モンスターハンター転生~全てがリアルになった世界で~ 作:メンダコ民族
「──ググググググ……」
低い鳴き声を発するイャンクックを見ながら静かに後退する。
幸いここから森までは死角、そのまま帰ればいい。
戦う?ピッケル一つに薄っぺらい布の服で戦う?天地がひっくり返っても戦いにすらならない。無理だ。
圧を感じる。ランポスを前にした時と同じ種類の圧を。
身体がその存在に対して否応なしに萎縮し、生存本能が全力で警鐘を打ち鳴らす。
足音を立てず後ろの木々に向かう。
森から採掘場はまるでゲームのフィールド分けのようになっている。
一歩森から出れば、視界の通らない樹海などまるで無かったかのように、採掘場を見渡せる。
よってその逆もしかり。一度森に入れば身体を隠す事など容易だ。
森に入り、近くの茂みに身を隠す。
そこからイャンクックの挙動を確認すると、周囲を警戒し始めた。
時間にして10秒ほど。茂みからイャンクックを観察し続ける。
落ち着いた頭に疑念が浮かび上がる。ここはまさかイャンクックの寝床なのか?
…予感が的中した。
警戒を終えたイャンクックは身体を丸めて睡眠状態に入った。
このままここで鉄鉱石を掘るか?否、それは不可能だ。
ゲームならば敵対行動をとらない限り、モンスターは睡眠から目覚めない。ただ時間経過では目覚めるが。
これは残念ながらゲームではない。セーブ機能なぞ何処にもなく、命は一つだ。
ならば諦めるか?
それこそ不可能だ。
いつか村にはモンスターがやって来るだろう。侵入経路は不明、何年後かも不明、どんなモンスターかも分からない。
だが指を咥えてそれを見つめるだけでは事態は進展しない。
よってイャンクックを撃退させる。
今は大人しく村に帰る。策はある。
撃退に必要なアイテム、その調合素材と作成手順を考えながら帰路についた。
村に着きベッドに寝転がりながら思考を巡らせる。
イャンクック撃退に必要なアイテムは閃光玉、毒投げナイフ、以上だ。
使う物から分かるだろうが、閃光玉を投げて目を潰し、そこに毒投げナイフを投入、これを繰り返す。
これで撃退可能かというと、おそらく可能だろう。
イャンクックの設定に臆病、という情報がある。
他の大型モンスターからは逃走の一手を選ぶが、小型モンスターやハンター等からは自分の縄張りを守る、そんな性格をしているはずだ。
原作から時間が経っており、生態や性格、毒に対する耐性が変わっていないのならば可能だ。
毒テングダケの特徴については、クトゥナ経由で狩人に尋ねることにしよう。村長の息子が毒テングダケの特徴を聞くとか意味不明だしね。
毒テングダケの採取はまぁなんとかなる。採掘場までの道にそれっぽいキノコをよく見かけた。たぶんあれらのどれかだろう。
ナイフは調達出来る。村の倉庫に備蓄が結構ある。回収できるのでゲームのように使いきりじゃあない。
問題は光蟲だ。閃光玉を作るための素材。
村でも存在は確認されており、モンスターが迷い混んで来た際に使用し有利に戦闘を進めればよいのではないか?と、議題に上がった事がある。すぐ頓挫したが。
光蟲に限らず虫はストレスに弱い。よって繁殖はもちろん、飼育など以っての外。以上の理由から計画は頓挫。
ゲームでは普通に増やせていたため、もう少しモンハン世界の知識が村にあれば、話は変わっていたかもしれない。
このように、光蟲採取後は急いでイャンクック撃退に向かわなければならない。
ただそれは少々困る。道すがら光蟲採取など不確定要素が多すぎる。
イャンクックは採掘場到着後すぐに眠るため、睡眠前に警戒して目を凝らしている所に閃光玉を投げたいのだ。
よって光蟲採取後、光蟲を眠らせる事にする。
ネムリ草とマヒダケで出来る捕獲用麻酔玉。あれを作ろうと思う。
捕獲用麻酔玉とは、モンスターを弱らせた後に使うことで眠らせる、読んで字のごとく捕獲のためのアイテムだ。
虫に薬は効くのかどうか分からないが、甲虫種モンスターのゲネル・セルタスや、アルセルタスと呼ばれる虫系モンスターは捕獲が可能なので、まぁ、効くだろう。
調合手順としては、ネムリ草とマヒダケを乾燥させた後、粉末にでもすればいい。ゲームの表現は煙のようだったし。
光蟲はこれでいい。
閃光玉にはあとひとつアイテムを要する。
素材玉だ。
これはネンチャク草と石ころで出来る。
ネンチャク草は葉の表面に強力な粘着性を持つ植物である。汎用性が高いため村でも栽培されている。
石ころは…多分その辺に落ちてる石だろう。
石ころを2つに割り、内部を削る。卵の殻のように薄く、少しの衝撃で割れるように。
あとは簡単、2つに割った石の内部に光蟲を入れ、ネンチャク草で石を固定し、密封状態にする。
これでおそらくなんとかなる。
まずはネムリ草とマヒダケから取り掛かかろう。
モンスターとのバトルはイャンクック撃退戦後まで待ってください…こんな長くなるとは思いませんでした…