※この作品はR-18です。

【NTR】奥手なエロゲー主人公の代わりにヒロイン全員攻略してみた   作:悠木仁

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第5.1話 七条音葉①

 

 

 

「ナギ、リンネはどこにいったの……?」

 

 ある日の放課後、帰り支度をする凪にましろが声をかけた。どうやら、荷物を置いてクラスを出ていった凛祢のことが気になるようだ。

 

「さっきのホームルームで凛祢が体育祭の実行委員になっただろ? 委員会の仕事は基本的に放課後に行われるんだ。今日は最初だから、今頃会議室にいるんじゃないかな」

「それはいつまで続くの?」

「二週間くらいかな」

 

 この明凛高校は県内ではそれなりの進学校だ。そのため、体育祭の準備にかけられる時間は非常に少ない。短期間でより良い体育祭にするためにと、実行委員は二週間の間毎日、放課後は拘束されてしまう。これが実行委員が不人気である理由の一つだ。

 

「そう……」

 

 ましろが残念そうに俯(うつむ)く。

 凛祢と一緒に帰ることを楽しみにしているましろにとって、彼女が二週間も拘束されてしまうのはあまり面白くないだろう。その抜群の運動神経と生徒たちからの人気ゆえに、凛祢は毎日のように様々な部活に呼ばれている。ましろが彼女と帰れる機会はただでさえ少ないのだ。

 

「そう落ち込むうなって。体育祭が終わったらすぐにテスト期間が始まるし、期間中は凛祢も部活がないはずだから」

「……!」

 

 ましろが目の輝きを取り戻した。

 

「ねぇ、ナギ」

 

 すると、ましろは物をねだる子供のように上目遣いで言った。

 

「私、リンネがお仕事してるところ、見てみたい」

 

***   ***   ***

 

 凛祢の仕事ぶりをこの目で見たいというましろの願いを叶えるため、凪は彼女と一緒に第一会議室へと向かった。

 

「ここに凛祢と響がいるはずだ」

 

 凪がそう言うと、ましろは無言で扉に付いている小窓から中を覗いた。

 

「ましろ、邪魔はしちゃだめだからな」

「大丈夫。リンネには迷惑かけない」

「いや、できれば他の人にも気を使ってほしいんだけど……」

 

 しかしましろは凛祢を探すのに夢中で、凪の話などまったく聞いていない。

 

「リンネ、いない」

 

 額を小窓に触れさせながら、むすっとした顔でましろが言った。

 

「ん? そんなはずないと思うけど――」

 

 と、凪が言おうとした直後だった。突如その扉がガラリと開けられ、中から一人の女性が出てくる。ましろは驚いたように凪の腕をつかんだ。

 

「ここに何か用? 今は会議中よ――って、凪くん!? どうしてこんなところに……」

 

 現れたのはこの学校の生徒会長、七条音葉(しちじょうおとは)だった。生徒の代表としてふさわしい雅(みやび)やかな雰囲気を漂わせ、シンプルなショートヘアは彼女の整った顔立ちをより引き立てていた。あのましろと並んでもまったく見劣りせず、それどころかプリンセスと大和撫子の相乗的なコラボレーションに感動さえ覚える。

 

「実は、ましろが凛祢の仕事姿をどうしても見たいって言うもので。邪魔をしてしまったならすみません」

 

 凪が申し訳なさそうにそう言うと、隣にいたましろがしゅんと身を縮こませた。

 

「いえ、私も少し気になっただけだから。中に入ったり、声をかけたりしないのであれば問題ないわ」

 

 音葉はましろに優しく微笑んだ。

 

「雛守さんなら後ろの方に座っていたはずだから、ここよりも後ろの扉から見た方がいいかもしれないわね」

「……!」

 

 それを聞いたましろは、たったったっとゆっくりな小走りで後ろの扉まで駆けて行った。再び中を覗き込んだ途端、彼女の顔が明るくなる。どうやら凛祢を見つけたようだ。

 

「ありがとうございます、音葉先輩」

「気にしないで。生徒の要望に応えるのが、生徒会長である私の仕事だから」

「先輩……」

「そっ、それに!」

 

 音葉が声を上ずらせる。

 

「凪くんには、いつも助けられてるから……」

 

 去年、偶然生徒会の手伝いをすることになった凪は、その後もたまに生徒会の仕事を手伝っていた。手伝うといっても、重い荷物を運ぶというような雑用に限るが。

 

「今年度の生徒会は男手が足りなくて」

「俺でよければまたいつでも手伝いますから。事務仕事とかはできそうにないですけど」

「役員でもない生徒にそこまで頼るわけにはいかないわ。でも、ありがとう」

 

 音葉はまっすぐ凪を見つめ、お礼を言う。

 

「それで、なんだけど……」

 

 すると音葉は突然そっぽを向き、体をもじもじし始めた。

 

「もし、もし凪くんさえよければ、お礼をしたいなって……」

「お礼、ですか?」

 

 頬を赤らめながら、音葉はポケットから二枚のチケットを取り出す。

 

「えっと……み、みちると行く予定で買ったんだけど! あの子、急に予定が入っちゃったらしくて……よかったら見に行かないかしら? ふ、二人で……」

 

 最後の方はボソボソと言っていて聞き取れなかったが、どうやら映画のお誘いのようだ。

 

(特に断る理由もないしな……)

 

 代役とはいえ、お礼を断るのはむしろ失礼だろう。

 

「わかりました。ぜひ行かせていただきます」

 

 そう言って、凪は差し出されたチケットを受け取る。

 

「ほ、本当!? そ、それじゃあ詳しいことは後で連絡するから」

「はい、わかりま――」

「音葉ー!」

 

 すると、凪の返事を遮るように、再び会議室の扉が開かれる。音葉の名前を呼びながら現れたのは、副会長の鈴原(すずはら)みちるだ。

 

「みっ、みちる!?」

「あー、いたいた。音葉、次の議題に移ったからそろそろ戻ってきな」

「いや、でも、もう少し凪くんとお話を――」

「馬鹿なこと言ってないで戻ってくる! みんな待ってるんだから」

 

 みちるに引きずられながら教室へと連れて行かれる音葉。凪はその光景を呆然と眺めていた。

 

「なーくんごめんねー、音葉につき合わせちゃって。またいつでも生徒会室に遊びに来なよ」

「は、はい!」

 

 そして、ぴしゃりと扉が閉められた。

 

「……何かあったの?」

 

 騒ぎを聞きつけたのか、いつの間にか戻ってきていたましろが凪に尋ねる。

 

「さあ……」

 

 その後、二人が会議室の前から立ち去ろうとすると、小窓から音葉が笑いかけてくるのが見えた。

 

 

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