「俺! 様! 復活っ!」
拳を掲げながら復活を宣言する。発情期終了を。これで漸く頭が沸騰して理性が消し飛ぶような感覚から解放された。始まってしまうとマジで孕むか気絶するまで続行するから、ドラゴンの性欲任せに動いて、快楽で気絶するまでセックスし通した方がいいのだ、これ。そうでもないとマジで収まらない。そういう訳でひたすらセックス、セックス、そしてセックス!
セックスし通して気絶できた! やった! やったよ皆!
「あー……レイプ対策に《避妊結界》仕込んでおいて良かった。なかったら確実に孕んでたわ……」
まぁ、流石に前回の突発的な発情期で困ったというか、
今回、処女膜ぶち破った事を考えると事前に仕込んでおいて正解だったと思う。
しかし発情期は本当に酷かった。完全に自分で自分の体がコントロール出来なくなるぐらいに暴走し始めるのだから。それでもまぁ、結局は満足するまで絶頂しようとする本能に従って、結局は気絶するまでセックスするのだ。気を付けるのは避妊の事だけでいい。
なんというか、発情期に流されて、というのはあったが。それでもやっぱり気持ちがいいのは嫌いじゃない。種族的本能の強い部分もあるかもしれないけど。ただなぁ、やっぱり誰にでも体を開くというのもどうかと思う。
うむ、
「俺に勝てる奴……或いは俺が認められるような奴だったらいいかもな」
あんまり、こう、セックスダメダメとか言ってても生物としてどうかと思うし。出来たら自分が好きな相手がいいけど。発情期がある以上、そんなことも言ってられないし。まぁ、そんな所だろう。良し、と自分に言い聞かせて言い訳を完了する。振り返れば完全にダウンして動かなくなったラ・バスワルドとスラルの姿が見える。ちょくちょく、というか割と意識飛ばしたり理性プッツンしているので、その景色を表現するには惨状という言葉しかなく、ベッドシーツの染みはまさしく破瓜によってもたらされたものであるのを証明している。これで俺も処女卒業と思うと、ちょっとした感慨深さがある。
まぁ、勢いだった訳だが。
それはともかく、汗と愛液と様々な体液で体がべとべとしている。流石に風呂に入らないと気持ちが悪い。いったん、風呂に入ってさっぱりしよう、と決める。
「ルシアー。ルシアー。風呂はいりたーい」
名前を呼びながら風呂場へと向かうが、ルシアからの返答がない。珍しい。アイツは何が何であろうとも、自分が呼べば絶対に出現して来る従者だったのだが。何か、忙しいのだろうか? そう思っていると風呂場の方からルドべぇがびたんびたんしながらやってきた。そして尾びれを持ち上げてサムズアップっぽいポーズを決める。そういえばお前、途中から部屋の中に居なかったな。
「なに? 風呂の準備をしてくれた?」
ルドべぇがびたんびたんとボディランゲージでコミュニケートするので、良しよくやった、と尾びれを掴んで引きずる。ルシアの応答がないのはちょっと不安だったが、ルシアに限って何か失敗するという事もないだろうと信じて。
とりあえずはセックス後の汚れを洗い流す為に風呂へとダイブする。
「ふぅ、いい湯だった。ルドべぇも芸が細かい奴め」
アレでなんで動いているのかさえ発覚すればいいのだが。いまだにルドべぇの存在は謎である。そしてこれからも謎である。アイツがなぜ動くのかは一生解明されなくていい謎の一つだと思っている。故にルドべぇと風呂を楽しんで体をさっぱりさせた所で、下着とジャージを着用した所でお着替えは完了する。今は客と呼べるような存在がいない屋敷内では、変に着飾る必要もない。適度に緩い格好を維持しながら生活すればいいのだが、
相変わらず、ルシアの姿が見えない。それどころかアステルの姿も。普段はあの二人がメインでこの屋敷は維持されている。ルシアは言わずもがな、アステルは重度のレズっ気が強いのが困った所だが、それはそれとして仕事はちゃんとしてくれる子だから心配はいらないはずなのに、二人の姿が見えない。これだけうろうろしていればいつもなら即座に出現しているのだが―――何かあったのだろうか?
「……ん? そう言えば家の外からなんか気配いっぱい感じるな」
というか翔竜山の馬鹿共の気配を感じる。なんだろう、遊びにでも来ているのだろうか? だとしたらそっちの対応で忙しいのかもしれない。顔ぐらいは拝んでやるか、と思いながら階段を降りて廊下から玄関まで移動し、
扉を開けてその向こう側の地獄を見た。
見てしまった。
叫びながら遠い昔、どこかで見た事のある様なデザインというか姿というかあ、アイツ赤いなぁ、と思ってしまった髭の……? たぶん髭をはやしている大柄のモンスターが昇竜拳を華麗に決めてドラゴンを殴り飛ばしていた。そのまま回転しながら拳を振り回し、ヒップドロップで叩きのめし、尻尾を掴んで回転しながら投げ捨て、すでに地面に埋まっていたレガシオの上にノスを叩き落して、ドラゴンの山を生み出していた。
「ヒアウィゴー!」
叫びながら戦う最強のモンスターはそう叫びながら残っていた最後のドラゴンを叩きのめすと、ケツで地面を叩いてから超高速移動して消えていった。その姿を見て、近くにいたルドべぇを掴んで地面に叩きつけた。
「ただの配管工じゃねぇか!! お前に何があったトッポスっ!!」
完全にどこからか余計な情報でミーム汚染されてる最強のモンスター、トッポスが魔物界の方向へとケツワープというかケツダッシュを決めているのを見て、間違いなく変な次元とルドラサウム大陸が繋がっているのを確信した。またどっかでゲートが開いているんだろう、きっと。見つけて閉ざす必要がある。ククル跡地も変なゲートが開いていたし。
だが、
それはそれとして、
「なんだこれ」
目前の景色では信じたくない状況が繰り広げられていた。大量に倒れているドラゴン、木の上に引っかかっているメイド堕天使。炎上しているペンシルカウの一部。地面に叩き込まれて埋まっているドラゴン。沈黙しているレガシオ。放火後ティータイム中のマギーホア。それを遠くから見つめながら顔を両手で覆うペンシルカウの町長。余りにも混沌としすぎている状況を前に、久しぶりに見る妹の姿を見つけた。
「あ、姉さん発情期終わった?」
「見ての通りな! 楽しかった」
「あ、うん。表情が物凄いすっきりしてるのは解るけど姉さん……」
「な、なんだよその表情」
「いや、うん……取り敢えずレリアに謝っておこう、な?」
レリア・カラー、現在のペンシルカウの管理者、或いは町長。正史においては女王制だったが、その枠は常に俺が占領している以上、別の名前や役職がつく。都規模のペンシルカウに対しては管理者、或いは管理人と呼ばれる町長ポジションのカラーが存在している。それが端の方で呆然となって燃えるペンシルカウを眺めている。代々、カリスマに優れるカラーがその役割に任命されるが、ペンシルカウのそういう政治的部分は意図的にノータッチで過ごしている為、細かい部分は自分にはわからない。
ただそれはそれとして、この規模の都市を維持するのは結構大変だというのは解る。
そしてそれが半壊レベルにまで追い込まれている。
「あいつら、姉さんの発情期に求婚しに来たんだよ」
「……」
「トッポス連れてくるのに苦労したなぁ。堕天使の子も急いで私を探しに来たんだよなー」
「ほんとごめん」
その言動で大体なにがあったか察した。そういえば自分が現状、唯一発情期を迎えるドラゴンであることを思いだした。そうだな、発情期来たら求婚しに来るよな。だってドラゴンだもの。それに思い出せば太古の時代、大体一日中セックスしてぶっ通していた連中とか結構いたし。
性欲の薄いハンティと、今まで完全に発情していなかった俺の方がおかしいのだ。子供産めるようになればご覧のあり様。
……対策が必要なのかもしれない。とはいえ、次の発情期まで40年あるから、それまでに何か考えればいいだろう。
「どうしようこれ……」
片手で顔を抑えながら助けを求めてマギーホアへと視線を向けるが、マギーホアはすでに翔竜山へと向かって逃亡していた。ははーん、もしかしてけしかけたなお前……? 心の中の恨みリストにマギーホア1回、と追加しておきながらこの惨状をどうするか、氷の魔法を使って燃えている森を鎮火しながら考える。
「ねーさん?」
「はい……復興のお手伝いします……」
逃げる様に視線を逸らすが横から来るハンティのプレッシャーに負けて観念する。流石に自分が原因で炎上してしまったのだから、これをこのまま放置する事も出来ない。それにクリスタルの森の防備もこれで壊れていないか心配でもある。はぁ、とため息を吐きながら片手で顔を覆い、言葉を漏らす。
「これ、5年程度ではどうにもならなそうだな……」
最低でも10年、15年はかかりそうなコースだった。少なくとも今日明日完了するという事はない。このまま魔王城方面へと逃亡したいという気持ちもあるが、責任を取るのは当然の話である為、そう簡単に逃亡する事も出来ない。しばらくはペンシルカウに残って復興の手伝いをする事になるだろう。
「はぁ、折角冒険できると思ったのになぁ……」
「姉さんの冒険がそんなスムーズに進んだ事ないでしょ」
「言うじゃねぇかおい」
「事実でしょ」
そう言われると何も言い返せない。大体毎回、トラブルを経験しているだけあって、ハンティの言葉は真実を捉えていた。とりあえず転がっているトカゲにケリを入れて退かしつつ、この荒れた大地をどうにかしなくちゃな、と考えていると、
「なら私はここまでとなりますね……」
と、カムイの声が聞こえた。そしてそれに納得もする。
「あぁ、そう言えばお前ももう爺だしな」
寿命も恐らく、だいぶ近いだろう。死ぬなら家族のいる場所で、と実際にそうやって死ねるのはこの大陸では幸福な事だ。そう思いながら声に従って視線をカムイの方へと向ければ、
上半身裸、地面に倒れた状態で背中にシップを張って貰っているカムイの姿が見えた。
「カムイ君」
「ほら、私も歳ですから。腰がね……」
「カムイ君……」
「ウル様との旅は楽しかったですよ……」
地面に倒れてピクリとも体を動かさないカムイが腕だけを動かし、静かにサムズアップを持ち上げるが、看護しているカラーがそれを抑え込んで体を魔法で持ち上げ、そのまま救護室へと運んでいく。人間は年を取ると体が自由に動かなくなってくるから大変だよなぁ、と悲哀と共にその姿を見送っていく。
まさか元勇者の脱落理由が腰痛になるなんて誰が想像しただろうか。
でも、まぁ、普通の老人のようで、どことなく安心する。彼はきっと、今までの勇者たちが味わったような不幸やそんな終わり方を経験する事無く人生を終えるだろう。そういう奴が自分が狂わせてきた人々の中に生まれてくるのだから、少しだけ救われた気分がする。
「で、現実逃避は終わった?」
「やめるんだハンティ。俺は何から着手すればいいとか考えたくない」
「ほら、まずは馬鹿連中を蹴り上げて山に帰して、それが終わったら掃除と整地と植林が待っているよ」
「ぐえー……」
現実逃避したいが、それをハンティが許さずに首根っこを掴むと、そのまま作業へと引きずり込んでくる。魔王城の様子、つまりはガイの魔王としての体制が気になる所ではあるものの、流石にペンシルカウが半壊していてはどうしようもない。確かに自分が原因ならここは何とかするしかないだろう。
視界の端で爆笑しながら転がっているマッハにルドべぇを投げつけて吹っ飛ばしてから自分の両足で立ち上がり、軽く腕を伸ばす。しゃーないしゃーない、と自分に言い聞かせながらドラゴンを掴んではそれを投げ捨てる。その下に埋まっているレガシオを見つけて、再びドラゴンを落として潰す。
「……なんか、身内でこういうノリも久しぶりだな」
なんだかんだで無茶苦茶はしゃぐという機会はGI以降、一度も存在しなかった。昔はもっともっと馬鹿をやって盛大に暴れていたという感じが強い。こうやって滅茶苦茶になっているペンシルカウを見ると、
やらかした、とは思うものの、また同時に懐かしさを覚える。
まぁ―――いいんじゃないだろうか、こういうのも。
「良くない。直せ」
「はい……」
だが妹の圧力には勝てない。ここはハンティの圧力に屈するとして、なんとなく、昔の様な懐かしくも騒がしい日常が戻ってきた感じがした。
処女卒業。本編にエロを差し込むとそれだけで展開クソ重になるからなー。
なんだかんだでペンシルカウを作ったのはハンティなので、思い入れは人一倍ある模様。という訳で重く苦しい時代は終わったし、その流れもぶった切った。
という訳でお帰り、何時ものノリ。