※この作品はR-18です。

ルドラサウム転生異聞録   作:てんぞー

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SS歴
100年


「ウ―――ル―――」

 

 右手で石斧を掴んで持ち上げ、それを飛び込む様に正面に見える、うし車の集団へと向かって振り下ろす。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()によって振り下ろされた石斧は振り下ろされるのと同時に破壊力に耐え切れず、粉砕されて消える。だがそれによって発生された衝撃と斬撃は消えない。

 

「あたたたたた―――っく!」

 

 正面の人類を知覚させる前にミンチにして殺した。

 

 と、生き残った奴がいた。逃げ出そうとする姿が逃げ切る前に指をスナップさせて、初級呪文を無詠唱で放つ。それによって放たれた重力の圧縮撃、《握撃》が首を巻き込んで頭を吹っ飛ばした。ドラゴンの感覚で周辺にもう、命の気配がないのを確認してから、粉砕したうし車へと、

 

 全裸のまま、接近した。

 

「がっはっはっは、グッドだ……とでも言えばいいか?」

 

 思ってた以上に人間を殺した事に対して思う事はなかった。というかストレスすらない。まぁ、ドラゴン的価値観からすれば根本的に人間、捕食するもんだし、別段親しくもない人間が相手じゃこんなもんか、と納得する。ともあれ、しばらくは森と自然の中で世俗を絶って生きていたが、そろそろ人界の様子も気になってきたし、そろそろまともな文明の装備が欲しかった。

 

 それでもSS100年で既にうし車が走る程技術が進んでいるとは思いもしなかったが。或いは流石に100年間魔法とリハビリに費やすのは時間をかけ過ぎただけだろうか? 意外と文明の進みが早い。

 

「いや、だけどあまり文明が未成熟だとルドちゃんも原始的過ぎる争いで見てる方が暇か。となるとある程度文明が進んだ上で停滞してくれた方が楽しいのかな? ま、便利だし俺はどっちでもいいや。さーて……おー、あったあった」

 

 やはりうし車の中には服やら肉やらが積み込まれていた。必殺技の《ウルアタック》でダメになったものが多いが、服の方は無事なのが結構ある。その内、まず最初に下着を確保する。ここ100年程下着のないフリーな全裸生活をエンジョイしていて知ったのは、服を着る時にこのプロポーションで下着がないと、間違いなく胸とかを痛めるという事実だった。全裸は楽でいいんだが、流石に街中に行く時は全裸のままでいる訳にもいかない。だが金はない。作る技術もない。ならどうする?

 

 当然、ランス式でやる。

 

 つまり奪う。

 

 まぁ、人間なんて放っておいても勝手にセックスして増えるんだから、1000人殺した所で大した問題はないと思うし。そんな事しなくても魔王スラルに変わったのであれば、既にスラルがルドラサウムに対するノルマを達成する為にも適度に人間を間引いてるし、そこまで大きな問題でもないだろう。ともあれ、自分の体のサイズに合う下着をまずは確保する。

 

 シンプルな白い下着だ。ちょっと味気ない……と思いつつ、装着していく。初めて装着する女性用下着の感覚は、ちょっとごわごわする? まぁ、フィット感はあるのだがこれなら全裸の方が楽だよなぁ、とは思わなくもない。だが残念、服装は文明的な生活に必要な物でもある。

 

「えーと……流石にスカートには抵抗感があるな。動きづらいし」

 

 男用の茶色のズボンをベルトを通して締める。上は……まぁ、ここはシンプルなシャツでいいだろう。何故か解らないがルドラサウム大陸では女性の露出が結構多い。特に上位陣程露出が増えてる気がする。まぁ、神―――というかアリスソフトの意思だからそこはしょうがないわ。

 

 部長、いるのかなぁ……?

 

 でもハニーキングは居るし。たぶん部長もいるんだろうなぁ、とは思う。その場合、メタ視点とかどうなってんだろうか? まぁ、考えるだけ無駄かと思う。それよりも問題は服装だ。

 

「胸が出てる影響でこれじゃあデブに見えちまうな……乳袋ってどうなってんだアレ?」

 

 胸が大きいと服に困るという話を今理解した。まぁ、どうでもいいか、と上からポンチョを被り、そして鍔広帽子を被った。近くに落ちていた手鏡を覗き込んで、片手を顎に当て、ふむふむ、と呟く。

 

「んー、これならなんとか吟遊詩人に見えるか? まぁ、こんなもんだろ」

 

 そこから更に略奪。袋の中に下着の替えを、後は適当になんか必要な物を袋に詰めていき、それを紐で縛って背中で背負えるようにしておく。後はなんか楽器があればいいのだが。そうすれば旅の吟遊詩人で通せるのだが。

 

「お、あった。楽器の良し悪しなんて解らないしこれでいいな」

 

 高そうなリュートを掴んで、それをちょっと片手の指で弾いて、音を鳴らしてみる。お、これはちょっと音程が外れているな、と直ぐに分かった。握ってみて直感的に使い方が解ってくるこの感じ、間違いなくLv1かLv2で技能を保有している感じだ。全く、何て無駄な才能なのだろうか。ドラゴンである限り一生縁のない技能じゃないか、これ。この様子だと他にもそういうLv1か2の技能が大量に眠っていそうな気がする。

 

 まぁ、公式でも技能は全部で20種類ぐらいって言われてるし。

 

 ランス君もバイク技能をLv1とかいう一体どうしたら使えるんだそれって技能持ってるし。

 

「ま、未開の原始人なんてちょっくら文化テロしてみれば簡単だろ」

 

 俺がルドラサウムのジミヘンである事を証明してやろう。片腕ないけどね。そんな事を考えながら破壊され、生存者が存在しないうし車を放置し、うし車が向かう先だった道を進んで行く。100年間引きこもって研究やリハビリを行っていたが、やっぱり予想していたよりも遥かに文明の構築が早いように思える。

 

「ま、こっからは【バランスブレイカー】認定で全く進まないだろうけどな……」

 

 呟きながら、今の人類圏を目指して歩く。

 

 

 

 

 もうめんどくさいしドラゴンパワーを引き出して翼を出そうかと考えたりもしたが、流石に人間にそんな姿を見られれば魔軍認定待ったなしである。諦めて大人しく魔法の調整などを行いつつゆっくりと旅を楽しむ様に歩く事にした。こうやって地上を歩いて歩き回る経験というのは割と初めてだったし、新鮮かもしれない。何しろ、大体の場合は空を飛んで解決してしまうのだから。

 

 そうやって方角も解らず歩いていれば、やがて道の先に小規模な集落の姿が見えて来る。集落というのも結局はドラゴン視点からのモノであり、人間としてはそれなりに賑わいのある町じゃないかと思う。外側から見ている感じ、建築は石組が多い。石を切り出して積み重ね、掘った感じ、

 

「……ローマ系?」

 

 そういう感じに見えてくる。白亜の街とでも呼べばいいのだろうか? ここらへん、というかSS歴に関してはケッセルリンクとガルティア、後は試作式無敵結界の話しかないので、人類がどんな文明を築いたのに関しては、全く知識が無かったりする。まぁ、それは自分の目で確かめればいいのだが。少なくともうし車が走る程度には文明が進んではいるのだろう。

 

 まぁ、とりあえずは服飾文化はLP歴に劣るも、発展している様には見える。それなりに人類として発展している事を祈りつつ集落―――或いは街の入り口に近づいた。そこには数名からなる守衛の姿が見えた。盾を片手に、剣や槍を握っているのが見える。技能によって得意な武器が違うから、握るもんを統一できないのがこの世界の事情だったりする。

 

「とまれ! その姿は……楽師か?」

 

「いやぁ、こう見えて旅の楽師でこっちに来るうし車に便乗させて貰ったんですけど、途中で魔軍に襲われてしまい……」

 

「なに?」

 

「ここからしばらく、あっちへと進んだ方に破壊されたうし車があるんで、確かめてください。自分も護衛に何とか逃がされて来たんで……」

 

「そうか……それは苦労しただろうな」

 

「よし、通っていいぞ。仕事を探すなら【黄金の羽馬亭】という所に行ってみろ。確か新しい楽師を探していたぞ。或いは最前線で士気高揚の為の楽師も求めている。危険だが其方は払いが良いぞ」

 

「これはどうも」

 

 ぺこり、と軽く頭を下げ―――見事、出まかせだらけで潜入完了。早速守衛が調査の為の人員を派遣しているが、そこで見つかるのは皆殺しにされたうし車の乗員と、そしてすさまじい力で破壊されただけの痕跡だろう。それが片腕のない女と結びつくのは恐らく難しい。

 

 しめしめ。

 

 ちょろいもんだぜ。

 

「さ、て、と。まずは金を稼がなきゃ意味がないか」

 

 町の中はそれなりに清潔になっていたが、どことなく忙しさを感じる。それに武装された人間が多く見える。軽く近くの人間を捕まえて話を聞き出してみれば、どうやらここは最前線に対して物資を送る、中継点になっているらしい。その為、色々と人や噂、そして物資が集まるとの事。これは結構いい所に来れたんじゃないか? と思える。カラーの森に100年ほど引っ込んでケッセルリンクの姿を見かけなかったという事は、今の段階では大陸のあちらこちらでカラーが生まれているという事だろうし。

 

「ま、最初は金だな、金」

 

 この先の事を考えて金を確保しなきゃならない。あぁ、だがナイチサの時代に国家が破壊されたりする事を考えたら金銀や宝石でキープしたほうがいいのだろうか? 良くある容量がとてつもなく広い、RPGっぽい冒険者の鞄がこうなると欲しくなってくる。バランスブレイカーとしてどっかに落ちてないだろうか。

 

 確か【黄金の羽馬亭】だったか? しばらくはそこを拠点にするのも悪くはなさそうだ。そう思いながら道の端に移動し、しばらくは聞こえて来る声に耳を傾ける。

 

「どいたどいた! 前線に武器を届けるぞ!」

 

「前線のムシ使い共に食料を送れ!」

 

「前線の様子は?」

 

「まだ持っている! 魔軍が積極的じゃないのが助かるな」

 

 ……そういえば魔王スラルの時代は大きな戦争に関する話は歴史に残っておらず、その評価も少女、という言葉が似合う存在だったと聞く。となるとルドラサウム的には今回の魔王のチョイスは、魔王自身が破壊衝動と人類へと敵対する事に対する恐怖と絶望を楽しむ為のチョイスなのだろうか? 中々に趣味が良いと言える。

 

 魔王スラル、か。ケッセルリンクが守りたいと言いたくなるほどの魔王、ちょっと興味がある。

 

「ガルティアが前線を持たせている間に再編成を急げ!」

 

「クソ、ムシ使い……気味の悪い連中なのに……」

 

「おい! 味方だぞ? そんな事を言う暇があれば前線を支えてみろ!」

 

 ガルティア―――まだ魔人になる前のガルティアがいるらしい。いや、ムシ使いがいるとなると、地理的にゼスの辺りだろうか、ここは? 将来的には魔法至上主義のゼスの魔法使い共によって全滅する民族……まぁ、迫害なんて良くあることだから特に思う事はない。

 

 自分たち(ドラゴン)も良く巨人を相手に殺戮ゲームとかしてたし。

 

 ぶっちゃけ、自分の力を盾に相手を虐めるの、楽しいと言えば楽しいのだ。正気に戻った時が死ぬほど辛いだけで。ま、民族浄化とそこから生まれる苦しみはこの世界には必要なものだ。全部《決戦》で報われると信じて、ムシ使い達にはこれから始まる辛い歴史を頑張ってほしい。

 

「ふんむ―――どうしたもんか」

 

 しばらくは金を稼ぐつもりだったが、ちょっと興味が湧いてきた。魔人になる前のガルティア。そして魔王スラル。どういう存在なのか、どういう人物なのか。ちょっと前線に突撃して確かめてくるのも悪くないかもしれない。まぁ、カラーの魔力と神様に絶望的に気に入られてしまったこのドラゴンスペックなら突撃しても問題がないだろう。今は魔人に無敵結界がないし。

 

 いや、あるのか?

 

 どのタイミングでスラルが無敵結界を神に頼むか解っていないし。

 

 だけど良く考えたら魔軍再編成で魔人メガラスが今、最前線で暴れているのではこれ……?

 

「そっかぁ、ガルティア……メガラスを相手に前線を保てるのかぁ……ガルティア君普通にやばくない……?」

 

 これが《ムシ使いLv3》の実力という奴なのだろう。流石伝説とかキチガイとか化け物と呼ばれるだけはあるLv3技能だ。根本的に理解の範疇を超越している。だけど、まぁ、こういう話になると確かに気になってくるのは事実だ。

 

「んー、んーんー……行っちゃう? 行っちゃうかこれ?」

 

 最前線行っちゃう? 実際、人生の目標なんて生きる事以外にはないし、それで()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()って話だ。それに最前線にいた方がケッセルリンクを探しやすいだろうし。そう考えたら悪い話には思えなくなってきた。

 

「よーし、ウルちゃん最前線でジミヘン魂を布教しちゃうぞー! 所でこの時代にギター職人はいないのか? いない? マジで? ルドちゃんも《ギター職人Lv2》の技能適当な人に生やすぐらいのユーモアが欲しいよねぇ」

 

 周りから滅茶苦茶変な目で見られている。傍目から見れば間違いなく虚空に向かって喋っているキチガイなのだから、当然と言えば当然だ。まぁ、半分発狂している様なもんだから当然と言えば当然だ。正気のまま生きていける程優しい世界じゃない。

 

「とりあえず最前線へと遊びに行くかぁー。メガラス君元気にしてるかなぁ。ケーちゃんのあのサイズってサッカーボールみたいに蹴りやすそうだよなぁ、今の体なら。再会祝いにケーちゃんをゴールにシュートしてみようかな」

 

 まぁ、とりあえずは一番つらそうな場所へゴー、

 

 そこで死ねたら幸せ程度に考えて、動き出す。本命は性転換魔法を使えるケッセルリンクの捜索として。

 

 ルドラサウム大陸は今日も、というかいつも地獄だった。




 略奪! とりあえず殺してみる! 欲しいなら奪う!

 ランス世界における一般的人間の基本行動である。ルドちゃんがアレなので、人間も基本的な連中は腐ってたり手段が過激だったりする気がする。

 という訳で突撃、隣の最前線。何時死んでも怖くないから突撃出来ちゃうスタイル。
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