モンスターハンター転生~全てがリアルになった世界で~ 作:メンダコ民族
ツタを利用して村に帰還した。
まだ父は寝ているらしい。
慣れ親しんだ家の扉を静かに開け、迷う事なく自室のベッドに直行する。
朝日が村を照らすが、身体は時間など気にせずに休息を求める。
自分の行動を鑑みれば、この状態は当然のことだった。
現代とは比べ物にならないほど粗末なベッドだが、最早使い慣れたベッドだ。村の中でも自分のベッドほど粗末なものは無いだろう。それぐらい粗末だ。
というのも、森で拾われその後成長し、自分の部屋を割り当てられたが、家具職人の都合が付かなかったので自分で作ったものである。
足が不揃いでよくカタカタと傾き、音が鳴るが、愛着が湧いたのでそのまま使っている。寝心地は最悪だが、これのおかげでどこでも野宿できるレベルだ。
ベッド寝転がり、申し訳程度に備えてある布を纏って泥のように眠った。
「──ヴァ」
暗闇のような眠りが、心地のいい微睡みに変化する。
よく聞く声が身体を揺らす。
「─い、オリーヴァ」
──わかった、わかった、もう起きる。
そんな言葉を頭の中で浮かべながら、自分の意識をゆっくりと深層から引き上げる。
「──あむ」
「ぅおっ!?」
耳をぬるりとした感触が包み込み、微睡みは終わりを迎えた。
慣れない感触は否応なしに自分の意識を引き上げ、覚醒させる。
「何だ!?どうした!?」
予想だにしなかった感触に身体を跳ね上げる。
「む?やっと起きたか…いつも昼頃には私の所に来るというのに……だから私の方から来た」
何一つ間違ってはいない、と自信に満ちた顔で宣う幼馴染。
自分のした事を自覚出来ているのだろうか?スキンシップなど、知り合ってから数えるほどしかしていなかったはずなのだ。以前からそれが増して来ている。彼女に一体何があったのか……。
「……まだ終わらないのか?」
「いや、昨日は別件でな……」
鉄は集まったか、との問いに正直に答えるべきかどうか、一瞬考える。
「別件?」
「あぁ、村関係の話だ、少し予定が重なってな、モンスターは関係ないぞ。」
「そうなのか?」
「あぁ、だからそう心配するな。」
少し、顔に不安を浮かべたクトゥナを安心させる。一瞬迷ったが、今のクトゥナに余計な心配を掛ける必要はない。よって事情は話さない事にした。村に予定があるのは嘘では無いので、疑われはしないだろう。
ちなみに前世はともかく、今世では腹芸なんてお手の物である。適当な言い訳を考えて、表情を変えず、相手の問いに即答する。会話の間を開けないことが大切だ。
「所で、武器はいつ作れるようになりそうだ?」
あまり会話に間を開けると、怪しまれる可能性があるため、話題の転換を図る。
「ふむ…今はナイフなどの刃物を修繕しながら学んでいる。七日もあればすぐにでも取り掛かれるぞ。」
「ナイフか、そいつは重畳。」
「む?何か使う予定でもあるのか?」
「毒キノコなんかの毒をモンスターに利用できないかと思ってな…」
「なんだと?まさか…」
クトゥナが訝しむ。戦いに行く、などと思っているのだろう。
「おっと!差し迫った危険はないぞ、備えあれば憂いなしだ。別に今すぐ、という訳でもない。」
「そうか…わかった。」
まさか馬鹿正直に怪鳥にぶつけます、なんて言える訳がない。即座に理由を話し、不信感を払う。毒を利用する実験をしようとしているのは事実であり、嘘ではない。真っ赤な嘘をつくのを避け、灰色の嘘をつく事でバレる確率はグッと下がる。大人から子供まで通用する必須スキルだ。
ナイフのメンテナンスを頼む手間が省けたのは好都合だった。何本使うかは分からないが、回収が可能なのは良いことだ。
投擲スキルは結構鍛えているので、おそらく当たりはする。ただ刃こぼれを治すのはクトゥナに頼む。俺はハンター式研磨術なんて知らないし、2回3回で研磨が終わる砥石なんぞも知らない。よって全てクトゥナに任せる。一応自分でも出来るが、クトゥナに頼んだ方が早いし確実だ。
「…オリーヴァ、その、もう…昼だな?」
「ん?もうそんな時間なのか…」
頬を何故か赤く染めるクトゥナに言葉を返した。
村の時間は日時計で観測している。時間を観測する文明は一応ある。モンハン世界に電気を利用する文明があったのかは分からないが、おそらく歯車時計くらいはあるだろう。
モンハン文明崩壊後、逃げ延びて村社会を築いているのがここだけとは思えない。願わくば文明レベルがこの村を越えていて欲しいものだ。
「その…昼食は私が作ろうと思うのだ……食べて、くれるか…?」
「作ってくれるならまぁ食うが…」
「そうか…!」
そうして、クトゥナは花の咲いたような笑顔を浮かべた。
(本当に何があったんだ…?)
カンニングでもしない限り、一生解けそうにない謎を感じた。
その後、何故か二人きりで食事をしたのち、村での用事を終わらせ、今に至る。
「さてと…」
夕暮れ、太陽が橙色に燃え、村を照らす中、袋からマヒダケとネムリ草を取り出す。
まぁ捕獲用麻酔玉、その粉末は作るのが容易なのだ。
マヒダケを小さく切り、ネムリ草をちぎり、まとめて糸に通して、干す。
これで2、3日後には枯れており、後はすり鉢か何かで粉末にする。
そして次、毒テングダケは単純に潰して水分を採る。作り方が間違っていないなら、この毒はナイフに塗りつけて4、5回当てれば、大型モンスターを毒状態にする劇毒だ。間違っても素手で触らないように注意する。
最後に閃光玉を作るための素材玉である。これが一番苦労した。
まず、片手に収まるほどの石を見つける。そしてそれを二つに割り、ノミである程度中身をくりぬく。問題はここからだった。
卵ほどの殻、衝撃を意図的に加えれば、すぐに割れるような薄さ。それを作るためヤスリを使って削る。
この方法、正直合っているかどうか分からない、麻酔玉と毒投げナイフの毒、それより確実な作り方なのだが、時間がかかる上に神経をかなり消耗するため、とてつもなく面倒なのだ。
よって、少しずつ作業する事にする。今日は卵型素材玉、その片割れを削って作業を終わらせる。
素材玉一つに何故こんな面倒くさい作り方を、と思うかもしれない。ただこれには理由があるのだ。
素材玉なぞ、ネンチャク草を使い石に光蟲を巻き付ければいい、とも考えたが、それだと投擲からの着弾だけでは光蟲が絶命しないかもしれない、との不安からだ。
光蟲の当たり所が悪ければ、モンスターの視界を潰す事など叶わず、逆にこちらの位置を特定されて直ぐ様殺されるだろう。
対してこれなら衝撃の逃げ場が無いため、確実に光蟲の絶命を引き起こし、石の殻が割れると同時に光を放てるため、手間を惜しまずこの構造にした。命には変えられないのである。
最後の課題として、光蟲の確保がある。策はあるが成功するかどうか分からない上に、確保に失敗すればイャンクック撃退の手段が土台から崩れ去る。
ネムリ草やマヒダケを取って来た夜、多めに採取しておいたネンチャク草を確認する。
光蟲確保の第一歩のため、まずは周辺のなんの変哲もない木の皮と、なんの変哲もない木の葉を集め出した。