※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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982年 作戦フェイズ 魔王城ルート確保

「ウル様! 完全! 復活! がーっはっはっはっはっは―――!」

 

 高笑いを上げながらぐっと拳を握って《ゼットン》で背後を爆破する事で演出しながら完全復活をアピールする。ガッツポーズをしながら爆発させるのは特撮的にかっこいいのである。それに何人か馬鹿が巻き込まれたが、そこは見ないふりをしておく。ともあれ、省エネロリウルモードは一旦()()()()()()()()。もうちょっと継続しても良かったのだが、というか俺が小さくて前線に出ない方がもっと人類が気合を入れてくれるかもしれないと思ってちょちょいと期限を延ばしていたのだが、

 

 流石にケッセルリンクを相手するのに、俺がまともに戦えないのではやばい。なので急遽、自分の意思で継続していたロリモードを解除して大人の姿に戻った。そしてその上で隊の面子を集め、出陣できるように国境、前線基地に面子を集めて話をする。そこには何時も通り人間の姿に、新しく加わっている仲間の姿が幾つかある。

 

「大きくても小さくてもお前の騒がしい所は昔から変わらんな」

 

 そう言うのは地竜のノス。正史においてはジルに忠誠を誓い、魔人となったドラゴンである。だがこの歴史においてノスはジルと出会ってすらいない。ただマギーホアに忠誠を誓ったまま、ドラゴンの誇り高い戦士として今も一緒に戦ってくれている。今回から本格的に隊に加入し、そして参戦してくれる。対ケッセルリンクに対して非常に心強い味方だった。それに加え、

 

「ケッセルリンク……激戦になりそうだな」

 

「まぁ、彼の癖を考えて戦術を練ればなんとか? ただ一発で間違いなく葬ってくるわよねぇ」

 

「ま、死ぬかどうかは気にするだけ無駄さ。勝つつもりで戦わなきゃどうにもならない」

 

「此方、作戦行動の準備、整いました。出陣は何時でも」

 

 ガイ、スラル、ハンティ、そしてルシアを筆頭とした堕天使隊。連れてこれる戦力の中でも力のある連中をなるべく引っ張り出してきた、という状況である。

 

「大将がここまで気合を入れるってのも珍しいな。何時もは大体誰かを残してるもんだけど」

 

「ケッセルリンクは()()だからな」

 

 魔人ケッセルリンク。カラー出身の魔人。

 

「あぁ、カラー出身……成程ね」

 

「カラーを戦闘種族と勘違いしてるんじゃねぇぞ」

 

 ともあれ、ケッセルリンクはスラルが魔王だった時代に、スラルを守ろうと思った一人のカラーが魔人となった存在である。当時から実力に関してはトップクラスの魔人。今の時代でも純粋な強さ、という面においては恐らくガイと並ぶクラスだろう。いや、禁呪行使しないガイと比べればケッセルリンクの方が上だ。上級魔人という言葉はケッセルリンクを表現する為に存在する。そして強いのは魔人としての能力の高さだけではない。

 

 鍛錬する事を忘れず、技を磨き、カラー由来のモルルンを駆使し、更に魔法まで使ってくる。

 

「しかもアイツだけ魔法使って性転換して男になりやがって。アレだけは一生許さねぇ。男になる時は一緒になろうね、って約束したのに」

 

「それ一方的に脅迫してただけでしょ。ケッセルリンク、困った表情浮かべてどうすればいいか私の所に相談しに来たわよ」

 

 ごめんねケッセルリンク君。

 

「まぁ、そうでなくても《アモルの闇》で自分の消耗が気付けなくなるとか、《ミスト》で霧になって物理も魔法も透過してくるとか戦士として完成されている上に手札も多いから隙が無いんだよなぁ」

 

「化け物じゃねぇか」

 

「だからこんなに数を揃えたんですね」

 

「おう」

 

 ただし―――ケイブリスの様な怖さはない。

 

 ケイブリスの様な強さへの貪欲さをケッセルリンクからは感じない。鍛錬するし、強くなるし、油断はしないだろう。だがケイブリスの様な強さへの必死さ、魔人になってからも喰らいつくような強さへの執念というものがケッセルリンクには存在しない。良い意味と悪い意味で、優雅なのだ。善性で余裕のあるケイブリスとでも表現できるのがケッセルリンクかもしれない。そして比較できるぐらいには、ケッセルリンクは強いのだ。

 

 一撃一ダウンペースで此方を落とされると割と真面目に人数での勝負になってくる為、今回は割かしガチ面子を呼び出している。その証拠に、ラ・バスワルド以外の最上位戦力は大体揃っている。

 

「そんなに強いのは解ったけどよぉ……ククルの防衛は大丈夫なのか?」

 

「あ、そこは生物最強に任せてるから」

 

 

 

 

「あの子が建てた都市、か。私の時の様に消えぬように、頼まれたのであればしっかりと―――む、魔人の気配か。倒せはしないが叩き出すだけはしておこう」

 

 

 

 

 翔竜山からマギーホア、出張である。魔王城での戦いを見越して翔竜山からククルへと一度移動して貰っている。何があろうとあの人? 竜? 猫? がいる間はあそこが絶対的に安全だと思える凄い説得力がある。まぁ、それでもマギーホアに任せ過ぎると怠けてしまう。なるべく早くケッセルリンクを倒して戻りたい所でもある。これだけの面子が揃えばまず、ケッセルリンクには勝てる筈だ。

 

 問題は何人死なないか、という点にある。《男に容赦はしない》とかいうふざけた名前の攻撃の癖に一撃でミンチにしてくるだけの殺傷力のあるケッセルリンクの攻撃は、バリアの類を張っていなければ此方から犠牲者が出る。

 

 そしてジルの命令が影響して、そこら辺の手加減がケッセルリンクには出来ないだろう。ともあれ、なるべくベストメンバーで挑むのが良いだろう、これに限っては。貴重な戦力を一人であっても殺すわけにはいかない。黒部戦の無死突破は一つの奇跡に近かったが、それでもジルに勝つ為にはこの奇跡をずっと重ね続けて行く必要がある。

 

 ランス君の様に。

 

「―――よし、お前ら。ケッセルリンクを倒しに行くぞ」

 

「おーし、魔人最強格ってのがどれほどのもんか見せて貰おうかぁ!」

 

「この人数で挑むのだ、蹂躙にならなければ良いのだがな」

 

「いやぁ、アレに限ってそれはないでしょ」

 

 各々に勝手な事を口に零しつつ、移動を開始する。今回からはノスが隊に加入したという事もあり、巨大なドラゴンの姿が一緒に移動する事になる。その姿が一緒に歩き、移動する姿は非常に目立ち、隠密も糞もねぇな、と言いたくなるような様子だと言える。とはいえ、魔人討伐隊とは違って、自分たちは隠れる必要もない、主力だ。それでいて相手にも存在を認知されている。

 

 隠れて行動する必要はどこにもない。

 

 なら堂々と侵略するだけだ。

 

 ラ・バスワルドと黒部を退けた今、地上の進軍ルートが確保できるようになった。後は道中の魔人を蹴散らしながら魔王城へと完全に道を繋げるだけだ。人類を背負っている。その重さを感じとりながらルドぐるみの上に腰掛け、

 

 浮遊しつつ進軍する。

 

 魔王領東ルートから、北へと移動を開始する。

 

 

 

 

 国境に構築された前線陣地を抜け、そのまま北へと進んで行く。東寄りのルートを選んで行く事で永劫の剣の領域を避けて、ケッセルリンクの領地へと進んで行く。此方はそこまで荒廃しておらず、森の姿等が確認できる程度には豊かさが残されていた。此方に関しては黒部の様に暴れまわる事もないため、そのまま環境の形が残されている、とも表現できた。

 

 まだ日中、陽が高い内に国境から魔王領南東部に到着した。迎撃に来るような魔人や使徒の姿もなく、今までの進軍で一番平和とも表現できる中、ある程度領地を進んで行くと、道を閉ざす様に茶髪のメイドが一人だけ、立ち塞がっていた。隊の前に立つ女、

 

 使徒シャロンはルドぐるみに腰かけている此方の姿を確認すると、スカートの端を摘まんで軽く礼を取った。

 

「お久しぶりです、ウル・カラー様」

 

「よ、シャロン。ケッセルリンクは元気にやってるか?」

 

「はい、人間牧場の任から解放された事にここ数十年は喜んでいます。おかげで醜悪な事をせずに済むと」

 

 まぁ、ケッセルリンクは人間牧場とか嫌いだよね、とは思う。ケッセルリンクの感性は比較的にまとも―――というか、スラルロスを発生していないので、心に傷を負っていない。これが正史だとスラルを失った影響でやや現実逃避していたのだが。それがないケッセルリンクはパーフェクトケッセルリンクと言えるかもしれない。しかも今に限っては敵だ。

 

 絶対地獄を見るぞこれ。

 

「それでウル様、ご用件は……ケッセルリンク様の討伐でしょうか」

 

 使徒シャロンの言葉にサムズアップで応える。

 

「まぁ、ケッセルリンク君だったら1回手が滑って殺しても蘇るでしょアイツ」

 

「その、コメントに困る様な事を言われると返答に……」

 

「あぁ、うん、ごめん」

 

 そう答えつつ、シャロンの視線はスラルへと向けられている。スラルはそれに気付きながらも何でもないかのように事態が進むのを見守っている。その流れに一瞬だけ困惑を覚え、しかし、心の中で納得する。ケッセルリンクの忠誠、その心の一部は常にスラルへと向けられ、占領されている。

 

 それに対する、使徒の小さな嫉妬か、と理解する。まぁ、そりゃそうだよな。ちょっと可愛らしいと思えた。

 

「ケッセルリンク様は皆様の来訪を予期し、そして待ち望んでいました。この地からの解放を」

 

 ジルの方針とは相いれない、という単純な話でもある。まぁ、スラルが此方についている時点でそこら辺は見えていた。なので選択肢は二つだ。今は昼なので、昼の間のケッセルリンクと戦うか、

 

 或いは夜―――本気と全力を出せる状態のケッセルリンクと戦うか。

 

 無論、夜のケッセルリンクと戦う事にメリットなんかない。しいて言うなら本気のフルスペックの上級魔人相手の戦闘経験が重ねられる、という事ぐらいだろう。それ以外にメリットはない。ケッセルリンクに関しては昼であれ、夜であれ、自分の出せる力の全てを出し切って応戦して来るだろう。相手が敬愛すべき主人だからと言って手加減するような相手ではない。という訳で、

 

「ちょっとタイムな」

 

「え、あ、はい」

 

 シャロンにタイムと片手を突き出してから、振り返る。

 

「昼の弱体化状態か夜のフルスペックケッセルリンク、皆どっちと戦いたい?」

 

「そりゃ勿論昼―――」

 

「当然夜だ!!」

 

「強者相手に血が滾るぞ!」

 

「本気で戦ってこそ戦で御座るなぁ!」

 

「上級魔人のフルスペックには興味あります!」

 

「いや、だから昼―――」

 

「夜! 圧倒的夜!」

 

「上級魔人がなんぼのもんじゃい!!」

 

「もしかして馬鹿しかいないのこれ……?」

 

「好んで最前線に飛び込む連中がもしかして馬鹿じゃないとでも思った?」

 

 後ろから夜コールが響いてくる。まぁ、元々夜のケッセルリンクと戦うつもりでこの面子を集めているのだから、ある意味順当と言えば順当なのだが、ここまで結構楽しみにしていたというのは流石に予想外だった。

 

 ちょっと皆、修羅道に育ち過ぎていない?

 

 大丈夫? 戦争終わった後君たち普通の生活送れるの? そんな不安を抱えながらもこれが隊の選択じゃもう、仕方がないよなぁ! としか言う事がなかった。

 

「姉さん、超笑ってる」

 

「アレも中身はドラゴンだからね。そりゃあ戦うのが楽しくてしょうがないんでしょ」

 

「うむ、誇り高き同胞の一員だ」

 

「でもそれ、褒めてないじゃろ」

 

 カオスの言葉にノスが真顔で首を傾げる。ドラゴンとしては褒めてるんだけどなー。女としては全く嬉しくないかもしれない。そんな様子をシャロンは眺めながら、苦笑しつつ、此方へと言葉を向けて来る。

 

「中々愉快な仲間ですね」

 

「そこにこれが終わったらお前らもケッセルリンクも加わるんだ」

 

 サムズアップを向ければ、それにシャロンはそうですね、と頷いた。

 

「きっと……ケッセルリンク様も、その方が楽しいでしょう。では私は一旦、話をケッセルリンク様へと伝えて来ます故」

 

「おう、こっちは夜までキャンプな」

 

 シャロンの視線が最後に一度だけスラルへと向けられるが、それを彼女は一切気にする事もなく、そしてそれを受けてシャロンは去って行った。それを見届けてからやれやれ、と思いながら頭の裏を掻き、夜か昼かで未だに言葉で殴り合っている連中を見て、よし、と声を張った。

 

「夜までここをキャンプ地とする!! オラオラ、お前ら夜まで戦闘準備と腹ごしらえしとけー」

 

 言葉を拡声させて放てばうーす、と緩い声が返ってくる。今回はほぼフルメンバーに近い面子だ。出来る事ならこのまま物量でケッセルリンクを押し切りたい所だが、選んだのは夜の姿との相対だ。

 

 ……すんなり行けばいいのだが。

 

 そんな事を想いながらも、ドラゴンとしての戦闘本能は強敵と戦える予感に興奮を隠しきれずにいた。勝たなくてはならないのに強敵を選んでしまうあたり、本能というのは実にどうしようもない奴だ、と、溜息をつきながら、

 

 夜に備えた。




 という訳で次回はケッセルリンク。

 CPが少ない頃ケッセルリンクと戦って地獄を見た記憶しかない。呪いに魔法に剣まで使ってくる上に魔人としてのスペックも隙が無くてほんとなんでランス君勝ててるの? ってレベルで強い。

 これで《無敵結界》張り直してくるの反則じゃね?
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