※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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985年 第一幕

 決戦開始の幕を上げたのは誰でもなく、

 

 ―――アベルだった。

 

 ドラゴン、それだけで生物として最上位の部類に入る。

 

 元々アベルは臆病であり、ドラゴンという種族の中では賢い生物に入る。偶然ククルククルを殺害してしまったアベルはそれでも、ククルククルの殺害に成功した唯一の生物に入る。つまり、最も一級神に近かった魔王を殺害する事に成功したドラゴンであり、それから膨大な経験値を獲得し、魔王となったドラゴンだった。その所業から勘違いされがちではあるが、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()という位置につく。アベルがドラゴンという種族の性質を自分のベースに考えていたため間違えていただけで、アベルの能力自体は高い。無論、そのスペックを超越していたのが竜王マギーホアであり、マギーホア一人が生物としてあまりにも強過ぎたという話だけであり、アベル自身はそこまで悪くはなかった。王冠であるカミーラを奪う事でドラゴンとしての王権を主張したかった、という部分がアベルの行動にあったのだと解る。

 

 だがそれを超えてドラゴンという種族は愚かで、闘争を第一に掲げる。

 

 故に、絶対不敗の竜王マギーホアを王として掲げ続ける。

 

 王権は強さの中にのみ生まれるのがドラゴンという種族であることをアベルはその臆病さ、そして賢しさから忘れていた。それはある種、魔血魂によって後押しされたものでもあった。だが、アベルは死亡した。そして学んだ―――或いは死亡して漸く思い出した。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()を。

 

 故に初動は、全てアベルが奪った。

 

 弱体化しても根本的に最強生物の一角を担うという事実に一切の変わりはなかった。魔王化が解けて、躯から蘇生された弱体化された魔竜であるという事実を込みにしても、アベルは生前存在しなかった闘争本能を蘇らせた。最もアベルに足りなかったものであり、ドラゴンという種を決定づける要素でもあり、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 その速度に反応を行えたのは自分、ハンティ、ライコウ、魔人、悪魔、ハニーキング、

 

 そして()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。

 

 消える事のみが瞬間的に知覚できた時にはアベルの動きをマギーホアが阻んだ。紅と黒の残像が閃光を残すだけで一瞬で衝突し、音だけを魔王城内部に連続で響かせながら瞬間的に多方面から衝突の衝撃と轟音を連続で響かせる。その瞬間だけ時間が加速したようにアベルとマギーホアが音速を超過して連続衝突を行い、爪と牙、翼と尻尾、ドラゴン式の闘争術―――己の肉体のみを武器とした原初の闘争で衝突し、そして大きく距離を空ける様に床に爪を立て、引き裂きながら滑る様に動きを停止させた。

 

 アベルの肉体には無数の傷が生まれるが、時間が逆再生を行う様に塞がる。

 

 それを知り、アベルがニヤリ、と悍ましい笑みを浮かべる。

 

「マギーホアぁ……殺す、殺してやるぅ……今度こそ、今度こそは俺が勝つ。そして竜王の座は俺が頂く……!」

 

「ふ……偉く吹っ切れたようだなアベル。貴様には常にどことなく、後の事を考えて動きを止める癖があった。死んだからか、今の貴様にはそれが見えん。あぁ……前よりは遥かにドラゴンらしいな、アベル―――それでも私には届かないがな」

 

「抜かせマギーホア! ここが貴様の死に場所だ。気に入った雌の前で屍を晒せ!」

 

「やれるものならやってみろ」

 

 マギーホアとアベルの咆哮が魔王城を震わせ、再び残像すら残さぬ速度で消え、連続で衝突する。轟音が響く中で、その他の動きが始まる。真っ直ぐ―――迷う事無く一気に飛び込み、ルドぐるみを握って全力で―――それこそ自分の筋力の限界を振り絞る様に振るう。

 

 凄まじい速度の一撃はルドぐるみが柔らかい人形であるという事実を考慮しても、絶対不変の属性を三超神から与えられた創造神のぬいぐるみは、この地上で自分が握った事のある武器で()()()()()()()()()()()()()()()()でもある。故に一切の加減もなく腕を振る。生半可な生物であれば接触した瞬間にひき肉を通り越して血の霧となって消し飛ぶ速度、破壊力、レベル350を超越した生物として最高峰のスペックを、経験から補正しながら全力で振るう。

 

「ウル―――アタックッ!」

 

 広範囲を押し潰すように振り下ろす必殺攻撃が叩き込まれる。アベルとマギーホアの高速戦闘を背景に叩き込まれた一撃は一瞬でナイチサとジルへと到達し、そしてその姿を衝撃波が飲み込んだ。髪が揺れる程度のジルに対して、ナイチサは剣で明確に切り払い、迎撃する事を選んだ。

 

 ―――ナイチサとアベルには《無敵結界》がないのが見えた。

 

 何故だ? 魔人ではないから? 魔王の一部ではないからか? 細かい事実は今は良い。それよりも重要なのは、

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()、という点にある。

 

「行け……!」

 

 声を絞り出しながら後続の仲間たちに前に出る様に指示を出す。ナイチサが切り払う動きを止めたのと同時に背後から魔法と斬撃が飛んで来る。放った必殺技に追従する様にレガシオの斬撃が発生する、10の腕から放たれる10連続の斬撃が一瞬で空間を跳躍しながらナイチサとジルに届き、それを魔法の斬撃とナイチサが放つ《魔の渦》が飲み込む。斬撃を超魔力の渦で飲み込みながらも直後、その空間そのものを焼き払う様に《火炎流石弾》が放たれ、

 

 酸素を焼き尽くす炎の中をガイが突き進んだ。

 

「ジル、覚悟―――!」

 

 そこでジルが迫ってくるガイを見て、漸くそれに気づいたような表情を浮かべた。

 

「あぁ……ガイ、か。貴様もいらんな」

 

 禁呪によって限界突破された力を保有するガイがカオスを握って《無敵結界》の破壊の為に動く。斬撃と《火炎流石弾》をカバーに使ったガイの動きはジルの死角より出現し―――それをジルは完全に把握していた。軽く手を前に出し、斬りかかってくるガイの動きをそれだけで止めた。

 

「他愛ないな、ガイ。それで私を倒そうと思っていたのだから実に可愛らしい。どうした? また肉バイブに戻ってみるか? あぁ―――いや、やはりいらんな。殺すか」

 

「うおおおお、ちょっと儂もガイもやばいんだが―――!?」

 

 ジルがガイの方へと伸ばした手を握り締めていく。空間諸共掴んだガイをそのまま手を握り締めて圧縮する前にハニーキングが投げ込まれた。

 

「あぁん」

 

 パリン、という音を響かせながらハニーキングが割れるも、その投入によって全ての魔法が無効化され、打ち消された。同時にガイが解放され、そしてナイチサが魔力による物理現象を引き起こし、魔法無効化では防げない破壊を生み出す。放たれる衝撃が床を引き剥がしながらひっくり返し、土石流を生み出しながら薙ぎ払われてくる。

 

 それに正面からノスが衝突していく。衝突と共に土石流が真っ二つに粉砕され、その隙間を通って前衛が飛び込んで行く。放たれる破壊光線が更に道を広げ、あらゆる支援魔法が一斉に発動する。多重に《魔法バリア》が展開され、あらゆる災厄から身を護る盾が生み出される。

 

 そして総攻撃が始まる。

 

「勇者……だが【塵】ではな」

 

「ち―――!」

 

 勇者が正面からナイチサと切り結ぶ。エスクードソードの内部から殺意が溢れ出し、それがナイチサへと向けられるも、ナイチサが涼しい表情でそれを受け流し、斬撃と斬撃が交差しながら多方面から襲い掛かってくる槍の一撃を受け流す。また、同時にカウンターで悪魔特有の魔法を放ち、破砕を生み出そうとする。

 

 だがそれがレガシオの一喝によって消し去られる。

 

 その間に、ジルへと接敵する。解放されたガイと入れ替わる様に正面に飛び込み、振り上げたルドぐるみを全力で叩きつける。それに対してジルが正面から腕を振るった。魔法の斬撃とルドぐるみが衝突し、周りの床を吹き飛ばしながら衝撃が放たれた。

 

 それを楽しそうにジルが見て、笑った。

 

「ふふ、はは、あぁ、先生……私は滅ぼすぞ。何もかもを」

 

「キマった事を言うじゃねぇか小娘がよ!」

 

 連続で振るって突撃する。腕が繰り出せる限界速度と筋力を連続で振るう事で乱打しつつジルを釘付けにしようとして、その姿が此方の認識を超越して横へと割り込んできた―――いや、その動きは歩く様に出て来るように見えた。

 

「《瞬間移動》―――」

 

 ジルの手が此方に伸びて来る。求める様に、手に入れようとするように。だがそれよりも早く、

 

「大魔法……!」

 

 ハンティが大魔法を放った。同じように《瞬間移動》で潜り込んで接近したハンティの魔法が至近距離からジルに叩き込まれる。炎と光を混ぜ込んだ破壊の大魔法は飲み込んだまま、ダメージを与えられなくてもそのまま姿を衝撃で吹き飛ばし、

 

 そこにライコウとガイが追撃した。

 

 邪魔する様にナイチサが転移してくる。

 

 それを妨害する様にパンドラが八人に分身しながらダートを投擲し、行動を阻害する。ナイチサの動きが停止し、その瞬間にカムイのエスクードソードが閃いた。

 

「おぉぉぉ―――《勇者斬り》ぃぃぃいい―――!!」

 

 逆手に握ったエスクードソードがナイチサの姿を捉え、そのまま両断した。ナイチサの姿が真っ二つに切り裂かれ―――、

 

「無駄だ」

 

 血の塊となって、そこから再生した。一切のダメージ、そういう姿を欠片も見せる事無く再びナイチサはその姿を現し、一瞬で殺害するだけ無駄である事を理解させられ、

 

 ケッセルリンクが舞った。

 

「ならば相手にしなければ良いだろう」

 

 再生復帰するナイチサの真横にケッセルリンクがミスト化を解除し、ナイチサに拳を叩き込んだ。それをナイチサが剣で阻むも、ケッセルリンクの行動は完了しており、ナイチサから力が抜けていく。《骨壊モルルン》によってナイチサの全身の骨から強度が奪われ、まともに機能しなくなる。そしてそこにガルティアが使徒のムシと共に連撃を叩き込み、その姿を飛ばす。

 

 吹き飛ぶナイチサに向かって、空から黒い弾丸が叩きつけられる。空からアベルがマギーホアに捕まった状態のままで床へと叩きつけられ、クレーターを生み出し弾き飛ばされたナイチサを潰す様に押し倒された。そのまま姿を引きずる様に突き放し、床へと押し付ける様に叩きつけてから飛翔する。

 

「消し―――飛べ」

 

 そこに、ラ・バスワルドの《破局崩壊》が一直線に放たれた。綺麗に空間をくりぬきながら全てを消滅させていく破滅の緑光がアベルとナイチサを飲み込んで、その姿を跡形もなく消し飛ばす。

 

 だが空間から滲み出す血色が再び、アベルとナイチサを再生する。完全消滅でさえ殺すに至らない―――《無敵結界》が存在しないだけで、アベルもナイチサも、魔王の外付けユニットの様な、一部とも呼べる存在だった。

 

 殺せない。

 

 相手をするだけ無駄。

 

 ならば、任せるしかない。

 

「レガシオ、マギーホア様、頼む……!」

 

「任せろ」

 

「そして勝利するといい」

 

 復活するアベルの咆哮とナイチサの《魔の渦》に真正面からマギーホアとレガシオが攻撃を叩き込む。元魔王と比べれば過剰とも言える戦力ではあるものの、あの二人を投入しなければあの元魔王たちは抑え込めないというのも、また一つの事実だった。アベルを二度、三度と殺す事は可能だろう。ナイチサの妨害を何度か避ける事も出来るだろう。

 

 だけどそれを継続し続けるのに人間の体力は少なすぎる。

 

 ここは二人に任せるしかない。

 

 顕現した元魔王二体はマギーホアとレガシオに任せ、レガシオの宝殿から放たれた、床に突き刺さった剣をジルへと向かって蹴り飛ばしながら接近する。ジルはそれを動じる事無く()()()()ながら振るわれるカオスと日光を蹴りで弾き、指のスナップで衝撃波を生み出しながら無数の黒い剣を生み出し、浮かべた。

 

 前衛が飛び込む様に入れ替わる。

 

「《ラグナロォォク》!」
「《ラグナロク》」

 

 ジルが指を優雅に振るい、その先から大魔法が放たれ、カラークリスタルを消費しながらカウンターで同じ魔法を叩きつける。大魔法が空間に衝突し、互いを喰らい合いながら捻じ曲げる様に周辺を破壊する。微笑みながら、ジルが指を弾く。

 

「《ラグナロク》っ!」

 

 カラークリスタルを再び追加しながら二撃目を放つ。

 

 ジルが指を音楽に合わせる様に、スナップさせる。

 

「《ラグナ、ロク》……!」

 

 カラークリスタルをじゃらじゃらと零しながら三撃目を放つ。大魔法の連射に全身が悲鳴を上げていくが、それを一切考慮する事無く、楽しそうにジルが指を再び弾こうとする。

 

 それにブリティシュが追いついた。

 

「それはもう、届かない」

 

 ジルが四撃目の《ラグナロク》を放つ前に振るわれたブリティシュの斬撃、その刃が攻撃を()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。《ガードLv3》から繰り出される究極の守護術が発生前に攻撃を貫通させる。

 

「ほう……しかし私と先生の間に入り込んだのは聊か不快だな」

 

 言葉と共にブリティシュの背後にジルが出現し、次の瞬間にはその頭が床に叩きつけられていた。連続で行われた《瞬間移動》によってその攻撃動作が吹っ飛んでいる。

 

 そこにハニーフラッシュが放たれる。逃げ場のない攻撃がジルを狙う様に放たれ、その姿をブリティシュから引き剥がす。復活したハニーキングがステッキを掲げながら大胆不敵に笑う。

 

「ふっふっふ、こう見えても私は神魔カウントだから―――」

 

「だから……どうかしたか、土塊? それだけ頑張って傷一つか」

 

 ハニーフラッシュを受けたジルの頬には一筋の傷跡が生まれており、そこから僅かに血が流れる。だがたった一筋の傷跡だ。ここまで連撃に連撃を重ねて、それでもこの程度しかダメージを出す事が出来ていない。

 

「所詮はこの程度か?」

 

「まだだ―――!」

 

 叫びながら勇者の剣が煌めいた。禁呪によって強化されたガイに匹敵する速度、強さによってエスクードソードが振るわれ、それをジルが《無敵結界》で弾いた。だがその衝撃はジルを吹き飛ばすには十分であり、その視線はエスクードソードへと向けられていた。

 

「……【逡巡モード】か? そこまで人間は殺していない筈だったが―――いや、そうか、別に殺さずとも死んだ事と同じ状態にすればエスクードソードは稼働するか」

 

「おい、大将! 渾身の策が見破られてんぞ!」

 

「馬鹿野郎! 見破られた所でどうしろってんだ!」

 

 《神光》を体に纏い、第三の目を開眼させる。ハンティも同じように、ドラゴン・カラーとしての全力を発揮する為に力を引きずり出す。ルドぐるみの頭の上にヘイロゥが出現し、自分の肉体と武器に力がみなぎっていく。その状態で、ルドぐるみを真っ直ぐ、ジルへと突きつけた。

 

「見破られた所で後がねぇんだ―――勝つまで戦い続けるんだよ……!」

 

 その言葉をジルは抱きしめ、嬉しそうに、楽しそうに微笑み、

 

「なら、続きだ―――かかってくると良い」

 

魔王ジル

 

支援配置

 

《魔王》
《UL体質》

《GL体質》
《SS式マルチタスク》

《無敵結界》
《神光》

《ラグナロクフィールド》
《姉妹コンビネーション》

《魔血の暴威》
《破壊の女神》

《Lv65以下即死》
《最硬の守護神》

《削除権限》
《禁呪・限界超越》

《暴食の獣》

《極夜の王》

《王の矜持》

【逡巡モード】

《人の可能性》

 

耐える 進む

敗北する GAME OVER

 

 マギーホアとレガシオを除いた状態で立ち向かう為に更に力を引き出す。だがそれに合わせて遊ぶ様にジルが更に力を引き出してくる―――或いはアベルとナイチサと揃っていた時の方が、まだマシだと思わせるぐらいの暴威を纏って。それでも

 

 ()()()()()

 

 その為にもまだ―――まだ、耐える必要がある。

 

 最低限、【刹那モード】に持ち込む必要がある。そこで漸くジルに対して対抗する事が出来る。その上で賭ける必要がある。故に、存在する生物は全て死亡状態扱いされる異世界へと人々が退避して、ゆっくりとエスクードソードのメモリが上昇し続けている間を、

 

 耐えなくてはならない。

 

「ふぅ、ふぅ、ふぅ―――決戦第二幕、行くぞオラ!」

 

 叫びながら、戦いを続行する為にジルへと踏み込んだ。




 長くなったのでどう足掻いても分割。シチュエーション的に仲間が少しずつ減りながらも相手を分断し、ボスと戦うってシチュエーションにhあやはり、どことなく燃えるものがある。


 次回、ジル決戦第二幕、ウル様の勝算。

 ここからが本番よー。
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