―――ルドラサウム東南大戦線。人類と魔軍の最前線にドラゴン集団が突然出没する。人類に言葉もなく加勢したドラゴンが裏切りのムシ使いガルティアを超える勢いで魔軍を空から焼き払う。投入されたドラゴンと言う種族の圧倒的強さ、そしてその数によって魔軍はなすすべもなく焼き払われた。その影響によって魔王城周辺の戦線が大幅に後退する事となった魔王は魔軍を再編成する必要が出て来る。
ルドラサウム東南部戦線に魔人ガルティア、魔人カミーラを投入。人類を裏切ったというガルティアのインパクトに加え、元ドラゴン出身であるカミーラがドラゴンの対応として最前線に投入される。即座に魔王城周辺の防備を固めながら戦線を押し上げる事に成功する。崩壊した戦線を再編成する上で一時的に魔物兵を下げる必要がある為、スラルの対人類戦線が縮小する。魔人による局所戦術が魔軍に有利に働き、戦力を取り戻しつつある。
投入された魔人により戦線が押し上げられ安定する。ピンポイントでドラゴンを狙った戦術が魔軍の中で広がり、ドラゴンによる被害を最小限に押し込む戦術がメインとなって運用される。それによりドラゴンが思う様に力を発揮できずにいる。それに合わせ人類がドラゴンをサポート、支援する動きを見せ始め、種族を超えた連携の姿が見え始める。団結や結束、統一に遥か遠くとも人類が脅威というものを前に連携する必要性、その概念を見出す事が出来た。だが再編成された魔軍は動きを効率化され、対ドラゴン戦術と共に一時的に旧時代の劣勢に追い込まれる。
『は? メタ戦術張るなら俺らも手段選ばねーから! ばーかばーか! 戦争のルール調べろよばーかばーか!』
SS300年、封殺戦術に我慢していたドラゴンがキレる。ドラゴン的な戦争とは正面から純粋な能力と能力、力と理からのぶつかり合いであり、完全なる封殺は気持ちよく戦争できないので気持ち悪い、なのでルール無用ならば手段選ばないわ、とドラゴンが一時的に戦場を放棄、次に出現する時は魔人でさえ届かない超高度から岩石や小山などを数頭で運んで、突発的に戦場に落とすようなテロを開始。また、突発的な超高高度からの奇襲ゲリラ戦術に目覚める。完全に防衛線を空から乗り越えながら魔王城へとダイレクトアタックする事で魔王城を破壊、そして防衛に残されていた魔人を刺激する様に逃亡を繰り返す様になった。ドラゴンという種の能力を遠慮なく使ったノールール戦術に再び人類と魔軍の戦争で人類が押し上げ始める。
『は? 今まで手を抜いて相手してきたのに、どっちが生かして貰えていたかを忘れた様ね。襲撃のショックで私のうはぁんを汚した罪は大きいわよ爬虫類共』
魔王スラル、半ギレのドラゴンに対して半ギレで返す。これにより今までは温存されていた魔人メガラスを投入する。前時代に多数のドラゴンを殺戮した魔人の姿を前にドラゴン、ついに全ギレする。今までは魔王城周辺に展開されていただけのドラゴンの戦線が超拡大し、魔王対人類の戦線全体へと戦闘規模を広げる。それまでは魔軍の撃破だけに集中していたドラゴンの動きに明確な殺意が混じり、対メガラスにおいて連携しつつ戦闘行動を開始、同時に魔軍が保有する重要施設に対する電撃的テロ行為を行う様になる。魔軍の補給線を破壊する事で魔人ガルティアが戦線に出るのを妨害し、カミーラにマギーホア人形を投げつける等魔人を撃退する為の手段を選ばなくなる。これにより人類と魔軍の戦線がついに拮抗する。
魔人ケッセルリンク戦場に登場。カラー出身の魔人であるケッセルリンクが戦場に投入される。カラー出身であるが故に高い魔力の持ち主であり、その資質は魔人化で更に強化された。魔法を使う事で限定的に飛行可能にもなったケッセルリンクと合わせ、メガラスと揃って大規模空中戦が行える魔人が二人に増えた。それによりドラゴンの突発的なテロに抵抗するように、魔軍が息を吹き返す。そして同時に魔人に《無敵結界》の存在が確認される。今までは魔王にのみ存在していた《無敵結界》、その完成版が魔人に適用される。これにより神魔以外からのあらゆるダメージを無効化にする、生物として最強の盾を入手する事になった。それにより魔人はダメージを恐れずに戦闘可能となる。ドラゴンとの戦線は苛烈化し、ドラゴンでも前線を抑え切れなくなる。また、戦場の激化につれて死者が増える。また、人類の国家の一つが魔人ケッセルリンクの手によって陥落する。
「てめぇ、ケッセルリンク……もう一度言いやがれ……宇宙までぶっ飛ばしてやる」
「……」
「《無敵結界》があるからって余裕か? あ゛ぁ゛?」
ケッセルリンクの胸倉を掴んで引き寄せる。少し前まで水色だった髪色は灰色へと変貌し、その胸は広く、硬く、そして起伏がない。肉体は本来のそれよりも遥かに強靭なものとなっており―――つまり、ケッセルリンクは少し目を離した隙にヒューマン・カラーから魔貴族とでも呼べるような、男性の姿へと変貌していた。俺の叫びと唸りはほとんど魂の声だった。
「ざけんな!! 俺が! お前の! その! 術を! どれだけ! 待ち望んでたのか……!」
「泣かれると……その、私としても実に困ります、ウル様……」
「あ゛ぁ゛?」
半泣き状態だった。胸倉を掴んでケッセルリンクを揺らしているが、ケッセルリンク自身の表情は滅茶苦茶困っている様子で、無言を貫きながらも確実に助けを求めている表情であり、そこを丁度、ケーちゃんが通りがかった。げっ、という表情を一瞬浮かべるが、しかし《無敵結界》を得たケーちゃんはそこで考え直し、
「おーい、男女ー。何をうぉっ、こいつキレながら泣いてやがる……!」
「ケーちゃん! 聞いてくれよケーちゃん!」
「うぉっ、無駄に早く取り付いて来やがった!?」
ケーちゃんがやってきたのを発見したので、即座にケッセルリンクを解放しつつケーちゃんを掴み、胸の中に抱き寄せた。あぁ、このもふもふ感にほんと癒される。ケーちゃんの方は本当に鬱陶しそうにしているが。我慢してくれ、お前の存在感が割とメンタル回復させるので。それはそれとして、
「ケーちゃん、ケッセルリンクちゃんほんと酷いんだよ。マジで酷いんだぞ。スラルちゃんに言いつけてやる」
「やめてください」
「お前そう言う所ほんと容赦しねぇな……で、どうしたんだよ」
物凄い嫌そうな表情でケーちゃんがそう聞いてくると、ケッセルリンクがあぁいや、と、本来の調子を少しだけ取り戻しながら、言葉をケーちゃんへと向ける。
「見ての通り、スラル様を守る為に私は性転換の魔法を使った訳だ」
「あぁ。うん、この男女が死ぬほど求めてたもんだよな。俺、その為の冒険に連れ回されたからよく覚えてる覚えてる。使って貰えばいいじゃん」
「いや、それが……ウル様には欠片も適性がない上に使おうとしても謎の力でレジストされる上に付与で一部を男性体にする事も出来ず、私の方でも困っている……」
「あぁ、うん、そういう……」
ケーちゃん、人生で初めて同情する様な表情を浮かべる。
「貴様らに解るか! 俺が! この1100年間待ち続けて! それで漸く現れた性転換魔法が使ってみれば~だが不思議な力によってかき消されてしまった……~なんて展開になるのを!! 室内ルーラ使ってる訳じゃねぇんだぞテメェ! ざけんな! どの神だ変なロックかけやがったのは! 馬鹿野郎! 馬鹿野郎……!」
「おぉ、もう……」
「言葉もない……」
ケーちゃんとケッセルリンクに憐れまれている。いや、だが待て、ケッセルリンクもK、即ちケーちゃんではないだろうか?
「聞いてくれ、K&K」
「俺達売り出し中のアイドルじゃないから」
「対応が早いなケイブリス……」
「解る? 生まれた時から魂が男なの。体は雌で、今は女。魂と体で不一致なのに、最近その波長が少しずつマッチしてきた感じがあるの。いや、これでもまだ色々と不感症なんだけどね。それでもちょっとずつ自分が変わってきているって事に恐怖は感じるのよ? それでもやっぱ、安心出来る体になりたいじゃない。そこで一人だけやったぜ、成し遂げたぜ、って感じで満足そうな顔をして歩いているイケメン見たらどうする?」
「キレるな」
「じゃろ、流石心の友ケーちゃん」
「吐き気がするから心の友は止めろ馬鹿」
後はもう……モロッコに賭けるしかないのでは? というかもしかしてお祈り枠、一つ確定で性別変化ロック解除しろ、というのでも俺は願わなきゃダメなのだろうか? という事はもう一回あの地獄のダンジョンにトライアルする必要がある? 馬鹿野郎、次回はジル様と一緒に突っ込んでジル様に蹂躙して貰うからな、お前。駄目だ、どう足掻いても家畜にされるイメージしか湧かない。ジル時代になったらジルが堕ちる前に媚び売りまくって心象良くしよう。
「あ゛あ゛あ゛、俺様を使って! 勝手に! 癒されるな!!」
ケーちゃんのもふもふに顔を突っ込んで癒される様子を見ているケッセルリンクが、静かにケーちゃんの冥福を祈っていた。馬鹿野郎、《無敵結界》は攻撃以外に対しては大体無力だぞおめー。
「ふはははー! 《無敵結界》程度でこのウル様に対してマウントを取ったと思うとは、スウィート、ベリー・スウィート! 蜂蜜マシマシうはぁん並みに甘いぞぉ! 《無敵結界》なんて穴だらけのがばがばバリア、攻略法が何個かあるんだぞケーちゃん! うははー!」
「―――私、それ初めて聞くんだけど」
ケーちゃんで遊んでいると、聞き覚えのある声がし、真っ先にケッセルリンクが傅いた。彼女―――今では彼だが、それが仕える主の登場であった。
「これはスラル様」
真っ先に通路に現れた魔王スラルの存在に近づき、ケッセルリンクが臣下の礼儀を見せた。だがスラルの視線は此方へと向けられていた。その視線には今までにないものが多く見える。特に恐怖、それが非常に強く見える。自分が今やっている事にやや申し訳なく思いつつ、ケーちゃんが小声で
「逃がして……俺だけを逃がして。ね? 逃がして。リスだよー。ただのリスだよー。ききー。きぃー。ただの可愛いリスですよー。だから逃がしてー」
ケーちゃん、ただのリスになる。可愛い奴め。だがそれはそれとして逃がさない。《無敵結界》を過信した罪をここで受けろリスめ。
「えー、だってこれぐらいさ、スラルちゃんでも冷静に考えれば解る事だろう?」
「……っ」
その言葉にスラルが少しだけ睨んでくる。その瞳の中に見えるものが揺れている。あぁ、恐怖が増えているのが見える。そして同時にショックを受けている事が。自分が半分、言いがかりをつけている様な事を、スラル本人が自覚し、その事実に本人が嫌悪している。それでも【魔王】に感情を後押しされ、それを抑えきれない。そういう感じの表情をしている。
そしてその光景にケーちゃんがちびりかけてる。
「たすけて……たすけて……俺様、ここに、いない、いないから……」
だが逃がさん。
そしてごめんね、スラル。
これは―――必要な事なのだ。神々から見て、そして
「スラルちゃん最近疲れてない? ちょっと休んでみたらどうなんだい? その間に俺は死活問題だから《バリア破り》でも習得してみるからさ。んー……レメディア・カラーちゃん何時の時代生まれなんだろうね? 編み出してくれたら頭下げて覚えに行くんだけど」
「ウル様、あまりスラル様を挑発するのは止めて欲しい」
ぎろり、とケッセルリンクが此方を睨んだ。まだまだレベルは此方の方が上だが、それでも魔人の種族値を考えると大体、同格だろうか? でも《無敵結界》が根本的に現状突破不可である以上、ケッセルリンクと能力的には互角でも勝利するのは不可能に近い。
なので笑って誤魔化す。
「へいへいへーい、ケッセルリンクちゃん。俺は元々道化としてここに居るんだぜ。耳の痛い話をするのが筋ってもんだ。ねー、ケーちゃん」
「ききぃっー」
ケーちゃん、迫真のリスの真似。そろそろケーちゃんがじょばじょばしそうな感じがある。それはそれで面白そうだなぁ! とは思わなくもない。ただ、スラルは小さな声でそう、と呟き、
「……そうね、少し部屋で休んでくるわ。ありがとう」
「部屋までご一緒します」
疲れた様子のスラルをケッセルリンクが支え、二人が魔王城の奥へと消えていく。うーん、このケッセルリンク、本当にスラルに入れ込んでいるなぁ、と解る。まぁ、だから未来ではあんな風になっていたのだろうが。それはともあれ、
「ケーちゃんじょばってない?」
「ぎり耐えた……というかマジで死ぬかと思ったぜ。お前その調子でよく生きていられるな」
「神に愛され過ぎているからな! ま、それも何時まで続いたもんか解りはしないけどな」
とはいえ―――スラルの精神状態もそろそろいい塩梅だ。
ケーちゃんを窓から投げ捨てつつさて、と呟く。
「―――動くか」
準備は終わった。拠点でやるべき事も整った。戦況は狙った通りに進んだ。
ならば、【作戦フェイズ】のお時間だ。
ランス10式の状況戦況報告システム、便利だし見栄えが良いので導入。大きく歴史を動かしたり、移動させたりするときは勢力状況を表現するのも楽だし、これでランス10っぽく表現するのも悪くないなぁ、って……。
ドラゴンによるテロでスラルが原作よりも早く追い詰められた影響でケッセルリンクの登場も早まっていたり。そしてあっさりと折れる性転換の希望。だがまだだ、まだモロッコ君が残ってる。モロッコを信じろ。
そしてじょばるケーちゃん可愛くない?
あ、次回パーティーのお時間だよ。