「とりあえずこれで群がってたイモムシは全部始末したか?」
「そうね。で、残りは……アレ……」
祭壇の周りでフェスティバル状態だったイモムシを全て始末して残されたのは、ドラゴン時代に自分が作った祭壇と、その上に乗せたゴッド級ハイパー兵器君であった。君、まるで汚れてもいないし硬そうなままだし、ほんと狂気の塊だよね? って評価するしかない。しかし、サイズはまさにドラゴン級。もはや入るとか入らないとかそういうレベルじゃない。
でかい! 大きい! 硬い! 凄い!
本当に凄い。アレが数多くの雄ドラゴンの道を間違えさせたハイパー兵器だと考えるともっと凄い。凄いというか酷い。我ながら凄い事をやってしまったもんだと思っている。
「《黒色破壊光線》」
それに対して問答無用でスラルが《黒色破壊光線》を放った。が、流石ゴッド製。ハニー級の魔力抵抗値で破壊光線をそのまま反射して遺跡の天井に穴を開けてしまった。その景色をスラルが目から光が消えた状態で眺めている。なので近づき、遺跡の穴を確認し、全力で外へと向かって蹴り上げた。
ハイパー兵器が遺跡の外へと不法投棄されたのを確認し、自分でドラゴン時代にセットした祭壇を蹴り飛ばし、その背後に隠してあった本当の祭壇、そして神の扉を見せる。その姿が1000年以上も前に来た時と、全く変わらない姿を見せていた。その景色を前に、にやりと笑みを浮かべる。
「うーん、実に憎たらしい扉だ。あぁ、スラルちゃん、そこにある黄金像を祭壇にセットして。対応するのがあるけど」
「あぁ、それは見れば解るから別にいいわ」
その頭の回転力の速さは流石だなぁ、としか評価できない。そう言っている間にスラルが黄金像をセットする。それに合わせて神の扉の前から引き、スラルが入れ替わる様に扉の前に立った。
「さ……謁見を求めるわ。通してくださる?」
スラルの言葉に答える様に、
神の扉を封じていた魔法陣が解除された。俺の時は何年間待っても解除されなかったんだけどなぁ、と軽く頭の裏を掻いて嘆く。嘆くが、それだけで。本気で謁見した所で俺の運命がどうにかなる訳でもない。
「……」
扉が開いた所で【神の失敗作】が出現する事を警戒していたが―――どうやらあれは【エターナルヒーロー】の為の試練の様だ。どうやら今回は出現する気配がない。となるとスラルはフリーパスか、或いは別の試練が用意されているという事だろうか? まぁ、どちらにしろ、俺は面会拒否されているのだ。この先に進む事も出来ないだろう。スラルは扉の向こう側、まだ何も見えない空間を確認する様に覗き込みつつ、
「さて、それじゃ行くわよ」
「あぁ、いや、待て。俺は面会拒否喰らってるから―――」
「何を馬鹿なこと言ってるのよ、ほら、行くわよ。貴女が魔軍の中で一番使いやすいんだから。その為に連れて来たのよ?」
「あのなぁ……」
そう言っている間に腕をスラルに捕まれ、そのままスラルが神の扉を抜ける。自分が衝撃と共に吹き飛ばされる事を予想しつつ、
―――普通に、扉を抜けて反対側へと抜けてしまった。
ちょっと、割と真面目に驚いてしまった。振り返り、扉がまだそこに残っているのを確認しつつ、残された腕や体、首や額のクリスタルを確認して、驚きながら自分のボディチェックを行う。変身も変形もしていない。ついでにチンコも生えてない。女の体のままだ。ドラゴン的なヒューマン・カラーのままだ、何も変化がない。
だけど扉が通れた。
素直に驚きだった。
「んー、不思議な空間ね。広さもそこそこある……《マッピング》。良し、魔法は普通に通じるわね。《マーキング》もしておいて……転移用の魔法陣もこの際、脱出を考慮して用意しちゃいましょうか」
此方が不思議な感覚に首を傾げていると、スラルがその間にすらすらと探索に必要な準備を整えて行く。この手際の良さがまさにスラルの魔王としての特徴だろう。効率的で、行動に無駄がない。彼女が今回、メガラスやカミーラの様な戦力を連れてこなかったのは、自分が不在の間に指揮を取れる魔人を魔王城に残す為だろうと思っている。
「かなり広そうだけど私達なら特に問題なさそうな距離ね、これ。ウル、《マッピング》で扉を見つけたから向かうわよ……ウル?」
「あぁ、いや。俺が前に来た時は面会拒否されたからな。ちっと驚いているだけだ」
心変わりか? 或いは三超神の方から俺に興味を持った? 或いは今は条件を満たしている? どちらにしろ、スラルと一緒に神に謁見できるというのは非常に悪くない話だった。場合によっては俺の願いを叶えてくれるであろう事実も考えると、それはそれで悪くない。とはいえ、下に行くまでが大変だろうが。
目の前に広がっているのは、言葉で説明するのであればこの世ならざる風景だ。ルドラサウム大陸には存在しない景色、幻想的で、夢の様で、言葉として表現できないありえない様な、そんな景色が広がっている。
「まぁ……い、っか」
「歯切れが悪いわね」
「気にするなスラルちゃん。俺が昔チンコ欲しいわって願いながら来てみたら面会拒否されたうえであのハイパー兵器を叩きつけられたってだけの話だから」
「それ面会拒否されて当然じゃない?」
そうなのかなぁ? そうなんだろうなぁ、プランナーでもそんな願いどうやって曲解すればいいか困る案件だろうし。まぁ、それはそれとして、この空間のねじれ具合を見ると、おそらくは鬼畜王式か、と思い出そうとする。だが僅かな情報しか思い出せない。
「あー……確か5層ぐらいに分かれてて、それぞれに《怪獣》の守護者が扉の前で守ってるんだっけこれ? で、6層目が目的地だ。そこにそれぞれの神に通じる扉がある筈だ」
「ほんと、どっからそんな事を知ってるのか―――怖くて欠片も知りたくないわね」
「じゃろ?」
苦笑しながら怪獣ねぇ、とスラルが呟き―――《マッピング》に従って奥へと向かう。言葉で言い表す事が出来ないこの空間、そこを支援魔法の力でお互いを強化しつつ駆け抜けて行く。メガラス程早いという訳ではないが、流石魔王という生物最強スペックの保有者、《無敵結界》なしでも化け物であるのに変わりはない。凄まじい脚力と速度でガンガンと前に飛び出して行くのを、なんとか並走しているという状態だった。
これは新しい移動用の魔法か、移動補助系統を開発しなきゃダメだな、とスラルの加速を見ながら判断する。将来的にこの速度を超える瞬間的な加速がなければ、魔王の攻撃を回避できないという事だ。魔王対策、
実は少しずつ考えているのだが未だにそれは完成していない。
正確に言えば《無敵結界》対策なのだが。
フレッチャー・モーデルの様にLv3という人類、生物最高峰の技能があれば
まだまだ、構想だけで数百年が過ぎてしまっている。
「うーむ、魔道の深淵は研究すればするほど奥深い……」
「意外と移動中に魔法考案とか余裕があるわね、貴女。でもそうね。長距離移動していると暇だし魔法談義でもしてみる? 私、貴女が使っている魔法にちょっと興味あるのよね。《重力魔法》だっけ?」
跳躍して走って移動しているだけだと暇なので、スラルが口を出してくる。そして自分の使っている特異な魔法に興味を示していた。
「あぁ、まぁ、アレは重力魔法ってよりは正確に言うと《竜魔法》とでも言うべきもんだけどな」
理論としてはそこまで難しくはない。ドラゴンが本来体内に持つ属性、それはブレスという形で簡単に発露される。確かにそれは強力ではあるが……個人的に、魔法としてそれを引き出せれば、もっと便利に運用できるのではないか? と思ったのだ。
「まぁ、新しく生み出された人類はどうやら火・氷・雷・光・闇に大体カテゴライズできるみたいだけどね。俺はそこら辺、特異な属性を抱えていたから魔法運用させて貰っているだけだ」
「成程ねぇ。確かにそういうのは特殊な属性を背負っている者にしか使えそうにないわね。……重力、私にも使えたら便利そうだったんだけどねぇ」
「これ以上魔王に強くなられてたまるか……」
「あら、そんな事ないわよ。重量を削減できるならそれだけで食料運搬とか楽になるじゃない? そうすれば労働環境の大幅な改善になるじゃない。運搬、集積、建築。落下事故をコレ一つで解決できるし、使える様になりたいわねぇ」
「あぁ、そういう……」
完全に目線が戦士とかではなく経営者の目線だった。いや、まぁ、魔王なんかじゃなくて会社の一つでも経営していれば結構、幸せな生活が出来たんじゃないかなぁ、とは思わなくもなかった。まぁ、魔王に指名された以上、おそらくは
或いは神々が今の第三世代プレイヤーを生み出したのだから。
まぁ、救いなんてないんだから十分あり得る話でもある。それを口にする程非道ではないが。そのお口のせいでマギーホアに腕を持っていかれたし……ね?
「まぁ、一応俺から見て【初級】【中級】【中級広域】【最上級】とかは作ってみたんだよね。後は応用の便利魔法とか。俺個人が欲しいだけの魔法とか」
「結構カスタマイズしているのね」
「趣味の一環でもあるからな。ドラゴンの時代から魔法の研究はしてたんだよな。今使ってる支援魔法の大半は俺とハンティ……あぁ、妹みたいな子なんだけど、彼女と二人で開発したもんが大半だよ。ドラゴンにその能力を強化する支援魔法……単純だけど最強じゃね?」
「恐ろしい事をしてたもんねー」
種族値を純粋にパワーアップ。これこそ脳筋伝説。だけどそれだけでドラゴンは強かったのだ。他の余計な事が必要ないレベルで。それだけ化け物的な生物だったのだ。まぁ、滅んで当然だったよね! とは思わなくもない。存在そのものがゴリラ的な強さだったから。
そんな風に過去の話をスラルとして盛り上がっていれば、段々と巨大な姿が見えてきた。
怪獣だ。
小山程の大きさを持っている、【怪獣界】の存在とはまた別の、巨大な姿。やはり鬼畜王版の内容だったらしい。遠目にだが此方を確認した怪獣は目も口も持たない、鼻づらののっぺらとした蒼い巨体の怪獣だった。浮遊している姿は守護している扉の前から此方へと視線を向けて来た。
目がないのに何故視線を感じられるのだろうか? まぁ、殺せば感じなくなるだろう。
「うーん、アレが怪獣ね。《情報》……ほーん、ガガって言うみたいね、アレ。じゃ、前衛任せたわね、ウル」
「そこで雑に放り投げるの止めない?」
「ほら、支援はしてあげるから《重加算衝撃》《ゆらゆら影》《高速飛翔》《四重魔法バリア》」
「仕方ないにゃぁ……」
加速しながら床らしき場所を蹴って一気に加速したまま、一気に【大怪獣ガガ】に接近した。
「目がない! 鼻だぁー! 口もねぇー!」
三点アタックできませんよ先生……?
そんな気持ちを込めながら一直線にガガの鼻へと向けて蹴りを三連続で叩き込みながら蹴り上げる。その反撃で浮遊する怪獣がその超巨体でカウンターを叩き込んでくる。それを四重に張ってあるスラルの《魔法バリア》で受け止めつつ、衝撃を重力半減で和らげ、着地しつつ、完全にガガのヘイトが此方へと向けられたのを確認した。うーむ、ドラゴンの頃であれば勝てたかもしれないなぁ、とその巨大な姿を見る。
「うーん、どーしたもんか」
「本気だしなさいよー。ほらー。《四重魔法バリア》張り続けてあげるから」
「お前の方が俺よりも強いだろ!!」
「えっ、傷つくかもしれないのに前に出るのはちょっと……」
「お前さぁ!」
「頑張れー、頑張れー」
ちょっと怒ったぞ。この仕返しは後で絶対にスラルに向けるとして―――視線を改めて大怪獣ガガへと向けた。巨大で、強く、神への謁見を求めた者に対する試練として設置されている、神の門番だ。無論、雑魚ではない。
だからこそ、丁度よい。
「マギーホアはちょっと強すぎてアテにならなかったしな」
アレから数百年。人間の姿へと変貌してから更に200年。
「
ドラゴンの気配を解放する。血が昂る。目が吊り上がり、頬が吊り上がり、クリスタルが変形して第三の目が開く。腕を、足を、体を、喉元を鱗が生えて行く。懐かしき黄金の鱗。神の色にも似たプラチナブロンドと表現できる色の鱗が生えていく。それと共にドラゴンの力、魔力が解放されていく。口の端から光と空間を歪める重力の混じった吐息を漏らしながら、
左腕に光と重力を固めて作った、黒い腕を生やした。無論、形だけ。本当の腕ではなく、そう見えているだけ、感覚もある、物も持てる。だが触れた瞬間に重力圧縮によって触れた物質が歪んで崩れる、兵器としての腕だ。
そしてそれと同じように自分の背丈を超える黒い重力斧を生み出し、それを素手で掴んで肩に抱える。
ウルちゃん、覚えた。
ウルアタックで武器壊れるなら壊して良い前提で作ればええんやって。カオスとか日光とか要らねぇんだよ。
柄だけで3メートルあり、横幅4メートルはある超大重力戦斧を生み出し、怪獣を見上げた。
「それじゃ、ドラゴン・カラーの本気がどこまで通じるのか、サンドバッグ代わりにテストさせて貰おうか」
やはりドラゴンだと自覚する。
強敵を前に興奮してしまうこの闘争本能―――どこまでいってもドラゴンでしかない。ただ、
「絶対支援しろよ! 支援しろよ! ソロ無理だから! 流石に絶対に死ぬから!」
「解ってるわよ。貴女が潰されるようなら私でも無理よ。勝てるように全力でバックアップするから安心しなさいって」
魔王とタッグを組んで、大怪獣に挑む。
神の扉。開けただけじゃだめで、怪獣をぶち殺しつつ下へと下がって行く事で神のいる広間へと進む事が出来る。つまり魔王スラルとタッグを組んで怪獣4連戦を潜り抜けろ。ガガちゃん、本来は2層目のボスだけど繰り上げって事で。
エターナルヒーローの場合は神の失敗作と1戦だけで許されたらしいけど、まぁ、魔王とドラゴン・カラーのタッグだったらこっちだよねぇ? って事で。