クリスタルの森に存在するカラーの都、ペンシルカウは女王ウル・カラーが治める領地にして国である。
まぁ、そんな風に一般的には認識されている。未だにちょくちょく外から人を招いては、カラーが絶滅しない様に繁殖―――というか人口の維持を行っている。増えすぎるとクリスタルの森の恵みと、今育てている家畜や作物では足りなくなってくるからだ。なるべくペンシルカウは外の交易などで食料を賄う事をしない。自分、という女王の威圧があるからこそ人類が攻めてこないが、カラークリスタルの有用性に関しては既に歴史に記録されている。
女王ウル・カラーと、その同盟相手である翔竜山のドラゴン。それがなければ直ぐにでも攻め込んでくるであろうというのは、解りやすい話だった。だから人口を増やして外に食料を頼るようになると、そうすると外と交渉する必要や、付け込まれる可能性が出て来る。やはり一番良いのは一切の関係を持たない事だ。現在はこの状態だ―――まぁ、個人レベルである程度交渉とか、交換とか、仕入れとかは食事などに変化を与える為に許可を出しているのだが。
そんなペンシルカウにはそれなりのカラーが存在し、それがこの地に住む存在の大半である。それ以外にも普通の人間等も居たりするが、あくまでもメインはカラーであるのだ。そして連中は基本的にペンシルカウの国民を自称しており、いつの間にかペンシルカウは国、そしてクリスタルの森が国の領土として認識されている。
名実ともに、ペンシルカウの女王となっているのだ。
とはいえ、政務や管理、方針等に関しては全部、その世代のカラーに投げているのが現状ではある。
なぜなら不老は価値観が固まりやすいという特徴があるからだ。
長く生きていると細かい流れや変化に無頓着であったり鈍感になる為、中々流行という物に乗るのが難しくなってくる。これは数千年を生きる種族が忘却しながら生きて行く為の基本的なスキルであり、細かい事に反応しながら生きていると根本的に精神が持たないという側面もある。
だから長寿、不老は忘れながら生きる。そしてその性質故に政治には向かない。
長期間君臨していると、その分だけ観念などが固定化されてしまうからだ。故に政治には不要。知識を出す存在として残されるのは良いが、それ以上はダメだ。それでは新鮮な空気が国に入ってこなくなる。だから上に立ってはならない。良くて象徴ぐらいだろう。その思想はペンシルカウでも採用している。つまり、自分が政治には関わらないというスタイルだ。
任命もしない。選ばない。ただ君臨する。象徴と武力として。後は偶に手伝う。質問されたら答えて道筋を示す。だがそれを強制しないし、勧めもしない。自分の考えを教えるだけだ。そういうスタイルをペンシルカウは今まで保ってきた。そして今も守っている。これが不死者を抱えた上での健全な政治形態だと思って。
だが、まぁ、
「ウル様おはようございます!」
「おう、おはよ」
「ウル様―! アップルパイ焼いたんです! どうぞ!」
「はいはい、一切れ貰うよ」
「ウル様! また遊んでくださいよウル様―!」
「おう、午後は暇だからそん時にな。デッキ用意しておけよ」
長く生きて一か所にとどまっていると、全員が自分の子供の様な感覚になってくるため、皆可愛いし。それでいて構ってやると楽しそうに、嬉しそうにするものだからついつい構ってしまう。
そういう事で、定期的にペンシルカウ内部を散歩して遊んでいる。そうやって国民、と呼べる彼女たちの話し相手や遊び相手を務めている。ある意味、それが自分に唯一存在する公務なのかもしれない。定期的に武芸の訓練を防衛隊に授けたりするが、基本的にそれは自分の鍛錬の為でもあるし、他人に教える事で新しく見えて来る事もあるからやはり自分の為だ。
だからこうやって、顔を見せて、話を聞いて、一緒に時間を過ごしてあげて、
俺、という存在を教えて覚えてもらうのだ。まぁ、世代交代して顔を忘れられたら悲しいという話だ。不死者の最大の弱点は寂しいと泣いてしまう所だろう。
そんなわけでペンシルカウに住んでいるカラーの顔と名前を今では
定期的に発生する事がある。
発生、というよりは湧いてくるという言葉が正しい。
「ウル様! 聞いてくださいウル様」
「おう、走らなくていいから落ち着いて来いよ」
眼鏡を付けたカラー、エルル・カラーが此方の姿を見かけると、どことなく憤慨したような様子を見せながらやってくる。そして近づいてくると、
「聞いてくださいよウル様!」
そう言って詰め寄ってくる。
「解ったから落ち着けよ」
「ドラゴンの精子で孕もうと一族代々頑張って来たんですけど! やっぱり射精直後のではダメだと私の代で思ったんです! これからはドラゴンカラーセックスの時代ですよウル様! 直接ドラゴンの精液で子宮に射精して貰わないとやっぱ孕めませんよ」
「お前ちょっと解る言語で喋ってくれない?」
ペンシルカウでは定期的に変なのが湧いてくる。こういう連中を見るたびに楽しそうにマッハが視界の端で腕を組みながら楽しんでいるのが見える。
「―――えー、そういう事で。悲しく番も居ないから普段は一人で寂しくオナネタを提供し合いながらオナってる人生の敗北者である雄ドラゴン共の生存戦略に挑戦しようかと思います」
「今の一撃で再起不能になりかけたからもう少しオブラートに包んでくれ」
ペンシルカウには定期的に変なのが湧いてくる。だがこの変なの一族は、代々何とかドラゴンの子供を孕もうと研究、実践し続けてきた相当ワイルドな一族だった。俺、そんな話聞いてないんだけど。
そんなワイルドなドラゴンカラーセックス文化を推し進めていきたいカラーは、いい加減子宮に直接ドラゴン精液を注がれたいらしく、こんな事を言い出した。
『ほかのドラゴンはウル様たちの様な人の姿になれないんですか? チンコのサイズが膣に入るサイズなら間違いなく気合で孕むんですけど』
またロックな奴が今世代は育っているなぁ、という感想しか抱くことの出来ないコメントに空を思わず眺めて現実逃避しかけるも、
発狂しているドラ姦カラーはともかく、アイデア自体は悪くなかった。
自分やアベル、マギーホアがそうしている様に、他のドラゴンたちも今のメインプレイヤーのサイズに姿を変化させる事が出来れば、ドラゴンの雌以外と繁殖する事で子供を作る事が出来るかもしれない、という話だ。実際、発情期に入ると同族が煩いし。自分以外の番を見つけることが出来ればこの求婚ラッシュもどうにか出来るかもしれないという邪な願望を抱いた。
いや、結婚は悪くないのだが別に。
それでもスラルやラ・バスワルドと日常的にぐだぐだやっている方が、番を作るよりも個人的には良いと思う。というか生活変わる所が想像できない。そういう事で、
「お前らは今日からメインプレイヤーへと変身する方法を何とか身に着けてもらう! お前らも欲しいだろう! いちゃいちゃえろえろ出来る番が!!」
「お前が相手してくれよ!」
「悪いけど赤い鱗は守備範囲外」
ボルケーノドラゴンが泣いた。その背中を別のドラゴンが叩いて慰めていたと思ったらそのまま翔竜山から投げ捨てた。
ドラゴンの生存競争は身内にも厳しい。
まぁ、空は飛べるし死にはしないだろう。そんな事を考えながらドラゴンに人化の術を教える事にした。とりあえず指をスナップさせてから、
「はい、じゃあお前らちょっと人間に変身して見ろよ」
まずは変身してみろよ、と宣告する。それを受けてドラゴンたちがお互いの顔を見渡す。
「ノーヒントきた……!」
「やるしかねぇなこれ!!」
「っしゃああ! 俺の雄姿を見ろぉぉぉ―――!!」
そう言って翼を広げたドラゴンや、尻尾をぴんと伸ばしたドラゴン、地面に転がりながらひらめきを求めるドラゴンの姿が見える。俺達、一体何をやっているんだろう……と、一瞬真面目に考えさせられる光景が目の前で繰り広げられてしまうが、それを無視して腰に手を当て、連中を眺める。
「ぬぐ……ぐぐぐぐ! ぐおー! あ、ブレスだ」
「やべぇ、クソが漏れそう」
「力込める所間違えてるだろうってクサっ! クセぇよ!!」
「俺じゃねぇぞ」
「悪い、屁こいたわ」
「お前さぁ……」
戦犯を神撃で翔竜山から叩き落す。それが翔竜山から落ちて行く姿を眺めながら軽くうなずき、視線を残りのドラゴンへと戻す。
「さあ、第二ラウンドだ!」
「これを見た後で?」
「ごめんごめん。ノリがいいからついつい」
こいつら、話していて面白いリアクションを返してくれるから普通に遊んじゃうんだよなぁ、と思いながら黒腕を生やし、胸を持ち上げるように腕を組む。これが人間相手なら面白いリアクションが見れるのだが、ドラゴン相手だとそうでもない。ドラゴンが相手に求めるのは戦闘力とか、鱗の艶とか、逆鱗の形とかそういう所なのだ。連中、胸の大きさとかはそもそも概念として認識しない。
「じゃあ、真面目に話しをするけどお前ら、同族以外で嫁作るつもりあるか?」
「どーだろうなぁ……」
「そういう話をすると微妙なんだよなぁ」
「鱗のない奴の相手をしても……なぁ?」
「まぁ、そうなるよなー」
馬鹿連中を前に相手しつつ、真面目に人間化を試すつもりある? という話をするとこうなる。根本的にこいつらに、そういう性癖はない。本当に特殊な一部だけだ。寧ろパットンを恋愛対象にできてしまったハンティの方がおかしいのだ。
人間がタコに欲情するか?
ドラゴンがカラーを恋愛対象に見るとはそういう事だ。
だからあのカラーがおかしいのであって、これが普通なのだ。いや、一族全員バグってるとかいう話は聞きたくない。本当に性癖の話は業が深い。自分の場合はメインプレイヤーとしてベースの姿が一度、人間へと移っているという背景もあるのだが。それでも、どちらかと言うとドラゴンの方が良いよなぁ、と思う事は多々ある。
「お前らがウチの連中を嫁にめとってくれれば話は早いんだけどなぁ」
「命令ならやるぜー」
「頑張って変身とかマスターしてみるぜ」
「だけど、まぁ、ドラゴン以外のお嫁さん欲しいか? って言われたら微妙よ。やっぱり同族と恋愛したいんだけどそこらへんどうよ、女王様」
「えー、俺より弱い奴と恋愛はちょっと」
「クッソぉ、ハードル高いクッソぉ……」
「いや、それよりも時折マギーホア様が拳を握りながら見てきていることの方が問題だと思う。我らの王、絶対に応援しているし期待しているぞアレ」
「そろそろ孫が見たいとか言ってたからな……」
マギーホアの言っている事も解るけど、恋愛ぐらいは自由にさせて欲しいよなぁー、とは思わなくもない。まぁ、でも、自分もそろそろ次世代の事を考える必要があるだろうという話もある。
ガイもガイで将来的にホーネットを適当な女に孕ませるだろうし。
俺は俺で、余りにも物語を知りすぎている。
俺が行動した場合、それではただの攻略シナリオになってしまう。となると俺じゃなく、そこそこ強さと才能が有って、珍しい存在―――まぁ、つまりは自分の様に真理に片足を突っ込んでいない、息子や娘の様な存在がランス君等と一緒に冒険するのが理想的だ。
俺はファンだが、一緒に冒険するとなると強さの桁が違いすぎて難しいと思う。
だからせめて、子供には夢を叶えて貰いたい部分がある。
とはいえ、その為に子供を産むのは不純だと思う。だからせめて、自由に恋愛して、子供を産みたいと思って産んであげたい。たぶん卵生だけど。というか卵をこの体でどうやって産むんだろうか。魔王城に連絡を入れて聞き出すべきだろうか、コレ。
ルシア辺りに質問したら数日で魔王城とコンタクト取りそうだが。
「まぁ、それはそれとして年末の宴会の一発芸にはなるし、練習すっか!」
「暇つぶしにはちょうどいいよなー」
「一番最初に変身できた奴が次回のマギーホア様挑戦権獲得な」
「あ、マジかよ!」
「本気を出すしかねぇ……!」
「じゃあ3・2・1・0の前に妨害開始な!」
言葉の直後、ドラゴンが他のドラゴンを蹴り飛ばした。翔竜山バトルロワイヤルが開催した。こいつらに戦闘とは関係のない所で練習とか我慢とか修練させるのは、命令でもない限りは絶対に無理だよなぁ、と滅茶苦茶になりつつある地形を眺めながら笑い、
「駄目だこりゃ」
ドラゴンカラーセックス計画は永久封印しよう、と硬く誓った。
なんだよ、ドラゴンカラーセックスって。ドラゴンカーセックスの親戚か何かかよ。
そう思いつつ、軽いノリで生きてる人々。