※この作品はR-18です。

機械人形のアティチュード   作:逆月真夜

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人に従うのは簡単だ。自分で考え、何かを成すのが難しい。

遠くで誰かが叫んでる。俺を呼んでるのかもしれないし、罵ってるのかもしれないし、嘲ってるのかもしれない。

何にしろ、周りがそれ以上の騒音で掻き消すから、何を言ってるか、聞き取れたもんじゃない。

 

少しずつ目が醒めていくのがわかる。

 

悲鳴。

 怒号。

 銃声。

 発動機の音。

 地面の揺れ。

 土の臭い。

顔の皮膚と、全身で感じる、大地の固さ。

 硝煙の臭い。

 そして、鉄分を多く含んだ濃い、血の臭い。

 

それが、今の俺が感じ取れる五感の全て。少しずつ醒めていく意識の中、自分が誰なのか、ここが何処なのか、何のために此処にいるのか思いだす。

「…ぁあ、…そうだ。」

 そう、思い出した。膠着状態が解けた前線からの後退中、敵の追撃を受け、焦った新兵が落とした手榴弾の爆風でやられたんだったな。

 

 目を開け、霞む視界の中、周囲を首が動くかぎり見渡す。

 空だ。鉛色の空が見える。どうやら、俺は仰向けに寝ているらしい。

 そのまま視線を下へ向ける。

俺の身体が見える。目立った外傷や、四肢欠損はなさそうだ。

 「はぁ。」一息つき、安心する。

 俺はまだ生きてるし、まだ生きられるらしい。

 四肢に力を込め、血が通い、筋肉が収縮するのを感じ、生きてることを実感する。

 そのままゆっくりと、蝸牛が這うように横を向く。

 

戦場の苛烈さを物語る、瓦礫の山。

 倒壊した建物。

 車の残骸。

 そして、敵味方入り乱れた、ボロ切れのような死体。

 それが、この場にある全て。

 

そんな事を確認しているうちに、いつしか音は遠のき、遠くで木霊するだけになっていた。

 「どうやら、敵さんは追撃に夢中らしいな。」

 周りの安全を確認してからゆっくりと起き上がる。節々が痛むが、行動に支障はない。

右胸のポケットからタバコを取り出し、一本加える。

「あ?マッチ何処やったっけ?」

ほんの数時間前まであったものが、いつもの定位置に見当たらない。

「あー」

今朝の濃い霧で湿ってしまい、使い物にならないと捨てたんだった。

「仕方がねぇ、生きるためだ。」

軽く指を鳴らす。乾いた空気のなか、小さな弾けるような音が高く、軽やかに響き渡り、人差し指の先にマッチほどの火が点る。

タバコに火を点け、今まで散々嗅いだ硝煙のそれと変わらない煙で、肺を満たしながら考える。

 「さぁて、装備も手元にまだある。泥臭く生き足掻きますか。」

 足元に落ちていた小銃を手に取り、生きるために歩き出す。ここは生者が居る場所には静かすぎるから。

 俺は生きるために、また歩き始めた。

 

 

歩きながら、ふと考える。

 

-恐怖を感じなくなったのはいつからだったろうか?

答えは簡単だ。

魔法を使い始めた「あの日」から。-

 

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