※この作品はR-18です。

Day Walker   作:美砂

53 / 105
Day Walker 53

 ここ数日、カミーノに行くために、仕事を遅くまでこなしてる。蓮、身体崩さないといいけど。

 

 確かに、短期の出張も増えてすれ違ってた。俺は蓮の身体を心配しながらもカミーノ楽しみにしてたんだ。

 だけど、全てが順風満帆な訳じゃなかった。

 

 久々に帰宅してからも、メールや電話が増えて会話が減った。俺はホームワーカーだから、正直、蓮とたまに入るモデルのバイト関係者しか人間関係が無い。だから、帰ってきたら沢山話したいのに、全然会話出来ない。

 

 「蓮、少し時間ある?買出し行かない?」

 「悪い、いけない。立て込んでてね。」

 「うん・・わかった。」

 一緒に居るのに、孤独感を感じる。

 

 蓮が風呂に入ってる間も、頻繁に通知音がなる携帯。見ちゃいけない。仕事関係なんだから。でも、気になる。

 ロックが外れてる。

 

 『蓮♡此間は、とても楽しかったわ!また、連れてってね!』

 『今、何してるの?お仕事かな?私はお肌を手入れしてるの。蓮に褒められて嬉しかった。女子力高めるから!」

 『大好きよ♡今度は旅行に行きましょう!何処が良いかな?蓮が行きたい所教えてね♡』

 『蓮と私、心も身体もとても相性が合うと思うの。こんなに愛してくれる人は初めてよ。仕事もいいけど、身体に気をつけてね♡』

 

 メール、殆どが女性からだった。仕事関係のは皆無。もう、既読になってたから俺が見た事は分からない。新しいメールも来てたけど送信元が、既読したメールと同じ。見なくても中身は分かる。

 携帯を元の位置に戻した。

 

 何だろう。怒りは湧かなかった。複数の女性と付き合ってるみたいだ。怒りより、そうだな。寂しくなった。飲み物飲んで落ち着いたけど。左指の指輪が寂しく光る。

 

 「先に入ったよ、次、どうぞ。」

 「あ、うん、ありがとう。」

 

 少し涙目。見られないように、顔を合わせず風呂に入る。

 

 上がったら、蓮がリビングで携帯いじってる。

 「蓮、ビール飲む?」

 「ん、あぁありがとう。飲むよ。」

 

 「蓮、あのさ仕事、忙しいじゃん。カミーノ、行くの無理しなくていいよ。」

 「え?無理しないよ。行くよ?ちょっとトレーニング出来てないけど。」

 「ううん。蓮、折角、仕事波に乗って来たのにまた40日近く、休んだら勿体無いよ。」

 「う~ん、確かにそうだけど、凛はどうするの?」

 「ん?まだ決めてない。俺の事は気にしないで。蓮がしたい様にしていいから。」

 

 先に休むね、と伝えてベッドに入った。カミーノには1人で行こう。そうすれば、蓮も自分の居るべき場所が分かるだろう。結局、蓮の居場所は、俺の所じゃないんだ。華に、カミーノ中止を連絡した。理由は伝えなかった。

 出発は、黙って行こう。俺は男だもの。蓮を縛り付ける訳には行かない。

 

 「凛、何か様子が変だ。なんかあった?俺、何かしたか?」

 「うん?いや、何もしてないよ?大丈夫。何にもない。」

 そうか?と言いながら、パソコンに向かう。

 

 もうすぐお別れが来る。多分、俺はもう誰も好きにならないだろう。疲れちゃった。蓮が最後だ。忘れないように、蓮を見つめる。

 

 夜の交わりも、一回一回を大切に身体に刻む。蓮を愛してる自分に忘れないように。眠ってる蓮の安らかな寝顔も焼き付けなきゃ。涙が溢れてきた。大好き。大好きなんだよ、蓮。

 

 翌朝、ベッドにはもう蓮の姿が無い。早いな。急いで起きて、リビングへ。

 「蓮、ごめんね。今から朝食作るから。」

 「いや、朝飯はいい。話がしたい。」

 ・・・いよいよか。

 「何?話って。」

 「携帯、見ただろ?」

 「・・・・うん。見た。ごめん。」

 「見て読んだのに怒らないの?」

 「俺に怒る権利なんて無いよ。ほら、大学生の件も有ったしさ。」

 出来るだけ、明るく答える。

 「あれは事故だろ?浮気じゃない。俺がやった事は浮気だぞ?普通、怒るだろ?」

 「俺は、蓮が好き。だから、縛り付けたく無い。怒ってどうなる?修羅場って、別れるくらいなら、俺が身を引いた方が傷も浅くて済むよ。」

 「何で怒んないんだよ!おかしいだろ!好きなら尚更だ。怒らないなんてたいして、俺の事、言うほど好きじゃねーんだよ!」

 「違うよ。好き。愛してる。汚れた身体の俺を待ってくれた。そんな相手を手放したいと思う?別れたく無い。だけど、蓮が幸せにならなきゃ意味がない。」

 その後も暫く言い合ったが、結論は出ずにただ口論になっただけだった。一方的だったけど。

 

 最後に蓮は指輪を外して、壁に投げつけた。

 「たいして、好きでもない相手から指輪貰っても嬉しくないだろ!捨てろ、こんな物!」

 そう言って、蓮は家を出て行った。

 俺は指輪を何とか探し出して、握りしめた。

 (嬉しかったよ。あんなに嬉しい事なかったよ。)

 中指には緩くて合わなかったから、ほかの指に蓮の指輪を付けた。

 

 蓮は頭を冷ましたかったのか、夕方には戻ったらしい。俺には知る由もない。携帯も蓮のクレジットカードも置いて、カミーノに出発したからだ。

 

 『蓮、蓮をちゃんと愛せなくてごめんなさい。でも、俺なりに愛したつもりだったけど足りなかったみたいだね。蓮は悪くないよ。ちゃんと愛してくれる女性が待ってるなら、そこに行くべきだ。次はちゃんと愛して幸せになるんだよ?浮気したら駄目だよ。良いね?オジサンからのお願いです。俺はカミーノに行きます。家の事は、任せます。』

 

 置き手紙をして、旅立った。

 飛行機の中で思い出すのは、幸せだった楽しい事ばかり。これで良い。これが最善の方法なんだ。きっとガブリエルも、蓮に新しいパートナーを与えてくれるだろう。

 左手に光る2つの指輪。

 大丈夫。これがあれば、俺、1人でも大丈夫。

 

 「何やってんの?ホント、マジで1回死んでくんない?」

 事の顛末を華に全て話した。カミーノ中止の連絡が夜中に来て、怪しいと思いつつ学業が忙しく片付いてから飛んで来たんだ。

 「浮気しといて、逆ギレ?馬鹿じゃないの?姫の事、試したの?最低!」

 ホント、俺は最低だ。性欲解消するために、出先で女性達と交わった。結果、女性達は本気になってメールの嵐だ。

 「指輪は?どうしたの?」

 外して壁に投げつけた。探したけどみつからなかった。

 「う~ん、まずいっすね。凛さん、言葉分からないのに携帯も持たずに1人で行ったんですよね。トラブルに巻き込まれなきゃ良いけど。」

 健太も心配してる。

 「何してんのよ。さっさと荷造りしなさいよ。姫の所まで飛ばしてやるから。情けなくて仕方ないわ。」

 慌てて荷造りをする。ある程度はやってたからすぐに発てる。パスポートもクレデンシャルも有る。

 「健太、今、姫どの辺?」

 「えーと、また気配消してますね。ちょっと待ってね。探すから。」

 あの時みたいに気配を消してるのか。本気で身を引くつもりなんだな。

 

 何とか、出発地点に来た。やっぱ言葉がわからないのは大変。携帯もないから、翻訳アプリも無い。でも3回目だから手順は分かる。1人で来たけど、同行二人。指に蓮が居る。一人じゃ無い。宿に入り、指輪をした手を握って眠りにつく。

 目立たないように人間の姿。気配も消してる。追いかけては、来ないだろう。いや、来ちゃダメだ。蓮は俺からちゃんと卒業しなきゃ。

 

 「うーん、今、ディウォーカーの姿じゃ無いですね。余計に場所がわからない。」

 「もう、適当に飛ばす?」

 「駄目だよ。範囲が広すぎる。」

 

 

 夢を見た。沖縄だ。ハネムーンとか言ってふざけてたな。指輪貰った時は、本当に嬉しかった。海で遊んで、美味しい物沢山食べて。今まで生きてきて1番楽しい想い出だった。なのに涙が止まらない。ん、好きなのに別れるって、こんなに辛いのか。でもちゃんと受け入れて消化しなきゃ。

 

 「泣いてる。凛さんの感情か高ぶってる。わかった。出発地点の街に居ます。まだ宿で寝てる。」

 「蓮、飛ばすよ。次しくじったら、私、許さないからね。」

 「わかった。済まない。」

 

 フッと身体が浮いたかと思ったら、見知らね街だ。俺は前回、途中から歩いたから、この街を知らない。宿の前に飛ばすと言っていた。もうすぐ夜が明ける。出発は早い。凛が出てくるまで、宿の前で待つ。

 

 簡単に朝飯を食べて、さてと出発。早く発たないと次の街で宿が取れない。クレデンシャルにスタンプを貰い、宿を出た。

 

 「凛!」

 え?え?な、何で蓮が居る?

 「凛、ごめん、ごめんね。俺が悪いのに、逆ギレして。凛は悪くない。」

 蓮が泣いてる。状況がまだ良く分からない。気配消してた筈なのに。

 俺の左手を見て

 「あぁ、あった。探したけど見つからなくて。凛が持ってたんだね。」

 指から指輪を抜いて自分の左手に付けた。

 「手紙、読んだ?ちゃんと前に進んで欲しかったのに。」

 「俺が一緒に歩くのは凛だけだよ。凛しか駄目なんだよ。」

 絞り出す声で伝えてくる。

 「駄目だよ。日本に帰るんだ。蓮。蓮のパートナーは、俺じゃ駄目なんだよ。」

 

 凛の態度は頑なだった。それはそうだ。浮気されといて逆ギレ、指輪も捨てて家を飛び出したんだ。帰って置き手紙みて、呆然とした。

 

 「嫌だ。帰らない。凛とカミーノ歩くんだっ。」

 大の男がしゃくりあげて泣きながら帰らないと駄々をこねてる。あぁ、駄目だ。俺の気持ちも揺らいでしまう。決めたのに。身を引く。そして1人で生きていくって。

 「駄目だよ、帰って?また同じ事繰り返したら辛くなるだけだよ。」

 携帯が鳴る。華からだ。

 〔もしもし?姫?〕

 「うん。華が蓮を飛ばしたの?」

 〔そうよ。浮気されといて、なんで姫が身を引くのよ。馬鹿じゃないの?怒りなさいよ。姫の相手は蓮だけよ?姫と生きるために人間やめたのよ?分かってる?〕

 「大丈夫だよ。俺、1人でも大丈夫。」

 〔大丈夫?何が大丈夫なのよ。別れて平気なくらい図太い神経してたら、1人でカミーノには行かない。〕

 「・・・うん、そうだね。」

 〔あと1週間で夏休み入るから、その街でゆっくりしてて。合流するから。その間に、蓮とちゃんと向き合いなさい。〕

 そう言って電話は切れた。

 「華がこの街で、待てって。合流するから、それまでにちゃんと話し合えって言われたよ。」

 「うん、分かった。まだ早いから、公園かどっか行こう。」

 やっと蓮も落ち着いて、公園に向かう。会話は無い。

 

 「怒っていいんだよ?俺が悪いんだ。携帯のメアドも変えた。女からはもうメール来ないよ。」

 パンッと音が鳴る。俺が蓮を引っ叩いたからだ。

 「何で逃げるんだ。女性達は本気だぞ!俺を選ぶならちゃんと謝罪して然るべきだろ!」

 気持ちが爆発した。

 「俺が好きなら、ちゃんと清算してから来るべきだった。そうだろ。」

 怒りが湧いてきた。

 「女の子、弄んで楽しかったか?蓮は最低だ!」

 俺の目からも涙が溢れて止まらない。怒りと悲しみ、それから追いかけて来てくれた安堵感がごちゃ混ぜだ。

 「ごめん、ごめんなさい。女の子達には今から謝罪する。」

 携帯で、謝罪のメールを1人1人に送る。返信は、罵詈雑言。当たり前だ。

 「凛、凛に触れていい?抱きしめたい。」

 「駄目。まだ駄目だ。まだ蓮を許せてない。」

 川の近く。川の流れる音を聞きながら夜が明けた。

 思っていた以上に俺は怒っていたみたいだ。寂しい?そんな言葉で誤魔化してた。同行二人?そんな訳であるか。浮気されて、何で俺が身を引くんだよ。綺麗事で済ませようとした自分にも腹が立つ。

 

 腹が立ったら、腹減った。

 「もう、バルが開いてるだろ。腹減った。バル行くぞ。」

 「うん、わかった。」

 メールのやり取りを終えて、ボーッとしてた蓮を連れて、バルに行く。2度目の朝飯だが、バリバリ食う。蓮も無言で、朝飯を食べる。

 巡礼者達はとうに出発して、街は静かだ。連泊出来る宿を見つけ、部屋に案内された。眺めも良く、暫く休める。華に泊まってる宿を教える。

 「俺、眠いから、寝る。蓮は好きな事やってれば。」

 早起きしたし、時差ボケで眠い。それに怒って疲れた。満腹だし、眠たくなった。

 蓮は荷物からノートPCを引っ張り出し、恐らく途中だった仕事を片付けてる。仕事も女の子達も放ったらかしにして、俺を追いかけて。何してんだ、蓮は。蓮の姿を眺めながら、眠りについた。

 

 凛は、怒ってた。自分が怒ってる事に気がついてなかっただけだった。正直、女も仕事も放り出しても良かった。だけどそんな事したら余計に凛は怒るだろう。メールで謝罪したけど、女達からは罵りのメールばかり。仕方ない。自分のせいだ。まぁ、謝罪とは名目だけで、お前らじゃ俺は満足しないってメールしたからね。最低男で結構だ。凛に受け入れて貰えれば、罵声なんて気にならない。

 凛の寝顔は、本当に美しい。今は人間の姿だけど、それでも綺麗だ。そっと額にキスをした。

 「・・・まだ許してないのに。」

 起きてた。でも、笑顔だ。スッと本来の姿に戻った。

 スウッと大きく息を吐いて、また眠りについた。俺も眠い。一寝入りするか。ベッドに入るとすぐに睡魔に飲まれた。

 

 目が覚めたら夕方だった。外を見ると次の巡礼者達で賑わってる。

 「ん~、よく寝た。今何時?」

 「夕方の6時過ぎ。飯食いに行く?」

 そうだな、と頷いて宿を出て街を歩く。そんなに大きくはない街だが、出発地点で有名だから、バルや土産屋で賑やか。なんか寝たら、怒りも落ち着いて、馬鹿みたいだなと思えて来た。悲劇の主人公になりきって1人でカミーノに出るとか。陶酔し過ぎだろ。俺。

 蓮に寄り添い

 

 「蓮、蓮は俺のもの?そう思って良いの?」

 「うん!そうだよ!俺は凛のもの!凛はおれのものだ。」

 キスしようとして来たけど流石にメインストリート。恥ずかし過ぎる。

 「駄目。場所考えろっ!」

 ポカッと頭を叩く。

 

 食事を終え宿に帰ると蓮がちょっと買い物して来ると外出。風呂付きの部屋だからその間に風呂に入ろう。

 

 上がったら、蓮が帰って来てた。

 「何買いに行ったの?」

 「コレッ!」

 

 ・・・コイツ、本当に馬鹿じゃなかろうか?巡礼路の出発地点で、ディオルド買ってきた。

 反省って単語、抜け落ちてる。絶対に。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。