第9巻から長いこと間が空きましたが、なんでも1月中には原稿自体はできていたとか。
最新刊の発売記念というか、これを契機に書きました。
最新刊も出ますし、もっと二次創作も増えてほしい……。
***
「官能小説を書こうと思うの。それも、とてつもなくえっちぃのをね」
などと突拍子のないことを宣ったのは、天使も裸足で逃げ出すような美少女、山田エルフである。
陽光を紡いだかのような、輝く金糸の髪。乳白色の肌はしっとり滑らかで。すらりと伸びた脚は白く美しい。絵画からそのまま飛び出てきたような、可憐な少女である。
もし、ここに彼女をよく知らぬ者、例えば学校の同級生などが居合わせたなら、我が耳を疑ったに違いない。かように可憐な美少女の口から飛び出すには、それは、あまりに過激な台詞であった。
しかし、ここは彼女の起居する一軒家である。クリスタルパレスと名付けられたその洋館は、彼女と、彼女をよく知る者しか立ち入ることを許されていない。そして、エルフのことを少しでも知る人にとって、そうした突拍子のない言動は、犬が吠え、鳥が鳴き、魚が泳ぐのと類を同じくする、疑問を差し挟む余地のない、当たり前の言動だったのだ。
もちろん、恋人である鈴木一郎は驚かない。
彼は、本から顔を上げて、また面白いことがはじまったとばかりに、愉快そうに尋ねる。
「へぇ。どうしてまた官能小説を。エルフさんの分野はラノベのファンタジーだよね」
山田エルフはラノベ作家である。代表作も、アニメ化を控えた『爆炎のダークエルフ』。タイトルからも明らかなように、バトルものファンタジー作品である。
「決まってるじゃない。書きたくなったからよ」
長い睫毛越しに、おおきな琥珀の瞳がまたたいた。そこには、好奇の色がありありと浮かんでいる。
「わたしはとうとう大人の階段を登ってしまったわ。とっても、すっごい体験をしてね。そして、思ったの。この素敵な体験を、このエルフ様のすばらしい筆致で描いて、世の夢見る乙女ちゃん、オトコノコに下賜してあげるのが、この美少女天才作家たる山田エルフちゃんの務めなんじゃないかって」
「まさかの官能小説家転向宣言だね」
「分かりやすい文章に定評のあるエルフちゃんよ。わたしの作品は、きっと性教育の教材として全国の学校で採択されることになるわ」
公教育で実施するのはあくまで性教育であって、性技巧の訓練や娯楽の提供ではない。けれども、と一郎は思う。
「いいね。もしもそんな教材を使った授業があれば、きっと誰もが読書に夢中になるよ。本を読む楽しさを知って、小説ファンが増えるに違いない。きっと、国語の成績だって伸びるさ」
「結論が出たわね。国は公教育の教材に官能小説を導入すべきなのよ。それも、このエルフちゃんの書いた官能小説をね」
という驚愕の結論を導き出したエルフは、ふと表情を変えて、しっとりと、たおやかな微笑を滲ませて言った。
「なにより、せっかくの一郎とのはじめてなんだから、忘れないうちに記録に残しておきたいのよ」
まっしろな頬を、ほのかに朱に染める。花も恥じらう、乙女らしくいじらしい表情である。
たおやかな少女像は、しかし、次の瞬間には散華した。
「だから、淫語を使う練習しようと思うのよ!」
良いことを思いついたとばかりに、きらきら琥珀の瞳を輝かせるエルフである。
そんな彼女を、一郎はまぶしげに見やる。ころころ表情を変える活発さもまた、エルフのおおきな魅力のひとつであった。
一郎は破顔して、本を閉じた。
「流石、エルフさん。勉強熱心なのは作家に必要な資質だよ。実は、そういうのにぴったりな本があってね」
「あら、いったい何かしら」
エルフは、一郎の腰掛けるソファーにすとんと腰を落とすと、滑るように身を寄せる。ふわりと甘い香りが一郎の鼻腔をくすぐった。
我知らず、一郎の頬がほころぶ。声音もいっそう楽しげに、彼は言う。
「官能小説表現辞典ってのがあるんだ」
一郎は、仕事道具の入ったボディバッグから、タブレット端末を取り出して見せる。
それは、ちょっとした書架である。一キロ足らずのちいさな筐体に、好き勝手に買いあさっては裁断してスキャンにかけてきた、数百冊の本が収まっているのだ。
『さくま書房 官能小説表現辞典』
という文字が、タブレット端末の液晶画面に表示される。
「はい、どうぞ」
と差し出された端末を、エルフはさも当然のように受け取った。
「へぇ、こんな本があるのね。こんなの読んでるなんて、一郎もスキモノねぇ」
とからかうエルフに、一郎は大真面目に答えてみせる。
「小説の雰囲気は、文体におおきく左右されるからね。特に大きいのは、語彙選択と文のリズムかな。官能小説をそれらしく書くには、語彙がことさら重要だと思うんだ」
というのが、前世において「百の文体を持つ男」と渾名された一郎の持論である。圧倒的な読書量という基礎の上に、それぞれのジャンルに応じた文体を築きあげたのが、この男の偉業である。
彼は、緻密な描写のファンタジーを書くことを得意としていたが、機知に富んだ軽妙な文を書くこともできれば、しっとり不気味の香るホラーや、勢いのある青春小説さえも描くことができた。そのどれもが、それなり以上に優れた筆致であったから、人々は彼をそのように渾名し称えた。
そんな一郎に、気持ちの上では一歩も負けていないどころか、当然のように自らを高みに位置づけるのがエルフである。
彼女は、どこまでも大上段に宣うた。
「ラノベの場合は、読みやすくって面白い文章がベストだけどね。つまり、わたしこそがライトノベルなのよ。分かったかしら、我が駄目弟子よ」
「それについては、一理あると思うよ。その上で、僕は僕のやり方を貫くことにするさ。……という回答で良いかな。我がラノベの師匠にして、最大のライバルよ」
「よろしい。そうでなくっちゃ張り合いがないわ!」
楽しそうに頷くと、エルフは端末に目を落とし、さっと目を通す。
「――ふぅん。真面目に馬鹿なことしてるわね」
というのが率直な感想であった。
「こんなの、ほんとうに淫語を使う参考になるのかしら」
などと言いつつも、彼女は乗り気だった。ギャグマンガの頁をめくるように、わくわくした様子でタップする。
「ま、エロバカゲーの参考にはなるかもしれないわね。ほら、見なさいよ、これ。男の人のアレのことを『回転ドリル』ですって!」
同書には、実際に官能小説で使用された表現が収録されている。つまり、どこかの作家が実際に「回転ドリル」と陰茎を表現したのだ。
「いやいや。実際に作中で使ってみれば、それっぽく聞こえるのかもしれないよ」
「うーん、こうしかしら。『俺の回転ドリルが唸りをあげる。膜を穿てと轟き叫ぶ。超ドリル・スペシャル!』」
言ったそばから、エルフは吹き出した。一郎も苦笑いである。
「エルフさん、それじゃあ必殺技じゃないか」
「そうね。それも『ぶるまー2000』や『痴漢者トーマス』を彷彿とさせる、えっちでおバカな必殺技ね」
「えっ。似たような必殺技が登場するゲームがあるのかい」
「あるわよ。そりゃあもう。ブルマーエナジーを使って放つブルマーハンマーとか、“胸が爆発したような錯覚”すら覚えさせるバスト・バーストとか、おもしろおかしい必殺技のバーゲンセールね。カットインまで入って、演出にも凝ってるわ」
「この国のエロゲーは一体どこを目指してるんだ……」
「笑いの頂きじゃないのかしら」
あるいは道無き道かもしれない。道に迷ってあちこちに手を出し、その結果、トンデモな作品を創りだすのだ。そういう業界の在り方が「修羅の国」と呼ばれる原因の一端を担っている。
「空飛ぶ家から飛び降りながら合体する『
「インパクトは強烈だけどね」
ひとしきり笑った二人は、ふと、黙り込む。
突如舞い降りた沈黙のなか、ふたりはじっと見つめ合っていた。
それが合図であったかのように、一郎は切り出した。
「でも、参考になるかどうかは、実際に使ってみないと分からないよ」
一郎の手がそっと、エルフの手に伸びる。
それを、エルフは進んで受け入れた。指をひらいて、一郎の指に絡ませる。そうして、ふたりはごく自然に、仲睦まじく手を取り合った。
とはいえ、何の予兆もなしに、そのような合意に至ったのではない。
バカ話をする傍ら、エルフは何事か期待するかのような視線を一郎に投げていたし、一郎は少しずつ、けれどもどんどんエルフとの距離を詰めていた。黙り込んだときには、お互い吐息を感じられるくらいに近くで見つめ合っていたのだ。
「ん……」
ふたりは、そのまま唇を重ねる。
触れ合わせるだけの、初な接吻。
かと思えば、そのままじっと唇を合わせて何秒も、ひょっとしたら何十秒も、互いの感触を確かめ合った。
やがて、どちらからともなく唇が離れる。
「エルフさん」
「えっと……」
エルフの声が、羞恥にうわずった。
一郎の手が、絡め合ったエルフの手を、自らの股間へと導いたのだ。
「ここのこと、どう言うの?」
「えっと、『回転するドリル』だったかしら」
思わず一郎は吹き出した。
「はははっ。やっぱり、これは強烈だよね」
「もうっ、せっかくの雰囲気が台無しよ」
と唇を尖らせるエルフも、目元が笑っている。
「ねぇ、他にどんな表現がある?」
とタブレット端末を差し出す一郎。
それがソファーのすぐ前のテーブルに置かえるなり、エルフは、片手で頁を送る。
「そうねぇ、『屹立する肉塊』かしら」
などと言う間にも、エルフの片手は一郎の陰部をさすっていた。
「屹立してる?」
「えっと、まだ柔らかいままかしら」
まっかな顔で、エルフは一生懸命に、指先に感じる感触を語った。
――それが、一郎にはもどかしい。
「エルフさん。そんなんじゃあ取材にならないよ。小説のネタを取材するときは、もっとよく五感を使って確かめなきゃ。掴んでよ」
「取材……そうよ、これは取材でもあるもの。仕方ないわねっ」
一郎の言葉に背を押されたエルフは、ぎゅっと、ズボン越しに握り込む。
「うわぁ……熱い……」
エルフは、ほうと息を吐いた。
一郎が興奮しているのがよく分かる。どくんどくんと脈動して、その度ごとに一回り、また一回りと大きくなるのを、文字通り手に取るように感じることができたのだ。
「これなら『熱い塊』ってのがぴったりね」
エルフは、タブレット画面に広がった紙面に、おあえつらえ向きの表現を見つけた。
「へぇ、熱いんだ。それじゃあ堅さは?」
「ぎゅっと握ると、か、堅いわ。表面は柔らかいのに、芯のほう、奥にいくほど堅くなってるのが分かるの。なんだか不思議な感触ね」
という詳細な報告に、一郎は満足気に頷いた。
「五感のうち、触感はよく取材できたみたいだね。それじゃあ、今度は視覚だよ。さぁ、脱がせてみて」
「わ、分かったわっ」
エルフは震える指で、一郎のベルトに手をかけた。指の震えは、緊張と興奮の為である。
前回は、一郎自ら腰履きを脱ぎ去っていた。けれども、今回は他ならぬ自分が脱がすのである。
異性の下着に手をかけ、性器を露出させるという行為に、エルフは目が眩む思いである。
「こうして開けるのよね……はぁ……」
自然と、息が荒くなる。動悸が早くなる。
夏らしい七分丈のズボンを、白いベルトが留めている。そのベルトを、かちゃかちゃと指が弾く。
なんとかベルトを外すと、ジッパーを摘んで下ろした。じぃと音がして、下着が現れる。それに手を掛けると、
「えいっ」
と一息にずり下ろす。
ぶるんと天を衝いて、その肉棒は現れた。
「これが一郎の『傘肉』ね。えらが張って、とってもエッチな格好をしてるわ。……回転しないわよね」
「そういう機能は付いてないよ。それにしても、『傘肉』ってのは言い得て妙だと思わない?エルフさんの膣をひっかくのにちょうどいい形をしてるよ。出し入れする度に、隅々までひっかき回すんじゃないかな」
「す、隅々までひっかくのね……」
一郎は、エルフの興奮を煽りたてる。
まっしろでほっそりした指が、愛おしげに剛直を撫でた。一郎のそれは、エルフの指とは対照的に、太くごつごつして逞しい。
「それじゃあ、もう一度触覚の取材だ。――どうかな、触ってみての感想は」
取材だよ、と一郎に背を押され、エルフは言葉を接いだ。
「か、固いわね。それに、太い血管が浮き出て、なんだか怒ってるみたい……」
「じゃあ、この頁にある表現のうち、どれが近い?」
一郎は、タブレットを示す。
「そうね。『黒地蔵』っていうにはあまりに肌色だけど、それくらいゴツゴツしてるかもしれないわね。血管とかは特に。……ねぇ、これ触っても痛くないの?」
陰茎に浮き出た血管を、エルフは指先でおっかなびっくり擦る。
「痛くないよ。というより、ぎゅっと握って欲しいな」
「こ、こうかしら」
「そう。そのまま上下に擦って」
まっしろな指が上下する度に、赤黒いモノが、にゅるりと顔を出したりひっこめたりする。その度に一郎が「気持ちいいよ」とか「ああ、今のはとても加減が良いなぁ」とか反応するものだから、エルフはすっかり夢中になった。
はじめ肉棒の観察に一生懸命であったのが、いつしか上目遣いになって一郎の顔を伺うようなった。愛する男の浮かべる気持ちよさそうな表情と、男の陰部とを交互に見比べる。
そうしてエルフは、この淫らな行為にのめりこんでいった。
「そのほかには、どんな淫語がある?」
という言葉が降ってきて、はじめて、自らが淫行に耽ってたことに気づいたのだった。
「そ、そうね……」
エルフは火照った顔を振って、タブレット端末へと視線を逃す。目に付いた語をそのまま読み上げた。
「アイスキャンディ」
そうした初な様子のエルフを、一郎は愛おしく見やる。くすりと、面白そうに微笑んだ。
「『アイスキャンディ』よりは、この『熱い塊』って方がしっくりくるんじゃない?」
「ちょっと、いま笑ったでしょ!」
エルフは、うっすら赤らんだ頬をふくらませる。
「だいたい、こんなの辞典に載せてるほうがおかしいのよ。なによ、『アイスキャンディ』って。ギャグ小説でも書いてるつもり? 他にも『甘いお菓子』とか、どういうつもりなのよ。本物は、なんていうか、もっとずっと生々しいじゃない」
「いや、分からないよ。舐めてみたら、ひょっとしたら甘いのかも」
「これが……?」
エルフは、胡乱気に一郎の男性体を見やる。目をためつすがめつして、これが一体ほんとうに甘いのだろうかと訝しげである。
「むしろ、『異形の肉』とかじゃないのかしら。マーラ様みたいな」
「『きついお肉はん』ってのもあるね」
「なによ、そのはんなりして語尾は。京都弁?」
などと話をしながらも、エルフはなかなか行動に移ろうとしない。躊躇っているのだ。好奇心旺盛で思いきりの良いエルフにしては、珍しいことである。それほどまでに、異形の肉塊は生々しかったのだ。
「味はともかく、においはどう?」
「に、におい……」
エルフは瞳を揺らした。躊躇いと好奇心、そして期待がせめぎ合っている。
しかし、結論はすぐに出た。エルフは、思い切って顔を近づけてみる。
「鼻の奥がつんとした感じになるわ。でも、どうしてかしら、全然イヤな気がしないの。良いにおいじゃないのに、ずっと嗅いでいたくなるような……」
とろんと惚けた声で、赤裸々に感想を述べる。
その言葉に嘘はない。
エルフは、胸いっぱいに息を吸い込んで、浅く息を吐いてはまた吸ってと、男の匂いを嗅ぐのに夢中になっていた。
そうするうちに昂ってきたのだろう。股をもじもじすり合わせる。
頃合いとみて、一郎は優しく、そして妖しく囁いた。
「それじゃあ、味はどうかな」
「舐めろってことよね。この、えっちな『穂先』を……」
もう嫌がるそぶりも、ためらう様子すら見せなかった。むしろ、おあずけを喰らった犬のように、期待にふるふる震える舌を伸ばして――
「れろぉ」
と肉塊に這わせた。
舌にまとわりついていた唾液が、ぬちゃりと音をたてて、逸物に塗りたくられる。
ぴちゃりと淫靡な音を立てて、エルフのまっかな舌は、ちろちろと肉棒を舐め上げる。
「んんっ……れろぉ……ぴちゃ……味なんて……れろぉ……分からないわ……でも、においだけは強くなったような気がする」
「…………」
「一郎?」
一郎の返事が無いので、エルフは訝しんだ。
上目遣いに見やると、一郎は、顔をゆがめて喜悦の吐息をこぼしていた。
「そう、気持ちいいのね!」
エルフの顔に気色が浮かんだ。
かと思えば、次の瞬間、
「んんっ、じゅるっ――」
エルフは肉傘にしゃぶりついた。
「うぁっ、エルフさん、何を……!」
突然の刺激に、思わず一郎が声をあげる。
それがエルフを昴らせる。
エルフは、瞳にとろんと喜悦の色をたゆたわせて、言った。
「ねぇ、どうすればもっと気持ちよくなってくれるの?」
「それじゃあ、エラの部分を舐めて欲しい」
「こうかしら」
「んっ……」
舌を回して、ぐるりと肉傘を一周する。それも、エラの裏側を丁寧になぞって。
敏感なところを刺激されて、一郎が声を漏らす。
それが、エルフを大変喜ばせた。
「じゅるっ……こうかひら……れろれろれろ……これがきもひひいのかひら」
口に含んだまま喋るので、声帯の振動がそのまま舌を通じて逸物を刺激した。
たまらず、穂先はカウパーを分泌する。
「んんっ……えっひなにほひが、ろんろんつよくなるわ……」
雄の性臭が、エルフの鼻腔にたちこめる。
好ましい匂いではない。花のように芳しいわけでも、ましてや清涼なわけでもない。むしろ、どろりと肺を犯すかのような、むせかえる濃厚な香りである。口のものを吐き出したいとすら思った。
にも関わらず、エルフはどうしてもそうすることができなかった。
ひとつには、愛する男を悦ばせているという愉悦があった。
(せっかく一郎が喜んでるんだから、もうちょっとだけしてあげようかしら。それに、普段澄ましてる一郎をこんなふうにしてるだなんて、ゾクゾクするじゃない!)
そう思って奉仕を続けるうちに、不思議と、その匂いが気にならなくなってきたのだ。
というより、だんだんと胸が熱くなって、どんどん鼓動が高鳴り、息が荒くなる。興奮しているのだ。それは、肺を犯す性臭がそのまま熱量に変じてしまったかのようであった。
エルフの胸に、ある閃きが兆す。
(すべての男がスケベなように、きっと、女は男のものを咥えたらこうなるようになってるんだわ)
なるほど。であれば、エロゲーのヒロインたちが、熟練の娼婦のように容易く乱れてしまうのも頷ける。エルフは熱に浮かされた頭で、そのように考えた。
「ちゅむっ……えろれーみたひなこと……じゅるっ……してあれるっ!」
「うあっ」
エルフは肉棒にしゃぶりついた。
口をすぼめて、舌を添えながら激しく頭から上下する。
「じゅぶっ、じゅぼっ、じゅるるるっ――」
愛しい肉棒を咥えこんだ咥内に、みるみる唾液が分泌される。それをこぼすまいと吸い込むので、水音はどんどん高くなった。
絵画から飛び出してきたような美少女が、その可憐な容姿に似合わぬ下品な音をさせている。それは目も眩むような、倒錯したいやらしい光景だった。
けれども、それは、つい先日までおぼこだった小娘には難し過ぎた。
「痛っ」
一郎が悲鳴をあげる。
エルフの歯が、肉傘を傷つけたのである。
「ごっ、ごめんなさい! 大丈夫かしら!?」
エルフはすっかり動転して、口から離したばかりの肉棒にすがりついた。
「ああ、こんなにまっかになってるじゃない!」
「それは元からだよ」
「どうしよう、こんなにぱんぱんに腫れて、とても苦しそうだわ……」
「それも、ある意味ではエルフさんの為所だね」
という一郎の言葉も、届いているか疑わしい。そんな、あわあわと粟を喰った様子のエルフが、一郎はたまらなく愛おしくなった。
「エルフさんは可愛いなぁ」
前髪をすくい上げて、形の良い額に口付けた。
「ひゃっ」
と驚いた拍子に、一郎は畳み込む。
「大丈夫だよ。ちょっと歯が当たって驚いただけ。敏感なところだから、大袈裟に騒いじゃっただけだよ」
「ほんとうに大丈夫なのね? それなら良かったわ」
ほっと息をつくエルフに、一郎は、安心させるように微笑んだ。その笑顔から飛び出したのは、ところが、下品なお願いであった。
「それよりさ、折角だから、もっと味わいながらしてほしいな。口に含んで、ねっとり舐めて、ワインをテイスティングするように」
「……初めておしゃぶりする女の子に味わえだなんて、とんだ変態ね」
「そうだよ。エルフさんはこれから、その変態が望む変態行為をさせられるんだよ」
「ほんっとうに変態!」
という台詞を放つエルフは、けれども、少しも嫌そうには見えなかった。
声色には隠しきれない興奮の色が滲んでいたし、吐息も荒く、瞳は一郎のソレに釘付けになっている。
「ほら。鈴口に先走りが滲んでるよ。舐めてみて」
「はぁ、はぁっ……」
エルフは興奮でふるえる舌先を、一郎の淫乱棒に伸ばした。
「どうかな、僕の『お肉はん』は」
「ぢゅるぢゅる……おいひい……れろれろ……えっひなにほひで……じゅるっ……くらくらふるの」
エルフの秘部を守る、シルクの薄布。それが、いつしかじっとりと湿り気を帯びていた。
そこにエルフの左手が伸びて――はたと何かに気付いたかのように、宙をさまよった。
躊躇である。愛しい恋人に呆れられるかもしれない、軽蔑されるかもしれないという恐怖が、エルフを躊躇わせていたのだ。
そんなエルフの内心を見透かした一郎は、優しく微笑みかける。エルフの形の良い耳に口を寄せ、妖しく囁いた。
「エルフさん。オナニーしたければして良いよ」
「ほぁっ!?」
エルフはびくんと肩を跳ねあげた。
驚きと羞恥がぐちゃぐちゃに入り交じった表情で、一郎を見やる。
一郎は、意地悪く続けた。
「この前、一晩中セックスしたよね。そのことを思い出して、オナニーしたりしなかった?」
「そっ、そんなことっ」
エルフは、どうしてそんな意地悪を言うのとばかりに、いやいやと首を振る。
「僕はしてたよ。可愛いエルフさんの姿、極上の肌触り、ぎゅうぎゅうに締め付けてくるあそこの感触や、甘い匂いを思い出して。エルフさんの一番奥に、たっぷり精液を注ぎこんだことを思い出して、何度も。エルフさんは、オナニーしてくれなかったの?」
言ってごらん、と一郎は耳元で囁いた。
熱のこもった吐息が、ねっとりとエルフの耳膣を撫で、脳をゆさぶった。
それが、エルフの背を押した。
羞恥の鎖を断ち切って、官能の崖からまっさかさまに突き落としたのである。
「してましたぁ……一郎としたときのことを思い出しながら、ひとりで何度もしてたのぉ!」
エルフは叫んだ。
竹を割ったような性格の彼女にしては珍しい、男に媚びる甘い声。
まっしろな手が躊躇なく、するりとシルクの下着のなかへと潜り込む。もう我慢ならぬとばかりに、両手で直接陰唇を弄くった。
二本の指を慎ましげな花びらに添えて、そのまま上下に激しく動かす。さらに一本の指をちいさな突起にあてがい、手首の振動を伝えた。
まだ、おっかなびっくりの、
そのような有様でありながら、口は、丁寧に一郎のものを舐めている。
「んちゅ……じゅる……れろれろぉ」
ひと舐めひと舐めを丁寧に、味を確かめるのだと言わんばかりに。鈴先をつつき、そこから滲む淫らな先走りを舌に乗せては、傘張りの裏側、匂いの濃いところを貪った。
「すごくいいよ、エルフさん。とっても丁寧で、すごく嬉しい。腰が逃げちゃうくらい気持ち良い」
一郎の声に滲む喜悦の色に、エルフはいっそう激しく舌をうねらせる。それ自体が別の生き物であるかのように、舌は、肉棒をくまなく這いずりまわった。
「ぢゅるぢゅる、れろれろれろっ――んっ」
さすがに疲れたのか、いったん口を離して「はぁ……はぁ……」と荒い息を整えた。
「はぁ……これはもうフェラチオじゃないわ。フェラチオというには、なんていうか、もっとずっと性行為だわ」
「オーラルセックスってやつだね」
「おくちのセックス……とってもえっちな響きね」
「でも、それじゃあ足りないかもね。セックスってのは二人が一緒に気持ちよくなるものだから。だから、こうしよう」
「えっ」
一郎は、エルフの手を引いてソファーに倒れ込んだ。エルフの下で、そのまま器用に上下逆さになって、スカートをはぎ取った。
ちょうど、互いの局部に顔を埋める姿勢である。
「知ってるわ、これ。エロゲーやエロマンガでお馴染みの、シックスナインね!」
これ、赤ペ○先生で見た問題だ! と目を輝かす中学生さながらに喜ぶエルフである。
その瞳には、強い好奇の色と、激しい興奮のねばっこい光が宿っている。
「それじゃあ、どうするかも知ってるね」
「当然じゃない!」
もし知らなかったとしても、何をするかは一目瞭然だっただろう。なんとなれば、エルフの眼前にはひくひくと脈打つ肉棒があったし、エルフの恥部もまた、一郎の目と鼻の先、薄布一枚隔てたすぐ向こうにあったのだ。
男女がすこしでも興奮していれば、目の前の淫らな性愛器官に
さっそく一郎は、エルフのショーツをなぞった。
「ひんっ」
ショーツ越しに敏感な小豆をなぞられ、エルフが甘い声をあげた。
「エルフさんのショーツ、濡れてるよ」
薄桃色の、シルクのショーツ。
そこに、うっすらと一筋の染みが走っている。
染みは、撫でれば撫でるほどその色を濃くした。人差し指を強くこすりつけると、くちゅくちゅと淫らな音をたて、男をいっそう悦ばせる。
「えっちな音と、とびきり甘い匂いがする。エルフさんのパンツ、すごく美味しそうだ」
「んんっ、変なこと言ってないで、はぁっ、さっさと脱がしなさいよぅ」
恥ずかしさと、期待の入り交じった甘い声。
もちろん、一郎は期待に応じた。
するりとショーツを下ろす。くちゅりと水音をひいて、いよいよ、ショーツが引き抜かれた。むわっと、雌の甘い匂いがする。
外気に当たって冷えたのか、それとも羞恥の為か、エルフがぶるりと腰をふるわせた。
「何度見ても、エルフさんのは綺麗だなぁ」
「そ、そうなのかしら」
エルフはにんまり頬をゆるめた。
いかに自分の美しさを心得ている美少女であっても、それが愛する男の、それも心からの言葉であれば特別である。
ましてや、そこは自分のものであれ他人のものであれ、容易にお目にかかれぬ『秘密の花園』である。いかなエルフといえども一抹の不安があったので、乙女の安堵がいっそう喜びを助長した。
「ああ。こんな綺麗なのは見たことがない。まず、毛が生えてない。毛穴が開いていないから、スモモのようにぷりぷりと滑らかだ。とって美味しそうだよ」
土手高で、いかにも瑞々しく柔らかそうな様は、青い果実を思わせる。
そのような幼い姿をしていながら、どこか妖しい色気が漂った。それというのは、まっしろな恥丘にはしる一筋の窪みが、きれいなピンクをしていたからである。雪白色の肌のなかにあって、そこだけが赤く色付き、しかも、物欲しそうにひくついている。
芸術品のようないかにも「美しい」肢体のなかで、そこだけが、明らかな性の匂いを発していたのである。
「陰唇もびらびらしてない。『幼膣』とでも言うのかな。すごく綺麗で、ここが誰の手にも、誰の目にも触れたことのないトコだってのがよく分かる。――それがすごく、嬉しい」
「わ、わたしも一郎のをいろいろ表現したけど、自分のを表現されるのって結構恥ずかしいわね……」
「でも、同時に興奮しないかな」
「するわ。とっても――ひゃうっ!?」
エルフが悲鳴をあげた。一郎が、エルフの花園に口づけたのである。
「エルフさんの甘い匂いがするなぁ」
つんと鼻を突く匂い。しかし、それはほんの一瞬のことで、すぐに女性の甘い匂いを凝縮したような、濃厚な甘い香りが鼻腔を満たす。
蜜に群がる蜂のように、一郎は、匂いを求めて舌を伸ばした。
「そんなぁ、奥までぇ……」
内部のひだの、一枚一枚をなぞっていく。
その愛情たっぷりの丁寧な動きに、エルフは文字通り腰がふるえた。
「逃げちゃだめだよ」
反射的に浮いた腰を、一郎の両手が捕まえた。
ちいさなお尻を掌に掴むと、そのまま顔面に引き寄せる。
「ひぅっ……にゅるにゅるしてるぅ……頭が変になりそうっ」
これまで経験したことのないような強烈な刺激から、エルフは腰をくねらせ逃れようとする。そのたびに一郎のごつごつした指が尻を掴まえ、引き戻す――無理矢理に快感を与えられ、エルフの官能は否が応でも高まった。
けれども、一郎には物足りぬらしい。彼は、エルフをもっと乱れさせたかったのだ。
「やっぱり舌じゃあ、このあたりが限界か。それじゃあ今度は指で、ね。エルフさん、しっかり感じてね。舌よりも堅い指で、もっと奥まで掻いてあげる」
一郎は、舌の代わりに指を突き入れた。
膣口は狭い。ぴっちり閉じた窪みは、ひくひくと物欲しげはあったけれども、いまだに異物に対する恐れを克服できてはいないと見える。ぎゅうぎゅうに指を押し返してくる。
けれども、そこは幼いながらも女の膣である。水気の多い蜜を潤滑油に、指はつぷつぷと膣を進んでいく。
「ひぅっ――」
エルフの声が甘く跳ねあがった。
それは、一郎の指が、エルフの天井をノックしたときのことである。
「見つけたよ、エルフさんの弱点」
一郎は、くちゅくちゅと指を動かす。
「だめぇっ、だめなのぉ……」
「何がダメなの? 言ってごらん」
「だめぇ……わたしだけ気持ちよくなっちゃうぅ……いちろーのここ、舐めてあげれないのぉ、気持ちよくしてあげれないのぉ」
一郎はおどろいてエルフを見やる。
股ぐら越しに、逆さにのぞくエルフの顔。それが、切なげに、哀しそうに歪んでいた。
「……分かった。今も十分気持ち良いけど、それじゃあ、一緒にもっとずっと気持ちよくなろう」
一郎は、エルフの蜜壷から口を離すと、代わりに、ずいと自らの腰を突き出した。
「口に含んでみて」
「うん……」
エルフは、先ほどしていた要領で舌を這わした。口の中に含んだ肉傘の、エラの部分を舌でこねくり回す。
「んっんっ……んむぅっ……」
わざと声を出し、声帯のふるえを使って肉棒を刺激する。
「上手だね。さっき言ったことを、すっかりマスターしたみたいだ」
「らって……ちゅるっ……この『お肉はん』のことをしっかり可愛がって……れろぉ……一郎をわたしの虜にしなくちゃだもの……ちゅっちゅっ……一郎に負けてばかりじゃいられないの」
それはいかにもエルフらしい台詞だった。ちいさなことで怒り笑い、全力で人生を楽しむ彼女は、対戦ゲームのように諸々のことに取り組むのだ。
そんな彼女の在り方を、一郎は快く思っている。
「ほんとうは……ぴちゃぴちゃ……勝負でもしたいんだけど……れろれろ……今はまだ敵わないし」
「それじゃあ、勝負ができるように、技を教えてあげるよ」
「必殺技ってやつね! いったいどんなのがあるのかしら」
肉棒から口を離して、エルフが訪ねる。その瞳には好奇心がきらめいていた。
「色々あるよ。フェラはもちろん、泡洗い、くぐり洗い、全身リップ、逆潜望鏡」
「洗うってことは、お風呂ですることかしら?」
「逆潜望鏡もね」
「ふぅん。いろんな技があるのね。エロゲーやエロマンガには無かったわ」
好奇の色を琥珀の瞳にまたたかせるエルフに、一郎は苦笑した。
「ソープの技だからね」
「なるほどね。最近のエロマンガや薄い本にも、ソープを題材にしたものが多いけど、わたしが知らない技も多いみたいじゃない。なかなか深いわね……」
ひとしきり感心するとエルフは、さて、と手を叩いて話題を換えた。
「それじゃあ、まずはフェラの仕方を教えてもらおうかしら。この『淫乱棒』を気持ちよくさせてあげなくっちゃ」
よしきた応と一郎が頷きを返す。
「フェラをするなら、この格好はダメね。その、裏筋とか舐めるんでしょ? このままじゃあ舌が当たらないわ」
「それじゃあ、起きようか」
一郎は身を起こすと、エルフの手を取ってベッドに腰掛けさせ、自分は二本の足で立ちあがった。
ちょうどエルフの目の前に肉棒がそそり立つ。エルフはためらうことなく口に含んだ。
「まずは唾液をいっぱい出そうか。舌の上で転がして、唾液腺を刺激するんだ」
「ん……こうかひら」
ちいさな口をめいいっぱいに開いて、肉棒を咥内に招き入れる。
そのまま、きかん坊をやさしく赤い舌は撫でつけた。
「手も使って欲しいな。粘膜のぬるぬるしたのも気持ち良いけど、強い刺激も欲しいから」
「ろこをひゃわれはひーの?」
「竿や睾丸を触って。竿なら上下にしごいて、睾丸は掌や指先で優しく撫でるように」
エルフの手が、肉棒を握りこむ。
穂先は口が、根元は手がそれぞれ咥えこみ、それぞれ異なる刺激を与えた。
「それじゃあ、いよいよ奥義の伝授だよ。舐めるだけじゃない、本格的なフェラをやってみようか」
待ってましたとばかりに、エルフは瞳を輝かせた。
そんなエルフに、一郎は興がって講義を続ける。
「男の弱点、裏筋を刺激するんだ。まずは舌全体をつかって、竿の裏側を舐めてみて」
「ちゅるちゅるちゅる……」
舌が小刻みに左右して、軽やかな水音を立てる。
「筋があるのが分かるかな。舌先を尖らせて、筋に沿って舐め上げてみて」
「くちゅ……ちゅぱ、ちゅぱ……」
「そう、その調子だよ。すごく熱心だね。そんなにこれが好きなの?」
エロゲーで聞いたような音に(これが噂のチュパ音ね!)と感動したエルフは、いっそう熱心に肉棒を舐めあげた。
声なき同意を受けて、一郎は「僕も好きだよ。気持ち良い部分に直接刺激がくるし、音もいやらしくて興奮する」と囁いた。それで気を良くしたエルフは、竿を操る手つきをいっそう丁寧にした。
「筋の他にも、カリ首や先っぽもお願い。舐めたり突ついたりして強弱をつけて」
「はむっ……んぁっ……れろれろ……ちゅぱっ」
「それじゃあ、舌を裏筋に添えたまま顔を動かして。ゆっくりね」
「んっんっ……れろっ……ちゅるっ」
エルフはゆっくりとに動いた。
今度は歯を当ててはならない。慎重に、慎重に――そう聞こえてくるかのような、丁寧な動きだった。
一郎は、やさしく言った。
「慌てないでいいよ。気持ち良いから、そのままゆっくり」
「んっ……」
小さく頷きを返して、エルフは口淫を続ける。
「そう。とっても気持ちよい。そのまま……はぁ」
満足そうな吐息を一郎がこぼした。それが合図であったかのように、エルフは口を離す。
「さすがにちょっと顎が疲れたわ。結構疲れるのね、おフェラって」
「普段使わない筋肉を使ってるからね。ところで、どうかな。味は」
「分からないわ。でも、なんだかとっても甘いような気がするの。『甘いお菓子』ってのはほんとうだったのね。すごくえっちで、頭がくらくらする」
エルフはとろんと興奮の色を瞳にけぶらせて言った。
「いいね。そういうふうに、エッチな言葉を言ってくれるのも、すごく興奮する。エルフさんの可愛い声で言われると、なおさら。こんなに綺麗なエルフさんの、こんなに可愛いお口でフェラされたかと思うと、ぞくぞくするよ」
「そんなに、えっちな言葉が興奮するの?」
「とっても」
「一郎の変態!」
エルフは、ぞくりと喜悦に背筋をふるわせる。女の愉悦さえ表情に滲ませて、桃色の吐息にその言葉を乗せた。
「――美味しいの、一郎のおちんちん。堅くて、ひくひく動いて、とってもえっちで、すっごく嬉しいの。わたしのおくちで、もっと気持ちよくなって?」
言うなり、再びエルフは肉棒にしゃぶりつく。
「じゅる……じゅぶぶっ……れろっ……ぢゅるるっ」
舌を裏筋に添え、顔ごと動いて竿をしごく。かと思えば動きをゆるめ、代わりに、舌をうねらせカリ首や鬼頭を刺激する。それも、緩急を付けて、刺激に飽きないように工夫を凝らす徹底ぶりである。そればかりか、手は竿やら睾丸やらをせわしなく弄っている。
それは、今回教わった性技を束ねた妙技であった。
「くぅっ、すごく上手いよ」
一郎がうわずった声をあげる。
それが嬉しくて、エルフはいっそう舌の動きを激しく、丁寧にした。
「ひゅごい……ろんろんおおきくなって……れろれろれろ……ふくらんれるぅ……ちゅるるっ」
「エルフさんっ」
一郎の声の調子から、エルフは、その時が近いのを察した。
「れるのっ? しゃせーするろ? おくひにらひてっ」
「――――っ」
エルフの口が、肉棒がひとまわり大きくなるのを感じた。舌を絡ませていた裏筋の、皮一枚向こうで、どくんと脈打った。そう思った瞬間――
「んんんっ!?」
熱いものが口いっぱいに広がった。
「エルフさんっ、ごめん、吐き出して!」
顔の前にティッシュを構える一郎に、エルフは首を振ってにっこり微笑むと、
「んっ――んくっ――」
喉を鳴らして、ほとばしりをえ嚥下した。
白い喉が、艶めかしく上下する。
「苦いわね。喉に絡むし、変な味。でも、とっても美味しかった」
そして、愛おしそうに唇を撫でるのだった。
そんなエルフに、一郎は気遣わしげに話しかける。
「エルフさん、そんな無理しなくても……」
「なによ、味まで報告しろって言ったのは一郎じゃない。それに、作品づくりに味まで見ておくべきだって露伴先生も言ってるわ。ああ、そういえば、どこかの誰かさんは肉を腐らせて味見までしたそうじゃない」
などと悪戯っぽく笑うエルフであったが、不意に表情を改めて、声を落として続けた。
「真面目な話、勿体ないって思ったのよ。だって、好きな人の子種なのよ? ほんとうなら、お腹にたくさん注いでもらって、赤ちゃんをつくりたいわ。でも、それはまだできないじゃない? だったら、せっかくの命の素なんだから、全て余すとこなくこの身に容れておきたいの。ほら、見てよこれ」
エルフは、タブレットを示す。
「こう書いてあるわ。『あなたの愛』『命のつゆ』『熱にこめられた生命力』。文字通り、一郎の命を削ってつくられたそれを、一滴たりとも無駄になんかするもんですか」
「……そうか。そんなふうに考えてくれてるんだね。ありがとう、エルフさん」
エルフの想いに、一郎は胸を熱くした。
それが伝わったのか、エルフは照れくさそうに話題を転じる。
「それにしても、よかったわ」
「何が?」
「男の人って、一回やそこらじゃ満足しないんでしょ? この前は、結局、一郎はほとんどイカなかったから……。でも、これからはたくさんイカせてあげれるわね」
「それは、男にも意地があるからね。自分だけ気持ちよくなって恋人を満足させれないのは、格好悪くって仕方ない。だから一生懸命堪えてたんだけど、不安にさせちゃったね」
「ふふっ。一郎も小説以外で意地を張るところがあるのね。男の子してるじゃない。なんだか安心したわ」
エルフは慈母のごとく微笑んだ。
そして、よく分からないことを口にする。
「はじめての、フェラの筈が、じゅびじゅばば」
「え?」
唐突に川柳のようなものを詠んだエルフに、一郎が間抜けな声をあげた。
「ネットのどこかで見かけたハイクよ。お題は『エロゲーあるある』。処女だとか初めてだとか言っておきながら、やたら性技に長けた、プロ顔負けのエロゲヒロインを詠んだそうよ」
「たしかに、いきなり初めから上手にできる人ってのは珍しいだろうね。フェラって、結構難しいらしいから」
なにせ、口でモノを扱うのだ。口は手ほど器用には出来ていない。そんな器官で、敏感な急所を扱うというのは、正しい物事の在り方ではないようにすら思われる。実際、エルフは一郎に歯を立ててしまった。
「その通りだったわ。でも、ある面ではエロゲーも正しかったの。ほら、一度は失敗したけど、すぐに上手くできるようになったじゃない」
「たしかに、気持ち良かったけど」
「つまり、エロゲーは正しいのよ! いったい誰かしら、エロゲーやエロマンガの知識を鵜呑みにしちゃあいけないって言った分からず屋は」
一郎にあれこれ指南を受けたことを脇に退けて、何の事前研修もないままプロの妙技を披露する器用なヒロイン達を、エルフは正当化した。
さて、不満を吐き出してすっきりしたエルフである。
「ところで、例の辞書は使えそうかな」
と一郎に水を向けられると、すんなり応じて話題を転じた。
「そうね。ギャグみたいなのもいっぱいあったけど、それはそれで面白いし、ちゃんとした表現も沢山あったから、役に立つと思うわ。ええ、気に入ったわ! どこの本だったかしら。教えなさいよ。さっそくアムゾンでポチっちゃうから」
エルフは、一糸纏わぬ艶姿のまま
きっと、普段から思いついた品々を衝動的に注文しているのだろう。そう思わせるに足る、それは流麗な動作だった。
「流石、エルフさん……」
と苦笑いする一郎に、エルフはすっと身を寄せた。
「ねぇ。本が届くまでに、予習をしたいんだけど」
「そうだね。それじゃあ、今度は――」
一郎に手を引かれ、エルフは再びベッドに倒れ込んだ。
仰向けになったときには、一郎の顔がすぐ隣にあって、
「今度は二人でいっしょに気持ちよくなりながら、淫語を勉強しようか」
と熱い囁きが耳を撫でた。
「ええ。よろこんで」
にこやかに微笑みを返しながら、エルフは、一郎の『熱い塊』にそっと手を添えるのだった。
***
ピンポン、と呼び鈴を鳴らす。
もう何度目だろうか――
この家が新たな主を迎えたその日のうちに新品に交換されたはずの呼び鈴は、もうボタンがすり減ってしまっている。
それというのも、押せど呼べどもいつも答えが返ってこないからである。その分だけ呼び鈴は酷使され、寿命をすり減らす。
「山田先生はいらっしゃいますか。私です。編集の山田クリスです!」
と声を張り上げても、梨の礫であった。
当然だ。山田エルフは都合の良いときしか返事を寄越さない。こういうとき――電話をかけてもメールを打っても答えがないときは、執筆作業が行き詰まっているときに他ならない。そういうとき、エルフは平気で居留守を使ったり、余所へ逃亡したりする。
「バカ妹め。さては和泉先生の家か、一郎先生の家に逃げ込んだな」
人付き合いの下手な妹のことである。逃げ込む先など多くはない。すぐ隣、かつて淡い想いを寄せていた作家仲間の家か、それとも、そんな彼を押し退けてとうとう恋人の座に就いた奇特な少年の部屋か。
「プライベートまで口出ししたくは無いのだが、やむを得まい。押し掛けるしかないか」
と思ったときである。
どたどたと階段を駆け下りる音が耳朶を叩いた。
「ふむ。家には居たか。まさか今まで寝ていたわけではないだろうな。締め切りも近いというのに」
などとごちながらも、どうせその「まさか」に違いないと確信していた。
その確信は、しかし、予想だにしない形で裏切られることとなる。
「待たせたわねっ」
「お邪魔してます」
急いでいたのか、息を荒げて扉を開くエルフと、そんなエルフに付き従う一郎が、クリスを出迎えた。
そんな二人の姿を見て、
「む……そういうことか」
とクリスは納得とも困惑ともつかぬ様子で、頭を振った。
そして、なにやら逡巡した後に、ぽつりと口を開く。
「喜ばしいことではあるが、なんだ、その、程々にな」
言い辛そうなクリスの様子に、一郎はすべてを察して「あちゃー」という顔をして、エルフは「まさか」とばかりに顔をひきつらせた。
そこで黙っておけばよかったのだ。ところが、エルフは、不用意にも言ってしまった。
「なっ、なにがよっ」
さて、山田クリスは不器用かつ実直な男である。要らぬ枕詞が付くほど真面目な彼は、バカ正直に答えた。
「……においだ。体液のにおいがする。その、人前に立つときは、シャワーで流してからの方が良い」
部屋にこもって淫行の限りを尽くしてきた二人からは、明らかな性臭が漂っていたのだ。
エルフは顔をまっかにする。羞恥のあまり目をぐるぐる回して、思わず素の口調で叫んだ。
「はいぃ! 以後気を付けます、お兄様!」
17,669文字
参考文献
永田守弘,2006,『官能小説用語表現辞典』,筑摩書房.
良い本ですよね。資料としても、
それと、どこかシナリオライターとして使っていただけるエロゲ会社ありませんかね……。
===
反省
===
目標は、官能小説用語をネタにして遊ぶことと、エルフちゃんっぽく明るくおバカに会話をさせること。概ね達成できたと思います。ただし、口淫中は喋りづらくなるので、用語を喋らせることができませんでした。構造的失敗。
反省点は、前回とシーンが被ってね? ということです。つまりお口がメイン。でも、こうでもしないとアレの品評会みたいなことして用語を喋らせるシーンをひねり出すことができない。構造的失敗。あるいは発想力の欠如が原因か。
また、台詞(あえぎ声やちゅぱ音など)のパターンが少ない。豊富なオノマトペを雨あられと放つエロゲー業界に戦慄しました! 豊富過ぎて、ギャグとしか思えないものも少なくありませんが、そりゃあそうなるなぁと痛感。アレです。ピッコロの中の人が戦闘シーンの台詞に困って「ハッ、タァツ、布団っ!」と言ってたのと同じだと思うんです。
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ネタ解説
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『俺の回転ドリルが唸りをあげる。膜を穿てと轟き叫ぶ。超ドリル・スペシャル!』:
Gガンダムの例の台詞と、ギルティギアのザトー(CV.子安武人)の必殺技名より。
『ぶるまー2000』:
ライアーソフトの名作。ジャンルはブルマーバカゲー。
悪の組織ビッグブルマー団の魔の手から地球を守るため、女の子が太陽のブルマーを穿いてブルマー・ファイトする話。
なお、OPソングは電波ソングの草分けかつ名曲。私のmp3プレイヤーにも入っています。
『痴漢者トーマス』:
発売当初より突き抜けたバカゲーとして熱い評価を得た名作。
猛々しく必殺技名をとどろかせる主人公の声。無駄に派手なエフェクト。カットイン。技の解説文も無駄に熱い。バカを真面目に追求した名作です。喩えるなら、好き勝手にキワモノ作った結果、その辺の映画よりよっぽど面白くなっちゃったB級映画。
『家飛』:
インパクト抜群のタイトルと、空飛ぶ家から飛び降りながらの交合という他に類を見ないシーンが見どころ。この為だけに買う価値があると思います(修羅の国基準)。
なお、上記三作品のOP・EDはニコ動で視聴できますので是非。
味まで見ておくべきだって露伴先生も言ってるわ:
もはや説明不要のネタ。
第五部もアニメ放送が間近ですね。主人公のスタンド名は『ゴールド・エクスペリエンス(黄金体験)』ですが、先述のトーマスの必殺技にも『ゴールド・エクスペリメント(黄金実験)』というものが……。
はじめての、フェラの筈が、じゅびじゅばば:
十五年くらい前、三才ブックスの『ゲームラボ』で見たように記憶しています。
ネットのどこかで見かけたハイクよ:
忍殺リスペクト。
なおハイクとは、季語の必要な俳句をより自由にし、もっとずっと裾野の広がった芸術のことだと理解しています。改めて考えると、「歌→俳句→ハイク」という流れのなかに自然と位置付けることができるあたり、原作者の勘違いではなく未来予想図だったのかもしれません。ゴウランガ!