魔王退治のご褒美にエリス様を娶った僕がアクア様に身も心も奪われる話 作:ブラックマンバ
僕達のベッドに、僕とエリス以外の誰かが入るなんてありえなかった。
少なくとも僕の友人や仲間達はこの部屋に入ったことすらない。
だがアクアは、滅茶苦茶なことを言いながら部屋に入り込んで、ガラクタを持ち出して、ベッドで暴れたあげくに僕を引きずり込んでしまった。
「ねぇねぇねぇ、それでさあ、うちのエリスとキミってどういう馴れ初めだったわけぇ?」
「アンタに話す必要なんかないっ!」
アクアは、元勇者である僕の身体を器用に足を使って押さえつけ、頭を抱いてその胸をぐいと押しつけてくる。こいつ……思ったより胸が……いやいや、惑わされてはいけない。僕にはあのエリスの慎ましい胸があるじゃないか昨晩だって……むにむにふにふに……ってぇっ!?
「お、おい、なんで胸を押しつけてくるんだよ?」
「ね、いいでしょ、教えてよ? 私に教えてくれたらぁ……私しか知らないエリスの秘密とか弱点とかこっそり教えてあげるからさ」
……こいつやっぱり最低な先輩女神だな。
「エリスがそろそろ帰ってくるからっ! こんなところ見られて離婚の危機とか断固お断りするんだけどなっ!」
「えっとぉ……”町内の会合に出かけてきます。お買い物をして夕方には帰ります”えへへ、あと数時間はたっぷりお話しできるわね」
アクアはメモを片手ににんまりと笑う。手の早い奴だ
ところで、僕がこの世界に来るにあたって選んだチート能力は魔力操作、自身の魔力だけでなく他人の魔力をも操作できるということに気がついた時には戦慄したものだ。
ご想像通り、相手が強い魔力を持っていれば持っているほどこの力は強大なものになる。相手の魔力を根こそぎ吸い取り、自分の力にして放つことが出来るからだ。
操作に関しては砂粒1つ1つに高い無属性魔力を込めて、投げつけるだけでモンスターの身体には無数の穴が空く、そんな能力だ。
そして、魔王に対しても周りの魔力を集めて一撃で終わらせた。ミ○デイン! ってやつだ。
そんなわけで魔王が倒れた今、バイトでやる街の周囲の定期的な狩り以外にはほとんど無用の長物なのだが、こういう時こそ相手の魔力を根こそぎ吸い取って行動不能にしなければならない。
「あ、あれ……くそっ! やっぱりダメか」
しかし、この女神は神気を纏っているために、操ることができやしない。こ、この野郎……っ!
「なあにもぞもぞしてんのよっ、うわっ! い~やらし~♪ 女神を押し倒して胸を
「ああくそ五月蠅い! わかった! わかったよ! エリスがこの世界ではアバターのクリスとして盗賊で活動してるって知ってるだろ? それで僕を助けてくれたんだよっ!」
僕がこの世界に転生して、まだ右も左も分からぬ頃。この駆け出し冒険者の街「アクセル」で出会った少女……イタズラっぽい表情を浮かべて「私、盗賊のクリスっていうの。このダンジョンに行くなら私を仲間に入れてよ、報酬は五分五分でいいからね」と話しかけてきた。
銀髪ショートカットの歳は15~6歳ぐらいの少女、猫のようにくるくると変わる表情、ふと見るとそれが凛々しい時もある。軽装にショートパンツ、この世界の女冒険者はなぜか露出度が高い子が多いのだけれど、クリスもヘソ出しなのがちょっとまいった、目のやり場に困る。
「う、うん、よろしく頼むよ」
僕は少しの逡巡の末にクリスの手を握った。
冒険者として基礎的なことは初心者研修会で学んだが、実践は全部クリスが教えてくれた。屋外での水の確保、火の付け方からテントの張り方、夜営にダンジョン内での警戒にトイレの仕方まで。
「私ってね、人助けが趣味……というかそういう性質なんだよねぇ」
基本ソロであちこちのパーティに潜り込んでは手助けしていたらしい、
盗賊のくせに、と僕はその時思った
「ギルドにいたキミが、なんだか迷子みたいに見えちゃってさ……あは、なにその顔、実際ボクよりもチビなんだから、おねーさんに全部任せなさいっ!」
と、無い胸を叩いてクリスは笑う。僕は当時13歳、ちなみに巨乳が好きだ。
「ふぅん、意外とふつーの出会いね、つまんないからもっと盛り上がるところを話なさいよ」
アクアの身も蓋もない感想に、僕はさすがにイラッとしたが話を進めた。この後はクリスと別れて別のパーティに入れてもらい、冒険者としての腕前を磨いていった。ちなみに職業は魔戦士……魔力を身体に纏い、攻撃力や防御力を上げて殴るという僕のチート能力にぴったりな職業だ。
兎も角、クリスと再会したのはその2年後。王都での防衛戦の最中だった。
「あ、ひっさしぶりー! なんか凄いかっこよくなってるね、おねーさんびっくりしちゃったよ……背はあんまりかわんないみたいだけど。くすくす」
あの頃と変わらぬ姿と頬傷を撫でながら笑う顔を見て、僕はクリスにいいところを見せたくなった。成長した僕の姿を見てもらいたい、そして一緒のパーティに入ってメンバーになって欲しい、そんな下心までむくむくと首をもたげていくのがわかった。
「ねえ、まだ1人なら僕のパーティにちょっと入ってくれないかな、クリスなら大歓迎だよ!」
「え、いいの? それじゃあちょっと稼がせて貰おうかな♪」
この頃、魔力操作による無敵コンボが決まるようになって僕は少し傲慢になっていた、油断していた、いや間違いなく天狗になっていた。
そんな僕の心の隙をついて、魔王軍は僕に対して魔力を持たないサイボーグアサシン部隊を差し向けきた。魔力値最低のゴブリンをベースに極限まで隠密能力を上げたゴブリン忍者隊。
僕達のパーティは森に誘い込まれてこいつらの縦横無尽な攻撃に晒されてしまう。
「こいつらやばいよっ! 素早い上に猛毒の爪を仕込んでるっ!」
クリスの索敵能力とカバーリングのおかげで僕達のパーティはなんとか連携を保てていた。「カッコイイ僕」を見せつける暇なんてありゃしない。
ゴブリン忍者の猛毒塗れの爪がクリスの死角から飛び込んだ時、僕は思わずその前に身を躍らせた。
「クリスっ! あぶないっ!」
僕はあっさりと死んだ。
「……あなたは死んでしまいました……本当に残念です……本当に……」
真っ暗な空間でへたり込む僕の目の前には……この世界の女神、エリス様が待っていた。とても、とても悲しそうな顔で僕の胸は締め付けられそうになる。僕は二度目の死を迎えてしまったらしい。
「……一応、あなたが復活できるかどうかの瀬戸際なので……少しお待ち下さいね」
僕の前で頬を掻く仕草、どこかで……見たような……「あっ」と僕の頭の中で閃く。クリスは……エリスだ、間違いない、じっと食い入るようにその顔を見つめる、頬傷も無く、髪型を変えてはいるが、その顔付きは間違いない。他人のそら似というには似通いすぎている。
「エ、エリス様……あなたは……もしかして……!」
「あっ、援軍が間に合いましたよ! よかったですね。でも生き返ることが出来るのは1度だけですから気をつけてくださいね! はい、ではまた現世!」
「ちょ、ちょっと待って! 僕の話を……」
僕が何か言おうと思ったとき、仲間のアークプリーストのリザレクションが成功した。そうして、僕は次の転生先に行くことなく地上に戻ることとなった。心に
僕はクリスの姿の奧に、あの女神エリスを見るようになった。うん、今度教会に行ってエリス信者になろう(アクアはもの凄く嫌そうな顔をした、ざまあみろ)。
さて、蘇生した僕は王都で療養することになった。高級ホテルの一室にクリスが見舞いにくる。
「ごめんね、私がもっと気をつけてたら、あいつらに森に誘い込まれることなんて……それに私の身代わりに……」
「いや……アレは完全に僕を標的にしていたんだ、クリスがいなかったら全滅していた。むしろ僕がクリスを巻き込んだって形だし……それで僕が1度死んだだけで済んだのは僥倖だよ」
「キミねえっ! 人間1度死んだら普通は終わりなんだよ! 蘇生出来たのは運が良かっただけなんだよっ!」
「ははは、そうだね。でも僕にはクリスっていう
「わっ……バカもう何言ってんのよう……でも、私……」
「そんなに悪いって思うならさ……僕とデートしてくれない? あっ、いや、えーっとその、リハビリに付き合うと思ってさ、いいでしょ、ね?」
顔を真っ赤にしてクリスの手を掴む、弱みに付け込むようなマネだけれど恋に卑怯もお経もないってイギリスのえらい人が言ってた。
と、いうわけでリハビリデートの日々が始まった。蘇生疲れといまだに毒で軽く痺れる身体に寄り添うようにしてくれるクリスに、僕は天にも昇るような気持ちになった、だがまだ昇天するには早すぎる。
僕は毎日会えるチャンスを使って、必死になってくどき落とした。
「お願いしますっ! 僕とつきあってください神様女神様クリス様っ!」
「も、もうっ! そ、そんなに必死になって……ああっ! こんなところで土下座なんかしないでよもうっ! わかった! わかったから! 付き合うっ! 付き合うからぁっ!」
こうして僕はクリスと付き合うことになった。
そしてクリスがパーティに入って1年後、魔王を倒した。僕の意識は天界へと転送される。
「おめでとうございます。見事に魔王討伐を果たしましたね……その褒美に何を望みますか?」
「僕は……クリスと……いや、女神エリスと結婚したい! 一生傍にいてほしい!」
エリス様が驚いたような顔になって首を左右にふる。
「え、えっと、それ困りますっ! 困りますからっ! というかあなたにはクリスっていう恋人がいるじゃないですか!?」
「僕はクリスがエリスだって知ってるっ! 僕は
「ち、違いますぅっ! 私はエリスですっ! クリスではありませんっ!」
「いや、どう見てもクリスはエリスだし……僕はあなたが欲しいんですっ! エリス様っ!」
エリス様は少し困ったような顔になり、クリスと全く同じ仕草で頬を掻く。
「キミってさ……思ったよりも大胆だよね、私にこんな求婚してくる奴なんていなかったよ……うん、ほんとに」
それはクリスの口調だった。
「でもいいの? 女神様を娶りたいなんて大胆なこと言っちゃってさぁ、後悔なんかしないよね?」
「当たり前だ! 僕はエリスと結婚したい!」
「仕方ないなあ……それじゃあ末永く……お願いしますね、旦那さま」
こうして対外的には”クリス”として僕と結婚、パーティの皆に祝福されてアクセルの街で新婚生活を始めた。
魔王討伐の報奨金で、郊外にある落ち着いた雰囲気の古い屋敷をリフォームしてそこを新住居とした。2人で暮らすには少し広すぎたかな? と思ったけれど子供が生まれたら、住み込みのお手伝いさんとか色々と雇おうと考えている。
「ふうんふぅんへぇー……あんたそうやってエリスを娶っちゃったんだぁ、なるほどぉ」
アクアはふむふむと頷いて、僕の頬を馴れ馴れしく撫でてきた。やっていることは最悪なのに、口元を軽く緩ませ、まるで祝福するかのような慈愛に満ちた笑みを浮かべていて、その仕草は間違いなく女神のそれだった。
だが、次の言葉があけすけすぎた。
「それでセックスの方はどうなの? エリスのことだからすっごい淡泊だろうけど」
「なっ! そ、そんなの答えられるわけないだろっ!」
いや昨夜は……その若さにまかせて……3回ほど……このベッドの上で……意識してしまうと顔が熱くなりアクアの顔が見られなくなる。
「うわ……なにその顔、めっちゃムカツクんですけど……」
「うるさいよ。なあ、もういいだろ、手を離せよ」
だがアクアはその腕を僕の腰に回してぎゅっと抱きついてきた。
「こうやってぇ……エリスがあなたに抱きついて、あんあん♡ って喘いでるんだぁ……かぁわいい~♡」
「なっお前っ……ばかっ! なに腰動かしてるんだやめろよっ!」
アクアは僕の下で艶めかしく腰を動かしながらわざとらしいあえぎ声をあげる。僕のエリスがこんなはしたない声をあげるわけがないが、ズボンの中がついつい硬くなってしまうのが分かる。急いで離れようとしたところでアクアは呟いた。
「あ、そうだ、私ってね
アクアはそう言って手の平をヒラヒラとさせると見覚えのある指輪を取り出した。
「えっ!? ばかなっ、どうやって僕の指輪を!?」
魔王軍討伐3ヶ月分のお値段、金とプラチナとオリハルコンを混ぜ込んだシンプルなデザインの結婚指輪。裏側にはエリスと僕の名前のイニシャルが刻んである。
僕達の大事な契約の証だ。
「それじゃ指輪探しゲームのはじまりはじまり~♡」
そう言って指輪を口の中に入れてしまう。僕は慌ててアクアの口をこじあけた。ない! ない! ない! 指輪が……ない!
にへらと笑みを浮かべたアクアは僕を解放してベッドから抜け出ると床の上に立つ。
「さぁって、私の身体のどこに隠してあるのかなぁ~?」
唖然とする僕の前で、アクアは服を脱いでいった。