【NTR】奥手なエロゲー主人公の代わりにヒロイン全員攻略してみた 作:悠木仁
恋の館からの返信が届いた翌日、響はボーっと一人の女子生徒を見つめていた。彼の目線の先にいるのは雛守凛祢。近くの席に座る友人たちと楽しそうに会話している。その様子をひたすら眺める彼の姿は、はたから見れば不審者に通ずるものがあると判断されてもおかしくないほどだったが、それでも彼女を見ずにはいられなかった。昨日の館主の言葉がふと脳裏をよぎる。
『N君とRさんは、昔は普通に仲が良かった。でも今はそれが一変。RさんはN君に強く当たるようになった。それはなぜか』
『あなたの話を聞くに、N君は相当な鈍感男。きっと彼女も苦労したでしょう。数年、いえもしかしたら十数年好きでい続けているのにも関わらず、全く進展しない。それどころか、彼の周りにはなぜか女の子ばかり集まってくる』
『……ちょっとくらいひねくれちゃっても、仕方ないですよね』
『彼女の心の柱となっているのは間違いなくN君への愛。でもその中身はスッカスカ。満たされない想いに、ついイライラしてしまう』
『だったら――』
『埋めてあげましょう、あなたで。N君じゃ絶対にしてくれないこと、たっぷりしてあげましょう』
『彼女をあなたで、満たしましょう』
彼女のその言葉は、今思い返してもぞっとする。たしかに細かく伝えたとはいえ、淡々と書かれた文章からここまで考えられる。それがどれほど凄いことなのかは、素人の自分でも十分に理解できた。自分はもしかしたら、関わってはいけない人に関わってしまったのではないか。ついそんなことを思ってしまう。
ひとまず、昨日彼女に与えられた最初のミッションをこなさなければならない。そのミッションとは――
『まずはせめて、知り合いくらいにはなっておく必要があります』
凪といつも行動を共にする響を彼女が知らないはずはないと思うが、それでも知り合いと呼ぶには程遠い関係だ。当然話したことくらいはあるが、そのほとんどが事務的な会話である。
『
「『嫌われることを恐れるな』か……。今の俺には頼もしい言葉だな」
とはいえ、好かれる分には悪くないはずだ。できれば自然と、下心が見えないように話しかけたい。
(そのためには共通の話題を探さなきゃな。でも今更何を話す……? 凪の話はまだするなってあの人に言われたし……)
響がぶつぶつと考え込んでいると、授業開始の鐘がスピーカーから鳴り響いた。
(次の授業はホームルームだからもう少し考えられるな。なんとか放課後までに案を出さないと……)
ミッションのタイムリミットは今日まで。それまでに彼女に話しかけなければ、館主に怒られてしまう。最悪の場合、見限られて協力してくれなくなる可能性だってあるのだ。できればそれは避けたかった。
そして鐘の音が止まると、すでに教室で待機していた担任の坂本先生が、全員に声をかける。
「今日は二週間後に行われる体育祭の実行委員を決めたいと思います。男女から各一名ずつ。詳しい仕事の内容は追って知らせますが、主に委員会会議と当日の準備、後片づけがメインになると思います。立候補、または推薦をする人は挙手してください」
ついさっきまで賑わっていた教室がしんと静まり返る。実行委員なんて面倒な役職、誰もやりたいとは思わないだろう。ましてや2年生ともなると、去年の体験でその大変さをよくわかっている。
(どうせ今回も雛守みたいなクラスの中心人物がやることに……ん? 待てよ?)
そこで響は、
「先生! 私は雛守さんを推薦します!」
「あっ、私も! 雛守さん運動もできるし、適任だと思う!」
次々に声を上げる女子たち。坂本先生はこれを予測していたかのように、冷静に応える。
「でも雛守さんは学級委員の仕事もあるし、難しいんじゃないかしら」
(……!)
まずい、と思う響。彼女が実行委員になってくれなければ、この計画は失敗に終わってしまう。思わず女子たちに加勢しようとする。しかし、その必要はなかった。
「な……風見君がいるので、大丈夫だと思います」
顔に緩い笑みを浮かべながら、そう告げる凛祢。どうやら彼女は、断りづらい雰囲気だと察したのだろう。半分あきらめているようにも見えた。
「そう? それじゃお願いするわね。風見君、体育祭の期間中、雛守さんををできる限りサポートするように」
「わかりました」
そう返事をする凪の顔は、どことなく嬉しそうに見えた。
「さて、次は男子のほうね。さすがに風見君に任せるわけにもいかないから……あら?」
突然驚いた表情をする坂本先生。その目線の先には、堂々と腕を伸ばす響の姿があった。