モンスターハンター転生~全てがリアルになった世界で~ 作:メンダコ民族
「またか!」
クエストに失敗しました。
無慈悲な文字列を映し出した画面に向かって吠える。
彼は今、とあるゲームにて苦戦を強いられていた。
そのゲームの名前とは、モンスターハンターワールド。
「ソロ狩りも安定しないがマルチじゃもっと安定しないんだよなぁ……」
歴戦イビルジョー。恐暴竜と呼ばれ、目につくもの全てを喰らい、周囲一帯の生態系を破壊し尽くす。
と、仰々しい設定だが、所詮ゲームなのでそんな事は気にせず挑む。
挑んだ結果が見事な惨敗。悪態をつきつつ、報酬の確認画面、アイテムの精算画面をボタンの連打でろくに見ず飛ばし、ローディングを挟み調査拠点に帰る。
「今回結構本気で頑張ったんだけどなぁ~」
今回は本気でやった。
閃光弾と呼ばれる、モンスターを混乱させるアイテム、敵を少しの間行動不能にさせる即席罠。長期戦を見越して回復アイテムと回復アイテムの元となるアイテム。
「ここまでやって勝てないのはもう腕の問題かね……」
コントローラーを床に置き寝転がる。
「くっそふざけんなよ……アレでも使えってか…?いや、流石にアレは我がハンター信条に反する…やめとこ」
アレ、とはモンスターハンターワールド特有のハメ戦術、不動拡散と呼ばれる卑劣な術だ。
ヘビィボウガン、不動の装衣、癒しの円筒と呼ばれるアイテムを持ち、一方的にハメ殺す。
使える物は全て使い確実に勝つための戦いをする。まさしく「ハンター」の戦い方。この戦法を最初に思い付いたハンターには畏敬の念を禁じ得ない。
「出来ればアレは最後にしたいなぁ…歴戦イビルジョーにアレは中々成功しずらいだろうし…せめて得意な武器だけで最初は勝ちたい…。」
ゲーマー特有、いや、誰しもが持つであろうこだわり。余人からしてみれば無駄な物、当人にとってはかなり大事な思考。それを持っていたために、ハメ殺しは周回、モンスターを狩った際得られる素材集め。それにだけ使うと決めていた。
「あーーーー………寝よ。」
何度となく挑み、何度となく返り討ちにされる。
集中力など元々なかったように消え去り、昼寝をしようと立ち上がる。
「………?」
胸の中心部、心臓の辺りに鈍痛を感じる。
「……?……!?」
鈍痛が増す。かなり痛いが一時的な物だろうと思い我慢。
ただ今までにこんな痛みを経験したことがない。少し混乱する。救急車を呼ぶか?
(どうする……?)
生まれてこの方、救急車など一度も呼んだことがない。それは幸運というべきだろうが、事ここに至っては不運、というべきか、経験の差が救急車を呼ぶことを躊躇している。
「く……ぅ…!」
呼ぶべきだった。もう遅い。そう気づいた今では既に後の祭り。右腕で患部、痛みを感じる部位を抑えつけながら、膝をつき床に伏せる。
意識が薄れる。
死に対する恐怖、これからどうなるのかなど、そんなことは痛みで考えられない。
ただ耐える。痛みに。
意識が少しずつフェードアウトしていく間、先ほどまでやっていたゲーム、モンスターハンターを映していたテレビ、その液晶ディスプレイに宇宙を観た。