ククル跡地に外側からももう一段階封印をかけた所で二重に封印を施し、オマケで人除けの結界を張る事で旅人が不用意に近づくのを阻止する。本来の廃墟の状態であれば別に一晩の宿にする程度かまわないのだが、問題は人が迷い込んだ結果、あのスライムの様な存在に食われて何か厄介な能力でもつけられたら困るという部分にある。大体のバランスブレイカーはガイや信頼できる部下が始末してくれた事だろうし、封印さえしておけばそこまで心配する事もない……と思っている。まぁ、自分でも時間の感覚がガバガバなのは良く理解している事なので、そこらへんはぜひともスラルか堕天使たちに告げてリマインダを頼む必要があるだろう。
まぁ、割と良く寝過ごすのは自分でもわかっている事なので、余りカムイの言葉に対して反論することはできない。
とはいえ、封印処理を終わらせてしまえば後は大陸中央部、クリスタルの森と翔竜山へと向かうだけになる。つまりは実家への帰郷である。なんだかんだで人生で一番長く過ごしている場所だと思っているし、生まれ故郷でもあるから落ち着く所でもある。旧ククル領からルドべぇの背中に乗りながら大陸中央、クリスタルの森東部側の入り口を低空飛行で移動する。
そうやって数日が経過する。
旧ククル領から脱出してしばらく、漸くクリスタルの森が見えてくる。故郷の緑の気配にはやはり心躍るものがあったが、内心、そういう場合でもなかった為少々焦っているのも事実だった。体の奥から感じる僅かな微熱にまだ誤魔化せる範囲ではあるものの、僅かに力が入らなくなってきているのを感じていた。時期的にそろそろかと思っていたが、熱を感じる限り、そうらしい。
―――あかん……!
なるべく早く引き篭れる部屋が必要だった。その為、このタイミングでクリスタルの森が見えてきたのは僥倖だった。精神力で熱を押さえ込みながらふぅ、と息を吐きながら視線を森の方へと向ける。優秀な俺の従者たちであれば、主が近づけば迎えに来てくれるだろう。どうやって察知しているかは知らないけど。
ルドべぇがクリスタルの森の気配に楽しそうに尻尾を揺らしている。ククルの人間としてはもはや普通の景色だが、今思うとなんでこのぬいぐるみ動いているんだろうな、という疑問は度々思い出させられる。マッハに回答を求めたときは仕様外である、と震え声で答えられたけど。そんなこともあるんだなー。
「ウル様」
「うん?」
「何かを堪えている様に見えますが」
「お前、モテてたの絶対勇者特性関係なかっただろう」
「育った環境が良かったものですから」
良くもまぁ、あんな環境でねじ曲がらずにまっすぐ紳士に育ったもんだと感心するしかない。とはいえ、近いうちに自分の方からも余裕は消えそうなので、好意に甘えるとしてさっさと移動してしまう事にする。そういう事でクリスタルの森の前までやってくると、久しぶりに見るメイド堕天使アステルの姿が見える。此方の姿を目撃すると、嬉しそうに一礼する。
「お帰りなさいませウル様! そしてようこそ、カムイ様。それでは案内しますね」
「おう、ただいま。よきにはからえ」
「久しぶりに失礼します」
言葉を返しながらアステルに先導されながらクリスタルの森の中へと進んでゆく。どうやら、また森の内部ルートが変更されたらしい。《ゲートコネクト》の技術を利用されて作られた時空を捻じ曲げた森の迷路は、普通に入っても外へと追い出されるようになっている。そのルートは侵入者対策に定期的に変えられているようだが、この40年の間に変更があったらしい。自分の実力なら無視して入れるが、それで魔法をぐちゃぐちゃにする必要もない。
おとなしくアステルの先導に従って森に入り、そのままそれを抜けて久方ぶりのペンシルカウへと戻ってくる。
ペンシルカウの様子は昔とは変わらず、多くのカラーが住んでいる自然と融和した理想郷としての形を保ち続けている。ここはククルとは違い、ある程度快適な生活を求めたら、それ以降の発展や成長は求めていない状態でストップしている。その為、工業などの近代的な概念が定着していない。それがこの大陸のスタンダードでもあるのだが。まぁ、確かに近代化は重要というか、一定以上の生活水準を求めるのであれば必要な事だろう。
だが別に、そんなことしなくても生きていけるだろう? という考えが根底にはある。それは自分が特別頑丈な体をしているからかもしれないが、少々不便でもこの自然に触れている環境の方が、どちらかというとカラーたちも喜んでいる様に思える。だからこれ以上の発展は必要がない様に思える。
そしてその中、元気に、活き活きと暮らしているカラーたちの姿がペンシルカウにやってくると見える。ルドべぇの上に座っている此方に姿を見ると、通りすがりのカラーが頭を下げて道を開けるのもまた見える。どうやら、俺が俺であると解るらしい。40年なら既にカラーが一世代交代している程度の時代が過ぎている筈なのだが。まぁ、それでも忘れられないのは嬉しい事だ。時間の感覚が何時も通りなので数百年姿を消して忘れられる時があるし。
「相変わらずここは穏やかで、静かで、そして力に満ちている場所ですね」
「でしょう!? でしょう!? やはりペンシルカウが世界最高の都であるのは確定的に明らかなんですよ。なんて言ったってウル様がずっと支配しておられる場所ですからね! そりゃあもう約束されたようなものですよ、幸せがね……!」
「お前のそのテンションはなんなんだ」
苦笑しながらとはいえ、と呟く。
「やっぱり暮らす場所は幸せな所がいいよな」
「それは……そうですね。えぇ、確かにそれはそうですね」
カムイは納得する様に頷きながら横を歩いている。それを見てからペンシルカウの奥、比較的に翔竜山に近い所にある我が家―――つまりは屋敷の存在を確認するとゴールが見えてきた所で安堵の息が漏れる。そこに感じる僅かな熱の気配に、もうちょい頑張ろうと自分に言い聞かせる。表面上は平静を装いつつ、屋敷の前までやってくると扉が開き、そしてその向こう側から従者筆頭のルシアが姿を見せた。
「お帰りなさいませウル様」
「ただいま。お客さんは居る?」
「バスワルド様が魔王城への帰還を拒否して魔王ガイがそれを考えもせずに即座に返答したので居座られています」
「ガイ、あの野郎……!」
魔王になったのにそんなみみっちぃ嫌がらせをするとは。いや、もしかしてそこまでラ・バスワルドの面倒を見るのが嫌だったのかもしれない。とはいえ、魔人の中でも最高クラスの戦闘力がある元女神をほいほい人類圏に投げ捨てるのはどうかと思う。ラ・バスワルドが居ついている事実にやや困惑し、今度魔王城に返却しに行く事を心に軽く誓い、
「スラルちゃんは?」
「戦後の処理が忙しいようで此方には中々。部屋の方はそろそろ来られると思って掃除したばかりです」
「何故解る……」
「従者として当然の嗜みです」
背後でアステルがえっ、マジ? みたいな表情を浮かべているが、やっぱりルシアが異様らしい。GPS……は存在しないけど、そんな感じの魔法を仕込まれていないだろうか? 呼べば大体いつでも瞬時に出現するし。確か昔確かめたときは《メイド》技能を保有していなかった筈なのだ。
……筈、なのだ。
まぁ、いい。ともあれ、
「じゃあ、カムイに使える部屋を案内しておいてくれ。俺はしばらく部屋に籠る」
「拝承しました。ではカムイ様、此方へとどうぞ」
「お邪魔します。ではウル様、後程」
「あぁ、しばらくここで休むからゆっくりしとけ」
カムイとルシアが去り、部屋に戻ろうとするとアステルが付いてくる為、適当な窓の外からアステルを蹴り出しながら素早く自分の部屋に戻った所で、
大きく、息を吐き出した。
「ふぅ、ふぅ、ふぅ……」
少しずつ身体の中に生まれた微熱が広がって行くのを感じながら、手遅れになる前に防音の魔法を発動させ、部屋の外に音が漏れ出さない様にする。扉にもロックの魔法をかけ、その上で漸く、気を抜く事が出来る。
体の内側から発生する熱が体温を高めていき、自慰に耽った訳でもないのに興奮が満たされてゆくのを感じる。何とか熱を追い出す様に息を吐き出すが、熱っぽい吐息が口から漏れるだけで、全く体の中から熱が消えない。まだ我慢しながら服に手をかけて脱いでゆく。肌に擦れる服の感触でさえ刺激になっていて、苦しさを覚える。
それらを脱ぎ捨て、下着姿になった所で漸くある程度の煩わしさから解放される。ベッドの上にルドべぇを投げ捨て、その上に飛び込む様に倒れて、食いしばる様にルドべぇの頭に噛みつき、体を巡る熱にじっと耐える。耐えようと思えばまだ耐えられる範囲だ。だがこれが徐々に酷くなって、最終的には頭の中が快楽を得る事だけでいっぱいになる。そうなる事はすでに解っている。
つまりは発情期だ。
この際、理論はどうでもいい。
問題はこの強制発情だ。
少しでも気を緩めると相手を求めてさまよいそうな程に脳味噌が沸き上がってくる。体を巡る熱が慰められる事を求めて肌の下を撫でて来る。神経を刺激する様に体から力が抜けて行き、足腰に力が入らなくなって行く。だがその代わりに感覚だけが鋭敏になって行き、自分の肌に触れる柔らかいぬいぐるみの感触だけが伝わってくる。
「はぁ……ふぅ、ふぅ、駄目だ……しばらくは治まりそうにもないなこれ」
頭を横へずらし、ベッドの反対側に置いてある姿見へと視線を向け、発情で紅潮している自分の様子がそこに見て取れた。目元に涙を浮かばせ、上気した頬を見せ、ぬいぐるみの上に横たわる雌の姿を見れば、どんな不能であろうと一瞬でノックアウトさせるだけの艶姿が見える。それに体がこうなって以来、前よりも体の感度が上がっており、
それでも今回は前回の様に満足できるまで絶頂させてくれるような相手がいないし。
「理性が蒸発したらそのまま押し倒しに行きかねんぞぉ、俺」
一応、本当に一応ぎりぎり処女は残っている。本当に。だが前に発情期に入った時は危うくロストしかけた。それぐらい発情期に入ると酷い。ここだけはジル、余計な事をしやがって、とは思わなくもない。ハンティはたぶん《ドラゴンLv0》なのが影響して発情期が来てないんだろう、アレ。
「ふぅー、ふしゅー……ふぅー……」
落ち着こうとするが、段々と快楽を求めようとする本能の方が強くなってくる。鏡に映る自分の艶姿を見て、寧ろ一回イった方が楽になるのでは? なんてことを考え出す。ほぼ確実に余計苦しくなるのは目に見えているのだが、それでも種族的本能が生殖を求める。こうやって発情すると自分がどうしようもなく、心の底から雌であることを自覚させられる。だからと言って屈辱を感じる訳ではないが。いや、むしろ好きというか。気持ち良いのは嫌いじゃない。
「駄目だ。我慢できないわ」
ルドべぇの上から転がる様に落ちる。仰向けになりながら左腕を生やし、右手を胸に、左手を下半身へと持って行く。下着を押し上げる様に自分の右胸を掴み、子宮の上を軽くなぞる様に左手指を動かしてから下着の中へと手を滑り込ませる。発情している証として既に膣の方は整っており、濡れていることを指の感触を通して理解する。
そこに一切の躊躇もなく、中指を膣の中に進める。
「っ、くぅ……はぁ」
膣に侵入する指の感触と、胸を掴む感触に軽く達しそうになるのを歯を食いしばって耐える。ここで達してもだめだ。もっと、もっと焦らして高められるだけ高めてから絶頂しないと体が満足できない。そもそも今の発情状態は、孕むための準備だ。同じドラゴンを相手にすることを想定した発情なのだ。ただ、絶頂しただけではそのまま続行するだけだ。
だから膣壁を指でスリ、胸をつかんで寄せて、勃起する乳首に舌を伸ばす。自慰でなるべく快感を高めてから自分を強く刺激し、絶頂する。それで何とかなるかもしれない、という考えも実際に膣の中に指を滑らせれば半分ぐらい考えが蕩け出す。
と、
「あ、帰ってたのね悪戯に―――」
と、聞き覚えのある声がした。虚空から転移で出現した姿を知覚した瞬間、
「え? あっ、きゃっ!」
素早くその姿をつかんでベッドに引きずり倒した。息を荒げながらちょうどよい所に飛び込んできてくれた存在に、押し倒す様に捕らえながら、逃がさない様に抑え込む。その姿を押し倒されたスラルが見上げる。
「……今度は悪戯で済ませないって―――」
言い終わる前に唇を重ねて言葉を閉ざした。
そのまま、この相手なら安心できると、完全に理性を手放した。
ついにR18っぽい事してる……。
そしてついに、発情期の気配を感じ取った馬鹿どもの戦争がはじまる……!