久しぶりにケッセルリンク達で盛り上がった。ケッセルリンクも男の姿に戻る予定は今の所はないらしい。少なくともその必要性を今は感じないとの事だった。これによって将来的にケッセルリンクの使徒がどうなるかは不明だが……まぁ、今更ケッセルリンクが見捨てるなんてこともないだろうし、正史通り増えるだろうと思っている。
なお、ガルティアに関してはほとんど変わっていないので特に語る事もない。ただ、ガルティアの抱える飯炊き部隊の飯は本当に美味しかった。良くもまぁ、この環境であそこまで真面目に飯を作る事に技術を注ぐことが出来るよな、と思う。そこに関しては分野は違えど、並み大抵ではない努力が注ぎ込まれているのが理解できるため、純粋に尊敬する。
そしてもっと食べたかった。ただやっぱり、食べすぎは飽きが来るから宜しくない。そういう事で程ほどに食べるのを切り上げて別れを告げた。
ケッセルリンクやガルティアから魔人に関する近況が聞けた為、大体これで魔王城にやってきた理由もなくなった。元々魔王ガイの治世を確認するのが凡その目的だった。ガイが魔血魂の衝動を発露させるような様子を見せていなかった感じ、恐らく後数百年は様子を見なくても完全に意識を保ったまま活動していられるのが見える。となるとしばらくは魔王城へと来なくてもいいかもしれない。
あまり、人類サイドが何度も何度も魔王城へと行くのもどうかと思うし。
後200年ほどで聖魔教団が活動開始する。そうなると当然、闘将や闘神が動き出してくる。連中を相手に暴れるというのも中々楽しそうだが、俺が相手をすると恐らく、ほぼ確実に破壊してしまう。それは将来的な戦力、そして流れを考えると困る事でもある。出来るならなるべく多くの闘神を完成させ、それで魔軍とぶつかって欲しい。その時、俺が魔軍の味方と思われたら困る。
あぁ、でも闘神とは戦ってみたいよなぁ、とは思う。
小山で轢き潰したら壊れるのだろうか、あいつら? 山を持ち上げて押しつぶすというのは一度はやってみたかった事だ。闘神相手なら出来ると思うんだよなぁ。
そんな事を考えながら魔王城に用意された部屋に到着した。
案内をしていたケッセルリンクの使徒、パレロアが軽く頭を下げてから扉を開き、室内へと案内してくれる。ゲストルームなのか、それなりの広さがある整えられた室内はホテルのスイートを思わせる様な豪華さがある。だがよく考えれば魔王城は魔王と魔人の住まう場所なのだから、豪華なのは当然なのかもしれない。そんな事を考えながら軽く室内を見渡し、ベッドルームを見つけ、
ベッドの上でルドべぇを抱いて眠っているラ・バスワルドを発見した。
「これ」
「ガイ様が担当はウル様とおっしゃられていたので」
「ガイ、あの野郎……!」
「すやぁ……」
此方の気を知らずにすやすやとベッドを占領して破壊の元女神がベッドの上で眠っていた。お腹いっぱい、という様子で幸せそうに眠っている姿は、自分が厄介者としてパス回しされていることを一切知らないような表情だった。こいつ、外に廃棄してやろうか―――なんて一瞬だけ考えたが、捨てた所で勝手に戻ってくるのが目に見えている。魔王の命令がなければたぶん、普通に飛んでペンシルカウまで戻ってくるだろうと思っている。
あぁ、でも美味い飯を食わせれば魔王城に残るかもしれない。
そこまで面倒な事をするなら、もう面倒をメイド堕天使たちに押し付けた方が楽だと悟り、片手で顔を覆ってため息を吐く。見た目だけはいいのに、中身は完全に爆弾扱いだよな、こいつ。
「ではウル様、何かご用事があればお呼びください」
「おう、ケッセルリンクに宜しくな」
「はい、では」
パレロアが頭を下げてから出て行く。それを見届けてからベッドの上で眠っているラ・バスワルドをどうしてやろうかと考え、面倒だからもう放置でいいや、と決める。まぁ、実際こいつを野放しにした場合、自分の様に特殊な耐性を保有しない限りは必殺してくるような奴だ。むしろ、防衛本能だけではなく、理性で的確に必殺技を使ってくる分、粛清システムだった時より面倒になっているかもしれない。これが魔王の命令で暴れ出したら聖魔教団もクソもないだろう。
となるとやはり、手元で管理するのが一番になるだろう。
「めんどくさい……」
上着や服を脱ぎすてて、下着姿になった所でリビングのソファに座り込む。後はこれでビールか、或いはエールでもあれば良い。無論、酒の意味でのエールだ。だからルドべぇは反応しなくても良いから。そのまま抱き枕としての人生を送っていてくれ。まぁ、ラ・バスワルドに関しては、暴れすぎないように誰かが見張っておかないとならない。それに一番最適なのは間違いなく自分だろうし、そういう意味では此方に投げつけられるのは正しい。
ただ正しいのと納得できるかは別だ。
「別にいいけどさ……」
まぁ、俺が強すぎる上に便利すぎるのが罪だと思っておけばいい。そう、強すぎる。強すぎると呼べる領域にまで強くなってしまった。今じゃレベル70以下の人間を即死させられる程度の力がある。そんな事を考えると、やっぱり強くなってしまったんだなぁ、と思える。それでもまだ、強さの上限には達していない。レベルは大幅に下がって、また上げ直している最中だ。
ここまで強くなると、相手出来る存在も限られて来る。
いっその事、そろそろ二級神辺りに喧嘩を売るべきだろうか? 天上の世界に殴り込んで、適当な神々と殴り合うというのも中々脳筋で楽しいとは思わなくもない。少なくとも連中のスペックが魔王級なら、全然戦える範疇だと思う。何気にマギーホアもライバルが二級神に存在するのだから、それを見習って二級神のライバルを作るとか。
あ、楽しそう。
「お、やる? やってしまうのであるか??」
マッハが部屋の隅っこでシャドーボクシングを始めていた。その先にはどこぞの三超神の二級神としての化身の人形が設置されており、そこにマッハが拳を叩き込んでいるのが見える。君たち、お互いに友情とかいう概念ないの?
拳を掲げて意気揚々としているマッハを見ている限り、全くなさそうだった。
「まぁ、本当に暇になったらね……? ほら、あと数百年待てば聖魔教団ができあがる筈だし」
「確かに歴史通り動くのであればそうなるであるなぁ。闘神に闘将、そしてその外にも鉄兵と対魔人戦線。何よりも既に対魔人のノウハウが出来上がっているのである。これを取り入れる事を考えると正史よりも聖魔教団が暴れてくれそうで、実に楽しみである」
「マッハ様も楽しみかー」
「無論である。ほかにも最近、降りて来ることの楽しみを理解した同僚が増えてちょっと困りものではあるな」
三超神、全員地上で活動する為の化身をどこぞで用意した、という事だろうか? こう、マッハが漏らしてくれる情報って微妙に自分ではどうしようもない類の情報だったりするので、聞かされた所で何かが出来る訳でもない。
しかし、ハーモニット、プランナー、そしてローベン・パーン。三超神の化身が三柱揃って全員、低位の化身を用意して地上で活動を開始する様になったのだろう。軽く考えるだけでも頭の痛い話だ。正史において、この三柱は基本ルドラサウム大陸で行われる物事を上から眺め、調整するGM的な役割として常に姿を見せずに管理していた。
それがついにプレイヤーとしての立場で経験する様になるのだ。ざっくりと様々な事に対する調整が来るんだろうなぁ、というのが見える。
「何時の間にか俺も調整側に回されている気がする……」
「……」
マッハが無言で【
その姿を見て苦笑しながら、ベッドの方へと向かい、ごろりと転がる。ラ・バスワルドとルドべぇを挟む様に反対側に転がり、何時も通り、ルドべぇに抱き着く。ルドべぇも抱き着くと、目を細める。よしよし、可愛い奴だ。可愛い奴だからそろそろ中身に何が入っているのか教えて欲しい。
「でもそうだなぁ……将来の事を俺も考えておく必要があるか」
この後の事だ。
200年後ぐらいに聖魔教団が出てきて、それで大陸全体を巻き込んで暴れるのだろう。恐らくはカラーが聖魔教団に協力する事はないから、俺は手出し無用で、現代のカラーたちだけで聖魔教団に対処するとして。それが終わったらしばらく戦乱の時代がやってきて、ゼス、ヘルマン、リーザス等が生まれて来るだろう。そしてその先の時代で、魔王リトルプリンセスが登場するまでの事をなんとかして、
ランス君が生まれて、
ランス君の大冒険が始まって、
ルドラサウムも楽しめる様な未来が始まって。
それから―――それから、ランス君も老いて死ぬのだろう。そうやって残された後の時代を、自分はどうやって生きて行けばいいのだろうか? 今まではずっと、身の回りの事や今の事で忙しくて全く考えたことがなかった。
それが考えられる様になったのはある意味、今の自分にも余裕が出来てきたという事なのだろう。だとすれば、どうしたらいいのだろうか?
どうやって生きて行きたいのだろうか?
「全部が終わった後か……」
全ての冒険が終わった後はどうしようか。このまま、ドラゴンとして一生ペンシルカウでなんやかんやして生きて行くのもそれなりに楽しいのかもしれないなぁ、とは思わなくもない。だけど同時に、それだけでいいのか? とは思わなくもない。
だって、エールちゃんの冒険に嫉妬しているのは何も、ルドラサウムだけじゃないのだから。
俺だって、あんな冒険がしてみたい。
全部忘れて、知識を失って、それでこの世界の一人の住人として、何も知らない状態で冒険してみたい―――と、想ってしまうのは間違いだろうか? 今、記憶を捨てて冒険に出たとしても自分が強すぎる。力を制限すればいいという話でもない。それではただ、舐めているだけだ。本当の意味では冒険を楽しめない。
カラーだから、死後悪魔や神になるという手段もある。
だがそれとは別に、完全に命を捨てるという選択肢もある。
そして、ルドラサウムの輪廻へと入る。そうやって生まれ直し、何もかも忘れた、新しい人生をこの大陸で過ごすのだ。
「……それも悪くないな」
少なくとも、こうやって未来の事を楽しく考えられる程度には今の人生は楽しくなってきた。確かに、死ぬ事は怖い。死にたいという訳でもない。だがそれはそれとして、今のままではあまりにも勿体ない、と感じる部分もある。
少なくともこの人生を遊びつくしたら、次の命でまた楽しむ事も出来る筈だ。
……死ねるなら。
視線をそっと、部屋の隅に居るマッハへと向ければ、ダブルサムズアップが返ってくる。あの様子を見る限り、恐らく死後は100%神に転生させられて、そのまま部下としてこき使われそうな気配がある。
「ま、いいや」
ルドべぇの心地よい感触を確かめるように少しだけ力を入れる。その向こう側でラ・バスワルドの手に触れてしまうが、まぁ、気にしない。ついでに足を蹴って、足を絡める尻尾は此方が貰う。俺のルドべぇなのだから当然である。
「強く美しく格好良いんだから、少し脳味噌足りない方がいいよな……」
深く考えて、答えを出した所で人生をつまらなくするだけだ。
ここまで数千年生きてきたが、楽しく生きるコツはあまり深く考えないことだとここ数百年で理解してきた。だからもうちょっと馬鹿になって動いてみようかなぁ、
そんな事を考えながら目を閉じ、眠りについた。
ウル様死後問題。
実際、悪魔にも神にもなれるし。そうじゃなくてもドラゴンのままずっと翔竜山かペンシルカウで生活してればいいってのもあるしね。余生をどう過ごすかを考える。
LPまであと大体1000年と考えると……。