1801年
魔王ククルククルという存在が居る。
曰く、その巨体は4000メートルを超える。最強にして最大の魔王。最初の、【第一世代メインプレイヤー】である【丸いもの】から生み出された魔王だった。そんなククルククルはその巨体故にルドラサウム大陸のどこからでも目撃出来るだけの巨体を誇っており、だからこそ最初の時代、Kuku時代の象徴とも言える存在だった。何故、そんな話を、ランスという未成年禁止美少女ゲームの本編では出てこなかった設定的な裏話をしているかと言えば、
自分がその景色を目撃しているからだった。
魔王ククルククルが存在していた。
そしてそれに向かって何百、何千という【第二世代メインプレイヤー】である【ドラゴン】が音速と呼べる速度で飛翔しながら戦いを繰り広げていたからだ。もはや知覚できる範囲を超越した速度の戦いはかろうじて、ククルククルが圧勝しているという事だけが伝わってくる。ククルククルの巨体に備わった触手、それが音速を超越するドラゴンよりも速く動き、防御結界の様に働いては飛翔するドラゴンを接近する前にミンチすら残さず、血の霧にして消し去っていた。
だがそれでもドラゴンは諦めず、数えきれないほどのおぞましい数で人海戦術―――あるいは竜海戦術で襲い掛かっていた。ブレスを触手のリーチ外から吐き出せばそれが合わさって海の様にククルククルに襲い掛かってくるが、まるでダメージを見せない上に触手の一薙ぎで吹き飛ばしてしまう。第一世代の魔王、そして最強のメインプレイヤーと認識されたドラゴンの戦いは、それでもククルククルという原初の魔王が圧倒的優位を保ったまま進行していた。
それを何故知っているかと言えば、とても、とても簡単な理由だった。
「おー……マギーホア様頑張ってるなぁ」
「ルビードラゴンの姿は凄い目立つわよね……あ、またブラックドラゴンが死んだわね」
「え、嘘!? あー! 私狙ってたのにー!」
もう一年近く同じ景色を眺めているからだった。周りには
もはやそれは【ドラゴン・カラー】からすれば見慣れた景色でもあった。しかも既にこの景色が始まってから1600年が経過しているという話でもある。もはやドラゴンがククルククル相手に戦い、そして死んで行くのは日常的な景色だった。そしてそれを支える為に翔竜山では日夜大乱交ドラゴンセックスブラザーズ~俺とお前は穴兄弟~な状況が開催されているらしい。良くもまぁ、やるもんだ、と思いつつも、
「はぁー……羨ましい……」
童貞、捨てたいと嘆く。溜息を吐いたのが聞こえたドラゴン・カラーが此方へと視線を向け、
「ん? あらだったら翔竜山の宴に混ぜて貰えればいいじゃない。直ぐにでも孕ませて貰えるわよ」
「悪いがそっちはノーセンキュー」
そう、孕む側ではないのだ。自分は孕ませる側になりたいのだ。ハイパー兵器を使ってあひんあひん言わせたいのだ。ハイパー兵器であひんあひん言わされたいのではない、そんなの怖いわ。記憶にある限り、童貞だったのだ。だったら新しい人生でぐらい、盛大に女をあひんあひん言わせたい。その欲望をフルオープンにしていきたい所存だった。だがそこには一つ、大きな問題があった。
「俺は、メスを孕ませたいんだ……!」
「何言ってるのよ。
そう、そうなのだ。
右腕を持ち上げれば鋭い鉤爪の生えた、黄金の鱗に包まれた腕が見える。人間の胴体よりも太く、しかししなやかな体。煌びやかな鱗はそれだけで財宝の輝きを放っており、背に生えた翼は雄々しく、雄大な空を舞う為に存在する。それらが黄金の鱗を持つ肉体に繋がり、巨体はそれだけで人類の都市を蹂躙できるもので、手入れのされた尻尾は撫でるとその者に気持ち良さを与える一品だった。
そして後ろ脚の間、股間部、そこにはスリットが存在している。
そう、女―――というか
そう! 雌だから! ハイパー兵器が! ないのである!
ランスと呼ばれる18禁美少女ゲームシリーズが存在する。アリスソフトという会社から発売され、シリーズを積み重ねてきた漸くシリーズ最終作へと到達したシリーズである。このゲームはランスという一人の鬼畜戦士を主人公に、ルドラサウム大陸を冒険し、最終的にレイプとか強姦とか偶に合意でセックスしたりして世界を救う、大変に頭の痛いゲームである。
だが面白い。
物凄く、面白い。
何百、何千というプレイヤーが魅了され、そして最終作の販売で涙を流す程に面白い。シンプルながら爽快感のあるややダークファンタジーなランスの物語はしかし、このシリーズの表層部分でしかない。時折スタッフや解説本、画集についてくる設定を確認すれば、このランスシリーズがどれだけ作り込まれているのかが解る。それこそ世界の創世からランスの現代まで、その歴史や文化、種族、食事、そういう細かい部分まで設定されているのだから。
ファンであれば、誰もが一度は設定を纏めたWIKIを長時間覗き込んで、世界観やキャラクターへの理解を深めたりもするだろう。かくいう自分もそういうプレイヤーの一人だった。手を出したのは戦国からになるが、それでも一回目のプレイで見事に魅了されたプレイヤーの一人だった。
だからと言って誰も転生したいとか望んでないし頼んでない。
生まれて初めて卵の殻を割って、青い空を見て、ククルククルに突撃してミンチになるドラゴンの姿を目撃した時、自分の最初のリアクションはそれが夢である事を祈ってそっと卵の中へと戻る事だった。たぶん誰だってそうする。
確かにシリーズを愛するプレイヤーは大量に存在するだろう。
だがこの世界に来たいと言うキチガイは一人もいないだろう。
それぐらいには人類というか存在する全ての生物に対して厳しいのがランスシリーズの世界―――或いはルドラサウムという神の作った世界だった。
まず第一に創造神ルドラサウムが平穏とか望んでない。苦しんでいる姿が大好きな創造神は基本的に生物が苦しむのを求めて、争乱などを大陸の上で臨む。彼が創造した神たちもその為に生物を生み出し、そしてそういう風に流れる様に世界を進ませている。そしてこいつらには絶対に勝てない。勝利してしまった場合、世界が消える。ご都合主義でもどうにもならないので詰みである。初手、救いがない。
つまりルドラサウム大陸は根本的に創造神ルドラサウムの箱庭であり、そしてそこに存在する【メインプレイヤー】と呼ばれるその時代の基本種族が争う様に出来ている。そして基本的にこの【メインプレイヤー】もクソとかクズが多い。元が18禁なゲームだけもあり、女は基本レイプされたりレイプされたり大乱交したりレイプされたり、後はリョナられたりやっぱりレイプされてばかりである。
というか主人公がレイプしている。欠片も救いがない。レイプ魔の主人公が世界を救うという頭のおかしいゲーム、それがランスである。
まぁ、ここはまだいい。
ランスが生まれるLP歴ではまだ救いがある。それはランスが世界を統一して救うからだ。この時代に生まれたのなら適当に平和な国に逃げ込めば大体どうにでもなるだろう。問題は自分が【第三世代メインプレイヤー】ではなく【第二世代メインプレイヤー】であるドラゴンとして生まれてきた事にあった。
ドラゴンという種族は恐ろしく優秀だった。
第一世代である丸いものは肉体的な変化が遅く、それよりも精神的な成長が早すぎたため、争うという概念を捨て去ってしまった。それを反省して作られたのがデザインをもっと凝らした上で完璧な種として生み出されたドラゴンであった。第二世代のメインプレイヤーであるドラゴンは将来的には無双中のククルククルを討伐し、その後に出現する魔王アベルを100年以内に監禁する事に成功する。
その上で数年かけて魔軍を壊滅させ、
そして、その上でドラゴン統一国家を完成させてしまう。
そして世界平和に1年で飽きたルドラサウムに絶滅ビームを放たれてドラゴンが絶滅間近に押し込まれる。
そう、クソみたいな神の調整ミスが原因でドラゴンは未来では滅ぶのだ。
ドラゴンとして生み出された時点で詰みに限りなく近い何かだった。
もう生まれた時点で詰みとかどうしようもなくない? 三超神の脳味噌にはバランスという言葉の概念が存在しないのでは? そもそもあいつら全員異形だし脳味噌そのものがない可能性すらあるのでは? 死ぬ前に童貞ぐらい捨てたかった……。
そう、その時、思いついた言葉がそれだった。
生まれて、現状に絶望し、ドラゴンには未来がねぇなぁ、クソが! と半ばやけっぱちになっていた状態で、頭に響いた言葉がそれだった。
死ぬ前には童貞が捨てたかった。
そう、それだ。
それを思いついた瞬間、隠れていた卵の殻の中から生まれ変わったような気分で飛び出し、ミンチになったドラゴンの血肉のシャワーで歓迎されながら空に向かって叫んだのだ。
周りのカラーにキチガイ染みた視線を向けられるも、おそらくは生前から叶わなかった願いを叶えようという意思に体と心が満ち溢れていた。そう、ここはルドラサウム大陸。創造神が一番ひどい上に大体の悪行が神様からオッケー出されてしまう世界なのだ。レイプの一つや二つ、サムズアップで返事を貰えるに違いない。つまりレイプで童貞卒業だ。これはかなりロックなのではないだろうか? 現代社会では出来ない、ドラゴン特有のワイルドな卒業方法だ。
だが、そう、それには足りないものがある。
周りに居たカラーが何頭か逃げ出すのも気にせず、新しいドラゴンの死体の首が降ってくるのをチョン避けで回避しつつ、ドラゴンハンドでぐっとガッツポーズを決めながら童貞を捨てる為に自分の体に足りないものを手に入れる為の決意を固めた。
そう、チンコ―――或いは我らのヒーローの言葉を借りてハイパー兵器である。
Kuku後期、そしてAV歴に出現するメインプレイヤーはドラゴンであり、女性体しか存在しないカラーも当然、ドラゴンの姿をしている。つまりドラゴン・カラーと呼ばれる種族である。自分もそんな、ドラゴン・カラーの一人である。黄金の鱗を持つゴールドドラゴンとでも呼べる姿をしているドラゴン・カラーである。
だがハイパー兵器はない。カラーなので当然である。
そう、つまりはどうにかしてハイパー兵器を調達しなくてはならないのだ。その為の手段はこの世界には色々とある。性転換、触手を生やしたり、お薬を飲んだりと。だがその手段を入手する為にも、翔竜山の麓、カラーの森の外の世界へと出て、世界を探検したり冒険したりし、その為の実力や道具を集めなくてはならない。
故に生まれてから一年、ドラゴンの雛として健康的な人生を送ってきた。
朝起きて体操、しっかりと日光浴をしながら腹鱗を乾かして、運動して、そして健康的に体を育てた。無論、雌にモテる為の努力をする為に、鱗や爪、角の手入れも忘れない。決してククルククル方面に近寄ろうとはせずに、安心安全なカラーの森で大人しく体がある程度丈夫に育つのを待った。
三超神ローベン・パーンが完璧な生物としてデザインするだけあって、一年を迎える頃には体は大きく、そして竜として立派な肉体に育っていた。栄養たっぷりな食事に健康的な食事をお腹いっぱい繰り返してきた一年にドラゴンとしての肉体がしっかりと応えてくれた。
成長したドラゴンの翼はちゃんと広がり、そして空を飛ぶには十分な力強さを見せてくれるようになった。もう、これで一人で外に出かけても大丈夫な姿に育ったのだ。故に、ついにここから始まる。未来はもはや存在しないに等しい、クソみたいな三超神の一角がバランス概念をルドラサウムの胎に置いて来たのが原因でドラゴンに未来はない。だとしたらヒャッハー出来る範囲でヒャッハーするのがルドラサウムの住人として最も正しい事ではないのだろうか? この世界で生まれてしまった以上、最終的にルドラサウムに還元されてしまうのだから、もはややりたい事をやるだけやるのが恐らくは最も正しいのだろうと思う。故に始まる。
夢を追いかける為の旅が。
童貞を卒業する為の旅が。
―――ハイパー兵器を求めてルドラサウム大陸を放浪するドラゴンとしての生が始まったのだ……!
馬鹿やろう!! 俺のハイパー兵器を取り戻しに行くぞ!!!
そしてレイプして童貞卒業だ!! これはそういう話である。ルドラサウム大陸特有の頭の悪さだから許せる。