は自慰行為をそこまで責めるつもりはない。何か減るもんじゃないしな。確かに最初はそういう抵抗感もあったが、駆逐艦たちが遠慮なくやるからさ……なんか慣れたよねぇ……。
「別に構わないさ、何しても……さて、寝室に入ろうか」
「うん」
阿賀野が気にしてないのを確認すると、呼び起こすように拳で扉を叩く
「そこに誰かいるのか?」
少々強めの語気で言うと、それを合図にして室内が騒ぎ出す。
木材が波のように擦れる音からベッドが軋む音……少し経つと室内が静まり返る。
『い、今すぐに出るわ!』
その声と同時に扉が開き、頬が赤く染まった矢矧が現れる。
「……汚れていたシーツを取り替えようとしていたの。その、ごめんなさい……」
目を合わせようとすると矢矧は露骨に目をそらす。
「そうか……神通は運んでくれたのか?」
「いえ……あなたたちがお風呂に入った後にちょうど神通は起きて、自分で部屋に戻って行ったわ」
「ん……ありがとな、色々と」
「まあ、お互い様よ……」
先程の状況を知らなければ淑やかな大和撫子そのものなのだが……今では自分がやっていた行為がバレないか不安になっている変態にしか見えない。
「そういえば、なんで裸なの?」
「そりゃ着替えが寝室にあるからだ。それに、阿賀野の髪を梳かさなきゃいけない。ちゃんと下は隠しているから大丈夫だろ?」
「ええ、別に何も問題もないけど……強いて言うなら、風邪ひくかもしれないから気をつけてね?」
「分かってるよ。ちゃんと気をつけるさ」
「それならいいけど……そろそろ朝ごはんの時間だから、早めに終わらせてね」
そう言うと、矢矧はそそくさと俺の部屋から出て行く。
「……意外だったな。もう少し素直な子だと思っていたが……」
「矢矧は意外と不器用だからね……私がいなきゃ駄目な子になっちゃうよ」
「流石にそれはないんじゃないか?」
「え?」
「え?」
何かすれ違いが起きてしまったみたいだが、いつもの事なので気にしないでやる事をやってしまおう。
「……ほら、そんなのどうでもいいからあそこに座って待ってなさい。俺は着替えておくから」
「ん〜、わかった!」
引き出しから下着やいつもの制服を取り出し、それらを着る。
「提督さん、早く早く♪」
「急かすなって……よし、終わったぞ。ちゃんと座れ」
阿賀野のところに移動し、櫛を手に持ってブラッシングしていく。
「ふへへ……久しぶりだね、これ」
「そうかもしれないな。最後にやったのはいつだったか覚えているか?」
「んーと……二十四日と二十二時間ぶりくらい?」
「そこまで覚えているとか怖いな……何秒かまで言えてたら正直引いてたぞ……」
意外かもしれないが、阿賀野は暗記するのが大の得意だ。俺が言った事を一語一句覚えている時もあったのだから、これくらい楽勝なのかも……?
「言わなくてよかった……」
……今のは流石に聞こえなかった事にしよう。世の中、触れちゃいけないことが沢山あるんだ。
「んふふー、それにしても本当にこういうの上手くなったよね」
「阿賀野が色々と頼むせいだよ」
「えー、私のせい?」
「まあ阿賀野だけのせいとは言わないが……いつかはちゃんと一人でやるようにしろよ」
「うーん……確かにそうだね。出来る限り努力するよ」
ああ、これは絶対に努力する気ないやつだと心の中で思いながらもブラッシングを続ける。
「提督さん、いつもありがとね」
「急にどうした?」
「ただ言いたくなっただけ。あまり気にしないで」
「そうか……まあ礼を言われて悪い気はしないな。どういたしまして」
そう言うと阿賀野はニコニコと機嫌が良くなった。
本当によく分からない子だな……。さっきの雰囲気が嘘みたいだ。
「さ、これで終わりだ。出来る限り丁寧にやったから時間はくったが、これで大丈夫だろ」
「うん……本当にありがとうね。じゃあ今日も……頑張ろっか!」
阿賀野は少し残念そうな顔を見せるも、直ぐに切り替える。
「……そうだな。今日も頑張ろう」
これは今日も暇やろなあ……。
◆◆◆
時は変わり現在午後五時頃、執務が終わり今ある所に俺はいる。
ということでやっほ〜☆
みんなのアイドル、提督ちゃんだよ〜!
突然だけど、今俺は何してるかわかる〜?
「本当に申し訳なかった」
「……」
うんうん、みんないいところついてるね!
じゃあ正解はね……
「なんなんですいきなり……そんなことした所で許すわけないじゃないですか……」
「……」
そう、鹿島に土下座してるんです……はい。
この事は千代田には絶対に内緒だよ?
まあうちに千代田いないけど。ついでに言えば千歳もいないんだけど。本当になんでなん?
ところでこれってやろうと思えば、提督という立場を使って隠蔽出来るんだよね。提督って結構ずるい事出来るしある意味良い職業だよ、全くもってね……。
どう? みんなも提督になりたいでしょ? 俺もやったんだからさ!!
因みに今はあの大戦の時よりも補償が色々とついているし、美少女と一緒に生活出来るから本当にいい職業だよ。提督になるための海軍大学校も何故か競争倍率は低いし試験も標準的で入りやすいからオススメやでほんまに。
「とりあえず顔ぐらい上げてはどうですか? 話し合いくらいはしましょうよ」
鹿島に言われた通り顔を上げる。
「その、本当に……すまなかった……」
「……当然ですが、そんな事言っても許しませんけどね」
ですよね〜。そんな簡単に許してくれるわけないですよね〜。
「そうですねぇ……本当だったら本部に連絡して貴方を裁いてもらうのが適切なのかもしれませんが……」
「ですが」と鹿島は続ける。
「私のお願いをなんでも叶えてくれるのなら、許していいかもしれません。まあ勿論貴方には拒否権はないですけど」
くぅ〜ん。許されなかったら俺はどうなんや……?
「ちなみに今からではないですから……精々怯えながら待っててください」
「そ、そうか……」
俺には到底叶えられないようなお願いなら正直お断りしたい所なのだが、拒否権はないらしい。流石に何となくでいいからどういうのか知りたいな。
「ちなみにどういう事を望んでいるんだ?」
「……ふふ、知りたいんですか?」
何か違和感を感じる。
鹿島の顔をよく見ると口は笑っているが、目が笑っていない。
「……別にいい。どうせ後になれば分かる事だ」
ヒェ……鹿島怖すぎンゴ。
俺に銃を向ける時もそんな顔していれば本気でお前を潰してたぞ。俺じゃなくて大井がな!!
「ならもういいです……早く帰ってください。貴方と同じ空気を吸うのも嫌なのですから」
…………えっ、もう終わり?
少し話がスムーズにいきすぎじゃない?
もっとこう……鹿島が泣いたり暴言を吐いたりとかするのかと思っていた。俺の考えすぎか?
「ほら、早く行ってください。私も後でここから出ますから──ッ!?」
「あなた達はここで何をやってるのかしら〜?」
突如部屋に響く一つの声。背後からだ。
「……龍田、何故ここに来た」
なんでよりにもよって龍田なのかなあ!?
今晩はやけ酒だわ。川内〜、楽しみにしてるからな!!
「何故って、それは勿論遠征の報告をするためですよ〜?」
「それは秘書艦の阿賀野達に報告しとけばいいはずだ。君は俺への報告義務はないというコトくらい分かっているのだろう?」
「ええ、分かっているわ〜」
迷いなく応える。またいつもの嫌がらせか?
「なら無駄な事をせずに秘書艦に報告をし、さっさと休息するべきだ。分かっていて何故そうする?」
「それはあなたが提督だからよ〜。寧ろそれ以外あるのかしら?」
「俺は何故秘書艦に伝えなかったと聞いているんだ。それは答えになっていない」
「いいえ、答えになっていますよ。提督は全てにおいて優先すべき人物なんだから、秘書艦よりも貴方に伝えた方がいいでしょう?」
「だからその報告義務は既に無くしてあると言っているだろう。話がループしてるじゃないか」
「ふふっ、でもしてはいけないなんて言ってないじゃないですか?」
うえええん!!
また龍田に揚げ足取られたよおおお! もう提督やめる!!
「……屁理屈はやめてくれ。だいたいもう俺は提督ではn「それは違う」……」
龍田の力強い声により言葉を切り捨てられる。
「どのような形であれ、私にとっては唯一の提督ですよ。誰がなんて言おうと貴方はここの提督。ね、そうでしょう……?」
何一つ濁りのない、いや、濁りすぎたがゆえに何一つ受け入れなくなった漆黒の瞳が、貫くように俺を見つめてくる。
龍田に限らず何故大井や山城、比叡とかいった艦娘たちが何故俺が提督であることをここまで好むのだろうか、コレガワカラナイ。
提督といっても殆どハリボテな状態だ。執務は秘書艦が殆ど終わらせちゃうし艦娘への教育だって放置状態。妖精も今じゃ見えないしな……。あれ、もしかして俺いらないやつ?
「……分かったよ。ここでするのもあれだ、執務室に戻るぞ」
「うふふっ、それはいいけど……ねえ、結局ここで何をしていたのかな〜?」
やべえ、話を戻された。
「君には関係ない話だ。さっさと戻るぞ」
「もしかして〜、わたしには言えない事なのかな……?」
ずるすぎる一言。
言えないなんて言ったら、何かやってましたって言ってるようなものじゃないか。
「……ただ鹿島と世間話をしてただけだよ」
「こんな所で護衛も付けずに〜? 秘書艦の娘たちはどうしたの?」
しくった。こんな所で世間話する奴が何処にいるんだよ。
「必要ないと判断して置いてきた」
「へぇ〜……ちなみに鹿島さんと何を話していたの?」
龍田の目がどんどんと嶮しくなっていく。
これはかなり怪しまれているな……この流れは非常にまずい。それっぽい理由を言って誤魔化してしまおう。
「……今日あった事についてだよ。そこら辺は察して欲しい」
そう言うと龍田は一回鹿島の方をチラリと見て、ため息をつく。
「ねぇ、一応あの艦娘は貴方に楯突いたのよ……? さっきから話してて思うけど不用心すぎじゃない……?」
龍田が言っている事は正論だ。
しかし、今は状況が状況。今回は鹿島を擁護させてもらうぞ。
「確かに今までだったらそうだったかもしれない。だが、もうその心配も無用だ……そうだよな、鹿島?」
「……ええ、そうです」
顔が強張ってるぞ鹿島ァ!! もっとニッコリしろォ!!!
「へぇ……まあいいですよ? 貴方がそういうのであれば」
龍田が鹿島の方に近づいていく。
「でも、もし提督を傷付けようとするのであれば──」
「必ず貴女を殺すわ」
「……」
肌が張り裂けそうなほどピリピリとした殺気が龍田から漏れている。その事から龍田が本気の具合が目に見えて分かった。
いくらなんでも流石にやり過ぎだろ。ここは戦場じゃないんだからさぁ……。
「龍田……既に俺がもう言ってあるから、そんな事しなくていい。だから早く行くぞ」
「今まで提督の指示で何もしなかったけど、もう次はないから……やるならちゃんと覚悟してやってね?」
「おい、聞いてるのか?」
「……ふふっ、そんなに怖い声を出さなくても聞こえてますよ〜?」
龍田はくるりと此方を向き、「さて、貴方の言う通り戻りましょうか」と言って入り口に向かっていく。
流石にこのまま鹿島に何も言わないで出て行くのもあれなので、一言だけ謝罪を添える。
「……鹿島、本当に色々とすまなかった」
「さっさと行ってください」
結局最後まで鹿島は怒りっぱなしだったわけだが、まあ今回は鹿島に非があるわけではないので何も言わずに指示に従う。
何というか……後悔しかないな。明日から酒を控えるべきだ。明日から頑張ろうと思いまスゥゥゥゥ……。
ーーーー
「はぁ……」
返答次第では私は本当に龍田さんから殺される所だった。今回は助けられた……いや、元を辿ればあいつのせいだ。少なくとも私に非はない……はず。
しばらくすると遠くから物音がし、此方に近づいてくる音が聞こえてくる。
「お疲れ様、鹿島。貴女のおかげで色々と上手くいったわよ。本当にありがとう」
色々と上手くいった……? 何がなんだか分からなくて話についていけない。
「なぜ私はお礼を言われなきゃいけないのでしょうか。大井先輩は脅している立場でしょう?」
「……別にそんなのどうでもいいじゃない。さ、早くこんな所から抜け出しましょう?」
大井はそう誤魔化し、出口に振り返り外に出ようとする。
恐らく今のは口が滑ったのだろう。見るからに機嫌が良いし、何より皮肉には聞こえなかった。
しかし何故こうなった。甚だ疑問だ。レイプしてきたあいつなら分かるが、何故大井先輩がレイプされていた時の写真で私を脅してくるのかさっぱり分からない。
そもそも今朝のやつだってーー今回は大井先輩に脅されてやった事なのだがーーいったい何が目的で計画したのだろうか。つまり上手くいったってのはその目的を果たせたという事? う〜ん……?
「早くしなさいな。先行くわよ」
「ま、待ってください! ちょっとだけ聞きたい事があるんです!」
とりあえず今は何が起きてるのか少しでも知りたい。情報を集めなければ。
「めんどくさいわね……まあいいけれど、何かしら?」
やはり今は機嫌が良いのだろう。言葉に棘がない。
「わ、私にはどうしても分からないことがあるんです。大井先輩は何故あんな人と一緒にいるんですか?」
「何故って……あの人が提督だからよ」
「でも大井先輩……あいつにレイプされてたじゃないですか……」
「え?」
私は知っている。あの日の夜のことを。
今でもハッキリと大井先輩の声を覚えている。
『提督……もうこんなことやめてください……ッッ♥』
『いやっ……♥ お願いします♥ なかっ……ナカだけはーーんんんんんッッ♥♥』
『あ゛ッッ♥ やめてッ……もうやめてッッ……♥♥』
──それは見ていて気持ちが良いものではなかった。
「……鎮守府の庭の端っこで大井先輩はあいつといったい、何をやっていたんですか?」
あの時一番衝撃的だったのは、よく見たら大井先輩の身体には痣や傷がとても多かった事だ。それは入渠をしても治らないような、とても生々しい状態になっていた。
この事で私は「もしかしたら脅迫されてやっているのでは?」と、頭に浮かんだ。私にはそういうプレイの一種であるとは到底思えない。
要するに大井先輩はあいつに脅されており、あいつの指示で大井先輩は無理にこんな事もやらされている……と考えた方が自然なのだ。
しかしその考えは間違っている可能性が高いという事がここ最近分かってしまった。今回だって何故かあの人は今回の事を謝罪してきたし、それを大井先輩は予測して私に上手く何でも言う事を聞かせるようにしてと頼んでくるし……これでは私の考えていた事と真逆の関係ではないか。
「……まさかあれを見たの?」
「ええ、そうです。大井先輩は脅されあそこでレイプされていた……違いますか?」
そう聞くと大井先輩は黙ったままだったので、もう少し続ける。
「……戦闘ではあまり役に立ちにくい私でも、大井先輩のために用立つことくらいは出来ます。大本営と連携すれば追放する事だって可能です。今なら脅迫なんてなかったことにしますし……その、ですから……」
それ以上言葉が出なかった。心の中では物凄く動揺しているのだ。
だって、冷静に考えればこれらは────
「香取型練習巡洋艦二番艦、鹿島」
「は、はいっ!」
「その事は無かった事にしなさい。貴女は何も見なかった……いいね?」
「……えっ?」
「ああ、ごめんなさい。ちゃんと質問には答えておくけど、それは貴女の勘違い。あれは全て同意の上よ。だから大本営に連絡なんてしなくても大丈夫なの。というか寧ろされたら困るわ」
────ああ、やはり私の勘違いだったのだ。心のどこかで、そんな気はしていた。
「んんっ、ちょっと喋り過ぎたわ。これでもういいでしょう? ほら、早く行くわよ」
「……ええ、そうですね。時間を無駄にしてすみません……」
結局これから私はどうなるのであろうか。表向きは提督に反抗している艦娘なのだから、そんな奴の味方など殆ど存在しないだろう。もしかしたら解体かもしれない……いや、普通に考えればこの状況でその選択はないか。まだこの事件は表に出回ってないし、それに大井先輩はこの状況をいかして絶対に私を利用する。
……あれ? そう考えるともしかして……初めから嵌められていた?
いや、そんなはずがない。あるわけないじゃないか。
「……そこまで暗い顔しちゃダメよ、鹿島。ああ、でもそっちの方が都合がいいのかも……?」
「……それってどういう意味ですか?」
大井は冷ややかな能面のような、ぞっとする冷笑的な薄笑いを浮かべ、こう一言言った。
「だってそうしなきゃ、あの人がここにいてくれないでしょう?」
今回の内容、私の文章力のなさで分かりにくいかもしれません……。
何かあったら報告ください。