※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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985年 第二幕

 突撃して攻撃を叩き込む。

 

 素早く踏み込みながら叩き込む突撃からの一撃は纏う《神光》によって《無敵結界》を突破する。衝撃を叩き込みながらジルが片腕でルドぐるみからのヒットをガードする。ジルがその衝撃からダメージを受けるのを見て、決して肉体そのものは無敵じゃないのを理解する。問題は今の攻撃をジルが()()()()()()事にある。回避しようと思えば回避出来るだけの攻撃だったのだ。それを受けたという事は、

 

 まだ、遊んでいる。

 

「酷いな、先生。私を傷つけるのか?」

 

「そういう話は魔王を止めた後で言いなさい」

 

 振り抜いた後から連続で素早く切り込んでくる味方の姿が見える。此方がジルに叩き込んだ瞬間に動き出すのはカオスマスターのガイと、日光ユーザーのライコウだ。圧倒的なまでの殺意を纏いながら《無敵結界》を割る為に力を極限まで練り上げ、飛び込む。それに【逡巡モード】に入って上級魔人級のスペックを獲得した勇者が混ざる。現在メインプレイヤー最高峰のスペックを揃えた三人が同時に斬りかかる。まだ魔王は殺せないものの、エスクードソードは【逡巡モード】に入った時点で《無敵結界》を、魔人を殺せる力を得た。

 

 それが視界にすら映らない速度で振るわれる。

 

「それ」

 

 ジルが指を曲げた。それに合わせて《ゲートコネクト》が空間を歪めた。斬撃の行方と軌道を捻じ曲げ、斬撃が味方へと戻る様に反射する。

 

「でもだーめ、っと」

 

 それをスラルがブレイクした。事前に用意していた空間干渉術式でジルの行った干渉を即座に破壊し、斬撃がジルへと向かう様に修正された。それにジルが僅かに驚く表情を見せるも、即座に《瞬間移動》で回避し、

 

 《瞬間移動》で同じ空間に潜り込んだハンティが大魔法を連射した。

 

 光と炎の混ざった連続爆撃が空間を粉砕しながらジルを追尾するように爆破し続ける。光そのものが燃えており、燃える光となってジルを覆っていく。その中をガイが禁呪であらゆるダメージを遮断、無効化、自身を強化し、突き進んでジルを狙う。更に深化する禁呪がガイの力を限界を超えて強化する。

 

 限界を振り絞って《無敵結界》を割る為に動こうとして、

 

「ほら、私はここだぞ」

 

「ぶち殺せガイっ!」

 

 ジルが張った《魔法バリア》を多重に割りながらカオスが振り抜かれ―――ジルの正面、数センチという位置で切っ先が停止する。

 

「そぉ―――らぁ―――!」

 

 その柄をエルドが槍の先端で突いた。そのまま全力でカオスがジルへと向かって射出され、ジルがそれを寸前で回避する。笑いながら回避するジルはそれを行ったガイとエルドを殺す為に腕を振るい、黒い爪撃が発生する。空間を飲み込むほどの巨大な爪はガルティアのストマックホールに飲み込まれて消滅し、ケッセルリンクがジルの背後に拳を構えて出現する。

 

「私には容赦してくれる?」

 

「……魔王にも容赦はしない」

 

 ケッセルリンクの拳が振り抜かれた。それをジルが片手で受けながら叩き、受け流しながらケッセルリンクの首を掴んだ。

 

 そのままノータイムでケッセルリンクの首が折られた。

 

「他愛ない」

 

 ゆっくりと床にケッセルリンクの体が倒れていき、その姿を粉砕する為に踏み潰そうとして、パンドラが分身しながらダートを投げた。

 

「そこだな」

 

 その内、分身の本体、その心臓を正確に《Fレーザー》で貫いた。パンドラの分身が消え、胸に穴が開くが、

 

「っ―――!」

 

 ダートが投擲されて落ちた。ジルの行動がキャンセルされ、ケッセルリンクを踏み潰す動きが中断された。そこにエルドが続く。限界を超えた剛撃が両腕の筋肉を引き裂き断裂させながらジルの姿を後ろへと押し込んだ。合わせ、更にガードが前に出る。ブリティシュを筆頭とした剣士たちが前に出る。愉快そうに押し出されたジルにはハニーキングの《ハニーフラッシュ》が叩き込まれ、エスクードソードが続く。それが拳と蹴りによって叩き返されながら、

 

 回避不能の剣豪の斬撃が()()()()()()()ジルに刺さったという結果を刻んだ。

 

「これぞ奥義、《剣禅一如》……」

 

 ジルの纏っていた《無敵結界》がライコウの奥義によって破壊され、同時にライコウの腕が壊れた。指が曲がってはならぬ方向へと曲がり、手首の骨は粉砕された。それでもなお、背後から飛んで来る《ヒーリング》に布を巻きつけて日光を手に固定しながら、

 

「割れたぞ……!」

 

「おぉぉぉぉォォォォ―――!」

 

 仲間の屍を踏み越えて進む。

 

「ふ、は―――なかなかやるな。ならこれはどうだ?」

 

 空間に闇を充満させ、大魔法《ラグナロク》そのものを空間に合わせ、()()()()()()()()()()()()()()()という状況を生み出す。魔法を無効化出来るハニーキングでも一角のみを打ち消せるが、全体ではない。全員を守り切れない。前に出るブリティシュが《ガードLv3》の奥義で守護を完了させるが、その直後に多重に空間に大魔法を展開して飲み込んだ。

 

「ざけんじゃないわよ……!」

 

 《ソリッドブラッド》、元魔王スラルの奥義が放たれた。魔王を止めても引き継いだ超魔力は魔王としては非常に控えめな部類に入っても、それでも生物の分類上は凄まじいスペックに入る。それこそ魔力の量だけであれば間違いなく《魔法Lv3》を名乗れる元魔王の血色の奥義が、大魔法と空間内を衝突し、赤と黒の爆発を連続で生み出す。

 

 マギーホアとアベルの残像が爆発の中を突き抜け、高速で衝突しながら駆け抜けていく。爆裂する空間の中をラ・バスワルドの《破局崩壊》が放たれ、ジルを消し飛ばそうとする。

 

「お前のそれは危険だが―――どうとでもなる」

 

 指先をラ・バスワルドの破局へと放ち―――緑光が削除された。その瞬間をラ・バスワルドとハニーキングが驚愕の表情で見つめた。

 

「馬鹿な! それは私の権限よ!」

 

「メインプレイヤーに許されたものではないよ」

 

「許されるかどうかは貴様らが決める事ではない―――そうだろう? 私は罰されていない。それがルドラサウムの意思だ。白痴の揺り篭で眠る鯨に仕えていろ、滅ぶその時までな」

 

 神々の動きが止まる瞬間に―――ジルの頭上からルドぐるみを叩き落した。

 

 ルドぐるみのサイズを通常のサイズから最大サイズ―――つまり創造神本来のサイズまで巨大化させ、2km級の巨大人形にサイズを変更しながら蹴り飛ばされたそれがジルを押し潰した。その頭上を取る様に黒腕ではない右腕を持ち上げ、ルドぐるみの上を取った。

 

「終わったらお尻ぺんぺんだぞお前―――!」

 

 《高速飛翔》、《飛行》、《瞬間加速》、《シャドウウォーク》、《ファントムライン》、瞬間的に加速する為の魔法と移動魔法を全て同時にマルチ稼働させながらジルを潰した空間へと一気に落下し、

 

 ルドぐるみの上からジルを殴る。衝撃波がルドぐるみを貫通し、きりっとした表情をルドぐるみが浮かべる。そのまま、両手に《ガンマ・レイ》をチャージし、それを交互に放ちながら頭上からルドぐるみを変形させるように、衝撃と砲撃のみを貫通して乱打する。

 

「ハンティ!」

 

「姉さんこそ!」

 

 跳躍して横に着地、ハンティと反対側から挟み込む様にしながら必殺に大魔法を片腕に同時に展開する。長年を共に過ごした姉妹だからこそ可能なコンビネーション、

 

「大魔法―――」

 

「サンドイッチ……!」

 

 それをオリジナルサイズルドぐるみ越しに挟み込む様に全力で叩きつけた。弾け飛んだルドぐるみの下からジルが両側から大魔法を叩き込まれ、その姿が揺れた。黒いドレスが重力極光と光炎に巻き込まれて燃えていき、

 

 ―――その中で微笑んだ。

 

「大魔法サンドイッチで何で生きてるのアレ。アレ、魔人でさえ木っ端微塵にするぐらいの破壊力はある筈よね……」

 

「それが魔王って事なんだろう! オラ、続きぶっこむぞ!」

 

 ジルが大魔法の両面攻撃を内側から粉砕して出て来る。正史よりも遥かに凶悪な攻撃手段、戦力を整え、それでもジルはそれを嗤いながら踏破してくる。否、蹂躙してくる。上から落ちてきたルドぐるみを回収する様に手を伸ばしながら後ろへと跳躍すれば、入れ替わる様にガルティアと日光を手に固定したライコウ、そしてブリティシュが前に出る。

 

「連携を絶やすな!」

 

「続け、続け、続けぇ……!」

 

「戦える間は、体を動かし続けろォ!」

 

 怒号を轟かせながらジルへと向かって、戦闘を続ける為にジルへと武器を手に殺到する。それを見下す様にジルが視線を向け、一切、余裕の笑みを崩さずに魔法で薙ぎ払った。ブリティシュの必殺技と、そしてガルティアのストマックホールで魔法は消滅する。だがその余波だけでも人間には致命傷になる。肥大化し続けるジルの力は段々と抑え切れる程ではなくなってくる。《ハニーフラッシュ》の力が一段階飛ぶ様に強化され、ジルの放つ大魔法を相殺するが、

 

 その直後、五連続で大魔法が放たれる。

 

「く、ぉ―――」

 

 ブリティシュがかかる負荷に呻く。宝剣イングランド一本で守っているブリティシュと、その技能が異常であるのは事実だが―――伝説と表現出来る実力を持っても、それでも魔王の進撃を完全に遮断する事なんて不可能だった。防御側にハニーキングが回り、そこにラ・バスワルドとケッセルリンクが更に追加された。カムイとライコウとガイが攻撃に専念し、それに混ざるようにルドぐるみを振るいながらジルへと向かって突撃する。

 

「この程度で大陸を守ろうと思っているのか? 温いな。お得意のバランスブレイカーはどうした?」

 

 

 無論、使っている。回復アイテムは使える時に使う。バランスブレイカー級の装備は既に装備させている。反則、禁止、チート、そう呼ばれるALICEに回収されそうな道具は全て使っているし、使う準備を整えている。

 

 単純に、使う暇がない。

 

 一瞬でも戦線から離れるか、道具を使おうとすればその瞬間にジルが殺しに来る。

 

 故に一切、止まれない。

 

 踏み込み、細かい連撃と素早い突進を繰り返してジルに接近を繰り返しながら攻撃を叩き込んでいく。余裕で生物を屠れるだけの破壊力を込めながら放つ連続攻撃と連携も、ジルの前では全てが児戯に等しい。攻撃を全力で叩き込んでも、全くダメージらしいダメージにはならず、漸く全力を尽くして斬撃や打撃を重ねて、傷が一つ増える程度のダメージしかない。

 

 攻撃を重ね、重ね続け、ジルの体にも傷が増えていく。

 

 だがそれは一度《ヒーリング》を使ってしまえば治療出来てしまう程度の傷でしかない。

 

「やる気がないなら……一人一人殺していくぞ」

 

 《瞬間移動》で消えるジルを現実世界で空間干渉の魔法を行い、時間同期を行いながら同時に追いかける。ハンティが同時に空間に潜り込んで追跡するも、ジルの方が早い。虚空から出現したジルが後方へと移動し、

 

 スラルの横を取った。瞬間移動で消えるよりも早くジルがスラルを殺す為に腕を振るう。

 

 だがそれにマギーホアが割り込んだ、爪をジルに振るい、スラルを殺そうとした一撃をカットしながらそのまま衝突し、その姿を弾き出した。直後、マギーホアがアベルの一撃を喰らって吹き飛ばされる。

 

「耄碌したかマギーホア! 他者を庇う等とは!」

 

「貴様が闘争心を取り戻したように、私も慈しむ事を取り戻しただけだアベル」

 

 マギーホアがアベルからの攻撃を受けて流血するも、竜体のままにやりと笑い、再び残像となって高速戦闘へと没入する。同時にナイチサとレガシオの戦闘も激化し、連続で放たれる《魔の渦》と連続斬りの余波が此方へと降り注いでくる。

 

 その中を、潜り抜けながら何度も何度もジルへと向かって接近を繰り返す。だがデ・ラ・アドミラル空間を経由した《瞬間移動》に対抗出来るのは同じ魔法を扱えるハンティと、そしてジルの魔法の癖を知っている自分のみ。後は強引にスペックを引き上げているガイ。

 

 あまりにも、数が少な過ぎる。

 

 そして―――あまりにもジルが強過ぎる。

 

「少し間引くか」

 

 言葉と共にジルの姿が知覚出来なくなった。

 

 次の瞬間にはライコウの胴体が真っ二つに引き裂かれ、上半身が消し飛んだ。ブリティシュの姿が音速を超えて弾き飛ばされ、魔王城の外へと弾かれながら大魔法が10連射された。霧になったケッセルリンクが重力球で圧縮確保されて放逐された。ガルティアが大地に叩きつけられてそのまま埋められ、封じられた。

 

 隊員の首がもげた。胴体が引き千切られた。魔法によって跡形もなく消し飛んだ。防御の上から消滅した。仲間の技を空間を捻じ曲げて同士討ちさせた。アベルを手元に召喚してそれで叩き潰した。ナイチサの攻撃のみを召喚し、多重に《魔の渦》を発生させて蹂躙してくる。ハニーキングが割られた直後に破片が別々の異世界へとそれぞれ強制的にゲートの向こう側へと投げ捨てられた。止める為に割り込もうとすれば空間が螺子曲がって辿り着けなくなる。

 

 あらゆる抵抗を絶大な魔力とその魔技によってねじ伏せながら、抵抗を消滅させ、不可能な現象を条理の消滅と削除によって無理矢理成し遂げていた。

 

 その暴威、どうしようもなさ、圧倒的実力はもはや、魔王という言葉一言で説明する他なく、

 

 その一瞬で、戦力が半分にまで減らされていた。

 

「これで、少しは臭くなくなったな……」

 

 虐殺され、そして封じられ、除外され、一気に広く感じる様になった魔王城玉座の間の中で、満身創痍の状態で立ちながら、ジルを見る。息を荒げながら、どう足掻いても戦っていては勝てないという事実を突きつけられている。そんな此方の状態を見て、ジルが変わらぬ微笑を浮かべている。

 

「ここまでしてもまだ闘志が折れないか……流石、とでも言うべきか。だが先生がそこまで白鯨に義理立てする必要もないだろう。我が身と同化して眠れ、もう未来に頭を悩ませる必要はない」

 

 ジルが諦めを促す様に此方へと言葉を向け、手を伸ばした。まだか!

 

 心の中でそう叫んだ瞬間、

 

【刹那モード】、起動……!

 

「……っ!」

 

 瞬間、初めてジルの表情が変わった。一瞬でその姿が消えたと思えば青い軌跡を虚空に描き、それが連続で空間に出現しては消え、途切れる様に出現するのを繰り返し、斬撃と衝突する音のみが空間に響き、

 

 やがて、床を破壊する様に二つの姿が弾かれた。

 

 魔王ジル―――そして、エスクードソードを逆手に握って装備する、勇者カムイの姿だった。エスクードソードを構え、蒼いオーラを刀身に纏い、静かな怒りと殺意を研ぎ澄ましながら、

 

 魔王ジルに匹敵する力を授かっていた。

 

 否、

 

 エスクードソードの【刹那モード】は()()()()()()()()()()である、

 

 勇者がその稼働時に得る力は―――魔王を圧倒する。

 

「ふ、ふふ、それがナイチサを瀕死に追いやった【刹那】か……」

 

 ジルがエスクードソードと勇者の存在を捉えるが、勇者はただ一言、

 

「もう、いい―――お前と語る言葉は、僕にはない」

 

 勇者が消え、ジルの姿が消失する。斬撃と粉砕が空間で連続し、ジルと勇者が弾かれる。そして再び加速しながら必殺に必殺を重ね、衝突する。【刹那モード】に入った時点で、魔王に絶対的な死が付きまとう様になった。

 

 漸く、優位が出現し、

 

 ジルの姿が消えた。

 

「戯けが……【刹那】が来ると解っていて対策しないとでも思ったか」

 

 言葉が反応出来る前に背後から来る。黒い両腕が胴体を背後から抱きしめ、ジルの体の感触を背後に感じた。抱きしめてくるジルの体からは血が流れており、それが衣服に付着する。人質に囚われたような状態で、自分の動きも、カムイの動きも、全ての存在の動きが停止する。

 

「ジル、貴様―――」

 

「勇者、お前に好きな女は殺せるか……?」

 

 その言葉を残し、

 

 空間を超えた。




 vsジル戦第二幕。ジル様はウル様が敗北すれば同化して一つになろうとするよ。

 それにしてもネームド、ガンガン死んだなぁ……。
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