モンスターハンター転生~全てがリアルになった世界で~ 作:メンダコ民族
深い眠りから意識を覚醒させ、目を開ける。
視界に入るのは木製の窓から漏れ出る光ではなく、何も写さない暗闇。
仮眠は終わった。
目も次第に慣れ、ベッドから立ち上がり部屋から出る。もちろん音を立てずに。
村は無音、自分の足音も立てないので完全に静寂が耳を支配している。
イャンクックのいる採掘地は西。よって正反対の東を探す事にした。
未開拓の土地、しかも人間には勝てない相手が跋扈している地。そこを精神年齢はともかく、肉体年齢がわずか12の人間が行くなんてどうかしていると思う。
だが今行かねば未来は無い。何もしないで死ぬより何かして死んだほうがいい。
無事村を抜ける。
緑色の布、村に帰るための目印は確保が難しいため、道中でよく見かけるツタを片手に持ち、長さが限界に達すれば他から見つけて来て結び、継ぎ足す。これを命綱にすることにした。
鬱蒼とした木々、人が通った形跡の欠片も感じられない道なき道。足元の枝や石を上手く避け、躓き、転ばないように気をつける。山道は普通の道を歩くよりよっぽど体力を使う。
道中を歩いていると、よく木の根元が気になった。
葉や雑草で木の根元が埋もれていたが、それをどけるとキノコが自生していた。毒テングダケやマヒダケを見つけ、持っている袋に入れる。素手で触るとどんな悪影響があるか分からないので、落ちていた葉を手に重ねて入れる。
こんな感じで道を歩いているとよく違和感を感じ取り、その違和感を調べると、ゲームで言う採取ポイントだったりする。
転生特典ではなく、こっちに来てから身につけた特技だ。赤子の頃から今まで、絶えず観察を続けてきた努力の結晶である。もっと早くこの世界に産まれていれば、採取系クエストで大活躍できるかも、と偶に夢想していた。
歩き続けておよそ五キロ程。かなり歩いたその時、水のせせらぎを耳が受けとる。
(何処だ!)
歓喜の念が胸中を一瞬支配したが、その念をすぐさま落ち着かせ、身を隠すためしゃがむ。
水の音、その発生源を特定するため耳を澄ませる。
ゆっくりとしゃがみながら移動する。
身を隠しながら移動するには訳がある。
水とは生命の源。肉の体を持ち、血液が流れているのなら確実に必要になるものだからだ。
故に、水場は何らかの動物、モンスターが居を構えている可能性が確実、と言っていいほどありえる。
しゃがみながら移動をする。かなり腰に来て、しかも体力をかなり消費する移動方法なのだが、命には代えられない。
せせらぎを拾う耳は自分を導き、ゆっくりと、しかし確実に歩みを進め、目は水を映した。
小川があった。水深はそれなり、腰に届くかどうかの深さがある。
辺りを見渡し、ネムリ草を探す。ゲーム通りなら白い、という共通点があったはずだ。
よって辺りにそんな色の植物があれば、目立つためすぐに見つかるはずだ。だがそんな植物は何処にもない。よって川を下ることにした。
流れに逆らい上流を探してもいいが、この先に池なんかがあればネムリ草はきっと見つかるだろう。
確証は無い。強いて言えば勘だが、よく当たるのでこれに従っておく。
川に沿って歩く。探索が目的ならば緑の布を目印に使うより、ツタのほうが使い勝手がいい。
時々、川に接した岸に青い実を見かける。きっとあれはウチケシの実だろう。植物の成長過程がさっぱり分からないため、持ち帰って育てたりするのはやめておく。
そもそもどうやって育てるのか、そして出所が不明の植物を見つからずに育てる策は無い。よって放っておく。
川が少しずつ深くなっていく。おそらくこの先は池だ。
視界が開けた。
幻想的な湖畔があった。水面は月を映し、鳥や獣の鳴き声など一つとして無い。
おそらく前世では見ることはなかった、美しい光景に息を呑む。こんな状況でなければ湖に1日を費やして観賞しても後悔は無かっただろう。
心を完全に奪われ、しばしと呆然していたがすぐさま正気に戻り、ネムリ草を捜索し始める。
視界を遮るものは辺りには無いため、ネムリ草と思わしき白い植物はすぐに見つかった。
(嘘だろ…)
水場に居を構える動物。まぁ居るだろうと予想は出来た。だが希望はあったのだ。なんとかなるだろう、と、楽天的な考えだった。
対岸にネムリ草とソレはあった。群れだ。
長い爪に朱色の鶏冠、群れの中でも一際大きな体はこれから近づく、というだけでも恐怖が沸き立つ。
ドスランポスとランポス、その群れ。
近づかなければいけない、という諦めに近い感情が胸の内を占めた後、決意の感情が湧きあがる。
対岸に移動する。
群れに近づけば近づくほど、モンスターと人間との圧倒的な差がわかる。見つかれば食われるのは一瞬だ。
見えて来た。群れの中心にネムリ草が群生していた。
ネムリ草は本当に小規模だが、ガスのようなものを放っていた。おそらくあれで間違いない。
冷や汗を流しながらネムリ草に近づく。丸まって寝ているランポスの集団を通過する。ドスランポスの巨体に圧倒され、少し足を止めたが、ゆっくり、静かに歩く。
ネムリ草の元までたどり着き、根元を手で千切る。どうやら千切ったネムリ草はガスを噴出しなくなるようだ。そのまま一つ、二つと千切り、五あたりで作業を止め、来た道を戻り、湖を取り囲んでいる森に戻った。
ガスを噴き出す、原理が一切不明の植物を素手で持って歩くのには戸惑ったが、手袋は村から持ち出して来ていないため、そのまま帰る。
ツタを置いてきた場所まで戻ってきた。後はツタを辿って帰ればいいだけだ。
まだ先の事になるだろうが、将来はドスランポスをどうにかしなければいけないだろう。
どうにか出来なければ村の平穏など何処にも無い。だが先にイャンクックを撃退する。そしてその前にアイテムの検証だ。
来た道を戻り、朝日を浴びながら村に戻った。