「さしあたって、問題点をここで幾つか上げます。という訳で説明しますね?」
「うむ……言葉、楽なのを選んで良いぞ?」
「いえ、こっちのがだいぶ素に近いので」
「マジかよ」
何がマジかよだおめー。元がオタクだぞお前、そこまで人付き合い得意じゃない、あんまり他人と会話するタイプじゃないんだぞ。本当なら部屋に引きこもってソシャゲとかネトゲやってネタを見てひとりで静かに笑ってるタイプなんだから、テンション上げまくっている方がキャラ作っているに決まってるじゃねぇか。本当はどう他人と接せばいいかわからなくて割と困ってるんだぞお前。だから実は、ですます口調の方が喋りやすい部分もある。
まぁ、そこは開き直りまして、
「まず第一の障害は創造神ルドラサウムの娯楽。根本的にこの世界がルドラサウムを楽しませる為の場所であり、魔軍によって蹂躙される人間や、或いはそれによって広がる戦火を楽しむ為の場所です。なのでまず最初にルドラサウムを楽しませる事を目標にしないとだめです」
いや、ちょっと違うな、と思う。
「
ちなみに今の会話で口に出したので一人だけガンガン責められる三超神が生まれた可能性がある。基本的にマッハが俺のレベル神として憑いているのが解っている以上、三超神とルドラサウムから監視……あれは観察されている可能性が非常に高い。一体、俺の何を期待してみているのかはまるで解らないのだが。それでも娯楽を求めているのなら、その期待に応えようとは思う。
「だから第一に作戦を実行している裏でルドラサウムと神々をある程度満足させる為の娯楽を提供する必要があります。ですが、これを実行する手段はとても簡単……というかこの時代に連中が何を求めているか大体解るので、これを利用します」
「となると?」
マギーホアの言葉に頷く。
「魔王スラルにプレッシャーを与えます」
いいですか、と言葉を置きながら魔法を使ってちょっと空中に絵を描いて、スラルの状況や人類軍の状況を描く。今の状況は魔軍vs人類という状況を構築しているが、それでも勢いで言えばかなり温いものだと言える。少なくとも次代の魔王ナイチサは【死滅戦争】で人類の人口を50%まで減らす事に成功しているのだ。魔王スラルもそれだけの力があるのに、それを実行しないのは純粋なスタンスと余裕の違いにある。
「なのでスラルから余裕を叩き出します。死の恐怖を思い出させ、そのプレッシャーで生きたい、何が何でもって思わせる必要があります。恐らく今のルドちゃんは《無敵結界》を得て余裕を得てしまったスラルの心境にちょっとだけ飽きを感じていると思うので、それを刺激する様にドラゴンの一部を最前線に投入します」
つまり古代リーザス最前線。ここにドラゴン部隊を投入し、魔王城に程近い場所を燃やして刺激する。ここが魔王城、つまりスラルの拠点の周辺なので、恐ろしいほどの恐怖を感じるだろう。そもそも今のスラル、魔人の大半を魔王城に置いたままで戦闘を行っている。つまり魔軍のみで対応している状態だから、余裕があり過ぎるのだ。それを潰す為にも、
「魔人全員を最前戦に投入する必要があるレベルまでスラルと魔軍を追い詰めます。そうする事で漸く、スラルが持っていた魔王としての余裕が崩れます。そうすることで深いプレッシャーと死への恐怖を取り戻す。これが一番の供物になって、魔王の恐怖というものに喜ぶでしょう」
同時にこれがケッセルリンクを釣り上げる餌にもなる。まず間違いなくケッセルリンクがこの時に魔人化するだろう。なのでスラル周りの流れはこれで良いのだ。
「という訳でこれが作戦の第一段階になります」
「俺、アイツ怒らせるのだけは止めよ……新しい性癖に目覚めるとかの問題じゃなくなったな」
「ああやって開き直らせたの俺らだぞ」
「本当の悪魔とはこいつの事じゃねーの」
うん、まぁ、なんというか、自分でも割と手段を選んでないと思うが、嫌われてもいい、と個人的には思っている。ただ結果としてスラルが生き返ってくれればそれだけでいいと思う。俺を友達と呼んだことを一生後悔してくれればそれでいい。絶対にハッピーエンドを顔面に叩き込んでやるから覚悟しろよ。
「で、次が第二段階。つまり悪魔王との交渉になります。ぶっちゃけ、ここら辺の悪魔王に対する交渉材料は俺が【真理】を掴んでいる以上、腐る程あります。三超神側も全体の流れが盛り上がり、神の敵対者枠が奮起してくれるならそれはそれで面白くなるから、と放置してくれるでしょう。なので問題は悪魔界への潜入、悪魔王への謁見ですね。こればかりは流石に俺ではどうしようもないので」
その言葉にマギーホアは心配するな、と言葉を挟む。
「悪魔界への移動手段であれば私が何とかできる。私の財宝の中に悪魔界へのフリーパスが存在する。それを利用すれば悪魔界へと此方から乗り込む事も出来る故、心配する必要はない」
「後は悪魔王を引きずり出せばいいんじゃろ? つまり暴れればいいんじゃろ?」
「俺らが悪魔王以外全部殴り飛ばせば出て来るしかないな!」
「最強! 無敵! ドラゴン軍団出撃!」
「次回、ラストウォー再発……!」
「おい、馬鹿、マジでシャレにならないネタは止めろ」
頭を叩かれているドラゴンの姿に苦笑しつつ、
「なら悪魔界で暴れて悪魔王か、或いはそれまでの渡しを付けられそうな三魔子を引きずり出す必要がありますね。一応、第一級悪魔ともなるとレベルが200以上必要になりますが……」
「私一人で余裕だな」
流石すぎるマギーホア様。やっぱりメインプレイヤーの強さしてないよなぁ、この人は。そうとしか言えない強さを持っていた。だけど今はその実力が実に頼もしかった。第二級神と殴り合えると言われるマギーホアが居れば、マジで魂とかの対価もなく殴り合いで最上の悪魔を引きずり出せそうであった。
「とはいえ、悪魔界に乗り込むのであれば流石に乗り込めるのは精鋭の中の精鋭だけになるか……選別する必要があるな」
それでも戦闘に複数ついて来れる奴がいるって時点でだいぶおかしいんだけどね? ドラゴンという種族は、本当にバランス崩壊しているから滅ぼされて当然なんだろうなぁ、と神側視点だと言える。とはいえ、今はこうやって楽しく生きていてくれた事に感謝する事しか出来ない。
「で、最後にウェンリーナーの確保ですね。一番簡単に蘇生する手段なので、確保していて損はないです。悪魔側で蘇生の件を引き出せないならウェンリーナーに頼む必要があります。ウェンリーナーの役割は次代のモンスターを産む事なので、強い男の子モンスターを見つけて、それに案内する事を報酬にすればたぶんどうにでもなると思います」
という訳でやらなきゃいけない事は全部で三つ。
スラルを追い込む。
悪魔との交渉。ただし此方が有利を取る必要がある。でなければ何を要求されたかわかったもんじゃない。
そして最後に保険としてウェンリーナー。
この三つを揃えて何とかなる……というレベルの案件である。そしてこれは普通、不可能と呼べるレベルの難易度である。魔軍を追い込むというのがまず、難しい。その上で悪魔の中でも最上位に位置する連中と交渉する、ウェンリーナーを見つけ出して協力させる、というのは人類には不可能な試みだと言っても良いだろう。ぶっちゃけ、ざけんな、と言える案件ではある。
だが、
「楽しくなってきたな」
「おう、数百年ぶりに盛り上がってきたぜ」
「俺、悪魔界突入組に入りてぇなぁ……暴れてぇよ」
「誰だってそうだろう? 俺も負けないからな。でも魔人と戦うのも楽しそうだわ」
「お前もそう思う? 俺、魔王を涙目にしてぇわ」
ドラゴン達は、同胞達は楽しそうに笑っていた。そしてまるで不可能ではないと証言する様に準備を整える為に愉しく話し合い、動き出す為の準備を始めようとしていた。死ぬかもしれない―――いや、死ぬ可能性が高い。それでも諦めようとする様子はなかった。寧ろ、楽しみにしている姿しか見せなかった。
ほんと、馬鹿な連中ばかり、と息を零すしかなかった。だけどそれがドラゴンと言う生き物だった。彼らはそれに殉じている。そしてそれを楽しんでいる。だから笑える。絶望的な世界なのかもしれない。だけど、そんな事はどうでもいいのだ、連中には。その強さが羨ましく、そして眩しい。
「ふむ……となると私とウルは必然的に悪魔界突入組、残りを魔軍襲撃組とウェンリーナー捜索組に分ける必要があるな。悪魔界へと連れて行けるのも精鋭中の精鋭、多くて五頭が移動の都合上限界か……ウル、今のレベルはどうなっている?」
「自分ですか? 今は100ありますけど」
ヒューマン・カラーの姿ではあるが、それでも普通の人間やヒューマン・カラーよりは強い。元がドラゴン・カラーなので自分の1レベルは他の人間等の倍の意味はある。だから自分は普通の人間からすれば、大体レベル200に近いだけの能力を持っている。それなりに強い―――というか人界屈指の強さはあると自負しているが、マギーホアは此方を見て頷いた。
「成程、足りぬな」
「えっ」
「後レベルが100欲しいな」
「数字がおかしいですよ王様」
レベル200……それだけあれば未来の魔人四天王と互角に戦える……いや、少しは劣るかもしれないが、それでも十分匹敵しうるだけのレベルの強さになる。それって軽く超越者とも呼べる領域になる。だがそれだけの実力を手に入れるには、それに相応しいだけのレベルの相手と戦う必要もある。とてもじゃないがそう簡単に100レベルなんて上げる事が出来ない。この間戦った怪獣連戦で漸くレベル100の大台に乗ったばかりだったのに、そこから更に200を目指せと言われても困る。
「いや、でも王様」
「割と真面目な話だ、ウルよ。その程度のレベルでは一級悪魔と相対した場合、即座に敗北するだろう。まともに戦うのであれば200、勝利するのであれば250は欲しい。安全性を考慮するなら300だな。だが流石にその領域は難しいだろうから、200で妥協する必要がある。……後はそうだな、私が溜め込んでいる財宝を解放すれば装備は何とかなるだろう」
「いや、あの、マギーホア様? マギーホア様の財宝って竜の秘宝とかそういうレベルのアイテムばかりなんですけど」
その言葉にマギーホアは笑った。
「物は使う為に存在するのだ、友よ。こういう時に使わずして何時使うのだ」
惚れそう。だけどカミーラちゃんの時もこうやってちゃんと口説けば良かったと俺は心の底から思う。それを口に出してみるとマギーホア様がものすごい申し訳なさそうな表情をしている。
「うむ―――ま、まぁ! レベルに関しては私に任せて貰おう。時間に余裕があるという話だったな? だとすれば私が鍛錬の相手を務めよう。魔軍に対する圧力は……そうだな、近年中に開始すれば良いだろう。後は捜索も早い内が良い。疑いをもたれない為に適度に魔王に会う必要があるだろうが、なるべく此方に出すと良い。100年の間にゆっくりと魔軍を追い詰めつつレベルを上げよう」
「いや、100年で100レベルってそう簡単じゃないんですから……」
その言葉にあぁ、と周りのドラゴンが溜息を零す。え? なに? なにそのリアクション? 俺なんか間違った事言った? だってレベル既に100だよ? 既に人類の限界点に関しては到達していると言っても良いレベルなんだよ? これでも今では人類最強を名乗れるレベルの実力なんだぞ?
おかしくない? そう思っているとマギーホアが立ち上がり、少しを距離を空け、赤いタキシード姿の背筋を伸ばしながら、
どこからともなくクイズの看板ではなく―――ステッキを抜いた。
一目見てこれやべぇ、という気配が伝わってくる、間違いなくバランスブレイカー級の武器。それを抜いた状態でマギーホアはニヤリ、と笑った。
「何、そう心配する事はない。数百年前のエンジェルナイトを虐殺してから一切鍛錬を怠っていないからな。多少姿が変わって弱くなってしまったが―――それでも一度もレベルを落とした事がないのが自慢なのでな」
その言葉で大体、察した。
「私の今のレベルは479だ。猫の体ではドラゴン程の強さは出ないが―――それでも三級神如きまでなら負けるつもりは欠片もない」
マギーホア様は、本当に強かった。そして実にやる気満々だった。
……その姿を見て、ちょっとだけ頼んだ事を後悔した。
マギーホア様の株が上がり続ける話。設定だけ置いてあったからリサイクルは自由だよね。
という訳で、次回からいよいよドラゴン軍団の行動開始って事で。ちょくちょくXを意識してそれっぽい描写とか演出とか要れる予定なので、ランス10あそんdねるプレイヤーならもっと楽しめる様にするよ。だからみんな、ランス10遊ぼうね。